Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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「いやあ、俺が入ったときには、ほとんど話終わってたし、さっちーの状態考えたら、咲良ちゃんに確認する余裕もなかったし、」
「……だよなあ、」
サチも咲良も姿がみえなくて、何をしているのやら、と、2つだけ残った弁当を、食べ終わったゴミと一緒にならないように移動していたところで、携帯の着信音が鳴った。画面を見ると赤葦からで、珍しいなと電話に出ると、赤葦が焦ったように話すので、余計珍しい。
何か悪いことでも起こったかな、と思っていたところ、サチを医務室に運んでいると言う。その後はもう、いてもたってもいられなくなり、とりあえずその場から走りだしていて、移動しながら海には電話で状況を説明して部のことを任せたくらいだ。
「バレーボールの時間を返せ、って言ってた気がするけど」
「……中学のヤツか、」
「ああ、さっちー、バレーやってたんだっけ?」
木兎に助けを求めたと言う咲良に話が聞ければもう少し詳しくわかるのだろうが、咲良もなぜか気落ちしており、聞ける状況じゃねーな、と判断して先ほど昼ご飯を食べるように音駒陣地に返したところだ。
「黒尾さんっ!」
またも赤葦が慌てた声で呼ぶので、サチのことだとはすぐにわかった。
サチを起こさないように、と医務室の外で木兎と話していたのだが、急いで医務室へと戻る。
「サチ!」
真っ青な顔でこちらを向いて、『てつろ、』と。
いつからか黒尾と呼ばれるようになっていたので、昔のように名前で呼ばれたことに一瞬驚く。
が、苦しそうに呼吸をするので、過呼吸をぶり返さないようにそっと頭を撫でて声をかける。
「苦しいな、大丈夫、ゆっくり息吐いて」
赤葦からの電話で駆けつけたときには、過呼吸が行き過ぎて痙攣をおこしていた。ようやく落ち着いて寝息を立ててから、まだ5分足らずだと思う。
『手、』
握って、というのは、声にはならなかったようだが、口はそう動いていた。
普段なら絶対聞けない要求に、しかし状況が状況なので浮き立つこともできない。
喉元で固く握られていた左手を握る。
包帯が巻かれていて、先ほど木兎から、自分でロッカーを殴打した際の怪我であることを聞かされている。
「痛い、よな」
『……おちつく』
「そ? じゃあ気が済むまでこうしておきますよ」
ゆっくり目を閉じて、少しずつ息が整うのを見守る。そのまま眠るかな、とみていたのだが、予想とは裏腹に、カッと目を見開いた。
何事かと思えば、『試合、』と。
ええ、今それ? 責任感強いのはいいんだけども。
「時間まで、まだありますよー」
『前の試合、は? アップは?」
「それは1年が見てくれてるから、」
『相手、優勝候補、』
ああ、これ。こっちの言葉、聞こえてないヤツだ。
落ち着かない呼吸もそれを裏付けるようで、そのまま起き上がって走っていきそうなサチの両肩を、―――力加減を間違えれば壊れてしまいそうな両肩を―――強く握った。
「サチさーん。よそ見しないで、こっち見て」
落ち着かなかった視線が、ゆっくりとこちらを、見た。
「見たな。じゃあゆっくり深呼吸、3回」
素直に深呼吸をするサチを見守る。
ここまで動揺する幼馴染を、ほとんど初めて見た。
中学の時の、大怪我したときでさえ、ここまでではなかった。
「試合にはまだ時間がある。次は強豪だけど、さっきサチからの情報はもらった。……一緒に打ち合わせしたの覚えてるか?」
いつもよりは反応が遅い。
それでも思い出せたのか、小さく頷くので、気づいたら「よし、」と頭をぐちゃぐちゃにしていた。ぐちゃぐちゃにしつつ、
「サチさんは、次の試合は心配だから、ここで休ませてもらいなさい」
と告げる。
『え、』
なんでと言いたげな表情が想定内過ぎて、想定内な反応をするサチが可愛いと思ってしまうのは、なんというか惚れた弱みなんだろうなあ。
「顔、真っ青でしょうが。そんなんじゃベンチには座らせられませーん」
『でも』
「サチさんには、その次の試合の作戦を一緒に考えてもらわないといけないんでね。そのためにも、休んで顔色を戻す。その間に俺達は勝つ。だから、少しでもいいから寝なさいよ」
なおも言い返そうと口を開くので、「はいはい起きたら聞きまーす」と先手を打って、空いている目元を手でふさぐ。
『黒尾、』
「休むと約束するまで、手はどけませんー」
鉄朗呼びの時間は終わってしまったらしい。
ちょっと残念ではあるが、いつまでも調子の悪い姿を見ている方がいたたまれない。
『休むからどけてクソ尾』
お、なんか調子出てきたな。
手をどけて、まだ青白い顔を覗くと、キレイでまっすぐな目とぶつかった。
よくよく見れば、少しだけ泣いた跡のようなものが見えて。
まだ、根本の原因は解決できてないんだよな、と。
「眠るまで手、握ってますケド?」
『うるさい。早くアップしに行きなよ』
強がりはいつものことで、いつもなら従うのだが、今日はさすがに従うわけにもいかない。
「俺がいたいから、もうちょっといるわ」
こう言えば、本当に嫌でない限りは追い出されることはないと知っている。
どんな反応するのかな、と観察すると、安心しような顔をした。かすかな変化だからほかの人にはわからないだろうけど。不器用なヤツだなあ、と改めて思う。
一人がイヤなら、そう言えばいいのに。試合までまだ時間あるって伝えているにも拘わらずコレである。
何があったか聞きたいけど。今じゃないよなあ。
思い出したらまた過呼吸起こしそうな気もするし。
「そういえば、お腹すいてない? 弁当まだでしょ?」
『……後で食べる』
「えーそれ、食べないヤツじゃん」
『1食抜いたくらいで、問題ないですー』
「だってサチさん、なんかだいぶ瘦せましたよね」
体育祭の二人三脚の時も思ったけど、さっき肩をつかんで再認識した。
中学の頃に比べて、だいぶ華奢になったと思う。競技してないから筋肉量が減ったのもあるんだろうけども。
『お母さんか』
「黒尾さんです」
研磨君も心配してたよ。そう付け加えれば、気まずそうに小さなため息をつく。
『この前の焼肉おいしかったなあ』
体育祭の後に言った焼肉のことを言っている。
全然気まずそうじゃないじゃん。またおごれっていう流れだぞ、これ。
『また行きたいなあ。毎週食べたら太りそうだなあ』
「あーほら。そういう風に話持っていくなって思った。毎週はさすがに無理ですー!」
『ええ、じゃあなんでこの話題出したのよ。そういう流れでしょ』
「毎週肉まんならどうよ?」
『雲泥の差。……晩ご飯食べられなくなるからいらなーい』
「あー、ゆきさんのご飯旨いもんね」
『まあねえ』
ゆきさんとはサチの母親である。
気さくな人で、会うといろいろ世話を焼かれるし、サチのことを頼むねと念を押されもする。
『そういえば、お母さんが会いたがってた』
「あー最近会ってないもんなー。じゃ今度遊びに行きますよ」
『日時の指定があった気がする』
「何それ、会いたがってたって言うよりもう計画してんじゃん。いつ?」
『忘れた』
「は? メモとかしないの」
『覚えられるかなと思ったら忘れちゃった。黒尾はいつでも暇だからまあ大丈夫でしょ』
「そんなこと言って、誘うの忘れてました、とかいうオチはやめてくださいねー」
『わあ、それいいね。採用する』
「あのー、サチさん?」
不満を垂れようとしたところで、携帯の着信音が鳴った。ディスプレイには夜久の文字。どうやら試合の順番が回ってきたらしい。
『行ってらっしゃい』
「ちゃんと寝てなさいよ」
『はいはい』
眠るまでそばについて居たかったのは本心だったのだが、会話が盛り上がったせいなのか、眠れないのか、サチに見送られる形となったことが心残りである。
別れ際、もう一度サチの頭をくしゃくしゃにしてから、医務室を後にした。
11小休憩の続き
To:黒尾
From:赤葦
お役御免のようだったので、戻ります
「……だよなあ、」
サチも咲良も姿がみえなくて、何をしているのやら、と、2つだけ残った弁当を、食べ終わったゴミと一緒にならないように移動していたところで、携帯の着信音が鳴った。画面を見ると赤葦からで、珍しいなと電話に出ると、赤葦が焦ったように話すので、余計珍しい。
何か悪いことでも起こったかな、と思っていたところ、サチを医務室に運んでいると言う。その後はもう、いてもたってもいられなくなり、とりあえずその場から走りだしていて、移動しながら海には電話で状況を説明して部のことを任せたくらいだ。
「バレーボールの時間を返せ、って言ってた気がするけど」
「……中学のヤツか、」
「ああ、さっちー、バレーやってたんだっけ?」
木兎に助けを求めたと言う咲良に話が聞ければもう少し詳しくわかるのだろうが、咲良もなぜか気落ちしており、聞ける状況じゃねーな、と判断して先ほど昼ご飯を食べるように音駒陣地に返したところだ。
「黒尾さんっ!」
またも赤葦が慌てた声で呼ぶので、サチのことだとはすぐにわかった。
サチを起こさないように、と医務室の外で木兎と話していたのだが、急いで医務室へと戻る。
「サチ!」
真っ青な顔でこちらを向いて、『てつろ、』と。
いつからか黒尾と呼ばれるようになっていたので、昔のように名前で呼ばれたことに一瞬驚く。
が、苦しそうに呼吸をするので、過呼吸をぶり返さないようにそっと頭を撫でて声をかける。
「苦しいな、大丈夫、ゆっくり息吐いて」
赤葦からの電話で駆けつけたときには、過呼吸が行き過ぎて痙攣をおこしていた。ようやく落ち着いて寝息を立ててから、まだ5分足らずだと思う。
『手、』
握って、というのは、声にはならなかったようだが、口はそう動いていた。
普段なら絶対聞けない要求に、しかし状況が状況なので浮き立つこともできない。
喉元で固く握られていた左手を握る。
包帯が巻かれていて、先ほど木兎から、自分でロッカーを殴打した際の怪我であることを聞かされている。
「痛い、よな」
『……おちつく』
「そ? じゃあ気が済むまでこうしておきますよ」
ゆっくり目を閉じて、少しずつ息が整うのを見守る。そのまま眠るかな、とみていたのだが、予想とは裏腹に、カッと目を見開いた。
何事かと思えば、『試合、』と。
ええ、今それ? 責任感強いのはいいんだけども。
「時間まで、まだありますよー」
『前の試合、は? アップは?」
「それは1年が見てくれてるから、」
『相手、優勝候補、』
ああ、これ。こっちの言葉、聞こえてないヤツだ。
落ち着かない呼吸もそれを裏付けるようで、そのまま起き上がって走っていきそうなサチの両肩を、―――力加減を間違えれば壊れてしまいそうな両肩を―――強く握った。
「サチさーん。よそ見しないで、こっち見て」
落ち着かなかった視線が、ゆっくりとこちらを、見た。
「見たな。じゃあゆっくり深呼吸、3回」
素直に深呼吸をするサチを見守る。
ここまで動揺する幼馴染を、ほとんど初めて見た。
中学の時の、大怪我したときでさえ、ここまでではなかった。
「試合にはまだ時間がある。次は強豪だけど、さっきサチからの情報はもらった。……一緒に打ち合わせしたの覚えてるか?」
いつもよりは反応が遅い。
それでも思い出せたのか、小さく頷くので、気づいたら「よし、」と頭をぐちゃぐちゃにしていた。ぐちゃぐちゃにしつつ、
「サチさんは、次の試合は心配だから、ここで休ませてもらいなさい」
と告げる。
『え、』
なんでと言いたげな表情が想定内過ぎて、想定内な反応をするサチが可愛いと思ってしまうのは、なんというか惚れた弱みなんだろうなあ。
「顔、真っ青でしょうが。そんなんじゃベンチには座らせられませーん」
『でも』
「サチさんには、その次の試合の作戦を一緒に考えてもらわないといけないんでね。そのためにも、休んで顔色を戻す。その間に俺達は勝つ。だから、少しでもいいから寝なさいよ」
なおも言い返そうと口を開くので、「はいはい起きたら聞きまーす」と先手を打って、空いている目元を手でふさぐ。
『黒尾、』
「休むと約束するまで、手はどけませんー」
鉄朗呼びの時間は終わってしまったらしい。
ちょっと残念ではあるが、いつまでも調子の悪い姿を見ている方がいたたまれない。
『休むからどけてクソ尾』
お、なんか調子出てきたな。
手をどけて、まだ青白い顔を覗くと、キレイでまっすぐな目とぶつかった。
よくよく見れば、少しだけ泣いた跡のようなものが見えて。
まだ、根本の原因は解決できてないんだよな、と。
「眠るまで手、握ってますケド?」
『うるさい。早くアップしに行きなよ』
強がりはいつものことで、いつもなら従うのだが、今日はさすがに従うわけにもいかない。
「俺がいたいから、もうちょっといるわ」
こう言えば、本当に嫌でない限りは追い出されることはないと知っている。
どんな反応するのかな、と観察すると、安心しような顔をした。かすかな変化だからほかの人にはわからないだろうけど。不器用なヤツだなあ、と改めて思う。
一人がイヤなら、そう言えばいいのに。試合までまだ時間あるって伝えているにも拘わらずコレである。
何があったか聞きたいけど。今じゃないよなあ。
思い出したらまた過呼吸起こしそうな気もするし。
「そういえば、お腹すいてない? 弁当まだでしょ?」
『……後で食べる』
「えーそれ、食べないヤツじゃん」
『1食抜いたくらいで、問題ないですー』
「だってサチさん、なんかだいぶ瘦せましたよね」
体育祭の二人三脚の時も思ったけど、さっき肩をつかんで再認識した。
中学の頃に比べて、だいぶ華奢になったと思う。競技してないから筋肉量が減ったのもあるんだろうけども。
『お母さんか』
「黒尾さんです」
研磨君も心配してたよ。そう付け加えれば、気まずそうに小さなため息をつく。
『この前の焼肉おいしかったなあ』
体育祭の後に言った焼肉のことを言っている。
全然気まずそうじゃないじゃん。またおごれっていう流れだぞ、これ。
『また行きたいなあ。毎週食べたら太りそうだなあ』
「あーほら。そういう風に話持っていくなって思った。毎週はさすがに無理ですー!」
『ええ、じゃあなんでこの話題出したのよ。そういう流れでしょ』
「毎週肉まんならどうよ?」
『雲泥の差。……晩ご飯食べられなくなるからいらなーい』
「あー、ゆきさんのご飯旨いもんね」
『まあねえ』
ゆきさんとはサチの母親である。
気さくな人で、会うといろいろ世話を焼かれるし、サチのことを頼むねと念を押されもする。
『そういえば、お母さんが会いたがってた』
「あー最近会ってないもんなー。じゃ今度遊びに行きますよ」
『日時の指定があった気がする』
「何それ、会いたがってたって言うよりもう計画してんじゃん。いつ?」
『忘れた』
「は? メモとかしないの」
『覚えられるかなと思ったら忘れちゃった。黒尾はいつでも暇だからまあ大丈夫でしょ』
「そんなこと言って、誘うの忘れてました、とかいうオチはやめてくださいねー」
『わあ、それいいね。採用する』
「あのー、サチさん?」
不満を垂れようとしたところで、携帯の着信音が鳴った。ディスプレイには夜久の文字。どうやら試合の順番が回ってきたらしい。
『行ってらっしゃい』
「ちゃんと寝てなさいよ」
『はいはい』
眠るまでそばについて居たかったのは本心だったのだが、会話が盛り上がったせいなのか、眠れないのか、サチに見送られる形となったことが心残りである。
別れ際、もう一度サチの頭をくしゃくしゃにしてから、医務室を後にした。
11小休憩の続き
To:黒尾
From:赤葦
お役御免のようだったので、戻ります