Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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昼の練習試合で打ち足りなかったのか、体力が有り余っている1・2年が何やら騒がしい。因縁の烏野高校に女子マネがいるか否か。そんな話をしているようだ。
「俺は居ない方にハーゲンダッツ!」
とは2年の山本。拗らせてるなあ、と遠くから見守る。
「えーっ、俺は居た方が嬉しいからいる方で!」
「僕もですっ」
1年2人―――犬岡、芝山は素直。
ってか、そもそも女子マネがいたところで、特に山本は話をすることすらできないのではないか。
「バカヤロウ! かわいくて美しいマネがいたら、悔しいだろうが! 俺だってマネにキャーキャー言われたいっ!」
「いやいやいや、ウチにもいるでしょうが、れっきとしたマネが」
聞く専を決め込んでいたのだが、思わず突っ込まずにはいられない。
そう、音駒にも倉木サチという有能な女子マネが存在する。
「俺は! マネからキャーキャー言われたいんですっ! サチさんはキャーキャー言ってくれないっす!」
「頼めば言ってくれるんでないのー」
「そもそも! なんかお近づきになれないというかなんというか……(ゴニョゴニョ)」
「ん?」
「いえ! なんでもないっす」
「お前がお近づきになれないのは、そもそも、女子と話ができないからなのでは?」
「ぐぬぬ、」
言い返せない山本を横にヌハハハと勝ち誇った笑いをこぼしていると、「あ、サチさん」と山本。
山本の指さす方を見ると、丁度合宿所の玄関を出たところにサチがいた。ジャージ姿に財布を持って、どこかに行くようだ。
おいおい、何時だと思ってんだ、うちのマネさんは。
口には出さず、窓を思い切りあける。
「こら、サチっ! 一人でどこに出かけようとしてんの」
『うわ、黒尾だ。見つかったか、』
「見つかったか、じゃねーだろ。……そこで待ってなさい」
ガン、と窓を閉めて、監督・コーチ・マネ以外の全員で雑魚寝している大部屋を出る。
部員全員の視線を背中に感じるが、気にせず部屋の扉を閉めた。
「夜道! 知らない場所! 遅い時間! 一人!」
指示通り玄関先で突っ立っていた音駒高校の女子マネである倉木サチに、考え得る限りの一人歩きがダメな理由を突き付ける。
『……大袈裟だなあ』
「つべこべ言わずに、反省しなさいよ」
『はいはい』
「で、お姉さんどこに行くんですか」
『コンビニ』
コンビニかあ、と近くのコンビニを脳内検索する。
ここにきてまだ2日だが、移動したり走り込みしたりで、コンビニがどこにあるかはなんとなくわかる。そしてサチは、一人で出かけようとしていたくせに、コンビニがどこにあるのかをおそらく把握していない。そういう手のかかるヤツだ。
「夜ご飯足りなかった~?」
わざとらしく聞けば、『そう、足りなかった~』と適当な返事。
おそらく違う目的があるのだろうが、わざわざ教えてはくれない。こういうヤツだよなあ、昔から。なんて物思いにふけりながら、外灯の少ない道を二人で歩く。ポケットに突っ込んできた携帯電話のライト機能をオンにし、車通りは多くはなかったが、歩道側にサチを追いやる。
『明日はついに、烏野かー』
「なになに、緊張して寝られないわけ?」
『なんでよ。私が緊張してどうするの』
「とかいって、昨日も夜更かししていたようですケド?」
『何それお母さんじゃん』
「手がかかる幼馴染が2人もいると、こうなっちゃうんですかねえ」
隣を歩くサチは、もう一つ肩書を加えるなら、幼馴染である。
小学校のバレーボールチームで一緒になり、家も近いことから、研磨と3人でよく遊んだ。ちなみにゲームの腕はすこぶる悪い。
『うるさいなあ。別に手はかかってません~。黒尾が勝手に手をかけてるだけでしょ』
「まあ、そうなんだけども。たまには心配する幼馴染の気持ちも考えなさいよ」
『いつまでも私にかまってないで、早く彼女を見つけなさい』
「あ、それ言います? 真面目にへこみますけどー」
そんな中身のない会話をしていたら、いつの間にか目的地に到着した。
「じゃ、この辺で待ってるから買ってきなさいよ」
『なんか飲む?』
「ん-じゃあアイス」
『好きだね、アイス。じゃ適当に買ってくる、安いヤツね』
一応お礼のつもりだと思われるので、アイスを所望した。
待っている間、バリカーに腰かけて携帯電話を取り出すと、夜久からメールが入っていた。
〈相変わらず仲がいいことで。ほどほどにして帰って来いよ〉
仲が良く見えるらしい。
その言葉に思わずニヤついてしまうが、慌てて表情筋を駆使して平静を装る。
サチは俺の気持ちには気づいていない。ただの幼馴染としか思っていないと思う。
実際、今はそれでもいいと思うから―――今はバレーボールで手一杯だから―――、俺も関係性を進める気はなくて。でも誰かの彼女になってしまうのは見たくなくて。
そんな気持ちから、いつの間にかサチをほかの男から牽制するようになっていた。同じクラス・同じ委員・幼馴染・バレー部主将、と使える肩書はいくつかある。それを最大限利用している。
もちろん、わがままだということは百も承知だが、それが嫌ならほかのヤツだって俺を牽制すればいい。でもそうしないのだから、サチを本気で思っているわけではないのだろう。と言い訳のような屁理屈のようなことを稀に考えたりする。
〈近くのコンビニに来ただけですー。用事が終わったら帰りますーー〉
夜久に返事をしたところで、コンビニの自動扉が開く音がして、入店音が続いた。
入り口には、ビニール袋を持ったサチの姿。そのままヅカヅカと近づいてくる。
『はい、アイス。ガリガリ君ね』
「安定の味。コスパいいヤツね。サンキュー」
『そうそう。コスパ最高。……寒くないの?』
「まあね」
もらったアイスの袋を開けて、ゴミ箱に入れ、アイスだけ片手にまた歩き出すと、サチもすぐ隣についてきた。
「袋持ちますかー?」
『結構でーす』
「へーい」
こんな調子だから、なんとなく想像がつくかもしれないが、サチは人間関係を作るのがあまり得意ではない。もしかすると研磨よりも苦手だと言えるかもしれない。
昔はもう少し頑張っていたのだが、ある時から頑張るのを辞めたらしく、それ以降は俺や研磨だけでなく、誰にでもこんな調子。
変に取り繕うよりは、素が出せた方がいいんだろうから、別に異論はない。
『黒尾ももったいないよねー、そんだけ身長あるんだからモテるはずなのにね』
「おやおや?」
これはアレか。ついにサチも俺のことを意識し始めたか?
そんなポジティブな思考を、いやないな、と自分で否定する。
『たぶんね、胡散臭いのが悪いんだろうね』
「……急に辛辣じゃないデスか」
『でもさあ、主将がかっこいいと、マネがたくさん入るらしいよ』
「何それ、どこ情報?」
『バスケ部のマネの子が、主将がかっこよくて勧誘されたから入ったって言ってた』
「あー、それはごめんなさいねェ。……って、遠回しに、かっこよくないって言ってません?」
『あれ、そうなる? 言ってない言ってない』
「わざとらしー」
『お、気まずくなったところで、宿が見えてきましたよ、キャプテン』
中身のない会話の終わりが近づいてきたようだ。
こんなどうしようもない会話でも、いつもとは違う道で、夜の暗闇の中二人きりで歩くと、意味があったような気がしてくる。特にないのだけども。
「あんまり夜更かししなさんなよ」
『はいはいお母さん』
「昔見たいに鉄朗って呼んでくれていいんだけど?」
『いつの時代だ、く・ろ・お』
合宿所のサチが止まる部屋の前まで送り届ける。
そのまま自室に戻ろうとしたところ、再度黒尾と呼ばれた。
「んー?」
『……ありがと、おやすみ』
「え?」
バタン。
照れ隠しのように音を鳴らして閉められた扉を、しばしの間眺め、ああ今お礼を言われたのかー何のだ?コンビニに一緒に行ったことに対するお礼かな? という短い思考をした。
01音駒にも女子マネはいます
え、何それ。急に律儀。急にかわいい。
自販機コーナーでしばらく余韻に浸ってから部屋へと戻ることになったのは、ここだけの話。
「俺は居ない方にハーゲンダッツ!」
とは2年の山本。拗らせてるなあ、と遠くから見守る。
「えーっ、俺は居た方が嬉しいからいる方で!」
「僕もですっ」
1年2人―――犬岡、芝山は素直。
ってか、そもそも女子マネがいたところで、特に山本は話をすることすらできないのではないか。
「バカヤロウ! かわいくて美しいマネがいたら、悔しいだろうが! 俺だってマネにキャーキャー言われたいっ!」
「いやいやいや、ウチにもいるでしょうが、れっきとしたマネが」
聞く専を決め込んでいたのだが、思わず突っ込まずにはいられない。
そう、音駒にも倉木サチという有能な女子マネが存在する。
「俺は! マネからキャーキャー言われたいんですっ! サチさんはキャーキャー言ってくれないっす!」
「頼めば言ってくれるんでないのー」
「そもそも! なんかお近づきになれないというかなんというか……(ゴニョゴニョ)」
「ん?」
「いえ! なんでもないっす」
「お前がお近づきになれないのは、そもそも、女子と話ができないからなのでは?」
「ぐぬぬ、」
言い返せない山本を横にヌハハハと勝ち誇った笑いをこぼしていると、「あ、サチさん」と山本。
山本の指さす方を見ると、丁度合宿所の玄関を出たところにサチがいた。ジャージ姿に財布を持って、どこかに行くようだ。
おいおい、何時だと思ってんだ、うちのマネさんは。
口には出さず、窓を思い切りあける。
「こら、サチっ! 一人でどこに出かけようとしてんの」
『うわ、黒尾だ。見つかったか、』
「見つかったか、じゃねーだろ。……そこで待ってなさい」
ガン、と窓を閉めて、監督・コーチ・マネ以外の全員で雑魚寝している大部屋を出る。
部員全員の視線を背中に感じるが、気にせず部屋の扉を閉めた。
「夜道! 知らない場所! 遅い時間! 一人!」
指示通り玄関先で突っ立っていた音駒高校の女子マネである倉木サチに、考え得る限りの一人歩きがダメな理由を突き付ける。
『……大袈裟だなあ』
「つべこべ言わずに、反省しなさいよ」
『はいはい』
「で、お姉さんどこに行くんですか」
『コンビニ』
コンビニかあ、と近くのコンビニを脳内検索する。
ここにきてまだ2日だが、移動したり走り込みしたりで、コンビニがどこにあるかはなんとなくわかる。そしてサチは、一人で出かけようとしていたくせに、コンビニがどこにあるのかをおそらく把握していない。そういう手のかかるヤツだ。
「夜ご飯足りなかった~?」
わざとらしく聞けば、『そう、足りなかった~』と適当な返事。
おそらく違う目的があるのだろうが、わざわざ教えてはくれない。こういうヤツだよなあ、昔から。なんて物思いにふけりながら、外灯の少ない道を二人で歩く。ポケットに突っ込んできた携帯電話のライト機能をオンにし、車通りは多くはなかったが、歩道側にサチを追いやる。
『明日はついに、烏野かー』
「なになに、緊張して寝られないわけ?」
『なんでよ。私が緊張してどうするの』
「とかいって、昨日も夜更かししていたようですケド?」
『何それお母さんじゃん』
「手がかかる幼馴染が2人もいると、こうなっちゃうんですかねえ」
隣を歩くサチは、もう一つ肩書を加えるなら、幼馴染である。
小学校のバレーボールチームで一緒になり、家も近いことから、研磨と3人でよく遊んだ。ちなみにゲームの腕はすこぶる悪い。
『うるさいなあ。別に手はかかってません~。黒尾が勝手に手をかけてるだけでしょ』
「まあ、そうなんだけども。たまには心配する幼馴染の気持ちも考えなさいよ」
『いつまでも私にかまってないで、早く彼女を見つけなさい』
「あ、それ言います? 真面目にへこみますけどー」
そんな中身のない会話をしていたら、いつの間にか目的地に到着した。
「じゃ、この辺で待ってるから買ってきなさいよ」
『なんか飲む?』
「ん-じゃあアイス」
『好きだね、アイス。じゃ適当に買ってくる、安いヤツね』
一応お礼のつもりだと思われるので、アイスを所望した。
待っている間、バリカーに腰かけて携帯電話を取り出すと、夜久からメールが入っていた。
〈相変わらず仲がいいことで。ほどほどにして帰って来いよ〉
仲が良く見えるらしい。
その言葉に思わずニヤついてしまうが、慌てて表情筋を駆使して平静を装る。
サチは俺の気持ちには気づいていない。ただの幼馴染としか思っていないと思う。
実際、今はそれでもいいと思うから―――今はバレーボールで手一杯だから―――、俺も関係性を進める気はなくて。でも誰かの彼女になってしまうのは見たくなくて。
そんな気持ちから、いつの間にかサチをほかの男から牽制するようになっていた。同じクラス・同じ委員・幼馴染・バレー部主将、と使える肩書はいくつかある。それを最大限利用している。
もちろん、わがままだということは百も承知だが、それが嫌ならほかのヤツだって俺を牽制すればいい。でもそうしないのだから、サチを本気で思っているわけではないのだろう。と言い訳のような屁理屈のようなことを稀に考えたりする。
〈近くのコンビニに来ただけですー。用事が終わったら帰りますーー〉
夜久に返事をしたところで、コンビニの自動扉が開く音がして、入店音が続いた。
入り口には、ビニール袋を持ったサチの姿。そのままヅカヅカと近づいてくる。
『はい、アイス。ガリガリ君ね』
「安定の味。コスパいいヤツね。サンキュー」
『そうそう。コスパ最高。……寒くないの?』
「まあね」
もらったアイスの袋を開けて、ゴミ箱に入れ、アイスだけ片手にまた歩き出すと、サチもすぐ隣についてきた。
「袋持ちますかー?」
『結構でーす』
「へーい」
こんな調子だから、なんとなく想像がつくかもしれないが、サチは人間関係を作るのがあまり得意ではない。もしかすると研磨よりも苦手だと言えるかもしれない。
昔はもう少し頑張っていたのだが、ある時から頑張るのを辞めたらしく、それ以降は俺や研磨だけでなく、誰にでもこんな調子。
変に取り繕うよりは、素が出せた方がいいんだろうから、別に異論はない。
『黒尾ももったいないよねー、そんだけ身長あるんだからモテるはずなのにね』
「おやおや?」
これはアレか。ついにサチも俺のことを意識し始めたか?
そんなポジティブな思考を、いやないな、と自分で否定する。
『たぶんね、胡散臭いのが悪いんだろうね』
「……急に辛辣じゃないデスか」
『でもさあ、主将がかっこいいと、マネがたくさん入るらしいよ』
「何それ、どこ情報?」
『バスケ部のマネの子が、主将がかっこよくて勧誘されたから入ったって言ってた』
「あー、それはごめんなさいねェ。……って、遠回しに、かっこよくないって言ってません?」
『あれ、そうなる? 言ってない言ってない』
「わざとらしー」
『お、気まずくなったところで、宿が見えてきましたよ、キャプテン』
中身のない会話の終わりが近づいてきたようだ。
こんなどうしようもない会話でも、いつもとは違う道で、夜の暗闇の中二人きりで歩くと、意味があったような気がしてくる。特にないのだけども。
「あんまり夜更かししなさんなよ」
『はいはいお母さん』
「昔見たいに鉄朗って呼んでくれていいんだけど?」
『いつの時代だ、く・ろ・お』
合宿所のサチが止まる部屋の前まで送り届ける。
そのまま自室に戻ろうとしたところ、再度黒尾と呼ばれた。
「んー?」
『……ありがと、おやすみ』
「え?」
バタン。
照れ隠しのように音を鳴らして閉められた扉を、しばしの間眺め、ああ今お礼を言われたのかー何のだ?コンビニに一緒に行ったことに対するお礼かな? という短い思考をした。
01音駒にも女子マネはいます
え、何それ。急に律儀。急にかわいい。
自販機コーナーでしばらく余韻に浸ってから部屋へと戻ることになったのは、ここだけの話。
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