15 y ago
name
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そして――冒頭の光景へと、時間は収束していくのだった。
執務室の空気は、夕暮れの光に照らされてやや朱に染まっていた。窓辺に立つドフラミンゴは、片手にワイングラスを弄びながら、低い声で要点を告げていく。標的が現れる会場の様子、そこで交わされるであろう取引、そしてその場に潜り込むための条件――男女カップルでなければ入れないという厄介な制約。ロシナンテは黙ってメモを取り出し、走るような速さでペンを動かす。
【了解。俺が同行、nameが女役。潜入後は臨機応変に】
その筆跡は淡々としているが、ちらと横目でnameを見やる視線にはわずかに複雑な色がにじんでいた。当のnameはといえば、椅子に座ったまま膨れっ面で両腕を組んでいる。白粉を纏った頬、きっちり結われた髪に髪飾りまで差され、どう見ても“連れ出す相手の女”に仕立て上げられていたが、本人の内心は納得からほど遠い。
「……なにその顔。どうせ似合ってないって思ってんだろ、二人とも」
尖った声が部屋に落ちる。ドフラミンゴはサングラスの奥で目を細め、愉快そうに喉を震わせる。
「フッフッフ……似合ってるさ。むしろ予想以上に、な」
ロシナンテもすかさずメモを掲げる。
『そうだ。悪くない。……安心しろ』
「取り繕い下手か!」
机に拳を落とす勢いで、nameはさらに頬を膨らませる。二人の視線が自分を笑っているのを、わかってしまうからこそ余計にうんざりだった。
「やっぱ行きたくない。俺、後方支援でも文句言わないから……やっぱりジョーラがいくことにできない?」
今にも椅子から立ち上がりそうな勢いで駄々をこねるname。その声に、ドフラミンゴはにやりと口角を釣り上げ、グラスを机に置いた。
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ。……行け。時間は待ってくれねぇんだよ…俺もな」
低く、しかし否応なしに従わせる声音。nameは肩をすくめ、視線を逸らした。反論すれば余計に泥沼になるとわかっている。けれど諦めきれない表情のまま、ぎゅっと唇を噛む。
「……ちくしょう。どうせ俺が“面白い”からだろ、これ……」
そのぼやきに、ドフラミンゴは喉の奥でくつくつ笑い、ロシナンテはメモをしまいながら深く息を吐いた。部屋に残るのは、決して拒否を許さない圧と、三人の温度差が入り混じる、奇妙な緊張感だった。
カーテンの隙間から差し込む夕陽は朱を帯び、光を浴びた埃が舞い上がるたび、沈黙の空気に微かな揺らぎを与えている。
机の端に置かれたグラスには赤い液体がわずかに残り、ドフラミンゴの長い指がその縁をなぞっている。金色のレンズに光が反射し、嗤うでも怒るでもない、その曖昧な視線がただ一点、化粧を施されたnameに注がれていた。
「……フッフッ」
低く湿り気を帯びた笑いが喉の奥で零れる。指先でグラスを傾け、残った酒を舌の上に流し込むと、愉悦の音色が空気を震わせる。
「“面白い”から、だと……?お前、自分がどう見えるかほんと分かってねェな」
挑発を含む声に、nameは眉を顰めて頬を紅潮させる。化粧で塗り固められた顔は怒りと羞恥で熱を帯び、逆に艶やかさが増す要因になっている。nameが椅子の縁に指をかけ、ぐっと力を込めて立ち上がると、スカートの裾がふわりと揺れる。
「俺は道化じゃない。俺が俺でいるだけなのに、勝手に“面白い”とか言って……」
口にした言葉の端が震える。声の奥には反抗と、それ以上に抗えない諦念が滲んでいた。ドレスの布地が足首をかすめ、爪先が床を叩く音が執務室の重圧をやけに際立たせる。
【いつも通り、やり遂げればいい。……それだけで十分】
簡潔な文字。だがその視線は、怒りでも嘲笑でもなく、どこか哀れみのように揺れていた。nameはその言葉に一瞬たじろぎ、目を伏せる。だがすぐに口を尖らせ、ふて腐れたように椅子へ腰を落とした。
「……ロシーまでそう言う?ほんと、俺って……つくづく都合のいい駒扱いじゃん」
かすれた声で吐き出すように呟く。その瞬間、机の向こうから長い腕が伸びてきた。白い手袋越しの指先が頬を捕え、無理やり顔を上げさせる。
「駒……?違ェだろ」
ドフラミンゴの声音は低く、喉にかかる熱と共に重く響いた。顎を掴む力は強く、逃れようにも首が軋む。
「お前は“俺の隣に並ぶ”から選ばれてんだ。……それを素直に喜べねェなら、檻にでもブチ込んで飼い殺しにでもしてやろうか?」
目の奥に閃いた嗜虐の光に、nameの呼吸がひゅっと詰まる。化粧で縁取られた目尻に滲む涙の光が、まるで意図せず媚びを帯びた艶を生んでしまう。
「っ……!」
口を閉ざすしかない。喉奥に詰まった言葉は、羞恥と恐怖に絡みつき、吐き出せぬまま震えていた。
ロシナンテは眉を寄せ、メモを乱暴にしまうと椅子から立ち上がった。背丈の影が床を覆い、無言のまま兄を睨む。だがドフラミンゴは怯むことなく、その視線を楽しむかのように喉の奥で笑った。
「フッフッフ……心配すんな、コラソン。俺はコイツを壊す気はねェ。むしろ逆だ……磨いて、誰よりも“使える”存在にしてやる」
頬を押さえ込む指がゆっくりと離れる。自由になった瞬間、nameは大きく息を吐き、肩を震わせる。化粧で整えられた顔はわずかに乱れ、その乱れすらも艶の一部として映し出されていた。
「……っ、ドフィ……ほんと…」
小さく震える声で抗おうとしたが、結局最後の言葉は続かなかった。
紅に染まった夕陽の中、三人の立ち位置だけが鮮烈に浮かび上がる。支配者の椅子に座るドフラミンゴ。その影に従いながらも複雑な瞳を宿すロシナンテ。そして――自分の立場に抗いながらも逃げられないname。
その空気の中、時刻を告げる鐘の音が遠くから届いた。潜入の夜は、すぐそこまで迫っていた。
執務室の空気は、夕暮れの光に照らされてやや朱に染まっていた。窓辺に立つドフラミンゴは、片手にワイングラスを弄びながら、低い声で要点を告げていく。標的が現れる会場の様子、そこで交わされるであろう取引、そしてその場に潜り込むための条件――男女カップルでなければ入れないという厄介な制約。ロシナンテは黙ってメモを取り出し、走るような速さでペンを動かす。
【了解。俺が同行、nameが女役。潜入後は臨機応変に】
その筆跡は淡々としているが、ちらと横目でnameを見やる視線にはわずかに複雑な色がにじんでいた。当のnameはといえば、椅子に座ったまま膨れっ面で両腕を組んでいる。白粉を纏った頬、きっちり結われた髪に髪飾りまで差され、どう見ても“連れ出す相手の女”に仕立て上げられていたが、本人の内心は納得からほど遠い。
「……なにその顔。どうせ似合ってないって思ってんだろ、二人とも」
尖った声が部屋に落ちる。ドフラミンゴはサングラスの奥で目を細め、愉快そうに喉を震わせる。
「フッフッフ……似合ってるさ。むしろ予想以上に、な」
ロシナンテもすかさずメモを掲げる。
『そうだ。悪くない。……安心しろ』
「取り繕い下手か!」
机に拳を落とす勢いで、nameはさらに頬を膨らませる。二人の視線が自分を笑っているのを、わかってしまうからこそ余計にうんざりだった。
「やっぱ行きたくない。俺、後方支援でも文句言わないから……やっぱりジョーラがいくことにできない?」
今にも椅子から立ち上がりそうな勢いで駄々をこねるname。その声に、ドフラミンゴはにやりと口角を釣り上げ、グラスを机に置いた。
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ。……行け。時間は待ってくれねぇんだよ…俺もな」
低く、しかし否応なしに従わせる声音。nameは肩をすくめ、視線を逸らした。反論すれば余計に泥沼になるとわかっている。けれど諦めきれない表情のまま、ぎゅっと唇を噛む。
「……ちくしょう。どうせ俺が“面白い”からだろ、これ……」
そのぼやきに、ドフラミンゴは喉の奥でくつくつ笑い、ロシナンテはメモをしまいながら深く息を吐いた。部屋に残るのは、決して拒否を許さない圧と、三人の温度差が入り混じる、奇妙な緊張感だった。
カーテンの隙間から差し込む夕陽は朱を帯び、光を浴びた埃が舞い上がるたび、沈黙の空気に微かな揺らぎを与えている。
机の端に置かれたグラスには赤い液体がわずかに残り、ドフラミンゴの長い指がその縁をなぞっている。金色のレンズに光が反射し、嗤うでも怒るでもない、その曖昧な視線がただ一点、化粧を施されたnameに注がれていた。
「……フッフッ」
低く湿り気を帯びた笑いが喉の奥で零れる。指先でグラスを傾け、残った酒を舌の上に流し込むと、愉悦の音色が空気を震わせる。
「“面白い”から、だと……?お前、自分がどう見えるかほんと分かってねェな」
挑発を含む声に、nameは眉を顰めて頬を紅潮させる。化粧で塗り固められた顔は怒りと羞恥で熱を帯び、逆に艶やかさが増す要因になっている。nameが椅子の縁に指をかけ、ぐっと力を込めて立ち上がると、スカートの裾がふわりと揺れる。
「俺は道化じゃない。俺が俺でいるだけなのに、勝手に“面白い”とか言って……」
口にした言葉の端が震える。声の奥には反抗と、それ以上に抗えない諦念が滲んでいた。ドレスの布地が足首をかすめ、爪先が床を叩く音が執務室の重圧をやけに際立たせる。
【いつも通り、やり遂げればいい。……それだけで十分】
簡潔な文字。だがその視線は、怒りでも嘲笑でもなく、どこか哀れみのように揺れていた。nameはその言葉に一瞬たじろぎ、目を伏せる。だがすぐに口を尖らせ、ふて腐れたように椅子へ腰を落とした。
「……ロシーまでそう言う?ほんと、俺って……つくづく都合のいい駒扱いじゃん」
かすれた声で吐き出すように呟く。その瞬間、机の向こうから長い腕が伸びてきた。白い手袋越しの指先が頬を捕え、無理やり顔を上げさせる。
「駒……?違ェだろ」
ドフラミンゴの声音は低く、喉にかかる熱と共に重く響いた。顎を掴む力は強く、逃れようにも首が軋む。
「お前は“俺の隣に並ぶ”から選ばれてんだ。……それを素直に喜べねェなら、檻にでもブチ込んで飼い殺しにでもしてやろうか?」
目の奥に閃いた嗜虐の光に、nameの呼吸がひゅっと詰まる。化粧で縁取られた目尻に滲む涙の光が、まるで意図せず媚びを帯びた艶を生んでしまう。
「っ……!」
口を閉ざすしかない。喉奥に詰まった言葉は、羞恥と恐怖に絡みつき、吐き出せぬまま震えていた。
ロシナンテは眉を寄せ、メモを乱暴にしまうと椅子から立ち上がった。背丈の影が床を覆い、無言のまま兄を睨む。だがドフラミンゴは怯むことなく、その視線を楽しむかのように喉の奥で笑った。
「フッフッフ……心配すんな、コラソン。俺はコイツを壊す気はねェ。むしろ逆だ……磨いて、誰よりも“使える”存在にしてやる」
頬を押さえ込む指がゆっくりと離れる。自由になった瞬間、nameは大きく息を吐き、肩を震わせる。化粧で整えられた顔はわずかに乱れ、その乱れすらも艶の一部として映し出されていた。
「……っ、ドフィ……ほんと…」
小さく震える声で抗おうとしたが、結局最後の言葉は続かなかった。
紅に染まった夕陽の中、三人の立ち位置だけが鮮烈に浮かび上がる。支配者の椅子に座るドフラミンゴ。その影に従いながらも複雑な瞳を宿すロシナンテ。そして――自分の立場に抗いながらも逃げられないname。
その空気の中、時刻を告げる鐘の音が遠くから届いた。潜入の夜は、すぐそこまで迫っていた。