15 y ago
name
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執務室の重い扉を押し開けたロシナンテは、いつもと変わらぬ黄金色の空気を背に纏うドフラミンゴの姿を確認した。高い窓から射す陽光に、彼のサングラスがぎらりと光を反射している。だが、その横に座っている人物に視線が留まった瞬間――ロシナンテの足が、わずかに止まる。
艶やかな黒髪を結い上げ、花の意匠をあしらった髪飾り。薄化粧で縁取られた目元は妙に艶やかで、白い首筋に落ちる影がどこか挑発的ですらある。身体を包むのは柔らかに揺れる薄布のドレス。足首まで伸びた裾の奥、ふと動いた瞬間に覗くのは、どう見ても女のものではない筋肉のライン。
「……ロシー」
甘ったるく伸ばされた声。その中身が誰なのかに気づいた瞬間、ロシナンテは僅かに眉をひそめる。声色も仕草もどこか拙い。だが、それが返って余計に生々しい。そこにいたのは、女装を強いられたnameだった。
「……フッフッフッ」
ドフラミンゴが低く笑う。椅子の肘掛けに長い脚を投げ出し、片手で顎を支えながら、愉悦を隠そうともしない笑みを浮かべる。
「どうだ、似合ってんだろ?俺の“お気に入り”がこうも化けるとよォ」
「っ……ドフィ!俺はお気に入りのペットじゃなくて、れっきとしたファミリーの一員なんですけどー!?こんな格好までさせられて、腑に落ちないっていうか……」
声を荒げるnameの頬は紅潮している。化粧で誤魔化しても、その下にある羞恥の赤みは隠しきれない。ドレスの胸元を無意識に押さえ、唇を尖らせる姿は普段の軽薄さとは違う、妙に艶を帯びていた。
ロシナンテは溜息をひとつ吐き、メモを取り出してさらさらと綴る。
【事情を説明しろ】
それを見たドフラミンゴは愉快そうに肩を揺らした。
「今日の仕事先がなァ……“カップル限定”の晩餐会だとよ。入場の条件がそれなら、仕方ねェだろ。男女で揃えてやりゃ一番楽だ」
「……で、よりによって俺が“女役”ぅ?」
nameは椅子に腰をずるずると滑らせ、裾を踏みながらも不貞腐れた顔をして見せる。
「他に似合う奴がいるか?お前は元々、男にも女にも喰われる顔してんだよ」
ドフラミンゴの嘲笑に、nameは「むぐぐ……!」と唇を噛みしめる。だが、反論する言葉は見つからない。彼の華奢な骨格と艶やかな目元は、確かに化粧と装いで女に寄せれば、十分すぎるほどに“通用する”。
ロシナンテは視線を逸らし、手元のメモに書き込む。
『……嫌なら、断ってもいい』
その文字を見たnameは、ふっと肩を落とす。
「……断ったら、また俺のせいで仕事失敗したーとか言われるんでしょ?それもそれで面倒だし……。ほんと、俺って不憫~」
拗ねるような声でそう言いながらも、膝を揃え、わざとらしくドレスの裾を整える仕草は、羞恥と同時に自分でも笑ってしまうほどの“役”への馴染みだった。ドフラミンゴはその様子を存分に愉しみながら、グラスを揺らし低く笑う。
「……フッフッフッ。上等な余興だなァ」
光を透かして煌めく液体の奥で、彼の瞳はどこまでも嗜虐的に細められていた。
数時間前。
執務室の空気は、いつもと変わらず重苦しい威圧感に満ちていた。分厚いカーテンの隙間から射し込む陽光は斜めに室内を切り裂き、机上に散らばる書類と地図を淡く照らしている。その中心に座すのは、足を組み、指先を弄ぶドフラミンゴ。
扉を押し開けて入ってきたnameは、呼ばれた理由をまだ知らず、いつものように軽い調子のまま歩み寄る。部屋の奥を見回しながら、ふとロシナンテの姿がないことに気づき、眉をひそめる。
「……ロシーいないじゃん。俺ひとり呼び出しとか、なんかやだなぁ」
わざとらしく椅子に腰を下ろし、頬杖をつく。そんな態度を見ても、ドフラミンゴは薄く笑みを浮かべただけだった。
「今夜の仕事だ。ターゲットは“カップル限定”のパーティに来るらしい。入場条件は男女で一緒に入場」
低く滑るような声が落ちる。テーブルの上に投げられたのは招待状。洒落た紋章と共に細やかな装飾が施されており、いかにも上流の匂いがする。
「……カップル限定?」
nameが首を傾げると、ドフラミンゴは口角を吊り上げる。
「そうだ。ロシナンテとジョーラを“表”に出す。お前は後方で待機、支援だ」
「えーーー……」
一瞬でnameの顔が曇る。唇を尖らせ、椅子の背にずるずると沈み込むように反り返った。
「なんで俺、後方なんだよ。面白くない~。俺だって行けるのにさ、華やかな場の方が得意だもん。絶対盛り上げられるって」
拗ねたような声音は、冗談めかしていたが半分本気だ。足先を小さくぱたぱたとさせながら、ぶつぶつ文句を垂れる。ドフラミンゴはそんな子供じみたnameの姿を見て、サングラスの奥で目を細める。
「……お前を前線に出せば、どうなるかは目に見えてるだろ。余計な騒ぎを起こすに決まってる」
「えぇ~……それって俺、信用されてない?」
「フッフッフ……今までの積み重ねってやつだな。日頃の行いだ」
断言され、nameはむぐっと口を閉ざす。だがすぐに頬を膨らませ、また不満を口にする。
「でもさー……俺が後ろで待ってるなんて退屈すぎる。どうせなら俺が一番前で踊ってやった方が、絶対ウケいいのに」
その態度は子供じみているのに、濡れた瞳の奥には拗ねた甘さと欲が滲む。面倒を知りつつも、放ってはおけない“人たらし”の顔だった。ドフラミンゴは肘掛けに片腕を投げ出し、少しだけ顎を上げる。
「……チッ。ほんと、お前ってやつは……」
深紅の舌先で唇を湿らせ、葉巻の火を押し潰す。その目はどこか嗜虐を含んで、じっとnameを観察していた。
「……そうだな。確かに、お前が“前”に出れば、退屈はしねェだろう」
思案を含んだその声音に、nameはきょとんと目を瞬かせる。次に訪れる展開を知らぬまま、頬に浮かんだ文句の続きを呑み込みながら。
ドフラミンゴの笑みは深く、光を受けて妖しく揺れていた。執務室の空気が、ふとした瞬間に変わる。ドフラミンゴの口元に浮かんだ笑みが、ただの冗談では終わらない気配を帯びたからだ。
「フッフッフ……じゃあこうしよう。お前が“女役”になればいい」
その声音は冗談めいているのに、圧がこもっていた。窓から差し込む光が金色のレンズに反射し、室内に鋭い輝きを走らせる。
「な──」
nameは一瞬固まり、次いで慌てて立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!?それ本気?いやだって、俺そういうつもりで言ったんじゃないし!俺がジョーラと組んだ方が……」
「ジョーラとお前?」
ドフラミンゴは低く笑いを洩らし、背もたれに預けていた身体を起こした。
「悪くはねェが……あいつとじゃ年が釣り合わねェだろ。男女の“カップル”に見せるなら、お前とロシナンテの方が自然だ。……何より、面白そうだろ?」
「面白くないっ!!」
即座に跳ね返す声は、苛立ちと羞恥が入り混じったもので。頬を赤く染めながら、nameはずかずかと机に近寄り、手をつく。
「俺、絶対似合わないし!そういうの得意じゃないし!しかもロシーととか──あいつ真顔で合わせてきそうだし、俺が恥ずかしい思いするだけだろ!」
声を荒げるほどに、相手の狙い通りの反応になっていくのを、自分でも分かっている。それでも抵抗せずにはいられなかった。
「やだやだやだ!俺、ほんと無理だから!」
足を引いて逃げるように扉へ向かおうとしたその瞬間──背後から影が覆いかぶさる。
「……フッフッフッ」
耳元に落ちるのは、嗤いを孕んだ低音。次の瞬間には、ドフラミンゴの大きな掌がnameの肩口をがっしりと掴み、壁際へとぐいと押しやる。
「わ──っ!」
背中が壁にぶつかり、息が詰まる。間近に迫った男の存在感は、獲物を追い詰めた捕食者そのもの。指先が顎を持ち上げ、サングラスの奥から鋭い視線が突き刺さる。
「逃げるつもりか?……その顔、今のままで出してやっても十分通用するんじゃねぇか?」
低い声は、まるで舐めるように耳に滑り込んできた。ふざけ半分のやり取りだったはずなのに、その一言に背筋がぞくりと粟立つ。
「っ……や、やだってば……!」
必死に睨み返そうとするが、肩を押さえる腕はびくともしない。水槽に閉じ込められた小魚のように、身動きの取れなさが喉をひりつかせる。ドフラミンゴの笑みは深まり、影と光に切り裂かれた執務室に、その愉悦の色を濃く落としていた。
壁際に押し付けられたまま、息が上がる。肩を掴む掌は重く、逃げ道を奪う檻のように圧し掛かっていた。ドフラミンゴの顔が近い。サングラスの奥の視線は揺るぎなく、愉悦と支配の色を滲ませている。
「フッフッフッ……“女役”やるならよォ、ただ服着るだけじゃ足りねェ」
低い声が喉を震わせながら落ちてくる。顎を強引に持ち上げられ、首筋にかかる吐息が熱い。
「ちゃんと……反応も、女みてェにしねェとな」
「は──っ?なにそれ、無理無理!」
慌てて首を振る。けれどその抗いは、相手の掌ひとつで簡単に封じられる。
「無理?……name、お前、いつも俺に抱かれてる時……自分がどんな顔してるか、わかってねェんだな」
ぞくりと背を這う声音。からかいに似た響きなのに、そこに潜むのは嗜虐の匂い。
「嬌声上げて、腰まで浮かして……あれはどう見ても“女”の反応だろうが」
「っ……っ~~……!」
言葉を詰まらせ、頬が一気に火を噴くように赤くなる。必死に否定したいのに、脳裏に過去の夜の断片が蘇り、声が出ない。ドフラミンゴはそれを面白そうに見下ろし、さらに身を寄せる。
「なぁ、今すぐにでも試してみるか?“女役”が似合うかどうか──ここで証明してやるよ」
腰骨にかかる圧が強まり、壁に背を打ちつけられる感覚。このままでは、本当に特段の理由もなく“試される”。その予感が、全身を冷や汗で覆う。
「……っ、わ、わかった!やる!俺が女役やるから!!」
喉を張り裂けそうにして声を押し出す。その瞬間、押さえつけていた腕が緩み、ドフラミンゴはふっと距離を取った。
「フッフ……やるならいいんだよ、それで」
楽しげに肩を揺らす笑い声。獲物を弄んで手を離す捕食者の仕草に、nameは背を壁につけたまま大きく息を吐き出した。胸の奥が早鐘を打つ。まだ心臓が落ち着かない。ドフラミンゴは椅子へ戻り、何事もなかったように脚を組み直す。
「その顔だ。もう半分女みてェなもんだろうが」
挑発的な声音が、執務室の空気をさらに濃く染め上げていった。
時間はさほど経っていなかったはずなのに、nameにとっては永遠に近いほど長い拷問のようだった。ドフラミンゴが一度椅子に深く腰を沈め、サングラスの奥で愉快そうに口元を歪めたとき。
「ジョーラ」
低く呼ぶ声が部屋に落ちる。すぐに扉が開き、絵筆と布を抱えた女――ジョーラが入ってきた。
「お呼びかしら、若?」
まるで舞台の幕が上がるように、彼女の視線がnameへと注がれる。その瞬間、彼の背筋はぞわりと粟立った。
「こいつを仕上げろ。女役で使う」
ドフラミンゴの命令に、nameは「えっ」と声を詰まらせたが、ジョーラはにやりと笑い、手にした布を広げて一歩近づく。
そこからは、あまりにも一方的で。
服を剥がされ、次々と色とりどりの布と装飾品を身体に当てられ、丈を詰められ、帯を巻かれ。まるで自分の意思など存在しないかのように扱われる。
「ほら、じっとしてなさい。腰、もう少しひねって」
「だって俺、これ絶対似合わないって──」
「静かにしなさい!モデルは喋らないの!」
頬にブラシが触れ、肌に粉が乗る。眉が整えられ、唇に色が差される。重たい布地が肩にのしかかり、視界の端で髪が結い上げられていく。結い上げられた髪に飾りが刺さるたび、後頭部に微かな痛みが走り、彼はますます顔をしかめた。
「ねぇ、ドフィ……俺、本当にこれで行くの……?」
「フッフッフッ……ああ、最高だろうが」
ドフラミンゴの喉が楽しげに震える。サングラスの奥で、見下ろす視線は完全に“娯楽”を享受する捕食者のもの。ジョーラの手際は恐ろしいほど鮮やかで、数分もしないうちに、nameは本当に“別人”へと変えられていた。鏡に映ったその姿を見た瞬間、nameは「は……?」と口を半開きにした。頬はほんのり紅を差され、長いまつげに縁取られた目は、かえって中性的な艶を引き出していた。いつもの白いコートすら、女物の羽織に見えるような気すらする。
「やだ……ほんとに“女”にされてんじゃん、俺」
「文句ねぇだろ?……お前だから、映えるんだよ」
ドフラミンゴの笑みは深まり、グラスを傾ける手が止まらない。
そのとき。
「……」
扉が再び軋み、静かに開いた。背の高い影――ロシナンテが入ってくる。
彼の目に映ったのは、見慣れたはずのname……だが、完全に作り替えられた姿。濃密な沈黙が一瞬、部屋に落ちた。
「……っ、ロシー……!」
半ば叫ぶように名を呼んだ声には、羞恥と苛立ちと、どうしようもない諦めが入り混じっていた。
艶やかな黒髪を結い上げ、花の意匠をあしらった髪飾り。薄化粧で縁取られた目元は妙に艶やかで、白い首筋に落ちる影がどこか挑発的ですらある。身体を包むのは柔らかに揺れる薄布のドレス。足首まで伸びた裾の奥、ふと動いた瞬間に覗くのは、どう見ても女のものではない筋肉のライン。
「……ロシー」
甘ったるく伸ばされた声。その中身が誰なのかに気づいた瞬間、ロシナンテは僅かに眉をひそめる。声色も仕草もどこか拙い。だが、それが返って余計に生々しい。そこにいたのは、女装を強いられたnameだった。
「……フッフッフッ」
ドフラミンゴが低く笑う。椅子の肘掛けに長い脚を投げ出し、片手で顎を支えながら、愉悦を隠そうともしない笑みを浮かべる。
「どうだ、似合ってんだろ?俺の“お気に入り”がこうも化けるとよォ」
「っ……ドフィ!俺はお気に入りのペットじゃなくて、れっきとしたファミリーの一員なんですけどー!?こんな格好までさせられて、腑に落ちないっていうか……」
声を荒げるnameの頬は紅潮している。化粧で誤魔化しても、その下にある羞恥の赤みは隠しきれない。ドレスの胸元を無意識に押さえ、唇を尖らせる姿は普段の軽薄さとは違う、妙に艶を帯びていた。
ロシナンテは溜息をひとつ吐き、メモを取り出してさらさらと綴る。
【事情を説明しろ】
それを見たドフラミンゴは愉快そうに肩を揺らした。
「今日の仕事先がなァ……“カップル限定”の晩餐会だとよ。入場の条件がそれなら、仕方ねェだろ。男女で揃えてやりゃ一番楽だ」
「……で、よりによって俺が“女役”ぅ?」
nameは椅子に腰をずるずると滑らせ、裾を踏みながらも不貞腐れた顔をして見せる。
「他に似合う奴がいるか?お前は元々、男にも女にも喰われる顔してんだよ」
ドフラミンゴの嘲笑に、nameは「むぐぐ……!」と唇を噛みしめる。だが、反論する言葉は見つからない。彼の華奢な骨格と艶やかな目元は、確かに化粧と装いで女に寄せれば、十分すぎるほどに“通用する”。
ロシナンテは視線を逸らし、手元のメモに書き込む。
『……嫌なら、断ってもいい』
その文字を見たnameは、ふっと肩を落とす。
「……断ったら、また俺のせいで仕事失敗したーとか言われるんでしょ?それもそれで面倒だし……。ほんと、俺って不憫~」
拗ねるような声でそう言いながらも、膝を揃え、わざとらしくドレスの裾を整える仕草は、羞恥と同時に自分でも笑ってしまうほどの“役”への馴染みだった。ドフラミンゴはその様子を存分に愉しみながら、グラスを揺らし低く笑う。
「……フッフッフッ。上等な余興だなァ」
光を透かして煌めく液体の奥で、彼の瞳はどこまでも嗜虐的に細められていた。
数時間前。
執務室の空気は、いつもと変わらず重苦しい威圧感に満ちていた。分厚いカーテンの隙間から射し込む陽光は斜めに室内を切り裂き、机上に散らばる書類と地図を淡く照らしている。その中心に座すのは、足を組み、指先を弄ぶドフラミンゴ。
扉を押し開けて入ってきたnameは、呼ばれた理由をまだ知らず、いつものように軽い調子のまま歩み寄る。部屋の奥を見回しながら、ふとロシナンテの姿がないことに気づき、眉をひそめる。
「……ロシーいないじゃん。俺ひとり呼び出しとか、なんかやだなぁ」
わざとらしく椅子に腰を下ろし、頬杖をつく。そんな態度を見ても、ドフラミンゴは薄く笑みを浮かべただけだった。
「今夜の仕事だ。ターゲットは“カップル限定”のパーティに来るらしい。入場条件は男女で一緒に入場」
低く滑るような声が落ちる。テーブルの上に投げられたのは招待状。洒落た紋章と共に細やかな装飾が施されており、いかにも上流の匂いがする。
「……カップル限定?」
nameが首を傾げると、ドフラミンゴは口角を吊り上げる。
「そうだ。ロシナンテとジョーラを“表”に出す。お前は後方で待機、支援だ」
「えーーー……」
一瞬でnameの顔が曇る。唇を尖らせ、椅子の背にずるずると沈み込むように反り返った。
「なんで俺、後方なんだよ。面白くない~。俺だって行けるのにさ、華やかな場の方が得意だもん。絶対盛り上げられるって」
拗ねたような声音は、冗談めかしていたが半分本気だ。足先を小さくぱたぱたとさせながら、ぶつぶつ文句を垂れる。ドフラミンゴはそんな子供じみたnameの姿を見て、サングラスの奥で目を細める。
「……お前を前線に出せば、どうなるかは目に見えてるだろ。余計な騒ぎを起こすに決まってる」
「えぇ~……それって俺、信用されてない?」
「フッフッフ……今までの積み重ねってやつだな。日頃の行いだ」
断言され、nameはむぐっと口を閉ざす。だがすぐに頬を膨らませ、また不満を口にする。
「でもさー……俺が後ろで待ってるなんて退屈すぎる。どうせなら俺が一番前で踊ってやった方が、絶対ウケいいのに」
その態度は子供じみているのに、濡れた瞳の奥には拗ねた甘さと欲が滲む。面倒を知りつつも、放ってはおけない“人たらし”の顔だった。ドフラミンゴは肘掛けに片腕を投げ出し、少しだけ顎を上げる。
「……チッ。ほんと、お前ってやつは……」
深紅の舌先で唇を湿らせ、葉巻の火を押し潰す。その目はどこか嗜虐を含んで、じっとnameを観察していた。
「……そうだな。確かに、お前が“前”に出れば、退屈はしねェだろう」
思案を含んだその声音に、nameはきょとんと目を瞬かせる。次に訪れる展開を知らぬまま、頬に浮かんだ文句の続きを呑み込みながら。
ドフラミンゴの笑みは深く、光を受けて妖しく揺れていた。執務室の空気が、ふとした瞬間に変わる。ドフラミンゴの口元に浮かんだ笑みが、ただの冗談では終わらない気配を帯びたからだ。
「フッフッフ……じゃあこうしよう。お前が“女役”になればいい」
その声音は冗談めいているのに、圧がこもっていた。窓から差し込む光が金色のレンズに反射し、室内に鋭い輝きを走らせる。
「な──」
nameは一瞬固まり、次いで慌てて立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!?それ本気?いやだって、俺そういうつもりで言ったんじゃないし!俺がジョーラと組んだ方が……」
「ジョーラとお前?」
ドフラミンゴは低く笑いを洩らし、背もたれに預けていた身体を起こした。
「悪くはねェが……あいつとじゃ年が釣り合わねェだろ。男女の“カップル”に見せるなら、お前とロシナンテの方が自然だ。……何より、面白そうだろ?」
「面白くないっ!!」
即座に跳ね返す声は、苛立ちと羞恥が入り混じったもので。頬を赤く染めながら、nameはずかずかと机に近寄り、手をつく。
「俺、絶対似合わないし!そういうの得意じゃないし!しかもロシーととか──あいつ真顔で合わせてきそうだし、俺が恥ずかしい思いするだけだろ!」
声を荒げるほどに、相手の狙い通りの反応になっていくのを、自分でも分かっている。それでも抵抗せずにはいられなかった。
「やだやだやだ!俺、ほんと無理だから!」
足を引いて逃げるように扉へ向かおうとしたその瞬間──背後から影が覆いかぶさる。
「……フッフッフッ」
耳元に落ちるのは、嗤いを孕んだ低音。次の瞬間には、ドフラミンゴの大きな掌がnameの肩口をがっしりと掴み、壁際へとぐいと押しやる。
「わ──っ!」
背中が壁にぶつかり、息が詰まる。間近に迫った男の存在感は、獲物を追い詰めた捕食者そのもの。指先が顎を持ち上げ、サングラスの奥から鋭い視線が突き刺さる。
「逃げるつもりか?……その顔、今のままで出してやっても十分通用するんじゃねぇか?」
低い声は、まるで舐めるように耳に滑り込んできた。ふざけ半分のやり取りだったはずなのに、その一言に背筋がぞくりと粟立つ。
「っ……や、やだってば……!」
必死に睨み返そうとするが、肩を押さえる腕はびくともしない。水槽に閉じ込められた小魚のように、身動きの取れなさが喉をひりつかせる。ドフラミンゴの笑みは深まり、影と光に切り裂かれた執務室に、その愉悦の色を濃く落としていた。
壁際に押し付けられたまま、息が上がる。肩を掴む掌は重く、逃げ道を奪う檻のように圧し掛かっていた。ドフラミンゴの顔が近い。サングラスの奥の視線は揺るぎなく、愉悦と支配の色を滲ませている。
「フッフッフッ……“女役”やるならよォ、ただ服着るだけじゃ足りねェ」
低い声が喉を震わせながら落ちてくる。顎を強引に持ち上げられ、首筋にかかる吐息が熱い。
「ちゃんと……反応も、女みてェにしねェとな」
「は──っ?なにそれ、無理無理!」
慌てて首を振る。けれどその抗いは、相手の掌ひとつで簡単に封じられる。
「無理?……name、お前、いつも俺に抱かれてる時……自分がどんな顔してるか、わかってねェんだな」
ぞくりと背を這う声音。からかいに似た響きなのに、そこに潜むのは嗜虐の匂い。
「嬌声上げて、腰まで浮かして……あれはどう見ても“女”の反応だろうが」
「っ……っ~~……!」
言葉を詰まらせ、頬が一気に火を噴くように赤くなる。必死に否定したいのに、脳裏に過去の夜の断片が蘇り、声が出ない。ドフラミンゴはそれを面白そうに見下ろし、さらに身を寄せる。
「なぁ、今すぐにでも試してみるか?“女役”が似合うかどうか──ここで証明してやるよ」
腰骨にかかる圧が強まり、壁に背を打ちつけられる感覚。このままでは、本当に特段の理由もなく“試される”。その予感が、全身を冷や汗で覆う。
「……っ、わ、わかった!やる!俺が女役やるから!!」
喉を張り裂けそうにして声を押し出す。その瞬間、押さえつけていた腕が緩み、ドフラミンゴはふっと距離を取った。
「フッフ……やるならいいんだよ、それで」
楽しげに肩を揺らす笑い声。獲物を弄んで手を離す捕食者の仕草に、nameは背を壁につけたまま大きく息を吐き出した。胸の奥が早鐘を打つ。まだ心臓が落ち着かない。ドフラミンゴは椅子へ戻り、何事もなかったように脚を組み直す。
「その顔だ。もう半分女みてェなもんだろうが」
挑発的な声音が、執務室の空気をさらに濃く染め上げていった。
時間はさほど経っていなかったはずなのに、nameにとっては永遠に近いほど長い拷問のようだった。ドフラミンゴが一度椅子に深く腰を沈め、サングラスの奥で愉快そうに口元を歪めたとき。
「ジョーラ」
低く呼ぶ声が部屋に落ちる。すぐに扉が開き、絵筆と布を抱えた女――ジョーラが入ってきた。
「お呼びかしら、若?」
まるで舞台の幕が上がるように、彼女の視線がnameへと注がれる。その瞬間、彼の背筋はぞわりと粟立った。
「こいつを仕上げろ。女役で使う」
ドフラミンゴの命令に、nameは「えっ」と声を詰まらせたが、ジョーラはにやりと笑い、手にした布を広げて一歩近づく。
そこからは、あまりにも一方的で。
服を剥がされ、次々と色とりどりの布と装飾品を身体に当てられ、丈を詰められ、帯を巻かれ。まるで自分の意思など存在しないかのように扱われる。
「ほら、じっとしてなさい。腰、もう少しひねって」
「だって俺、これ絶対似合わないって──」
「静かにしなさい!モデルは喋らないの!」
頬にブラシが触れ、肌に粉が乗る。眉が整えられ、唇に色が差される。重たい布地が肩にのしかかり、視界の端で髪が結い上げられていく。結い上げられた髪に飾りが刺さるたび、後頭部に微かな痛みが走り、彼はますます顔をしかめた。
「ねぇ、ドフィ……俺、本当にこれで行くの……?」
「フッフッフッ……ああ、最高だろうが」
ドフラミンゴの喉が楽しげに震える。サングラスの奥で、見下ろす視線は完全に“娯楽”を享受する捕食者のもの。ジョーラの手際は恐ろしいほど鮮やかで、数分もしないうちに、nameは本当に“別人”へと変えられていた。鏡に映ったその姿を見た瞬間、nameは「は……?」と口を半開きにした。頬はほんのり紅を差され、長いまつげに縁取られた目は、かえって中性的な艶を引き出していた。いつもの白いコートすら、女物の羽織に見えるような気すらする。
「やだ……ほんとに“女”にされてんじゃん、俺」
「文句ねぇだろ?……お前だから、映えるんだよ」
ドフラミンゴの笑みは深まり、グラスを傾ける手が止まらない。
そのとき。
「……」
扉が再び軋み、静かに開いた。背の高い影――ロシナンテが入ってくる。
彼の目に映ったのは、見慣れたはずのname……だが、完全に作り替えられた姿。濃密な沈黙が一瞬、部屋に落ちた。
「……っ、ロシー……!」
半ば叫ぶように名を呼んだ声には、羞恥と苛立ちと、どうしようもない諦めが入り混じっていた。