15 y ago
name
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朝の気配はまだ薄い。外の光がカーテン越しに淡く差し込み、部屋全体を優しく包むような色に染めていた。空気には夜の残り香と、どこか煙草の微かな匂い。静かな呼吸音だけが、広い室内にぽつぽつと浮かんでは、ゆるやかに消えていく。
ベッドの上、シーツにくるまった小さな膨らみがひとつ。乱れた髪が枕に広がり、頬には昨夜の名残のような赤みがうっすらと残っている。nameはその場に沈み込むようにして、ロシナンテの胸元に頬を寄せていた。温かく、広く、静かな胸板。その鼓動は眠気を誘うように、安定したリズムで響いていた。
「……ん、ロシーの、におい……ふふ、すきー……」
むにゃむにゃと、寝言のように呟いて、nameは指先でロシナンテの服の端をちょいちょいと掴む。喋りながらも目は開かないまま、口元だけがふにゃりと笑っている。昨夜、遅くまで仕事が続き、体力を使い果たした彼の姿は、今はただ、子猫のように無防備で愛らしい。
ロシナンテはそんな彼を、少しだけ視線を落として見つめていた。長い睫毛に覆われた閉じた瞼、首筋にかかる髪の柔らかい流れ、ぬくもりを求めて擦り寄ってくる肩の丸み。その全てを確かめるように、片手をそっと彼の背へと添える。
「……寝惚けてんのか?」
低く、掠れるような声が、胸の奥から響いた。あえて口数は少なく、まるでその静寂を壊さないように慎重に、優しく。nameはその声に、ゆっくりと瞼を持ち上げた。焦点が合わないまま、ぼんやりとロシナンテの顔を見上げ、またとろんと目を細める。
「んー……ねむいぃ……ロシー、今日って……おやすみ、だよね?」
「ああ。今日は誰もお前を呼ばない」
「よかったぁー……お仕事ないの、ひさしぶりだもん……ずっと、ここで寝てていい……?」
甘えるような声音でそう呟き、nameは腕を彼の胸に乗せたまま、ぴとりと身体を寄せた。体温の伝わり方が心地良くて、安心していられて、でも、どこか後ろめたさのようなものも、心の底に小さく残っている。
恋人ではない。守られる理由も、愛される理由も、明確に与えられたわけじゃない。ただ、こうしていると安心できるだけ。互いに踏み込みすぎない、その距離が、かえって居心地が良かった。
ロシナンテは答えないまま、静かに彼の髪を撫でた。無言の肯定。拒むつもりはない。けれど、それ以上は与えない。そんな空気が、ベッドの上に静かに降り積もっていた。
「……ふふ、ロシーって、やさしいよね……やっぱすきだなぁ、そういうとこ」
小さな声で、ぽつりと。けれど、答えを期待していないことは、name自身がいちばんわかっている。これは告白じゃない。ただの独り言。
nameはまた目を閉じ、深く息を吸った。微かなタバコと柔軟剤の匂い、そしてロシナンテの体温――その全てを抱え込むようにして、静かに、夢へと沈んでいく。
その隣で、ロシナンテは煙草に手を伸ばすこともなく、ただnameの髪を撫でていた。何も言わず、何も求めず。けれどその手の温度が、確かにそこにあることだけが、言葉よりも雄弁に、関係を語っていた。
薄明かりの中、カーテン越しの光がほんのりと差し始めていた。夜と朝の境界をなぞるような静けさに包まれた室内。その静寂を破ったのは、微かに震えるような音だった。
――ぷる、ぷる……ぷる……ぷる……
聞きなれない、けれど耳には馴染んでいる電伝虫の小さな呼び出し音。枕元の空気を震わせるように、乾いた振動を纏いながら、控えめに鳴り続けていた。
ロシナンテが、瞬時に反応する。浅い眠りのなかで覚醒した彼の身体が、反射的に跳ねるようにして上体を起こした。薄い寝間着の裾が乱れ、鍛え上げられた胸板が露わになる。その瞳にはすぐに警戒と意志の色が浮かび、片手で素早く電伝虫を掴む。
「……おかき、俺です」
その声は低く、抑制が効いていた。寝起きのざらつきを微塵も感じさせず、緊張を包み込むような沈着さ。電伝虫の顔が微かに変形し、通信の相手を象る。仮面を被るように、静かに、面差しがそこに浮かび上がる。
nameはそのやり取りを、ぼんやりとした意識のなかで聴いていた。まぶたは重く、視界は霞んでいる。けれど、音も気配も、温度も、全ては感じ取れている。
(……んー……また、仕事の電話……?朝っぱらから……)
顔を埋めた枕のなかで、nameは内心むくれていた。眠気の方が強く、口を挟む気はなかった。いつものことだ。あれは軍の人と喋ってるだけ。分かってる。知ってる。でも。指先に、微かな悪戯心が灯る。
するりとシーツの下を這わせるようにして、nameの手が伸びていく。横たわったまま、何も言わず、ただ身体だけをゆっくりと動かして――やがて辿り着いたのは、ロシナンテの下腹部。指先が触れた瞬間、ぴくりと彼の身体がわずかに反応した。
「……っ……」
ロシナンテの声が一瞬だけ途切れる。その沈黙を、電伝虫のセンゴクが察したのか、
【どうした?何かあったか?】
と、厳しい声が返ってきた。だがロシナンテはすぐに整った声で応じる。
「いえ、少し……寝具を、踏んでしまって」
嘘は巧妙に。だがその声色には、わずかな緊張と、戸惑いが混ざっていた。
nameの手は、ゆっくりとそのまま指先を滑らせる。まだ半ば眠ったままのくせに、その指先は確信犯のように、敏感な場所を探り当てていた。柔らかく、執拗に、布越しに撫でては、ほんの少しだけ圧をかけて、また引いて。
(……ふふ、集中できないでしょー?)
心の中でそう呟くように、nameの唇が寝ぼけた笑みを浮かべる。まるで甘えるような無垢な顔で、しかしその手は悪戯そのもの。ロシナンテが何も言えないのをいいことに、静かにじわりと布をずらし、直接に触れようとする。指先が生温かい肌に触れた瞬間、ロシナンテの喉が一度だけ、ごくりと鳴った。
【……ロシナンテ、お前の報告は聞き取りにくいことがある。もっとはっきり話せ】
「……すみません。改めて報告します」
声は冷静。けれど、nameには分かっていた。わずかに息が詰まるような気配、体温の上昇、抑えられた反応。そのすべてが可笑しくて、そして愛おしくもあった。
(ほらね、ロシー……そうやって真面目な顔してるときがいちばん、いじりがいあるんだよね……)
そう思いながら、指先がもう一度――優しく、でも確かに――熱を帯びた先端に触れた。微かな震えが、身体を通して伝わってくる。ロシナンテはその動きを、止めようとはしなかった。止めたら声が漏れるかもしれない。強く拒めば、今度はもっと強く揺さぶられる。だからこそ、ただ黙って耐える。その不自然さを、電話の向こうには決して悟られないように。
――見えないところで火遊びをする恋人でもない関係。甘くもなく、熱もないように見えて、実際には熱を孕んだ静かなせめぎ合い。nameの表情は、悪戯の余韻に緩んでいた。瞳は閉じたまま。けれどその頬は赤く、指先は静かに彼を翻弄し続ける。
朝はまだ始まったばかりだった。
そして、その静けさの中で密かに交わされる攻防は、誰にも知られることなく、続いていた。
ベッドの上、シーツにくるまった小さな膨らみがひとつ。乱れた髪が枕に広がり、頬には昨夜の名残のような赤みがうっすらと残っている。nameはその場に沈み込むようにして、ロシナンテの胸元に頬を寄せていた。温かく、広く、静かな胸板。その鼓動は眠気を誘うように、安定したリズムで響いていた。
「……ん、ロシーの、におい……ふふ、すきー……」
むにゃむにゃと、寝言のように呟いて、nameは指先でロシナンテの服の端をちょいちょいと掴む。喋りながらも目は開かないまま、口元だけがふにゃりと笑っている。昨夜、遅くまで仕事が続き、体力を使い果たした彼の姿は、今はただ、子猫のように無防備で愛らしい。
ロシナンテはそんな彼を、少しだけ視線を落として見つめていた。長い睫毛に覆われた閉じた瞼、首筋にかかる髪の柔らかい流れ、ぬくもりを求めて擦り寄ってくる肩の丸み。その全てを確かめるように、片手をそっと彼の背へと添える。
「……寝惚けてんのか?」
低く、掠れるような声が、胸の奥から響いた。あえて口数は少なく、まるでその静寂を壊さないように慎重に、優しく。nameはその声に、ゆっくりと瞼を持ち上げた。焦点が合わないまま、ぼんやりとロシナンテの顔を見上げ、またとろんと目を細める。
「んー……ねむいぃ……ロシー、今日って……おやすみ、だよね?」
「ああ。今日は誰もお前を呼ばない」
「よかったぁー……お仕事ないの、ひさしぶりだもん……ずっと、ここで寝てていい……?」
甘えるような声音でそう呟き、nameは腕を彼の胸に乗せたまま、ぴとりと身体を寄せた。体温の伝わり方が心地良くて、安心していられて、でも、どこか後ろめたさのようなものも、心の底に小さく残っている。
恋人ではない。守られる理由も、愛される理由も、明確に与えられたわけじゃない。ただ、こうしていると安心できるだけ。互いに踏み込みすぎない、その距離が、かえって居心地が良かった。
ロシナンテは答えないまま、静かに彼の髪を撫でた。無言の肯定。拒むつもりはない。けれど、それ以上は与えない。そんな空気が、ベッドの上に静かに降り積もっていた。
「……ふふ、ロシーって、やさしいよね……やっぱすきだなぁ、そういうとこ」
小さな声で、ぽつりと。けれど、答えを期待していないことは、name自身がいちばんわかっている。これは告白じゃない。ただの独り言。
nameはまた目を閉じ、深く息を吸った。微かなタバコと柔軟剤の匂い、そしてロシナンテの体温――その全てを抱え込むようにして、静かに、夢へと沈んでいく。
その隣で、ロシナンテは煙草に手を伸ばすこともなく、ただnameの髪を撫でていた。何も言わず、何も求めず。けれどその手の温度が、確かにそこにあることだけが、言葉よりも雄弁に、関係を語っていた。
薄明かりの中、カーテン越しの光がほんのりと差し始めていた。夜と朝の境界をなぞるような静けさに包まれた室内。その静寂を破ったのは、微かに震えるような音だった。
――ぷる、ぷる……ぷる……ぷる……
聞きなれない、けれど耳には馴染んでいる電伝虫の小さな呼び出し音。枕元の空気を震わせるように、乾いた振動を纏いながら、控えめに鳴り続けていた。
ロシナンテが、瞬時に反応する。浅い眠りのなかで覚醒した彼の身体が、反射的に跳ねるようにして上体を起こした。薄い寝間着の裾が乱れ、鍛え上げられた胸板が露わになる。その瞳にはすぐに警戒と意志の色が浮かび、片手で素早く電伝虫を掴む。
「……おかき、俺です」
その声は低く、抑制が効いていた。寝起きのざらつきを微塵も感じさせず、緊張を包み込むような沈着さ。電伝虫の顔が微かに変形し、通信の相手を象る。仮面を被るように、静かに、面差しがそこに浮かび上がる。
nameはそのやり取りを、ぼんやりとした意識のなかで聴いていた。まぶたは重く、視界は霞んでいる。けれど、音も気配も、温度も、全ては感じ取れている。
(……んー……また、仕事の電話……?朝っぱらから……)
顔を埋めた枕のなかで、nameは内心むくれていた。眠気の方が強く、口を挟む気はなかった。いつものことだ。あれは軍の人と喋ってるだけ。分かってる。知ってる。でも。指先に、微かな悪戯心が灯る。
するりとシーツの下を這わせるようにして、nameの手が伸びていく。横たわったまま、何も言わず、ただ身体だけをゆっくりと動かして――やがて辿り着いたのは、ロシナンテの下腹部。指先が触れた瞬間、ぴくりと彼の身体がわずかに反応した。
「……っ……」
ロシナンテの声が一瞬だけ途切れる。その沈黙を、電伝虫のセンゴクが察したのか、
【どうした?何かあったか?】
と、厳しい声が返ってきた。だがロシナンテはすぐに整った声で応じる。
「いえ、少し……寝具を、踏んでしまって」
嘘は巧妙に。だがその声色には、わずかな緊張と、戸惑いが混ざっていた。
nameの手は、ゆっくりとそのまま指先を滑らせる。まだ半ば眠ったままのくせに、その指先は確信犯のように、敏感な場所を探り当てていた。柔らかく、執拗に、布越しに撫でては、ほんの少しだけ圧をかけて、また引いて。
(……ふふ、集中できないでしょー?)
心の中でそう呟くように、nameの唇が寝ぼけた笑みを浮かべる。まるで甘えるような無垢な顔で、しかしその手は悪戯そのもの。ロシナンテが何も言えないのをいいことに、静かにじわりと布をずらし、直接に触れようとする。指先が生温かい肌に触れた瞬間、ロシナンテの喉が一度だけ、ごくりと鳴った。
【……ロシナンテ、お前の報告は聞き取りにくいことがある。もっとはっきり話せ】
「……すみません。改めて報告します」
声は冷静。けれど、nameには分かっていた。わずかに息が詰まるような気配、体温の上昇、抑えられた反応。そのすべてが可笑しくて、そして愛おしくもあった。
(ほらね、ロシー……そうやって真面目な顔してるときがいちばん、いじりがいあるんだよね……)
そう思いながら、指先がもう一度――優しく、でも確かに――熱を帯びた先端に触れた。微かな震えが、身体を通して伝わってくる。ロシナンテはその動きを、止めようとはしなかった。止めたら声が漏れるかもしれない。強く拒めば、今度はもっと強く揺さぶられる。だからこそ、ただ黙って耐える。その不自然さを、電話の向こうには決して悟られないように。
――見えないところで火遊びをする恋人でもない関係。甘くもなく、熱もないように見えて、実際には熱を孕んだ静かなせめぎ合い。nameの表情は、悪戯の余韻に緩んでいた。瞳は閉じたまま。けれどその頬は赤く、指先は静かに彼を翻弄し続ける。
朝はまだ始まったばかりだった。
そして、その静けさの中で密かに交わされる攻防は、誰にも知られることなく、続いていた。