15 y ago
name
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陽が落ちて久しい路地裏は、湿気を帯びた夜気に包まれていた。昼間の熱が地面に残っているのか、石畳を踏む靴音もどこか鈍く、空気は重くまとわりつくようだ。
そのなかを、二人の影がゆっくりと歩いていた。ロシナンテとname。
共に肩を並べているというよりは、nameがだらしなくロシナンテのすぐ横をぐずるように歩いているのが正確だった。
「……はー……疲れたぁ……っていうか、もうしんど……絶対仕事の量、倍どころじゃないよね、今日。ねえ、ねえ、ドフラミンゴに報告したとき“ちょっと増えるかも”って言ってたの誰だったっけ……?」
くぐもった声は文句と愚痴で構成されている。ロシナンテはそれに返すでもなく、無言で歩を進めながら、手元の小さなメモ帳をひらりとめくる。
【文句ばっかり。お前も仕事こなしてたじゃねェか】
視界の端でその文字を読み取ったnameは、鼻を鳴らして見せた。
「そりゃあやるよ?やらなかったらドフラミンゴに後で何言われるかわかんないもん。でもさ、なんかこう、褒められるでもなく、ただただ使われてるだけっての、結構むなしくなるんだよねぇ」
ぶつぶつ言いながら、nameはロシナンテの腕に自分の肘をぶつけるようにしてもたれかかる。街灯の光に照らされた横顔は、汗に濡れて髪が頬に張りついていた。睫毛の隙間から覗く瞳は、わずかに潤んで赤い。
「せめてさぁ……ちゅーのひとつでもくれないと、もう頑張れないかも……」
わざとらしく上目遣いに、唇を尖らせる。その演技じみた甘えに、ロシナンテの肩が微かに揺れた。呆れたような、けれども慣れたような仕草で、彼はまたメモを掲げる。
【お前、疲れてるとますますタチ悪いな】
「そんなことないもん。もともとこうだもん……知ってるでしょ?」
少し足取りを遅らせて、ロシナンテの背中に背中を寄せるように重ねながら、nameは続ける。
「でも、ロシーが一緒だからやってんだよ……一人だったら絶対サボってた。てか、今日だって途中で一回逃げようと思ってたし」
その言葉に、ロシナンテはふっと鼻で笑い――歩を止めた。
薄暗い街灯の下で、すっとnameの肩を引き寄せる。その大きな身体に軽く抱かれたnameは、きょとんとしながら見上げる。けれど、その表情が崩れるより早く、額に落ちたのは唇の軽い感触だった。ちゅ、と、音を立てるには小さすぎる、ほんの一瞬の接触。けれどその温度だけで、全身がゆるんだような感覚が走る。
「……あ」
一拍置いて、唇を押さえるname。頬がじんわり熱を持ち、視線を逸らしたまま、ぼそりと呟いた。
「……そういうの、ちゃんと言ってからしてよ……びっくりするじゃん……」
ロシナンテは何も返さない。ただ、メモを閉じ、手を引いて歩き出すだけだった。その背を追いながら、nameは無意識に笑みを浮かべていた。
疲労も、文句も、いつの間にかどこかへ消えていた。
――もう少しだけ、頑張れるかもしれない。
そんなことを、ぼんやりと思いながら、夜の路地を二人は歩いていった。すぐそばに、いつも通りの沈黙と、いつも通りの温度が寄り添うようにして。
石畳の上、夜風が足元を撫でていく。都市の中心部から離れ、帰路につく二人の足取りはゆったりとしていた。街灯はところどころ切れかけていて、橙色の光が滲む中、白と黒のロングコートが並んで揺れていた。
白いのはname。黒いのはロシナンテ。
その見た目の印象そのままに、彼らは裏の仕事においても“並び立つ存在”として扱われ始めていた。
「……なんかさぁ、最近どこ行っても言われるんだよね。【白い悪魔と黒い悪魔】ってさあ……ちょっと失礼じゃない?」
とろけた疲労感を引きずった声で、nameはぼやく。
肩にかかったコートの襟元を少し引き上げながら、道端の植え込みを適当に蹴る。
「ていうか、悪魔って……俺、白だよ?白ってことは、どっちかって言ったら天使じゃない?なに?見た目だけで判断しちゃってんのかな?どう見ても俺は天使寄りでしょ?」
皮肉と冗談を交ぜたその軽口は、疲労と満足のせめぎ合いのなかにあった。
視線は前に向けながらも、口元にはどこか余裕の笑みが浮かぶ。
一方でロシナンテはというと――すでにnameの“自称天使宣言”に、心底呆れたようにため息をついていた。長い脚で一歩前に出て、ポケットからメモを取り出すと、数秒ほどペンを走らせた。
【お前のどこが天使なんだ】
無表情な顔に、それだけを掲げて見せる。内容は至って真面目なのに、そのぶっきらぼうさに、nameはふっと笑ってしまった。
「えー?じゃあ聞くけどさ、最近の交渉とか取りまとめ、全部うまくいってるじゃん?相手にニコニコして“ねぇ、これで手ぇ打たない?”って言ってるだけでしょ、俺。平和的でしょ。天使じゃん」
ロシナンテの視線がじっとnameを捉える。が、その奥にあるのはあきれた色でもなく、責めるでもなく――ただ、長年付き合ってきた者だけが見せる、ある種の“諦めと共存”だった。そして、新たに書き足される文字。
【天使は取引中に拳銃を抜かない】
「……あー、それはしょうがないでしょ。あっちが先に出してきたんだもん。反射反射、条件反射だってば」
小さく舌を出し、笑ってごまかす。その仕草がどこか無邪気に映るのは、本人の人たらしな気質か、それとも計算か。どちらにせよ、ロシナンテがまた深く息を吐くのは変わらない。
「――でも、まぁ」
と、nameは呟くように続けた。
「最近、ロシが一緒にいてくれるから、やりやすくなったのも事実だけどね。オレがなんか言い出す前に、後ろで立ってるだけで相手の顔色変わるし。……怖いって、得だねぇ」
そう言って、わざとらしくロシナンテの腕にくっついてみせる。黒いコートの布地が揺れ、ほんの一瞬だけ、ロシナンテの身体がこわばったようにも見えた。
けれど――何も言わず、ただ隣を歩き続けるだけ。その沈黙は否定ではなかった。
夜の道はまだ続いていたが、寄り添うような二つの影が、疲れた背を寄せ合うようにして、ゆっくりと遠ざかっていく。互いに余計なことは言わずとも、背中で感じる距離だけが、その信頼を物語っていた。
金縁のカーテンから差し込む光が、静かに床を撫でている。ドフラミンゴの執務室はいつも通りの調和された静寂に包まれていたが、その空気に、ほんのわずかな笑いと気怠さが混じっていた。
椅子に座るドフラミンゴを前に、nameはふてぶてしくも肩の力を抜いたまま立ち、報告を終えたばかりだった。内容は、交渉相手の状況や次回の予定、対立する派閥の動きなど、実務的なことばかり。ロシナンテは傍らで筆談を交え、要点を補足する。相変わらず、必要以上に喋ることはない。
そのやりとりが一段落したところで、nameはふと思い出したように声を上げた。
「――そういえばさ」
何気なく投げられた声。その裏には、いたずらを仕掛ける時のような愉しげな響きが混ざっていた。
「最近さ、裏の連中から“白い悪魔と黒い悪魔”って呼ばれてんだよ、俺たち。ロシーの黒コートと、俺の白コートで、色分けしやすいんだってさ。安直でしょ?」
ドフラミンゴは、軽く顎を撫でながら目を細める。
「フッフッフ……ほぉ?そりゃあ面白ェな。確かに、見た目は絵になる」
そして視線をnameに流す。nameは肩をすくめて笑い返しつつ、わざと軽い調子で続けた。
「じゃあさ、ドフィは“ピンクの悪魔”じゃん。悪魔三兄弟って感じ?しかもピンクって、ぷふー、ちょっと……えっちじゃない?」
挑発するような声音に、ほんの少し舌を噛むようなニュアンスが混ざる。無防備なようでいて、ある種の“試し”のような一言だった。瞬間、ドフラミンゴの唇がゆっくりと釣り上がる。
「フッフッフ……誰がえっちだって?」
低く、滑るような声音。まるで餌に食いついた捕食者のように、愉悦と興味が交じった笑みだった。次の瞬間、nameの顎に指が添えられる。乱暴ではないが、無視できない圧で顔を持ち上げられると、すぐそこにドフラミンゴの顔があった。琥珀色の瞳が、いたずらを仕掛ける少年のような光を帯びて覗き込んでくる。
「……お前、最近ずいぶん調子いいなァ。報告もキッチリ、態度も柔らかくなった」
わざとらしく囁くように言いながら、そのまま親指でnameの下唇をなぞる。くすぐったくも緊張を孕むような動きに、nameは不意を突かれ、わずかに肩を跳ねさせた。
「な……っ、ちょ、ドフィ……そういうの、いきなりは……ずる……っ」
顔が熱くなる。冗談のつもりで投げた軽口が、ほんの数秒で自分に跳ね返ってくる形になった。息が少しだけ詰まり、視線を逸らしながら、ぎこちなく身を引こうとする。その様子を見て、ロシナンテは小さくため息をつくと、淡々とメモを取り出した。ペン先が走る音だけが静けさを破る。
【調子に乗った報いだな】
nameはそれをちらりと見やりながらも、口を尖らせる。
「……そもそもドフィが乗ってきたんじゃん。俺、ちょっと言っただけだもん……」
けれど、抗議にもならないその言葉は、すでにドフラミンゴの耳には心地よい“遊び”としてしか届いていない。彼は再び椅子にもたれながら、nameの揺れる視線を楽しむように見ていた。
「フッフッフ……ま、せいぜい黒い悪魔と一緒に、ちゃんと仕事してろよ。白い天使サマ」
皮肉と甘さが混ざった声音。nameはふいっと目を逸らしながらも、唇の端がわずかに吊り上がる。その表情を見たロシナンテは、再びペンを取った。けれど今度の文字は、少しだけ優しい。
【からかわれてるのに、まんざらでもなさそうな顔すんな】
それを見て、nameは口を尖らせたままロシナンテの腕を小突いた。
「うるさいなー、見てないで助けてくれたっていいのに……」
部屋の中には、しばしの間、静かな笑いと気怠い空気が漂っていた。
それは一見無防備で緩やかでありながら、確かにこの空間が“居場所”になっていることを示していた。
そのなかを、二人の影がゆっくりと歩いていた。ロシナンテとname。
共に肩を並べているというよりは、nameがだらしなくロシナンテのすぐ横をぐずるように歩いているのが正確だった。
「……はー……疲れたぁ……っていうか、もうしんど……絶対仕事の量、倍どころじゃないよね、今日。ねえ、ねえ、ドフラミンゴに報告したとき“ちょっと増えるかも”って言ってたの誰だったっけ……?」
くぐもった声は文句と愚痴で構成されている。ロシナンテはそれに返すでもなく、無言で歩を進めながら、手元の小さなメモ帳をひらりとめくる。
【文句ばっかり。お前も仕事こなしてたじゃねェか】
視界の端でその文字を読み取ったnameは、鼻を鳴らして見せた。
「そりゃあやるよ?やらなかったらドフラミンゴに後で何言われるかわかんないもん。でもさ、なんかこう、褒められるでもなく、ただただ使われてるだけっての、結構むなしくなるんだよねぇ」
ぶつぶつ言いながら、nameはロシナンテの腕に自分の肘をぶつけるようにしてもたれかかる。街灯の光に照らされた横顔は、汗に濡れて髪が頬に張りついていた。睫毛の隙間から覗く瞳は、わずかに潤んで赤い。
「せめてさぁ……ちゅーのひとつでもくれないと、もう頑張れないかも……」
わざとらしく上目遣いに、唇を尖らせる。その演技じみた甘えに、ロシナンテの肩が微かに揺れた。呆れたような、けれども慣れたような仕草で、彼はまたメモを掲げる。
【お前、疲れてるとますますタチ悪いな】
「そんなことないもん。もともとこうだもん……知ってるでしょ?」
少し足取りを遅らせて、ロシナンテの背中に背中を寄せるように重ねながら、nameは続ける。
「でも、ロシーが一緒だからやってんだよ……一人だったら絶対サボってた。てか、今日だって途中で一回逃げようと思ってたし」
その言葉に、ロシナンテはふっと鼻で笑い――歩を止めた。
薄暗い街灯の下で、すっとnameの肩を引き寄せる。その大きな身体に軽く抱かれたnameは、きょとんとしながら見上げる。けれど、その表情が崩れるより早く、額に落ちたのは唇の軽い感触だった。ちゅ、と、音を立てるには小さすぎる、ほんの一瞬の接触。けれどその温度だけで、全身がゆるんだような感覚が走る。
「……あ」
一拍置いて、唇を押さえるname。頬がじんわり熱を持ち、視線を逸らしたまま、ぼそりと呟いた。
「……そういうの、ちゃんと言ってからしてよ……びっくりするじゃん……」
ロシナンテは何も返さない。ただ、メモを閉じ、手を引いて歩き出すだけだった。その背を追いながら、nameは無意識に笑みを浮かべていた。
疲労も、文句も、いつの間にかどこかへ消えていた。
――もう少しだけ、頑張れるかもしれない。
そんなことを、ぼんやりと思いながら、夜の路地を二人は歩いていった。すぐそばに、いつも通りの沈黙と、いつも通りの温度が寄り添うようにして。
石畳の上、夜風が足元を撫でていく。都市の中心部から離れ、帰路につく二人の足取りはゆったりとしていた。街灯はところどころ切れかけていて、橙色の光が滲む中、白と黒のロングコートが並んで揺れていた。
白いのはname。黒いのはロシナンテ。
その見た目の印象そのままに、彼らは裏の仕事においても“並び立つ存在”として扱われ始めていた。
「……なんかさぁ、最近どこ行っても言われるんだよね。【白い悪魔と黒い悪魔】ってさあ……ちょっと失礼じゃない?」
とろけた疲労感を引きずった声で、nameはぼやく。
肩にかかったコートの襟元を少し引き上げながら、道端の植え込みを適当に蹴る。
「ていうか、悪魔って……俺、白だよ?白ってことは、どっちかって言ったら天使じゃない?なに?見た目だけで判断しちゃってんのかな?どう見ても俺は天使寄りでしょ?」
皮肉と冗談を交ぜたその軽口は、疲労と満足のせめぎ合いのなかにあった。
視線は前に向けながらも、口元にはどこか余裕の笑みが浮かぶ。
一方でロシナンテはというと――すでにnameの“自称天使宣言”に、心底呆れたようにため息をついていた。長い脚で一歩前に出て、ポケットからメモを取り出すと、数秒ほどペンを走らせた。
【お前のどこが天使なんだ】
無表情な顔に、それだけを掲げて見せる。内容は至って真面目なのに、そのぶっきらぼうさに、nameはふっと笑ってしまった。
「えー?じゃあ聞くけどさ、最近の交渉とか取りまとめ、全部うまくいってるじゃん?相手にニコニコして“ねぇ、これで手ぇ打たない?”って言ってるだけでしょ、俺。平和的でしょ。天使じゃん」
ロシナンテの視線がじっとnameを捉える。が、その奥にあるのはあきれた色でもなく、責めるでもなく――ただ、長年付き合ってきた者だけが見せる、ある種の“諦めと共存”だった。そして、新たに書き足される文字。
【天使は取引中に拳銃を抜かない】
「……あー、それはしょうがないでしょ。あっちが先に出してきたんだもん。反射反射、条件反射だってば」
小さく舌を出し、笑ってごまかす。その仕草がどこか無邪気に映るのは、本人の人たらしな気質か、それとも計算か。どちらにせよ、ロシナンテがまた深く息を吐くのは変わらない。
「――でも、まぁ」
と、nameは呟くように続けた。
「最近、ロシが一緒にいてくれるから、やりやすくなったのも事実だけどね。オレがなんか言い出す前に、後ろで立ってるだけで相手の顔色変わるし。……怖いって、得だねぇ」
そう言って、わざとらしくロシナンテの腕にくっついてみせる。黒いコートの布地が揺れ、ほんの一瞬だけ、ロシナンテの身体がこわばったようにも見えた。
けれど――何も言わず、ただ隣を歩き続けるだけ。その沈黙は否定ではなかった。
夜の道はまだ続いていたが、寄り添うような二つの影が、疲れた背を寄せ合うようにして、ゆっくりと遠ざかっていく。互いに余計なことは言わずとも、背中で感じる距離だけが、その信頼を物語っていた。
金縁のカーテンから差し込む光が、静かに床を撫でている。ドフラミンゴの執務室はいつも通りの調和された静寂に包まれていたが、その空気に、ほんのわずかな笑いと気怠さが混じっていた。
椅子に座るドフラミンゴを前に、nameはふてぶてしくも肩の力を抜いたまま立ち、報告を終えたばかりだった。内容は、交渉相手の状況や次回の予定、対立する派閥の動きなど、実務的なことばかり。ロシナンテは傍らで筆談を交え、要点を補足する。相変わらず、必要以上に喋ることはない。
そのやりとりが一段落したところで、nameはふと思い出したように声を上げた。
「――そういえばさ」
何気なく投げられた声。その裏には、いたずらを仕掛ける時のような愉しげな響きが混ざっていた。
「最近さ、裏の連中から“白い悪魔と黒い悪魔”って呼ばれてんだよ、俺たち。ロシーの黒コートと、俺の白コートで、色分けしやすいんだってさ。安直でしょ?」
ドフラミンゴは、軽く顎を撫でながら目を細める。
「フッフッフ……ほぉ?そりゃあ面白ェな。確かに、見た目は絵になる」
そして視線をnameに流す。nameは肩をすくめて笑い返しつつ、わざと軽い調子で続けた。
「じゃあさ、ドフィは“ピンクの悪魔”じゃん。悪魔三兄弟って感じ?しかもピンクって、ぷふー、ちょっと……えっちじゃない?」
挑発するような声音に、ほんの少し舌を噛むようなニュアンスが混ざる。無防備なようでいて、ある種の“試し”のような一言だった。瞬間、ドフラミンゴの唇がゆっくりと釣り上がる。
「フッフッフ……誰がえっちだって?」
低く、滑るような声音。まるで餌に食いついた捕食者のように、愉悦と興味が交じった笑みだった。次の瞬間、nameの顎に指が添えられる。乱暴ではないが、無視できない圧で顔を持ち上げられると、すぐそこにドフラミンゴの顔があった。琥珀色の瞳が、いたずらを仕掛ける少年のような光を帯びて覗き込んでくる。
「……お前、最近ずいぶん調子いいなァ。報告もキッチリ、態度も柔らかくなった」
わざとらしく囁くように言いながら、そのまま親指でnameの下唇をなぞる。くすぐったくも緊張を孕むような動きに、nameは不意を突かれ、わずかに肩を跳ねさせた。
「な……っ、ちょ、ドフィ……そういうの、いきなりは……ずる……っ」
顔が熱くなる。冗談のつもりで投げた軽口が、ほんの数秒で自分に跳ね返ってくる形になった。息が少しだけ詰まり、視線を逸らしながら、ぎこちなく身を引こうとする。その様子を見て、ロシナンテは小さくため息をつくと、淡々とメモを取り出した。ペン先が走る音だけが静けさを破る。
【調子に乗った報いだな】
nameはそれをちらりと見やりながらも、口を尖らせる。
「……そもそもドフィが乗ってきたんじゃん。俺、ちょっと言っただけだもん……」
けれど、抗議にもならないその言葉は、すでにドフラミンゴの耳には心地よい“遊び”としてしか届いていない。彼は再び椅子にもたれながら、nameの揺れる視線を楽しむように見ていた。
「フッフッフ……ま、せいぜい黒い悪魔と一緒に、ちゃんと仕事してろよ。白い天使サマ」
皮肉と甘さが混ざった声音。nameはふいっと目を逸らしながらも、唇の端がわずかに吊り上がる。その表情を見たロシナンテは、再びペンを取った。けれど今度の文字は、少しだけ優しい。
【からかわれてるのに、まんざらでもなさそうな顔すんな】
それを見て、nameは口を尖らせたままロシナンテの腕を小突いた。
「うるさいなー、見てないで助けてくれたっていいのに……」
部屋の中には、しばしの間、静かな笑いと気怠い空気が漂っていた。
それは一見無防備で緩やかでありながら、確かにこの空間が“居場所”になっていることを示していた。