15 y ago
name
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夜風は湿気を含んでいたが、白いファーの裾をなびかせるnameの足取りは軽やかだった。艶やかな笑顔を使い、言葉を操り、身体をもって示した結果は上々。接待の相手はすっかり満足した様子で、明日の契約へと繋がる言質もとった。
やりきった――そう思っていた。あとは裏通りを抜けて、仮眠をとるだけ。疲れた身体をとにかく布団に投げ出したい。それなのに――ふと、背後で足音がひとつ重なったような感覚。それを認識するより早く、ぴたりと口元が塞がれた。
「っ…ん……!」
身体が強張り、咄嗟に身をよじろうとした刹那。耳元に落ちてきたのは、低く、よく知った匂いと声。
「油断しすぎじゃないのか?」
ナギナギの静寂に包まれた狭い裏路地。音のない空間で、声だけが鮮明に、やや呆れ気味に響いた。nameの肩の力が、すっと抜けた。手を外された口元を拭うように撫で、振り返る。そこには黒いコートを羽織り、帽子を深く被ったロシナンテがいた。
「もー、ロシー……!びっくりしたぁ……心臓止まるかと思った……っ」
唇を尖らせ、文句を吐きながらも、nameの声は甘えを含んでいた。まるで仕事終わりに迎えに来た恋人に、拗ねたふりをするような仕草で、肩をすり寄せる。ロシナンテの胸元を軽く叩いてみせながら、半分本気でむくれた。
「ぜんっぜん、油断なんかしてないもん。ちゃんと周り見てたし、裏路地だってわざと人通りの少ない方選んでただけだし」
「それで、俺の足音にも気づかずに背後取られたわけか」
「それは……ロシーが上手すぎるだけでしょ」
はぁ、と小さく溜息。そのままふにゃりとロシナンテの腕に寄りかかるようにnameは体重を預けた。
「今日さぁ……いつもより、ちょっと疲れたんだよぉ……。ロシーのせいで……」
「俺のせい?」
「だって……あんなとこにいたら、気になっちゃうじゃん。……なんか、ちゃんとしなきゃって……無駄に背筋伸ばしちゃったし……」
そう言って笑うnameの声は、甘えと疲労が溶け合ったような、微かな揺れを孕んでいた。さっきまでの“接待用”の笑顔とは違う。コートの下の肌にうっすらと汗の匂い。夜の蒸気と、彼自身の香水が混ざっていた。白の中にある温度。それを知っているからこそ、ロシナンテはそっとその肩を抱き寄せた。
「……ほんとに、お前ってやつは……」
何か言いかけて、それ以上は言わなかった。代わりに、黒のコートがそっと白を包む。
「……ねえロシー、つかれたー……。抱っこしてー……」
「却下。甘えるな」
「ロシーのケチー!」
ふくれっ面で胸に額を押し付けてくるnameに、ロシナンテはまた小さく息を漏らす。声には出さない。けれど、腕の力が少しだけ強くなる。決して抱き上げはしないが、その歩幅をゆっくり合わせるように、背を軽く撫でて。ファーが揺れた。黒と白が寄り添って、夜の影のなかに溶けていった。
夜の舗道に、ふたり分の影が揺れていた。通りを外れた裏道には、灯りもまばらで、街の喧騒はすでに遠い。ロシナンテはnameの肩を支えたまま、無言の時間をしばし歩いていたが、やがて、ふと口を開いた。
「……で?今日の仕事、どうして俺に一言もなかったんだ」
低く、穏やかに聞こえるその声には、かすかな苛立ちと心配が滲んでいた。
nameは瞬きひとつ。肩越しにロシナンテを見上げ、わざとらしく口を尖らせる。
「えー?だって、俺のせいじゃないもーん」
ふざけたような口調。けれど、その軽さが逆にロシナンテの眉間を浅く寄せさせた。コートの端が小さく揺れ、しばらく沈黙が落ちる。やがてロシナンテは帽子を少し下げ、ため息を吐いた。
「最近……お前、無茶してるんじゃないか」
その言葉に、nameの足がほんの少しだけ止まりかけた。けれどすぐに歩調を戻しながら、「んー」と曖昧に応じる。頬にかかる髪が揺れた。いつもより少し、疲れが見える横顔。
「ロシーが心配してくれてんのはわかるけどさ。俺、別に死に急いでるわけじゃないし」
「そういう問題じゃない」
「じゃあ、何?」
振り返らないまま問うた声は、冗談めかしていた。だが、その表面に塗られた笑みの下、ロシナンテは微細なひび割れを感じ取っていた。言葉にできない葛藤。疲れ。焦燥。そして、孤独。
「……まさか、ロシー……俺のえっちなとこ、見たかったんじゃないの?もー、変態なんだから」
nameが突然くるりと身体をひねり、肩越しに笑いかけてきた。揶揄するような目元。唇の端に浮かぶ、子供のような意地の悪さ。ロシナンテは即座に唸ったような小さな声を出してむぅと眉をひそめた。
「……ふざけるな。そんなわけ……」
「じゃあ、なにー?ロシーがいれば、俺、えっちな接待しないで済んだーとか?あっ、やきもち?」
悪戯に揺れる声。けれど、その奥に微かに覗くのは、“甘え”だった。見せびらかすように使った身体の熱も、視線も、全部“演技”で、心の奥ではただ、誰かに見つけてほしかった。そういう色だった。ロシナンテは黙ったまま、けれどゆっくりと片腕を引き寄せるようにまわし、nameの肩を強く抱いた。
「俺がいれば、少なくとも、そういうシーンは減るだろうとは思ってる」
その声には、もうふざけはなかった。ロシナンテの真面目な目が、nameの瞳をとらえる。逃がさない。突き刺すでもなく、ただ、見つめる。nameはほんの少し目を伏せたあと、肩をすくめる。
「……ま、たしかに。俺が1人であれこれ任されてんの、ロシーのせいじゃないしね…。ドフラミンゴが手を広げすぎなんだ。人手が追いついてない。だから……って、わかってるけどさ」
ロシナンテは頷いた。nameの声が冷静だったのが、少しだけ嬉しかった。
「でもな、俺は――」
「わかってるよ、ロシー。心配してくれてんでしょ。ありがと」
そう言って、nameはそっと、ロシナンテの腕に自分の指を絡ませた。ほんのわずかの接触。それでも、それは「信頼」と呼べる温度だった。
静かな夜道に、ふたりの足音だけが寄り添っていく。白と黒。冗談と本音。疲れた心の奥に、少しずつ、静かな熱が灯っていくように。
やりきった――そう思っていた。あとは裏通りを抜けて、仮眠をとるだけ。疲れた身体をとにかく布団に投げ出したい。それなのに――ふと、背後で足音がひとつ重なったような感覚。それを認識するより早く、ぴたりと口元が塞がれた。
「っ…ん……!」
身体が強張り、咄嗟に身をよじろうとした刹那。耳元に落ちてきたのは、低く、よく知った匂いと声。
「油断しすぎじゃないのか?」
ナギナギの静寂に包まれた狭い裏路地。音のない空間で、声だけが鮮明に、やや呆れ気味に響いた。nameの肩の力が、すっと抜けた。手を外された口元を拭うように撫で、振り返る。そこには黒いコートを羽織り、帽子を深く被ったロシナンテがいた。
「もー、ロシー……!びっくりしたぁ……心臓止まるかと思った……っ」
唇を尖らせ、文句を吐きながらも、nameの声は甘えを含んでいた。まるで仕事終わりに迎えに来た恋人に、拗ねたふりをするような仕草で、肩をすり寄せる。ロシナンテの胸元を軽く叩いてみせながら、半分本気でむくれた。
「ぜんっぜん、油断なんかしてないもん。ちゃんと周り見てたし、裏路地だってわざと人通りの少ない方選んでただけだし」
「それで、俺の足音にも気づかずに背後取られたわけか」
「それは……ロシーが上手すぎるだけでしょ」
はぁ、と小さく溜息。そのままふにゃりとロシナンテの腕に寄りかかるようにnameは体重を預けた。
「今日さぁ……いつもより、ちょっと疲れたんだよぉ……。ロシーのせいで……」
「俺のせい?」
「だって……あんなとこにいたら、気になっちゃうじゃん。……なんか、ちゃんとしなきゃって……無駄に背筋伸ばしちゃったし……」
そう言って笑うnameの声は、甘えと疲労が溶け合ったような、微かな揺れを孕んでいた。さっきまでの“接待用”の笑顔とは違う。コートの下の肌にうっすらと汗の匂い。夜の蒸気と、彼自身の香水が混ざっていた。白の中にある温度。それを知っているからこそ、ロシナンテはそっとその肩を抱き寄せた。
「……ほんとに、お前ってやつは……」
何か言いかけて、それ以上は言わなかった。代わりに、黒のコートがそっと白を包む。
「……ねえロシー、つかれたー……。抱っこしてー……」
「却下。甘えるな」
「ロシーのケチー!」
ふくれっ面で胸に額を押し付けてくるnameに、ロシナンテはまた小さく息を漏らす。声には出さない。けれど、腕の力が少しだけ強くなる。決して抱き上げはしないが、その歩幅をゆっくり合わせるように、背を軽く撫でて。ファーが揺れた。黒と白が寄り添って、夜の影のなかに溶けていった。
夜の舗道に、ふたり分の影が揺れていた。通りを外れた裏道には、灯りもまばらで、街の喧騒はすでに遠い。ロシナンテはnameの肩を支えたまま、無言の時間をしばし歩いていたが、やがて、ふと口を開いた。
「……で?今日の仕事、どうして俺に一言もなかったんだ」
低く、穏やかに聞こえるその声には、かすかな苛立ちと心配が滲んでいた。
nameは瞬きひとつ。肩越しにロシナンテを見上げ、わざとらしく口を尖らせる。
「えー?だって、俺のせいじゃないもーん」
ふざけたような口調。けれど、その軽さが逆にロシナンテの眉間を浅く寄せさせた。コートの端が小さく揺れ、しばらく沈黙が落ちる。やがてロシナンテは帽子を少し下げ、ため息を吐いた。
「最近……お前、無茶してるんじゃないか」
その言葉に、nameの足がほんの少しだけ止まりかけた。けれどすぐに歩調を戻しながら、「んー」と曖昧に応じる。頬にかかる髪が揺れた。いつもより少し、疲れが見える横顔。
「ロシーが心配してくれてんのはわかるけどさ。俺、別に死に急いでるわけじゃないし」
「そういう問題じゃない」
「じゃあ、何?」
振り返らないまま問うた声は、冗談めかしていた。だが、その表面に塗られた笑みの下、ロシナンテは微細なひび割れを感じ取っていた。言葉にできない葛藤。疲れ。焦燥。そして、孤独。
「……まさか、ロシー……俺のえっちなとこ、見たかったんじゃないの?もー、変態なんだから」
nameが突然くるりと身体をひねり、肩越しに笑いかけてきた。揶揄するような目元。唇の端に浮かぶ、子供のような意地の悪さ。ロシナンテは即座に唸ったような小さな声を出してむぅと眉をひそめた。
「……ふざけるな。そんなわけ……」
「じゃあ、なにー?ロシーがいれば、俺、えっちな接待しないで済んだーとか?あっ、やきもち?」
悪戯に揺れる声。けれど、その奥に微かに覗くのは、“甘え”だった。見せびらかすように使った身体の熱も、視線も、全部“演技”で、心の奥ではただ、誰かに見つけてほしかった。そういう色だった。ロシナンテは黙ったまま、けれどゆっくりと片腕を引き寄せるようにまわし、nameの肩を強く抱いた。
「俺がいれば、少なくとも、そういうシーンは減るだろうとは思ってる」
その声には、もうふざけはなかった。ロシナンテの真面目な目が、nameの瞳をとらえる。逃がさない。突き刺すでもなく、ただ、見つめる。nameはほんの少し目を伏せたあと、肩をすくめる。
「……ま、たしかに。俺が1人であれこれ任されてんの、ロシーのせいじゃないしね…。ドフラミンゴが手を広げすぎなんだ。人手が追いついてない。だから……って、わかってるけどさ」
ロシナンテは頷いた。nameの声が冷静だったのが、少しだけ嬉しかった。
「でもな、俺は――」
「わかってるよ、ロシー。心配してくれてんでしょ。ありがと」
そう言って、nameはそっと、ロシナンテの腕に自分の指を絡ませた。ほんのわずかの接触。それでも、それは「信頼」と呼べる温度だった。
静かな夜道に、ふたりの足音だけが寄り添っていく。白と黒。冗談と本音。疲れた心の奥に、少しずつ、静かな熱が灯っていくように。