夢
零くんと冬
息を吐くと、冷たい空気に真っ白な息が舞う。
冷たい外と温かい内部との差によって、窓も白い結露が生じている。
「マフラー、ちゃんと締めて」
横に一緒に歩いていた零が立ち止まり、私の緩んだマフラーを結び直す。
零はいつも私に世話を焼いてくれる。子供の時から、ずっと。幼馴染のよしみで私たちの関係は続き、高校まで一緒にいた。けれど、卒業を境に私たちはそれぞれ違う道に進むことになった。
「零が居ない生活なんて、考えられないや。」
それほど私と彼の時間は長かった。
新しい道へ進む彼と、それを心から応援できない自分に嫌気がさした。
「まさか、離れ離れになるって思ってる?」
「だって、進路だって全然違うし。」
わたしは零に目を合わせられなくて、彼のマフラーの結び目を見た。たとえマフラーでさえ完璧なお手本の様に結ばれてる。
零は、一番の友達で、親友だ。
彼が自分の進む道に居ないのは、心から寂しい。
「近所に住んでるでしょ。」
「そうだけど……今よりは格段に会う時間は少なくなるから……」
「俺との時間、独占したいんだ」
「そんなつもりじゃ」
「俺は、独占したいって、ずっと思ってた。」
零の鼻は寒さで赤くなっている。
顔も赤いのは、寒さなのか、何なのか。
「俺は、ずっと親友以上の存在だと思ってる。好きだよ、これからも、ずっと。」
零の言葉を聞いた時、その言葉が私の胸の奥に染み込んだ。ずっとずっと前からその言葉を待っていたんだって、心から分かった。
「私も、同じ」
「はっきり言ってよ」
「零のこと、好き。ずっと前から。」
零のそばに誰よりも居たかった。違うクラスになっても、彼のそばに居られるように同じ委員会に入ったり、お昼休みにも会いに行ったり。そんな努力が積み重なって、やっと。私たちの思いは繋がった。
「ずっと一緒に居ようよ。」
零が切なそうに言って、私を上から覆うように抱きしめる。春では私の方が背が高かったのに、今では彼の瞳がグンと遠い位置にある。彼とのパーソナルスペースはクラス、いや彼の友達の誰よりも近かった。でも、それは、触れるか触れないかの微妙な瀬戸際だった。しかし今、彼のと距離が0㎝になった。零の体温の暖かさを感じ、更には一定のリズムに乗った心音を聞いた。私と彼は今一つなんだ。
「うん、いる。ずっと。」
返事に合わせて彼の背中に腕を回し、きつく抱きしめる。嗚呼、誰か時を止めて。この時間が永遠なんだって、そう思いたい。
「今のプロポーズだからね。誰にも渡さない」
零が腰を屈めて、私の耳元にそっと囁く。
彼の独占的な瞳と三日月の様に微笑む唇に、体がゾクリと疼いた。
息を吐くと、冷たい空気に真っ白な息が舞う。
冷たい外と温かい内部との差によって、窓も白い結露が生じている。
「マフラー、ちゃんと締めて」
横に一緒に歩いていた零が立ち止まり、私の緩んだマフラーを結び直す。
零はいつも私に世話を焼いてくれる。子供の時から、ずっと。幼馴染のよしみで私たちの関係は続き、高校まで一緒にいた。けれど、卒業を境に私たちはそれぞれ違う道に進むことになった。
「零が居ない生活なんて、考えられないや。」
それほど私と彼の時間は長かった。
新しい道へ進む彼と、それを心から応援できない自分に嫌気がさした。
「まさか、離れ離れになるって思ってる?」
「だって、進路だって全然違うし。」
わたしは零に目を合わせられなくて、彼のマフラーの結び目を見た。たとえマフラーでさえ完璧なお手本の様に結ばれてる。
零は、一番の友達で、親友だ。
彼が自分の進む道に居ないのは、心から寂しい。
「近所に住んでるでしょ。」
「そうだけど……今よりは格段に会う時間は少なくなるから……」
「俺との時間、独占したいんだ」
「そんなつもりじゃ」
「俺は、独占したいって、ずっと思ってた。」
零の鼻は寒さで赤くなっている。
顔も赤いのは、寒さなのか、何なのか。
「俺は、ずっと親友以上の存在だと思ってる。好きだよ、これからも、ずっと。」
零の言葉を聞いた時、その言葉が私の胸の奥に染み込んだ。ずっとずっと前からその言葉を待っていたんだって、心から分かった。
「私も、同じ」
「はっきり言ってよ」
「零のこと、好き。ずっと前から。」
零のそばに誰よりも居たかった。違うクラスになっても、彼のそばに居られるように同じ委員会に入ったり、お昼休みにも会いに行ったり。そんな努力が積み重なって、やっと。私たちの思いは繋がった。
「ずっと一緒に居ようよ。」
零が切なそうに言って、私を上から覆うように抱きしめる。春では私の方が背が高かったのに、今では彼の瞳がグンと遠い位置にある。彼とのパーソナルスペースはクラス、いや彼の友達の誰よりも近かった。でも、それは、触れるか触れないかの微妙な瀬戸際だった。しかし今、彼のと距離が0㎝になった。零の体温の暖かさを感じ、更には一定のリズムに乗った心音を聞いた。私と彼は今一つなんだ。
「うん、いる。ずっと。」
返事に合わせて彼の背中に腕を回し、きつく抱きしめる。嗚呼、誰か時を止めて。この時間が永遠なんだって、そう思いたい。
「今のプロポーズだからね。誰にも渡さない」
零が腰を屈めて、私の耳元にそっと囁く。
彼の独占的な瞳と三日月の様に微笑む唇に、体がゾクリと疼いた。