私が彼で、彼が私で。
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赤木くんの家に着くと、彼が私に座布団に座るように促したため、私はお言葉に甘えて座った。
彼の家に来たはいいけれど……
私たちは仲がいいからお泊まりするわけでもない。何処と無く沈黙が流れた。
「……あ! そういえば赤木くん」
私は閃いたように彼に声をかけた。
今は入れ替わっているため、彼の見た目は私。
自分に声をかけるのは奇妙な気持ちだ。
「なに」
わ。私ってこんな風に不服そうな表情を浮かべる事が出来るんだ。客観視するとこんな風なんだ……。
彼はニコチンを欲しているのか、少し機嫌が悪そうだった。
「さっき思ったんだけど、階段登ってる時にスカートを抑えるとか、そういう女性の仕草を覚えてて欲しくて」
「それ絶対必要なもの?」
「う……必要!やだもん、見られたら。」
「ふーん。」
そう言って彼は胡座をかいていた足を組み替える。
また、沈黙。
やっぱり、今は機嫌が悪そうだから、怒ってるのかな……。楽な姿勢のままが良かったよね……
「で、他に何を覚えればいいわけ」
存外、積極的な言葉を聞いて私は驚いた。
「……ありがとうっ……!」
彼も彼なりに努力しようとする意思はあるのだ。
私も彼に、それ相応の覚悟を見せなければ。
ーー
「それで、座る時もスカートを意識して、手を添えながら座って!あ!胡座はダメだよ!スカートを意識して」
指導しながら実践を交えていく。
赤木くんはかなり飲み込みが早い、一度指摘したら、すぐに取り入れることが出来る。
きちんとスカートを意識しながら正座する様子は、誰がどう見ても女の子だ。
(事実、見た目は私なので、女の子なのだが)
「すごいよ、よく出来てる。演技派だよ」
「フフ、名前。このまま入れ替わったままでも良いんじゃないの。にしても、女はこんな面倒くさいことを毎日繰り返してるの」
「そうだよ。でも、もう習慣付いて面倒くさいって感情はないかな。赤木くんも私に、男性的な仕草とか、何か覚えて欲しいこと、ある?」
「別に。楽にしてれば。」
「そっか……」
私は正座していた足を緩め、胡座をかく。
「ただ口調は絶対直して。」
「わかってるよー。今は2人だけだから、好きな口調にさせて」
「そう。2人だけ。これが何を意味するか名前、分かってる?」
「え」
そう言うと同時に赤木くんは私を押し倒した。
今は男性の、赤木くんの体で、力はあるけれど、唐突のことで全く抵抗ができなかった。
私が抵抗しないと分かるとすぐに彼は馬乗りになった。
「入れ替わったって言っても、俺は男だよ」
赤木くんは私を見下ろしながら言う。
姿は私ではあるが、口調は完全に彼で、中身もそうだ。それによって私には自分の姿では無く、銀髪の少年の姿に見えた。
「名前って処女?」
「……」
私は誰とも付き合ったことがない。
だから、そんな行為だってした事がない。
私はゆっくりと頷いた。
彼は嬉しそうに唇を三日月の形に歪ませた。
「この場合って、処女喪失なのか、童貞喪失どっちなんだろうね?」
言葉の意味を理解して私は青ざめた。
彼は私を、このまま入れ替わった状態で犯すつもりだ。
「待って、赤木くん」
私は言葉で強く抵抗した。……つもりだった。
今は彼と入れ替わっている訳だから、力の差によって、私が彼を取り押さえる事ができただろう。
それを実行しなかった自分は、彼が気になっていたのかも、しれない。
また視界が揺れて、頭痛と共に目を開けると入れ替わりの入れ替わり。ややこしいが、要は元の体に戻っていた。
「……ごめん」
赤木くんが申し訳なさそうに私に申し出る。
「俺、名前のことずっと前から好きだったんだよね。思いが爆発して、強行突破しようとした。」
怖がらせたよねと赤木くんは私の頭を撫でる。
大きい掌に包まれると安心する。
「確かに、ちょっと押し倒された時は怖かったよ……でも、赤木くんとなら、ちょっと良いかなって気持ちもあったんだと思う……」
赤木くんがまた私を押し倒そうとしたので手で拒む。
「でも! ちょっと気になってるだけで、好きな人とじゃないとやだ!」
「そういう純情なところも含めて好きだよ、名前」
そう言って彼は私のほっぺにキスをした。
「俺のこと好きになったら、ここじゃなくて、こっちにして」
そう言って彼は私の掌をとって、彼の唇に添えさせる。薄い、形の良い唇だ。
彼の柔らかい唇の感触を感じながら、私は彼に恋に落ちるのもすぐなんだろうなと感じていた。
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