私が彼で、彼が私で。
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放課後、教室を出ると赤木くんが待っていた。
そうすると突然、教室全体がざわざわし始めた。
(おい、あれ赤木じゃねーか)
(めったに学校来ないのに……何があったんだ……)
なるほど。学校にあまり来ないなら、銀髪の子の少年を知らなかったわけだ。
クラスメイトの口ぶりから、彼は恐れられてる存在みたい。
「名前、行こう」
赤木くんが私の手を引いて、帰路へと急かす。
クラスメイトが彼が私も攫っていったことにまたざわついたが、彼は御構い無しに涼しい顔をしていた。
すぐに教室を出たせいか、通学路には誰1人いない。私と、彼1人だ。真横にいるこの白髪の少年は、私の事が好きだと言う。
一体全体、私の何が魅力だったんだろ。
今も無言だし……ちょっと、怖いな……
彼は沈黙を破るかのように、自分のズボンのポケットから煙草を取り出し、吹かす。
私は誰か通学路だから誰かが来る可能性があると警告して、彼のタバコをやめさせた。
彼も緊張しているみたいで、タバコでリラックスしようとしてたみたい。
彼が口寂しそうにしている様子がちょっと可愛くて笑えた。そんな風に思っていると、彼が切り出す。
「もしも両思いになれたら、この入れ替わり治るんじゃない?」
唐突の申し出に私は思わず立ち止まる。
「そ、そうなのかな……!?」
「試してみる価値はあるでしょ」
そう言って赤木くんが私の手を握る。
「試しにさ、俺のこと好きって言ってみて」
切れ長の目を真っ直ぐに向けて、私に言う。
綺麗な瞳で見つめられて心臓が高鳴る。
「す……き」
突然視界がぐらついて、気がついたら私は私の事を見つめていた。入れ替わりがまた起きたんだ。
「……やっぱり想いのこもってない偽造の告白で解けるわけないか」
私(彼)は冷静そうに言い放つ。まだ知り合ったばかりで彼のことなんて何にも知らないし。
顔が格好良くて、気になりはする……けれど、好きではない。
「今日、俺の家に泊まりなよ」
「えっ!」
「……あのさ、俺の顔で素っ頓狂な声あげないでくれる。」
それもそうか。クールな彼にそぐわない行動だ。
「っ……善処するね、あのでも突然」
「俺たちがこのまま入れ替わった状態で家に帰った方が家族が混乱するでしょ」
確かに、赤木くんは落ち着いてるのに私はかなり落ち着きがない……こんな真逆な2人が入れ替わった状態だと確かに両親は不安に思うだろう。
「俺の家は今日は両親が居ないし、怪しむ人はいないから。」
「わかった……そうなると、着替えの服とか、お泊まりセット持ってこないとだよね」
私は今は赤木くんの姿だ。この姿で自宅に侵入して服とか取ってきたら確実に通報される。
「俺が代わりにとってくる。」
「出来る?」
「まあみといてよ」
服の場所とか、お泊まりセットがある場所を事細かに赤木くんに伝える。(本当は下着の場所なんて教えたくなかったが、ここは仕方ない)
更には、何を普段お母さんと話すか、私の口調なども伝えた。もしかしたら母から話しかけられるかもしれないし、お泊まりのことも伝えないといけないからだ。
(見た目は私といえど……クールな赤木くんが私の口調を喋るのはちょっと面白いな……)
私が付いていくことは出来ないので、電柱の陰から、そっと赤木くんが家の中に入っていくのを見つめる。私が逆の立場で、入れ替わった状態で赤木くんの家に行くなら、きっと動揺してる。
そんな動揺さを微塵も感じさせない赤木くん。もはやこの家の鍵の開け方なんて、最初から知ってた、寧ろ、習慣付いているかのように素早く開けた。
(がんばって、赤木くん)
数分後、赤木くんが荷物を片手に家から出てきた。私は無事終わったんだと胸をなで下ろす。
「名前のお母さんに捕まって、喋ってたら時間がかかったよ」
「……! え、怪しまれなかった?」
「全然。寧ろ話を更に続行しようとしてきたから強引に出てきた」
肉親にも怪しまれない様に演技ができるなんて、赤木くんって何者……!?
「ちょっと私の口調で話してみて欲しい」
「絶対に嫌。そんな事より、名前って可愛い下着多いんだね」
「はぁ!?」
しまった。下着の在り処を教えたけど、まさか、そんなじっくり見られるとは思っても居なかった。
「気に入ったのを持ってきた。あとで見せてあげるよ……あ、ここが俺の家」
そこは木造の趣深いアパートだった。
階段を上ると、一段一段ギシギシと音が軋む。
赤木くんが私の前に立ち、階段を上る。
「あ……!赤木くん!スカート抑えて!」
「あ……悪い」
そう言って赤木くんがスカートを抑える。
女性的な仕草とか、そういうのも教えないとだな……。
これからどのぐらいの期間、入れ替わっちゃうんだろう。終わりは来るのかな……
私は途方に暮れながら、階段を登り終えた。