私が彼で、彼が私で。
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目が覚めると、私は白髪の少年になっていた。
(え……!? 誰!?)
部屋も全く持って私の部屋じゃない。壁に掛けてある制服から推測すると、男子高校生みたい。これはきっと、この白髪の彼の部屋だ。
(私の体は……!? これって、入れ替わってるの!?)
幸い、彼の制服のポケットから学生証が見つかり、彼の名前、学校が簡単にわかった。
驚くべき事に、彼の学校は私と同じ学校だった。
(誰なんだろ、白髪なら目立つし、知っててもおかしくないと思うんだけど……)
赤木しげる。それが彼の名前だった。
確かに名前は聞き覚えがある、けど深く知らない。
学校に行けば、正体が分かるかも。
そう思った私は、慣れない男子制服の着方に困惑しながら身に纏い、学校へ向かった。
……のは良いものの、彼の教室がわからない為、自分の本来の教室の前で立ち止まる。
(もし入れ替わってるなら、入れ替わった私自身がいるはず)
そっと教室を覗こうとしたら後ろから声をかけられた。
「裏に来てよ」
後ろには私の姿の彼がいた。
ーー
体育館裏に行くと閑散としていて、辺りは静まり返っていた。お互いに何が起こったか話し、纏めた。
「お互い事情は知らないけど、目が覚めたら入れ替わってたと…」
今後どうすれば戻るのか、考えようにもどうしてこうなったのかわからない為、解決策が浮かばない。行き詰まった。
彼(私)がスカートからおもむろに煙草を取り出し、吹かす。
「ちょっと!私の体で不健康な事しないでよ!」
「……ならその口調も辞めて」
確かに、彼は知的でクールな顔立ちだった。
それに高校生という年齢に合わず、淡々とした口調だ。
「う……わかった。みんなの前では努力する。今はみんなも居ないし、気軽に話させて。」
彼は了解とばかりにタバコの火を止めて、タバコをしまった。
「あれ?」
私はタバコをしまっている様子を眺めていたのに、気がついたら視点が変わっていて、タバコをしまっている自分の手元を見ていた。
つまり、私と彼の入れ替わりが直り、私に戻ったのだ。顔を上げると彼がこちらを見ている。
「直ったね!良かった、このままなんじゃないかって、心配してたの」
「……いいと思う?俺は、これは予兆だと感じてる。」
「予兆?」
「今は入れ替わりが最初だったからすぐ直ったけど、それは一時的なんじゃないかって。また同じ事が起こるのが繰り返される気がする。日を追うごとに入れ替わっている時間が長くなって……」
「そのまま定着、なんて事もある……の!?」
「かもね。」
サラリと彼が言い放つ。銀髪が揺れて彼の髪が風にそよぐ。
入れ替わりを止めたい……!
一刻も早くこの入れ替わりから脱却したいのだが、そのためには解決策が必要……
「私達、お互いの事を知らないから一旦自己紹介してみない?」
「俺は知ってるけど。」
「え!?」
「苗字名前、2組。俺と同じクラスになったことは一度もない。体育は苦手だけど、外に出て女子で固まってお喋りするのは好き。体育の実技は苦手なくせに保健体育は優秀。結構スケベだよね。」
「何でそれを……!」
「なんでって……体育の事は窓から外が見れるし」
「そうだけど、名前とか!!」
保健体育の事とか…!の声は小声になってしまった。
「名前は元から知ってたから、保健体育のは教師が最高点は名前って言ってたから。」
「そうなの……!?」
勝手に成績暴露されてたなんて、全然知らない……!!
「それに俺」
彼が私の方に向き合う。正面から見ると、長い鼻、切れ長の目……全てが整っている。
「名前の事好きだから。」
「え!? 嘘!?」
「フフ、本当。だから名前の事こんな詳しく知ってんの、普通どうでもいい奴の事なんて覚えてないしね。あ、もしかしたら俺の願望が叶ったのかも。名前と話してみたいって」
「急展開すぎるよ……!」
「もしそうなら、次のお願いは名前と両思いになりたい、だったかな。」
彼はいたずらっ子のように微笑んだ。
そして私のほっぺに音を立ててキスをして立ち上がる。
「両思いになれるように、努力する」
そのまま彼は教室に向かってしまった。
取り残された私は、ただ彼の触れた感触を思い返していた。
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