1から始まるお付き合い
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「よし」
乾燥が終わったので下着を身に纏い、零くんのお洋服も着る。彼のシャンプーの匂いと、彼の使っている柔軟剤が鼻に刺激する。ああ、好きだな。彼の匂い……
「名前、着替えた?」
零くんがドアの前から声をかける。
「うん、ちょうど今」
私はドアを開けて彼と対面する。
彼は、ほんのり顔が赤くて、バツの悪そうな表情をしている。
「どうしたの、なんとも言えない顔だけど」
「……なんだか俺、名前と今日ずっとにいるの……耐えられない気がして……だから俺、リビングで過ごすよ。名前は俺の部屋自由に使っていいから」
そう言って彼は、私をリビングに誘導し、お盆の上に乗せたお夕飯を私に渡そうとする。
「俺の部屋で食べてていいから、食べ終わったらドアの前に置いといて。後で取りに行くよ」
「やだよ」
「え?」
「せっかく零くんのお家にいるのに別々なんてやだ」
彼の瞳を見ると、瞳の奥がずんと沈んでるようだ。どことなく寂しそう。
私は彼も本当は私と一緒に居たいのではないのか。
「それに、わたし……もっと零くんのこと知りたいの。」
こんなずっと一緒に居れる機会なんて早々現れないだろう。
この機会を逃したくないよ、もっと零くんに近づきたい。
「~っ、ああもう、名前って本当に……可愛い……」
零くんはお盆を机の上に置いて悶えるように顔を手で覆う。
「俺と一緒に居たいなんて……断れるわけないよ。もう、全面降伏だよ。俺の負け。」
そう言って零くんはご飯を一緒に食べようと私に促した。
お言葉に甘えて、彼の料理に口をつける。
「零くん、料理上手なんだね。唐揚げ、すごくおいしい。」
「分量をちゃんと測っただけだから。」
数字にはキッチリ対応する、理系らしい返答だなあ……
「それもあると思うけど、特別な味がするの」
「ふふ。愛情を込めたからね」
零くんは冗談のつもりだったのかも知れないけど、「愛」って部分にやけに心臓が跳ねた。
「名前は結構料理する?」
「うん。お昼のお弁当は手作りなの」
「そうなんだ、今度名前の手作り、食べてみたいなあ」
「朝ごはん作るよ?」
「! 本当? 楽しみだなあ……」
ーー
食べ終えた私たちは、食器を洗い、また零くんの部屋へと戻った。
私はなんだか会話が途切れるのが怖くて彼に質問を投げかけた。
「何かする?」
「うーん。2人だとウノもトランプも微妙だよね。」
2人で出来ること……だめだめ、なんだか卑猥なこと考えちゃった。
彼も同じことを考えたのか、気まずそうに顔を伏せている。
どうしよう……! このままじゃ、本当にそんな雰囲気になっちゃう!
下ばかり見て俯いてちゃだめだ! 上を見てみよう……
「あ、零くん、見て! 雨が上がって、星が出てる。」
上を見てみたら状況を打破するヒントがあった! 顔を見上げるって、本当に大事なんだな
「すごい綺麗だね。さっきまであんなに雨が降ってたのに」
零くんが星に向かって指を指す。
「デネブ、アルタイル、そしてベガ。あれが夏の大三角形だね。この3つの星の中で、ベガとアルタイルは、織姫と彦星なんだよね」
「織姫と彦星って、七夕の?」
「そう、一年に一度、織姫と彦星が逢えるという伝説の。」
「本当だ、天の川がベガとアルタイルの間にあるね。……2人は1年に1回しか逢えないんだよね、さみしいよね……」
「逢えない分、思いが募ると思うよ。」
星の光に照らされた彼の横顔に、私はときめく。
逢えない分、募る思い……
「逢えない時間、遠い距離、そんな困難たちが彼らを困らすけれど、2人が愛し合っていて、信じあえているから、乗り越えられるんじゃないかな。俺の勝手な意見だけど。」
「うん、わたしも。きっとそうだと思う」
「名前も?」
「うん。織姫と彦星だけじゃなくて、私たちも……どんな困難があったって、零くんとなら乗り越えられるって思うよ。信じてるから。」
「俺も、信じてる。大好きだよ、名前」
彼はそう言って私の視界を手で塞ぎ、唇にゆっくりキスをした。
初めて唇に当たる、柔らかい感触に驚き、ああこれが初めてキスなんだって思った。
彼が塞いでいた手を離して目を開けると、満足そうな、それでいて誇らしげな表情を浮かべる彼がいた。それが本当に愛おしくて、可愛くて私は笑みがこぼれた。彼も照れ隠しの様に笑って、2人して笑いがあふれた。
私たちも、織姫と彦星みたいに、私たちも永遠に続くといいなと思いをはせた。