1から始まるお付き合い
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「俺の家?」
「う、うん……嫌、かな」
「もちろん嫌じゃないよ! 来て欲しい、名前に」
そう言って零くんは私の手を握って引っ張る。
(ドキドキが伝わっちゃいそう)
ドキドキして心臓が飛び出ちゃうなんていう漫画の表現。
そんなのあるはずないって思ってたけど、あの表現が的確なんだって実感する。確かに飛び出ちゃいそう。
零くんも私の無言のまま通学路を歩き、三角公園を超え、ある一軒家の前で止まった。
「ここが俺の家だよ。」
全体は白を基調としえ明るさを感じさせるような作り。それに、屋根も爽やかなブルーで、これほど彼に相応しいお家は他に無いんじゃないかって感じた。
「素敵なお家だね。零くんにピッタリ」
「そんな事ないよ、入って」
零くんがドアを私のために開けてくれた。
中に入ると、一直線上、何1つゴミもない廊下。
「今、スリッパだすね。」
零くんが来客用のスリッパをすぐに出してくれた。履いてみると上質な素材を使ってるんだと直ぐ分かった。
(みんなの憧れの宇海零は、家の中でも完璧な男の子だよっ……!)
「何か飲みたいのある?紅茶とかコーヒーとかオレンジジュース」
「あ……オレンジジュース」
しまった。飲み物の候補から一番幼稚なの選んじゃった。子供過ぎたかも。
「こ、紅茶にしようかな!?」
「いいよ、背伸びしなくて。俺もオレンジジュース飲みたいし。」
(零くんに全部考えがバレてた……!!
あえて大人ぶろうなんて考えてた自分が恥ずかしい……!)
「用意する間に、先に俺の部屋入ってていいよ。上に上がって突き当たり左だよ。」
真っ赤になりながらも私は階段を上がり、零くんの部屋に入る。
扉を開けると、目の前には空を一面に見渡せる大きな窓。そして天井までの高さのある本棚に、難しそうな参考書の数々が収納されている。
(数学から天文……幅広いジャンルの本ばかり……)
寝心地が良さそうで清潔感溢れる白のベッド。零くんがここで毎日寝てるなんて……。
(なんだか変態みたいなことを考えてるな、私)
「お待たせ」
突然声をかけられて、驚いて背中がはねてしまった。
「ぜ、零くん」
「? どうかした?」
「い、いや! なんでもないの」
「勉強、早速する? 2人で勉強出来るように、机出すね。」
そう言って零くんは収納されていた折りたたみ式の机を取り出し、組み立てた。
「はい、これ」
零くんが私に星型のクッションを渡した。
私はその体育座りになって、クッションを抱きかかえた。
「あ……その、座布団として使ってって意味だったんだ……!」
「あ! そうなの! 勘違いしてた」
私は急いで抱きかかえたクッションをお尻の下に置いた。零くんは机の上に持ってきたオレンジジュースと、更にはお菓子までも用意してくれた。
「ごめんね、突然の訪問だったから、何も用意してなくて。」
「全然。気を使わないで」
「ありがとう。」
「早速だけど、どの辺りが分からない?」
「ええと、ここの辺りが……」
零くんが私の書いているペン先を見てると思うと少し手が震える。教えを請いている間に、こっそりと彼の真剣な眼差しを見て、ドキリとする。
(これが恋、なんだなー)
「名前、聞いてる?」
「あ、ご、ごめん」
零くんが拗ねた様にほっぺを膨らませる。駄々っ子みたいで可愛いし、それで上目遣いをしてるから尚更可愛さが増す。
「ふふ、写真撮りたいな。零くん、すごく可愛い」
「嫌だよ。可愛いなんて、嬉しくない」
俺だって男だし……と零くんが拗ねる。
そんな所も本当に可愛い。
「でもさ、2人で写真なら撮ってもいいよ。」
「それは照れちゃうなー……」
「いいから。こっち見て、名前」
零くんが私の隣に座り、肩を引き寄せる。
(ち、近い!!)
零くんが携帯のカメラを構えて、はいチーズの合図で写真を撮る。
「後で写真送るね!」
そう言ってあどけなく笑う零くんはやっぱり可愛い。
ーー
しばらくの間、零くんに勉強を教わっていて、気がついたら日が暮れていた。
空を一望できる窓からも、夕日が見えている。
「ありがとう、分からないところも1から教えてもらっちゃって……大変だったよね」
「教えると自分のためにとなるんだよ。相手に教える事によって、自分が本当に理解してるか分かるんだ。だから、全然苦じゃないよ。それに名前の事好きだから」
突然愛の告白をされて、恥ずかしくて私は伏し目になる。
「ふふ、照れてるの可愛いね」
零くんは机に肘をついて私を愛しむように見ている。長い睫毛と大きな瞳に飲み込まれそうになる。
「あ、オレンジジュースのお代わり持ってくるね。待ってて」
そう言って零くんは立ち上がって行ってしまった。
(零くんに弄ばれてるー!!)
零くんは上手い。なんていうか、私の扱いが。
こう言えば喜ぶし、照れるっていうのを分かってる。
(私も何か、零くんを照れさせてみたい…)
何かちょっと仕返しがしてみたい。そんな好奇心から、私は立ち上がった。
今、学校ではないプライベートの零くんのお部屋にいる。学校ではみられないような、零くんの隙、みたいなものが見つかりそう……。
(……あ、ベッドの下……)
零くんだって、完璧といえど、男子高校生だ。
男の人なら、持ってるんじゃないかな。
(何かそういう……エッチな本……とか……)
どうしよう。それは流石にやりすぎ?
零くんのお部屋だし、そんな事はやらない方がいいかな……。
そう思いながらも、私は好奇心を抑えることが出来ず、床に手をついて、ベッドの下を覗こうとした。