1から始まるお付き合い
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「零くん」
「おはよ、名前」
私たちはいつも通り三角公園で待ち合わせし、合流した。
「明日から夏休みだね。名前はどこか行きたいところある?」
「花火大会とか、夏祭りかな……零くんは?」
「俺も同意見。ああ、でも俺、たまに学校行かないなんだ。文化祭に関することで集まらないとで」
「あ、私も実は数学の補講があって……学校行かないとなの。」
「そうなの? 俺、勉強教えてあげるよ?」
「本当に? すごく助かる。どこか場所あるかなあ……」
「空き教室があれば良いけど……一番確実なのは俺の家かな」
「え! 零くん家!?」
「うん、夕方まで親が居ないから自由に使えるよ。」
零くんの家に行くのは緊張するな……
それに2人きりの空間なんて、心臓持つかな……
「緊張してるんでしょ」
顔を見上げると零くんが私の顔を覗き込んでいた。
「あ、バレた? ちょっと……」
「夏休みにいくらでも俺の家に遊びに来れる機会があるし、今日は学校で勉強する?名前」
零くんが私に助け舟を出してくれた。
私はいつも零くんの好意に甘えている。いや、もしかしたら限度を超えてるかもしれない。
「おめかしして今度来て、俺の家」
「うん、行く、絶対行くよ」
そんな会話をして私たちはそれぞれの教室に向かった。夏休み前日ということもあり、今日は授業は無く、半日で終わる。その代わり全校集会があるのだ。体育館にぎゅうぎゅう詰めにされて、校長先生からの長いお話を聞かなければならない。例えば夏休みの注意事項や彼の武勇伝……。集中力も切れて、体育座りしているお尻が痛くなってきた。そんな風に気を取られていると、気がついたら零くんが壇上に上がっていた。
(え、零くん?)
零くんは校長先生の横に立ち、生徒側を向いて立っている。零くんをじっと見ていたら、視線がぶつかる。彼は私に気がつくと、嬉しそうに笑顔を返してくれた。
一部の女子が私に向けてくれたのよって騒いでいる。でも絶対、私にだ。
零くんが壇上に上がっていたのは、賞状を受け取る為だった。流石、賞状を受け取るのには慣れているのか、洗練された動きだった。
気がついたら全校集会も終わっていて、私は足早に教室に戻った。教室に着くや否や担任の先生から大量の返却物が配布された。
(夏休み前にコツコツとロッカーの物持って帰ってたのに……今日持って帰る物どっちにしろ多いじゃない……!)
通学用のバックから美術のイラストの筒状に丸めたものが入り切らず、飛び出している。
(なんだか買い物袋からネギが飛び出してるみたい)
今までの小テストや夏休みの宿題などを鞄にしまい、ようやく終礼になった。
「えー、夏休みだとはいえ、羽目を外し過ぎずに……」
先生の話が右から左に流れていく。
明日から夏休み、なんて。
ワクワクとドキドキ、どちらの要素を私の胸を高鳴らせる。
(今までは朝待ち合わせして学校に行くとか、お昼一緒に食べるとか、零くんと過ごす時間の習慣があったけど…… 夏休みは学校がない分、自分達で会う時を決めないと……自由な時間が増える分、たくさん会えるんだなあ……)
「本日全教室が耐震工事の為、終礼が終わり次第早急に帰る事。以上だ。」
先生が言った言葉を聞き流そうとしたが体がストップした。
(え……つまり……教室が使えないって事??)
教室で零くんと勉強しようと思ってたのに、これはとんだアクシデントだ。そうなると残る選択は……零くんのお家だ。
(こんな早い展開で、零くんのお家に行くなんて、良いのかな?勉強するだけならもっと別の場所もあるよね……でも、もしかしたらこれがチャンスなのかもしれない……これを逃したら、自分から零くんのお家に行きたいって今後に言う勇気も無いし……)
終礼が終わって、私は零くんの教室へ向かう。
すると、私が到着したと同時に零くんが教室から出てきた。
「あ、名前。」
「零くん」
「荷物、重そうだね。俺持つよ。」
零くんが私の荷物をひょいっと持ち上げて、肩にかけた。
「え、いいの?ありがとう。返却物が多くて」
「だよね。長期休み前だから」
「そういえば零くん、賞状貰ってたよね!すごいよ、知らなかった」
「そんな凄い事じゃ無いよ。ね、俺が壇上に居る時、見てたでしょ」
「うん、見てた」
「壇上からさ、生徒の顔が全学年見えるんだよね。それで俺、その中ですごい可愛い子がいる、誰だろう?って思った子が名前だったんだ」
自然と笑みがこぼれてきたよ!って零くんが笑いながら言う。私はすごく恥ずかしくて自分の上履きを見た。
「あ、そういえば、今日耐震工事で教室使えないみたいだね。」
来た。その話題。私は勇気を振り絞って零くんの顔を見て言った。
「そう……だから零くんのお部屋に行きたいの…!!」