1から始まるお付き合い
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「う、うーん」
困った。私は顎に手を添えて考える。
どっちも難易度高いよね……
「じゃあこれはどう?」
零くんが私に更衣室の鍵を見せてきた。
小さな鍵と、ロッカーの鍵番号が書いてある札が付属している。零くんが徐に札を外し、その裏表を私に見せてきた。4と書かれた数字の面と、何も書いてない面だ。
「表が4で、裏が真っ白。2択だよね。」
「う、うん」
「今からこれを投げるから、出た面のどっちかね。1/2の確率。」
「わ、わかった。」
「ふふ、因みに、どっちの面がどっちにする?」
「あ、そうだね。じゃあ4がウォータースライダーで、白い方が個室で」
「わかった。じゃあ見てて。」
零くんが高く札を上げる。札は太陽の光を浴びてきらりと光った。その光を収めるかのように零くんがすぐさま片手で取る。さあ、どっちの面ーー。
「あ、白だね」
ゆっくりと彼が手のひらを開くと、そこには何も書いてないまっさらな札だ。思わず声がハモってしまった。
「じゃあ個室だね」
零くんがいたずらっぽく笑う。個室……個室! よくよく考えると個室の方がウォータースライダーより難易度が高い気がする! だってウォータースライダーは密着はするとはいえ、一瞬で終わる。けど、個室って……! 完全に2人きりで長い時間過ごすってわけで……!
「名前、行くよ」
零くんが私の手を取って誘導する。ああ、どうなっちゃうんだろう!
ーー
「では、1番の個室をご利用ください。こちらが1番のカギです。」
受付に行くと、1番の部屋へと案内された。子連れや友人と来ている人が多いからか、皆流れるプールやウォータースライダーに流れていってしまっているようだ。かなり閑散としている。そもそも個室があるなんて知らない人も多そうだ。事実、私も零くんに言われるまで知らなかった。
長い通路を抜けると、1番と書かれた部屋の前についた。
零くんがゆっくりと鍵穴にカギを差し込み、開ける。
「名前、お先にどうぞ」
「ありがとう」
そこには天井がガラスで出来ている空間に、真ん中に正方形の小さなプールがあった。天井がガラスということもあり、電気をつけずとも淡い光に包まれている。日に当たった水面がゆらゆらと揺らいでいる。
「すごい、素敵」
「本当だね。ガラス張りとは聞いてたけど、こんなに光を取り込んでるのは予想外。」
「零くん、知ってたの」
「そりゃあ下調べしたからね。」
「そうなの!」
「光に当たってるから、大分水温は温かいと思うよ。さあ入ろう」
私の手を引いて零くんがエスコートしてくれる。水音を立てないように、慎重に。
「……」
ああもう! どうしよう、何か話さなきゃなのに、なにも話題が浮かばない! さっきの25mプールは他にも人が居て、それに人の声とか、雑踏がよく聞こえて二人きりとはあまり意識してなかった、けど、今は完全に個室で、2人きりで、無音で……。心臓が大急ぎで血液を巡回させている。1分間に何回心拍してるの? このままの勢いだと水伝いに聞こえちゃいそう!! こんな気持ち気づかれたくなくて、隣にいる零くんのお顔に向けない……!!
ゆらりと水面が動いたので私は零くんが動いたのだと気が付いた。
どうしたんだろ。恥ずかしい気持ちが勝って零くんの方に目を向けれない。
「名前」
「う、うん」
いつにもなく真剣な声色だったので、私も思わずかしこまる。
「抱きしめてもいい?」
「……!!」
抱きしめるって、あの、ぎゅってするってことだよね! 今日は駅前でハグされたけど、それとは完全に勝手が違う、と思う!
だって……この雰囲気の中ハグって……!! しかも水着で、お互いほぼ裸なわけで……!!
「ダメ?」
恥ずかしいし、どうにかなっちゃいそう。でも、ダメなわけ、ない。
「したい、零くんと」
零くんの方に視線を向けると、情欲に満ちた瞳で私を見つめてる彼がいた。ほんのりと頬がほてっていて、官能的だ。
私が受け入れるように体を彼のほうを向けて、ゆっくりと目を閉じる。
すると、しばらくしてから私を覆うかのように熱くって、そして硬い、彼の体の感触が私の肌の上に乗る。お洋服を着ながらじゃ感じられない、彼そのものの感触を生身に感じる。男の子の体って、こんなにも違うんだ。細身ながらに筋肉質だからなのか、かなり硬い。ただ抱きしめられてるだけなのに、不思議と彼のパワーももらっているかの気持ちになった。