1から始まるお付き合い
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(誰か、助けてーー)
心の中で訴えても誰にも聞こえるはずが無い。ここにいる人々はそれぞれプールを楽しんでいて、誰も私のことなんて見てなんていない。
この男は私を引っ張り、更衣室脇の、狭くて暗い空間の壁に私は強引に押し付けられた。反動で、私の濡れた髪から水滴が滴り落ちる。
男は私を前から壁に押し付けてるから、強引に向き合う形になる。私はこの人の顔を見たくなくて俯いたけど、片手で顎を掴まれた。
「結構可愛いじゃん。俺と遊ぼうよ」
「い、いやです」
この男の瞳には生気が宿ってなくて、怖い! 小声で反論したけど、聞いてないみたいだ。こわい、足がガクガクと震えてきた。助けて、零くんーー
「おい、何してるんだよ」
声をした方に目を向けると、そこには息を切らしながら、プールの水に濡れた零くんがいた。零くんが来てくれた。私はその安心感から涙が出てしまった。暗闇に光が差したみたいに、私の気持ちも照らしてくれた。
「なんだよ、てめえ。」
「こっちの台詞だ。俺の彼女に何してるんだよ。離せ。」
そう言って零くんはこの人から私を強引に引き離そうとする。
すると苛立ったのか、男が零くんに向かって拳を上げた。
「てめえ、ふざけんなよ!!」
ものすごい剣幕と勢いで零くんに向かう。かなり身長が高いし、ガタイも良い。こんな人からパンチなんてされたらひとたまりもないだろう。危ない、零くん!!
「零くんっーー!!」
私が叫んだよりも彼が俊敏に動いた。男は上から零くんを殴ろうとしてたから、零くんは逆にかがんで男の腹に向かった。男は対象の零くんが突然消えたことに驚き、バランスを前に崩した。
その勢いもあって、零くんは男の腹に強烈なパンチを食らわせた。
ドスン、男は勢いよく後ろに倒れた。かなり大きな音がしたから、私は男の容体が心配で男に近づいた。けど、零くんが「名前!」と叫び、私を男から引き離した。
零くんはプールの監視員さんに事情を説明し、男を医務室へと搬入した。しばらくしたら、監視員さん伝いに、男は気を失っていただけで、今は意識が戻り、反省しているから直接謝りたいと聞いた。でも正直、もう怖くてもう会いたくもない。
断りを入れ、私たちはプールサイドへと戻った。
楽しんでいる人々が全部映像の一部みたいに見えた。映画を見てるみたい。何が起こったのかまだ頭が混乱している。
「本当にごめんね、名前」
零くんが本当に悲しそうな顔でつぶやいた。
「零くんは助けてくれたでしょ、ありがとう」
「でも俺が名前を一人にしたからこんなことが起きたんだよ……。怖かったよね……ごめん俺、1人で突っ走って……」
「私が勝手にプールから先に上がっただけだよ! それに、私は零くんは駆けつけてくれて本当に嬉しかったの。ヒーローみたいで。だから、零くんが悲しむ必要ないの! むしろ、私を救った事を喜んで欲しいよ」
「彼氏なんだし、そんなの当たり前だよ」
「当たり前じゃないよ! 零くんだから出来た事だと思うの。」
「俺だから……?」
「うん。零くんじゃない人だったら同じような安心感を感じることはなかったと思うの。それに、零くんは私の好きな人だから、すごく、すごく嬉しかったの」
「うう、名前、可愛い……」
零くんが照れたように下を俯いて髪をぐしゃぐしゃととかす。そして顔を両手でパチンと叩いた。
「ありがとう、名前。君は俺にいつも自信をくれるよね。」
「そんなことないよ」
「ふふ、じゃあ俺だけしか知らない秘密かもね。」
自信を取り戻したのか、彼がいたずらっぽく笑う。わ、可愛い。
「気を取り直して、もう一回プールに入ろうか」
「も、もう競争は嫌だよ!」
「うん、一緒にウォータースライダー乗ろうよ」
「え、一人乗りじゃないの?」
「一人がもう一人を抱きかかえれば一緒に乗れるみたいだよ。」
「そ、それは難易度が高い……!」
ほぼ裸同然の格好で密着するなんて……!!
「じゃあカップル用のプールは?」
「なにそれ?」
「カップル専用で完全個室のプールがあるみたいだよ」
ほぼ裸の状態で個室!?しかも完全ってことは、外部からみられることもないってことだよね……! 何か間違いが起こる可能性が……!!
「どっちかね」
「ええっ!?」
別のチョイスは無いの……!?
「流れるプールもあるよね、零くん」
「だめ、どっちか。」
わわ、2択しかない……!! どっちを選ぼう……!!