13日の金曜日
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(お願い、出てーーー!)
黒電話の受話器を耳に添えて、必死に祈る。
こんな夜中だと、もう出ないかもしれない。
窓から月夜が私を手助けするかのように照らすが
受話器の先はずっとベルが鳴るだけだ。
「……先生」
先生との思い出がフラッシュバックする。
私のことを一番に考えて、親身に相談にも乗ってくれた。
今回のお家に引き取られるの、実はとても怖かった。
私みたいな成熟した人間を、大切にしてくれるのか心の奥底では不安だった。
『大丈夫よ……きっとね』
今思えば、その言葉は何か意味を含んでいたのだろうか。
受話器からのベルの鳴り響く音が脳内にこびりつく。
その一定の間隔に、合わせながら手帳を指でなぞる。
「……? なんか、窪んでる?」
手帳のカバーをなぞると、確かに一部が凹んでいる。
気になってカバーを外し、凹みを除きみた。
「っ、あ」
カバーを外した先には、「XX-XX-XX」と、私が見たことがない番号が記載されていた。
尖ったペンで書かれたソレは、柔らかい表紙で書かれていたため凹凸ができていたのだ。
これは、公的な施設の番号じゃなくて、先生の番号……?
私は藁にも縋る思いで黒電話のダイヤルを回す。
先生ーーー!
ジリリリ……
再び脳内にベルが響いた。今度は先生に繋がってーーー!
メトロノームのように一定の間隔を保ち、ベルが鳴る。3コールが鳴り、もう終わってしまう。
そんなご都合主義にはならないよね……
「ーーはい。」
聞き覚えのある声が受話器から響いた。
忘れもしない、先生の声だ。
「っ、先生!私です!」
「その声は……名前?」
「はい、先生、ご無沙汰しております……」
ずっと施設では一緒だったんだ。
懐かしいその声を聞いて、恋しくて視界が涙でぼやける。
「あなたがかけて来たと言うことはーー」
「はい、私が何者かと言うことをお聞きしたくて」
「……そっち、ね」
「……?
私、過去の自分の事を思い出せなくて……けど、先生ならご存知ですよね?
何が起きたか教えてくれませんか?」
「聞いてしまってもいいの?」
「……はい、教えてください」
「……あなたの身に起きた出来事はーー」
ブツン!
私の耳元で鋏が何かをぶった斬った音がした。
恐る恐る見上げると、そこには家主のウカイゼロが私を見下ろしていた。
彼の手には切れ味の良さそうな銀の鋏を持ち、黒電話の回線をぶった切っていた。
「ちょっとオイタが過ぎるかなー、名前」
「ぜ、零くん」
「これは許容範囲外」
月夜の光も弾くような漆黒の瞳で私を見つめる。
私は、思わずその場でよろけ、尻餅をついた。
「ずっと、閉じ込めちゃってもいいんだよ?」
「あ……い、いや……」
頬から訳もなく恐怖で涙が溢れる。
この場から逃げないとーーー!
私は力を振り絞ってその場から立ち上がり、よろめきながらも走り出した。
一刻も早く彼から逃げ出したかった為、手当たり次第開く扉を探し、たまたま開いたドアの部屋へと入り込んだのであった