13日の金曜日
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私は零くんに、これまでの事を深く追求しようと考えた。私はただの施設育ちの、何の変哲もない人間だ。それなのに、なぜ、私の事をここまで知りたがるの?
そんな時、彼の何気ない一言が頭をよぎった。
XX「名前がまたどこかに行っちゃったら困るーー」
そういえば、そんな事を零くんはポソリと言っていたっけ……
「また」って、なんだろう。
そもそも会ったことすらない、
私は零くんとは、初対面のはず。
きっと、たぶん、絶対……。
ーーなんて確証一切ない。
正直なところ、私は施設に入ってた頃の記憶しかないのだ。施設の先生がつきっきりで私の世話をしてくれてたけど、それは私の過去に「何か」があったから?
私は一体、誰なの?
そんな事を思っていたら、頭上にある古い時計が、ゴーンゴーンと鳴りながら、0時をつげる。
いけない、自室に戻らないと……!
急いで私の日記を取って、自室へと忍足で走る。
ぜろくんに、バレたら……!!
本能がそれは危険だと警告する、早く、早く!
私の部屋の長い廊下が見えてきたところで、
黒影が見えた。誰、なの……?
急いで曲がり角に隠れ、呼吸が上がり切った口に両手を当てる。
そっと人影に目を向けると、それは紛れもない家主の零くんだった。
「ーー名前」
私の名前を、呼びかけた。
自分の存在がバレたのかと思って、心臓がドクリと跳ねる。
大人しく、こっちから声がけするべき……?
様子を伺っていると、彼は私の部屋のドアを愛しむ様に手を添えて、撫でた。
「名前、愛してるよ。心の底から。
ずっと、ずっと。一生逃さないから。」
ドア越しに、部屋にいると想定している私に声がけをしている様だった。
私は、なぜそこまで零くんが私を愛しているのか理解ができない恐怖に震えた。
他にも零くんは何か呟いていたが、遠すぎて私の耳には響かなかった。
暫くすると、涙をうっすらと浮かべた零くんがその場から離れた。
すぐには移動せず、私は息を潜めながら零くんが遠くまで去るのを待つ。
早く、早くーー!!
足音が聞こえなくなったので、私は自室のドアを急いで開き、ふわふわのベットへダイブした。
日記を枕の下に隠し、そのまま横になる。
色々な考えが錯綜し、疲れ切った私はそのまま眠りについてしまった。
ーーー
「……へぇ。」
書斎に戻った宇海零は、名前の日記が無いことに気がついた。バックナンバーが保管されている書籍棚のスイッチが微妙にズレている事にも彼は感づいた。
「ふふ、遅かれ早かれだからいいけどね……」
彼は不敵な笑みを浮かべ、過去の日記一冊とり、パラパラとページを捲る。そして、とあるページで手を止めた。
「はあ、名前、こんなところで感じていた孤独を一切感じさせないよ……」
日記に記載された文章を愛おしい物に触れるかの様に撫でる。
『ーー先生としかほとんどお話ししないから寂しい。誰かに愛されて、愛してみたい。』
文章を眺めた宇海零は、ゆっくりと半月の目の形で微笑み、つぶやいた。
「僕が愛してあげる。『死ぬほど』ね……」