13日の金曜日
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その後私はなんと返答したのか覚えていない。
どうして彼は私の読んでた本とか、ページを知ってたの……?
そもそも、誰かに寄り添ってもらうなら、施設から誰かを呼ばなくても、カウンセラーの人を呼ぶ事だって出来るはずだ。
彼の目的なんだろう……? 宇海さんに理由を聞いてみる……? それしか、ないよね……そう思い立った私は立ち上がって宇海さんが今どこにいるのか探し始めた。
「……開かない」
宇海さんも言ってた通り開かない部屋が何室かあるなぁ……。どこかに鍵があるのかな……禁断の部屋、みたいな……?
きっとそこに零さんの心の闇の要素が隠れてる気がする。
「名前」
「う、宇海さん」
探していたのに、逆に向こうからやってきてどきりとしてしまった。
「ごめんね、びっくりさせちゃったかな。さっきは」
「あ……ごめんなさい……正直びっくりしちゃいました」
「だよね……実は名前を引き取る時にあの本を譲り受けただけなんだ。」
「あ、そうなんですか?」
「そう。施設の先生が名前は本が好きだから、寂しがらないようにって」
「先生が……」
受け取った本をそのまま順番に詰めていったら確かに私が読んだ本の順番になるかもしれない。
しかも最後の2冊が私が借りた本の順番と揃ってただけで、全部を見渡したわけじゃない。それなら全部揃ってるとは言い切れないよね。早とちりしちゃった。
「しおりが挟んであったから、そこまで読んでたのかなって推測しただけなんだ、びっくりしたよね」
「はい……理由がわかったので、もう大丈夫です」
「俺、名前がすごく大切なんだよ。だからこそ、先生に名前の事とかも聞いてたんだよ。」
宇海さんなりの配慮だったのかな。きっと施設から1人できた私のことを心配してくれてるんだろうな……
「ありがとうございます……あの、気になってたんですけど、なぜ私なんですか?」
「なぜ名前かって?」
「はい……宇海さんに寄り添うだけならカウンセラーの人だっていらっしゃるし……私は専門的にカウンセリング出来るわけじゃないですから……」
「名前だからお願いしたいんだよ」
「私だから?」
「そうだよ。」
「名前を初めて見た時から、俺は名前しか見えてないんだ」
そう言って彼は私を優しく抱きしめる。
「俺、名前が好きなんだ」
「う、宇海さん……」
「零って呼んでよ」
「ぜ、零くん……」
美形な彼から抱きしめられてときめかない女性は居るのだろうか。彼の厚い胸元を肌で感じられる。しかも私のことが、す、好き?
「突然ごめんね、俺、名前のこと愛してるんだよ」
「私のこと……を?」
「ちょっとずつでいいから、俺のこともっと知って行ってほしいな。」
零くんからの告白を受けて私はビックリしてしまったけど、優しくて美しい彼からの告白は悪い気はしなかった。彼のことを徐々に知っていければいいなって思っていた。
ーー
次の日から本格的に彼と会話して、心を癒していくことにした。会話をする中で、彼の優しい気持ちがひしひしと伝わってくる。こんなに優しい気持ちが強い人なら、昏睡状態にさせてしまったという罪の意識を持ち続けてしまうのは無理もないかも。広いお屋敷で2人だけで過ごしていると、自然と私も零くんが気になってくる。
外に出て2人で会話してると、風に吹かれ、零くんの髪が揺れた。
(綺麗だな……)
綺麗な深い青の髪、長い睫毛に高い鼻……
これが美形以外のなにものなのか。きっと外に出ればモテモテなんだろうなあ……
「何? じっと見て」
「あ、ごめんなさい……ただ、あまりにも綺麗だったから」
「ふふ、それは名前だよ」
「わ、私はそんな綺麗とかじゃ……」
「綺麗なの、俺にとって一番。あれ……花びらがついてる」
彼が私の前髪から花びらを取ってくれる。
必然的に彼と向き合う形だから……緊張してしまう!彼と目を合わせるのが怖くて、目をそらしてしまう。
「だめ、俺のこと見て」
そう言って零くんは私の顎を片手でそう様に持った。ゆっくりと彼の方に目を向けると、彼がまっすぐに私のことを見つめていて、お互いがお互いを見つめ合う。
零くんの顔の距離が0になって、そこで初めてキスされたってことに気がついた。
零くんの顔がゆっくりと離れると、お互いの顔をしばらく見つめ合い、ふふふ、と笑い合った。
施設出身で身寄りのない私を好きだって言って大切にしてくれる存在はなによりも嬉しかった。