13日の金曜日
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「名前、あなたの引取先が決まったわ」
ああついに、私のお家が決まるんだ。
ずっとずっと待ち焦がれてたの。
親がいない私はずっとこの施設で育ってきた。
施設で仲の良かった子はどんどんお家が決まっていって、施設から出て行ってしまった。ここで誰かと知り合っても、いずれかは何処かに行ってしまう。そのこともあって、自分を大切に思ってくれる存在が欲しいってずっと憧れていた。
施設の子供を欲しがる人は、大抵幼い子供を引き取ろうとする。私はもう幼い訳では無いのに、貰ってくれる人がいるなんて奇跡に近いよ。
「さあ向かいましょう」
施設の先生が車のキーを差し込んで、エンジンをかける。車は軽快にエンジン音を響かせた。同時に、私の心もエンジンが入ったみたいにドンドンと鳴り響く。
「名前」
「はい」
「元気でね」
今まで本当にお世話になった施設の先生。厳しくも、優しく愛情がある人だった。
私は施設での思い出を振り返りと、涙が出てきてしまって先生の顔をうまく見れなかった。
ーー
「ここからは1人で向かいなさい」
「え……わ、わかりました」
先生が突然車を停めたかと思うと、1人でお家に向かって欲しいみたい。先生が居ないのは心細いけど、先生にはまだ施設にいる子供たちの世話を見なきゃいけないし、出て行く私に時間を割いてされないよね。
「この道をまっすぐ向かえば着くわ。」
「あの、お家の方の名前は」
「ウカイゼロ」
そう言って先生は急いだように車のドアを閉めて走り出してしまった。
ウカイゼロ、私のお家の人、どんな人なんだろうーー。
ーー
先生の言われた通り道を進むと大きなお屋敷が目の前に現れた。
(え……、本当にこんな立派なところなの?)
不安になりながらも重厚そうな門に手をかける。
ギィー……と音を軋ませながら扉が開いた。
私の身長よりもはるかに高い玄関の扉の目の前にたち、深呼吸。 一拍置いてから、ノックを3回。
ノックは3回って昔先生に習ったことがあるから。
……反応がない、やっぱり違うお家で、ここは使われてないお屋敷なのかな?
不安になっていると、扉が少し、開いた。
けれど、相手の顔がまだ見えない。私が誰か様子見してるのかな。
「あの、本日からお世話になります、苗字名前です…! ウカイゼロ様のお家でしょうか……?」
ビクビクしながら答えると、扉は大きく開いて、私の視界に突然男の人が入り込んできた。
「名前? そう、俺が宇海零だよ!」
私は拍子抜けした、だって、養子を受け入れる人って、ある程度年齢の行った大人であるからだ。
でも、彼は幼すぎる。私と同い年か、その下ぐらいなんじゃないのかな?
「あ、もしかして、弟さん……?」
両親の息子にあたる存在なのだろうか。
それだったら合点が行く。
「違うよ、俺が名前を受け入れたんだよ。よろしくね、名前」
「……よろしくお願いします……?」
どういうことか私はちんぷんかんぷんで頭上に? が浮かんでしまった。彼が、受け入れた……?
困惑している私を見て理解したのか、彼が言葉を続ける。
「詳しくは後で説明するよ。名前はここまで来る道のり疲れたよね。ある程度部屋を紹介してから時間を取ろっか」
彼が私の荷物を代わりに持ち、部屋の案内をして行く。長い廊下にいくつもドアが連なっていて、アンティークな雰囲気が漂っている。一つ一つのドアノブの形が違うんだって事を教えてくれた。
「この部屋は書斎で、ここは俺の部屋。いくつか鍵が開かない部屋があるから、その部屋は気にしないでいいよ」
「鍵が開かないと不便じゃないですか?」
「部屋数も多いし、俺1人しか住んでないから部屋には困らないからね。」
この広いお屋敷に、彼は1人で住んでいるのか……
一体彼は何者なんだろう?
一通りの説明を終えた後、私の部屋へと案内される。一番最上階の、奥の部屋。
女性は一階だと危ないからねっていう彼の配慮の元だ。1人では十分すぎるほどに広い部屋に、キングサイズのベッド。施設の部屋とは比べ物にならない程良い空間が広がっていた。
「しばらくしたらご飯にしようか。」
彼が私にそう言って微笑む。
彼の顔をうまく直視出来てなかったけど、かなり美形だ。ウカイゼロ、私の……親? なの? 何に当たるんだろう。彼はなぜ私を引き取ったの?
悶々としながらわたしは持ってきた荷物をクローゼットに仕舞おうとクローゼットを開ける。
「あれ」
中にはたくさんの素敵なお洋服であふれていた。
前にいた人が使っていたのかな? わたしが持っている服よりもどれも煌びやかで美しく、手に持ってみると肌触りもとても良かった。
(ちょっと着てみたいな……)
わたしは気になって着てみてしまった。
(あれ、サイズぴったり)
フリーサイズなのだろうか。あまりにも自分の体にフィットしていて驚きを隠せなかった。
コンコンコン、とノックの音が響き、宇海零が私に声をかけてきた
「もうそろそろご飯だけど、大丈夫?」
「あ、い、今行きます!」
勝手に着ているなんてバレたらまずい!私は早く脱ごうと、慌てて元の服の方へと向かう。
慣れない洋服を着ているせいか、足がもつれて大きな音を立てて転んでしまった。
「大丈夫ー!?」
彼が心配してドアを急いで開けた。
よろめいた私の手を取って、足の心配をしてくれている。
「可哀想に……痛い? 大丈夫?」
「大丈夫です……あっ」
勝手に洋服を着た状態で彼に見られてしまった。
「ご、ごめんなさい勝手にお洋服……」
「いいんだよ、全部名前の為に買ったから」
全部私の為……? どういう事だろうと疑問を感じながら彼と食卓へと向かった。
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