隣の席の宇海君。
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私の隣の席の宇海君は意地悪だ。
品行方正、容姿端麗、成績優秀……数多くの四字熟語で表される彼だが、私の前ではただの意地悪な男子だ。
「名前、数Ⅱ宿題あるよ」
「え!? 忘れてたっ! どうしよう、今日当たるんだよね」
「見せてあげようか」
「!! お願いっ!」
「や、だ」
「ええー!!」
いつもこんな具合で私をからかってくる。
私の反応が面白いのか、ケラケラと笑ってる。
やめてとかやだとか言ってもやめてくれない。
「名前の為にならないでしょ。」
至極真っ当なことを言ってる……! けど、完璧な宇海君の回答を写させてもらいたかったなあ……。私は休み時間を駆使して、急いで解いた。でも、全部は終わらなくて、残念なことに授業が始まってしまった。宿題の答えあわせの時間になり、次々と生徒が解答していく。
「ーーでは、苗字、問4の答えは」
しまった。そこはまだ解き終わってない所だ。
数Ⅱの先生は怖いで有名で恐れられてる。特に、宿題を忘れてきた生徒に厳しい。
ついこの間も、宿題を忘れた生徒が放課後に呼び出されて、泣かされた、なんて話を聞いた。
どうしよう、今急いで解けば間に合うかも、でもどうしよう、パニックになって頭が働かないーー。
視界が真っ白になりそうな時に、隣からさりげなくノートを見せてきた。宇海君だ。
ノートの端には、小さく「x=0.2だよ」と書いてあった。
先生が答えの催促をして来ようとする前に、私は宇海君が見せてくれた回答を答えられた。
本当に、狡い。彼はこうやって私が困ってるといつも助けてくれるんだ。まるでヒーローみたい。
授業終了と共に、私は彼にお礼を言った。
「ありがとう、本当に助かった。」
「別に、助けてなんて居ないよ。ただ名前が虐められるのがいやなだけだよ、俺は。」
「宇海君だって虐めてくるじゃない!」
「名前を虐めていいのは俺だけなんだよ!」
「なにそれ……!!」
一体私のなにが気に入らないんだろう。彼と隣になる前から、通りすがりに声をかけられたり、何かと目をつけられてるのだ。隣になってからは、毎日の様に私をからかってくる。
「宇海君、毎日毎日私の事をからかって、なにが面白いの!?」
思わず本音が出てしまった。でも、前々から気になっていた気持ち。
「……名前と話すきっかけが分からないんだよ……」
彼がポツリと言い放つ。あれ、いつもの威勢はどこへやら。
「隣になる前から、ずっと気になってて……念願の隣になれたのに、俺、からかうことしか出来なくて……」
彼は腕で顔を隠しているけど、顔が赤いのが見える。
「好きな女の子に意地悪しか出来ないなんて、格好悪いよね……」
「そんなことないよ! 宇海君にからかってもらうのも、存外、悪くないかなって……」
「じゃあ好きなんだ。俺にからかってもらうの。」
「えっ」
「やっぱり名前も満更じゃなかったんだね! ちょっと心配だったんだけど、安心したよ!」
なんだか嵌められた気持ちだ……!
「これからもずっとからかってあげるからね。」
意地悪そうに私を見つめる大きな瞳。こんな生活も悪くはないかなって思ってしまう。
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