零くんとアオハル
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昨日と同じように宇海君と三角公園で待ち合わせし、学校に向かった。
宇海君と一緒に歩いているだけで宇海君の知り合いらしき人が沢山声がけをしてくる。人望、本当に厚いんだなあ……
「宇海君って、学級委員?」
「よく分かったね」
「そりゃあ…わかるよ! こんなに人望があるんだもん、私だったら推薦したくなる」
「そう!推薦で選ばれたんだよ、実は」
「やっぱり?」
「そんな凄いものじゃないよ……あ、今日さ、放課後予定ある?」
「ううん、何もないよ」
「本当?じゃあ俺に時間くれる?」
「もちろん、いいよ。」
「ありがとう。」
楽しみだなあ…早く放課後にならないかな。
心待ちにしながら放課後を待った。何をするんだろう。お昼に聞いてもはっきりとは答えてくれなかった。
終礼が終わり、教室を出ると、昨日と同じように宇海君はまだ終わっていないようだ。
宇海君の教室に向かおうと踵を返した途端、背後から声がした
「苗字さん」
「あ、昨日の」
「覚えててくれたんだ。そう、宇海と同じクラスの。」
「また職員室で足止めされたの?」
「まあ、そんな感じ。……苗字さん、これ」
ポケットから何か紙切れを取り出して私に開いて向けた。
「なに、これ?」
「……俺の連絡先!あのさ、俺、宇海と友達だから、もっと宇海の事教えてあげるよ」
「え?本当?」
確かに知らない友達との宇海君はどんな風なのか気になる。わざわざ教えてくれるなんて、優しいなあ!
「帰ったらメール頂戴?……じゃ俺終礼に行くね」
またね、と軽く手を振る。
暫くすると、ドアが開き先日と同じように宇海君が真っ先に現れた。
「ごめんね、また待たせちゃって。」
「全然待ってないよ。ね、今日何をするの?放課後になったし、教えてよ。」
「ああ、今日は俺のお気に入りの場所に連れて行きたくて。」
聞きたいこともあるしね、と宇海君は意味を含みながら発言する
「聞きたいこと?」
「まあ、着いてから。」
学校からしばらく歩いて細い通りを抜け、ぽつんとそびえ立つ趣深い喫茶店の前に着いた。
レトロな雰囲気を寄せるそのお店は学校の人なんて誰も知らないだろう。私もこんなところにお店があるなんて初めて知った。
宇海君が重厚感のある茶色の扉を開き、中へと導いた。
カウンターに常連と思われる個人で来ているお客が2人いて、ボックス席は空いていた。
宇海君は扉から一番遠い、奥の席へと私を誘導して、広々としたソファに腰をかけた。
「わあ、古風で素敵だね」
「うん、大通りはお店はクラスのみんなが訪れてるし、会うとちょっと厄介だからさ。」
「ああ、宇海君、人気者だもんね」
「そうじゃなくて。苗字さんの事、他の奴にあんま見られたく無いし。」
「え」
「うそ!今のは独占欲強すぎた、冗談」
さらっと発言を冗談だと茶化し、メニューに目を向ける様に促してきた。
本当なのか冗談なのか……。
本当だったら、嬉しい、なんてね。
「俺はレモネードにしようかな。苗字さんは?」
「うーん……私はアイスココアにする。」
注文し、暫くしてからお互いのオーダーが届いた。美味しそうだね、と声をかけ、私はアイスココアを一口飲んだ。あまい。宇海君のは美味しい?と声を掛けつつ、目の前にいる宇海君の顔が上手く見れない。
なんだって私はいつも宇海君の横顔を見ることが多い。並んで歩いてても、お昼を食べるときも、隣に座っている。けど、今日は向かい合わせに座っていて……宇海君の顔を正面から直視できないよっ……!
「苗字さん、俺の顔見てくれないね。」
ハッとさせられて宇海君の方に目をやると、宇海君が私の顔を覗き込んでいた。
「なにか、言いづらいことがあるとか? 」
「なっ、ないない! そんなこと」
「ふーん。」
宇海君はレモネードを飲みながら考えてる様子だ。どうしたんだろ?
「単刀直入に言うけどさ、苗字さん。変な知り合い出来たでしょ?」
「え?へ、変な知り合い?」
「うーん。悪い虫というのかな? 」
「悪い虫?」
悪い虫?って?悪い虫って、大体男の子の事を暗示することが多いよね、でも、私は男の友達なんてロクにいない。最近何かーー……?
「あっ! 連絡先!そういえば、宇海君の友達からもらった」
「……やっぱりそうなんだ。前々から苗字さんを狙ってるんじゃないかなって男子がいてさ。予感的中。」
「あ、でも、変な事なくて、ただ宇海君の友達として宇海君のこと色々教えてくれるって」
「俺、そんな仲良くもないよ。」
「え、そうなの」
「どう考えても苗字さんと仲良くなりたいだけの口実としか思えない。」
「そう、なの。」
「俺は苗字さんの連絡先の事を口出せる訳じゃないから、辞めろなんて言わないよ。けど、 ちょっと嫉妬したよ……って。情けないよね。ごめん!今の忘れて。」
「そんな事ないよ!嬉しい……。」
つい嬉しいなんて本音が出てしまった。こんなの、宇海君の事が気になっていると言ってるようなものではないか。
「えっと、私。彼の事は気になってる訳じゃないよ。本当に宇海君の事が知りたくて、宇海君の事を教えてもらうためだけにメールしようかなって思っただけなの。」
「ふふ、それって苗字さん、結構俺の事気になってるって事? 」
「うん、そうだと思う。宇海君の事もっと知りたい。」
「……話なんかじゃなくて、俺と一緒にいれば、もっともっと知れるよ?」
「そうだよね、百聞は一見にしかずだもんね。」
クラスメイトが思う宇海君と、私が実際思う宇海君は異なってしまうだろう。
私は誰からも脚色されていない、本当の宇海君の事を自分で知りたい。
その日の夜、私は『宇海君の事は直接本人に聞きます。お心遣いありがとう』と彼にメールを送った。その後何通かメールが来たが、彼は私が宇海君にしか興味がないと気がついたようで、メールは長く続く事はなかった。
「あ、宇海君からメール。」
「あは、『あいつとどうなったの?』って。」
「『もう連絡とってないよ』…と」
送信を押すと、すぐに返信が届いた。
『ほんとかな』
『本当だよ、宇海君しか気になる人がいないの。』
『ありがとう。もうそろそろ苗字さんの俺への気持ちが知りたいな。』
…お試しで付き合う事からから始まったこの関係。区切りをつけるか続けるか。全ては私に委ねられていた。私は上手い返信が思いつかず、そのまま眠りについてしまった。