零くんとアオハル
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放課後。
終礼を終えドアを開けると、そこに宇海君は居なかった。
(まだ特進クラスは終わってないのかな……)
そう思い、私は特進クラスへと足を進めた。
「おっと」
通りすがりの私より背の高い、男子が声を発した。
「え?」
「宇海の彼女だよね?」
「あ……」
はいと言っていいものなのか。困惑していると相手が言葉を続けた。
「ごめんな急に。俺、宇海と同じクラスなんだ。今日の日直なんだけどさ、さっき職員室で足止めくらっちゃってさ。クラス終わるの遅くなっちゃってんだ。すまん!」
「ううん、丁寧に教えてくれてありがとう……」
「じゃ、すぐ終礼するから!」
踵を返し、彼がまたねーと言いながら手を振った。
(明るい人だなあ宇海君は素敵な人に囲まれてるなあ……)
そう思いながら肩にかけていたバッグの持ち手をぎゅっと掴んだ。
(……苗字さん、ね。)
教室に向かいながら彼女の名前をリフレインする。
(結構かわいいじゃん。)
彼女と彼がまた錯綜するのは、また後日である。
それにまだ、彼女は気づかない。
……勘のいい「彼」を除いて。
「ごめんお待たせ!」
閉じられていたドアが開き、真っ先に宇海君が飛び出した。
急いで私のために一番に出てくれたのかな、なんて。思い上がってしまう。
「ううん、そんなに待ってないよ。」
「本当〜?苗字さん、優しいからなあ」
「そんな事ないってば!」
言った勢いと共に宇海君の肩を叩いた。
「?」
突然宇海君が下を向いて立ち止まったので顔を覗き込む。あれ、真っ赤
「……苗字さんが急に積極的になるから……」
いつも飄々としているのに、真っ赤になっている姿は可愛らしく感じた。
「あー俺カッコ悪い……」と宇海君はぼやく。
「そんな事ないよ、かわいいよ」
「それは苗字さんだよ。」
「えっ」
こっちが逆に赤面した。
「お返し」
ちょっと悪い顔をして囁く宇海君はやっぱり一枚上手だ。
私たちはそんな雑談を交えながら下駄箱に歩みを進める。ふと見ると窓に私たちが2人が写っていて、彼の方が少し、ほんの少し背が高い様子が見えた。
彼は今、成長期の真っ只中にいて、いつか私が追いつけないぐらい追い抜いてしまうのかな。
そんな未来の事を考えていたら、そんな未来も2人一緒だといいな、なんて。そんな事を思えてしまった。