零くんとアオハル
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「で、でも!」
突然のことにわたしは酷く困惑した。
殿上人の宇海くんと平凡なわたし、釣り合うわけがない!それに、私は有名人の宇海君を知っていて至極当然だけど、クラスも違う宇海くん(当たり前だが私は普通科コースで宇海くんは特進コースだ。)に認知されてるとは思えない……!
「私たちって、あんまりまだ話した事もないし……」
「俺の事、嫌い?」
顔を上げられず、ずっと手元のポカリを眺めていた。しかし、切なそうな宇海くんの嘆きを聞いて髪を翻す様に顔を上げた。
私よりも少し背の高い宇海くんの瞳と目が合う。
深海の様な神秘を感じさせる宇海くんの瞳に飲み込まれそうになる。
「き、嫌いじゃない……けど」
けど。その先の言葉が見つからない。
顔を合わせることが出来ずに目をそらす。
そんな私の逃げ腰を追いかける様に、窓からジリジリと太陽が伸びて私の肌を照らす。
「俺は好き」
愚直に想いを伝えてくる宇海くん。その真っ直ぐさは太陽の光と同等だ。
私と宇海くん。2人の差はとてつもなく大きい。しかし、この宇海君の想いはそんな差なんて一切気にしてないような純粋さを感じた。
「……あの、私っ……!宇海君の事まだ好きとか何なのかとか把握してなくて…だから」
「友達からって事?」
さすが察しがいい宇海君
「そういう事にしたいんだけど…」
「言いたいことはわかるけど、それはダメ」
「え、どうして!?」
「苗字さんがその間に他の男に目移りしたらヤダし。」
宇海くん以上に優れた人は居ないよって言おうと思ったけど、それは 最早宇海君が気になっていることがバレバレだと感じ、私はグッと堪えた。
「1ヶ月、いや1週間でもいいよ。お試しでもいいからさ」
ダメ、かな?といくつもの光を携えた瞳で懇願される。そんなの……断れるわけないじゃない!
「わかり、ました」
こんな私でいいのかな、と思いながらたどたどしく答えた。
宇海君の眼が大きく開かれた。と思えば一瞬、光が瞬いた。あ、瞬き……
また大きな瞳が現れて白い歯を出してニカッと笑いながらよろしくね、と言った。
帰宅後、宇海君から早速帰宅後にメールが届いた。
「俺のこと知ってもらうために頑張る……か」
その後に続いていたまた明日ねという文字を目でなぞり、私は携帯を閉じた。
宇海君、あのね。私は、知ってるの。
宇海君がどんなに優れてるかって。宇海君はスターの素質があるって、みんなが知ってるヒーローの存在になり得る。
そんな人物の事、誰しも知っている。
それに対して私は、物語の主人公にはなり得ないただの少女だ。そんな存在、いつ消えたって誰も気づくはずもない。
彼とは本当に相反してる、まるで太陽と影みたい、なんて思いながら眠った。
再度メールが来てることに気づかずに。
次の朝、出かける支度を済ませた私は、ふと携帯を見て気づいた。あれ、メール……
「明日7時半に三角公園で待ち合わせない? ……って……え!今何時!?」
現在時刻7時40分、完全に遅刻だ……!
どうしようどうしようどうしよう……!!!
行くか行かないかの有無の返信してないとはいえ、もしも宇海君が待っていたら申し訳ない!
詫びのメールを入れる事を忘れて急いで鞄を取った。
全力疾走をし、生き絶えながらも公園についた。
宇海君は、そこにいた。
怒ってるかな?という気持ちは他所にいった。
なぜなら宇海君は煌めく瞳を閉じ、眠っているようだった。
立ちながらよく寝れるな……
「う……宇海君」
私は唖然とした。
綺麗。
太陽の光に照らされた宇海君が目を開く瞬間。
美しい星空のスローモーションのようだ。
「あ、苗字さん、おはよう」
「あ!ご、ごめんなさい、昨日約束のメールを見る前に寝ちゃったの。待たせちゃって本当にごめんね」
「いいんだ。俺が勝手に待ってただけだから。昨日は寝ちゃったかなって薄々思ってたし。苗字さんは俺のために急いで来てくれたんだね。ありがとう」
本当に宇海君は優しいな、そう思ったのに私は少しの勇気が足りなくて言葉が出なかった。そして私たちは学校に向けて歩みを進めた
「苗字さんは、断る事だって出来たよね、なんで来てくれたの?」
「えっと……宇海君が待ってたら悪いなって……」
「それだけ?」
ジッと私を見据える。熱情を帯びた目で見ないで!ドキドキが止まらない……!!
「俺、ちょっと期待してた」
「……え?」
「苗字さんが俺に会いたいから来てくれたってことに。」
「えっ」
恥ずかし気も無く言い放つ宇海君に面を食らった。心臓がものすごい勢いで血液を循環させている……止まらない、壊れそう……
私の左耳に片手を添えて、私にしか聞こえないような小声で呟いた。
「ちょっとじゃなくて、すごい、ね。」
ついにグラリと倒れそうになった私を、宇海君が左手で私の腰に手を添えた。
「苗字、この程度で倒れちゃ今後持たないよ……?」
彼との日々は今後どうなっていってしまうのか……虚ろな思考で私は思った。