仕方なく、コスチュームに着替えて集合場所へ行けば既に相澤先生がいた。
「遅くなりました。」
と言えば
「いや。時間通りだ。行くぞ。」
と歩き出した。

と、思ったらすぐにこちらを振り返った。
「？」
「お前に渡すものがあったんだった。ほら。」
と掌ぐらいのテレビのようなものを渡された。あ、これって…
「“すまほ”というものですか？」
と聞けば
「“スマホ”だ。平仮名にするな。好きに使っていい。壊すなよ。俺と塚内さんの連絡先が入ってる。」
と教えてくれた。電話やメッセージのやり取り、写真や映像の共有も出来るそう。地図も入っているそうで、迷子になったら使えと言われた。
地図…なるほど。
「これで私の現在位置がわかるんですね。誰かが常に監視してるんですか？」
と聞けば驚いた顔をして、
「確かにお前の現在位置がわかるようになっているが、緊急時だけだ。」
「そうですか…。優しいんですね、異世界から来たあやしい人間なのに。」
とスマホをいじりながら言う。んん？電源はどこだ？
「異世界から来たという点では看過することはできない。が、お前はあの四人を無事に連れ帰ってきた。それに今は俺の生徒だ。それ以外の何者でもない。変な勘繰りをしてる暇があるなら早くそれを使いこなせ。電源はこっちだ。」
と使い方を教えてくれた。

俺の生徒、かぁ。

「先生、ありがとうございます。」
と先生を見て笑って言えば、頭を強くわしゃわしゃされた。髪がぐしゃぐしゃになると抗議しようとすれば
「行くぞ。」
と歩き出した。慌てて後を追う。
先生は歩きながら今日の活動内容を教えてくれた。万引きが急増して困っているというお店数件からパトロールの依頼があった。ヒーローがいるというだけで犯罪の抑止力になる。事件が起きたときに迅速に対応することも大事だが、それよりも未然に防ぐ方が合理的で重要だ、と。

お店の人に挨拶すれば、
「パトロールありがとうございます。最近窓が割られたりするイタズラも多くて。」
とお礼を言われる。
一時間じっくり見回り、また挨拶しお店を出る。

同じように他のお店もパトロールし、今日は解散になった。


万引きが急増…ねえ…。




帰って寮でニュースを見る。
今日パトロールした地域にも出店しているファーストフード店が、深夜時間帯の防犯強化策を明後日から実施するらしい。
このファーストフード店は深夜によく強盗に入られていた。店員が一人しかいないために狙われたそうだ。





今日もらったスマホで相澤先生に連絡する。
「すみません、明日の夜またパトロール行きませんか？」