今日はヒーロー仮免許取得試験だ。
借り物の制服を着て、試験会場にはみんなと別に来た。
太ももがスースーするのが気になるが、試験はコスチュームで受けるそうなので我慢。

離れたところから、それとなく相澤さんがみんなに説明してるのを聞く。
「おい。コスチュームに着替えてから説明会だぞ。時間を無駄にするな。」

「「はい！」」
わたしも着替えに行っていいのかな？
チラリと相澤さんを見ればコクリと頷いた。
私も頷き返して着替えに行く。

昨日の筆記は、そこまで難しいと思う問題はなかったから、多分大丈夫だろう。
あとは今日の仮免許取得試験。どんな内容なのか。あれこれ考えながら、久しぶりの忍服に着替える。やっぱりこの格好が落ち着くなー。
グーパーを繰り返し、調子を確かめる。
最後に強く髪を結って、額宛てをギュッと着ける。

説明会には大勢の人がいた。
これみんな、ヒーロー志望なのか！
凄いなぁ。

「えー…では仮免のヤツをやります。」
とっても疲れてそうな人の説明が始まった。
　
「えー、ずばりこの場にいる1540名一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます」

え？今日の試験、1000人以上！？規模が中忍試験の比じゃないなぁ。

「現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローのあり方に疑問を呈する向きも少なくありません」


ステイン……
相澤さんが、緑谷くんと轟くんと飯田くんって人が戦ったって言ってたな。





「まぁ...一個人としては...動機がどうであれ命懸けで人助けしている人に何も求めるな、は現代社会において無慈悲な話だと思う訳ですが...とにかく対価にしろ義勇にしろ多くのヒーローが救助・敵退治に切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決までの時間は今、ヒくくらい迅速になってます。君たちは仮免許を取得しその激流の中に身を投じる。そのスピードについて行けない者はハッキリ言って厳しい。」

ヒくくらい迅速…。
ま、まぁ、被害が拡大する前に対応出来てるってことだよね。

「よって試されるはスピード！条件達成者は“先着100名”とします。」


先着…。
試験のルールが説明される。

自分の体にターゲット3つ。ボールは6つ所持。3つのターゲットが全て当てられればアウト、失格。3つ目のターゲットにボールを当てた人が倒したこととする。2人倒したものから勝ち抜き。

ふむ。
ただのボール当てではなさそう。
相手を拘束などして行動不能にする、もしくは不意討ちで狙いに行くのがセオリーかなぁ。
となると先着順とは言いつつも、一人で攻めるよりもグループで行動すべきだろう。

あれ？私、不利じゃない？

緑谷くんたちの様子をチラリと見ると、爆豪くんと轟くんが個人行動し始めた。

まぁ、あの二人はわからなくもない。
轟くんは大勢では動きづらいだろうし。
爆豪くんは…うん。
久しぶりにあの四人を見たけど、元気そうでなによりだ。


グループ行動が出来ない私は少し隠れて様子見かな。
いきなり仲間に入れてって言っても信じてもらえないだろうしね。隠密行動は得意だし。




岩影に隠れて気配を消して、回りの戦いを見る。
しばらくすると、
【脱落者120名！一人で120名脱落させて通過した！】
とのアナウンスが。
はー。凄い人がいるんだなぁ。
もう少し通過者が出て、焦り始めたころが狙い目かな。


【結構状況動いてます！現在通過者52…あ、53名！】
半分過ぎたのね。そろそろ動こうかな。
混戦になってる辺りをじっと見て観察する。
自分が飛び出して巻き込まれそうな個性では…なさそう。それなら敵に集中している隙に瞬身で飛び出して当てていくか。


「あ、あれ？俺いつ誰に当てられたんだ？」

１人クリアっと。
あと１人。
もう一人は敵側から。

「あ？なんで俺の全部光ってんだ？！だれかの個性か？！だれだよ！」
後ろから叫ぶ声がする。
ごめーんね。私も負けられないんだ。
【55人目でましたー。いいペースですね！このままサクサク終われ！】
ピピ
[通過者は控え室へ移動してください。]
…これ、便利ね。中忍試験に使えないかな…。


控え室にはたくさんの人がいた。まだ緑谷くんや爆豪くんはいなさそう。お茶子ちゃんもまだだな。
と、赤と白の髪を見つけた。
轟くんは通過か。
話しかけたいけど…ちゃんと編入したら、にしよう。
次の試験はどんな内容かなぁ。


ぼーっと部屋の隅にいると、
「ヤオモモー！ゴブジよゴブジ！つーか早くね皆!?」
という声が聞こえてきた。
あ、爆豪くんに緑谷くん。お茶子ちゃんも。
良かった。



控え室でのんびりしていると、
【えー100人の皆さん。これご覧下さい。】
とのアナウンスがあり映像が写された。
町だ。これ、試験用の町なのかな？
と思っていると、
BA-DOOON！！！
「！」

凄い爆発だなぁ…もったいない…。
なんてのんびり考えていたら
【次の試験でラストになります！皆さんにはこの被災現場で、バイスタンダーとして救助演習を行って貰います】
バイスタンダー…救急現場に居合わせた人（発見者、同伴者等）のことを指す。 と教科書に書いてあったな。
【ここでは一般市民としてではなく仮免許を取得したものとして、どれだけ適切な救助を行えるか試させて頂きます。】
救助か。こういうの、経験が少ないから自信ないなぁ。
【傷病者に扮した「HUC」がフィールド全域にスタンバイ中。皆さんにはこれから彼らの救出を行ってもらいます。尚、今回は皆さんの救出活動をポイントで採点していき、演習終了時に基準値を超えていれば合格とします。10分後に始めますので、トイレなどを済ましておいて下さいねー…】


とりあえず教科書通りでいこうかな。
んー？でもこの広さのフィールドで100人のヒーロー。誰かが全体を見ないと後手にまわる。
救助活動において情報は非常に重要になる。
例えば避難所の位置。
安全な避難経路。
敵の情報等々。




どうしようかな…。