あわてて巻物をまとめて、分身を出す。
「ごめん、みんな。分身と宿に帰ってて。火影様のところに行ってくる。」
みんなの返事を待たずに火影室へ向かう。

「六代目！私の作った術の巻物はありますか!?」
とノックもせずに部屋に入れば、深刻そうな顔をしたシカマルさんと六代目がいた。
ドクンドクンと心臓の音がやけに大きく聞こえる。
戸惑いや不安が胸をぐっと締め付けてくる。

「やっぱりか。」
「っ！」
シカマルさんの一言が、私の頭を殴る。

「どいうことですか？」
苦しい。息が上がる。
私の考えが間違ってればいい。
お願い。

「彼らのことがあってから、禁術の書が保管されている書庫を全部確認したんだ。」
六代目が静かに言う。
私の術もそこに保管されているはず。
だって、六代目が教えてくれたもの。“貴重な術だから、ここに保管することが決まった”って。
里の役に立てたのだと嬉しかった。忘れるはずがない。

「書庫にある、雷走（らいそう）の術の巻物が偽物だった。」

雷走の術。私が作った術だ。


目を大きく開いているはずなのに、見えるのは黒だ。シカマルさんも六代目も見えない。
膝から崩れ落ちる。

「偽物とすり替えた犯人はおそらく、本田マナブ。禁術の書庫の管理を担当していた。任務で死んだことになっていたが、偽造だった。正確には盗んだと思われる時期から行方不明だ。」
シカマルさんが教えてくれる。

「そいつは盗んだ術を使って彼らの世界に行き、彼らと交戦中、その術でこちらに飛ばした可能性がある。」

そんなこと…
信じたくない。信じられない。




「禁術の管理が甘かった。すまない。⚫⚫⚫が努力して開発した術をこんなことに使わせてしまった。」
六代目が苦しそうに申し訳なかったと言う。


目の前は相変わらず真っ暗。
誰かに嘘だよと言ってほしい。



苦しくて苦しくて誰かに助けてと泣きたくなる。









けど、ここで泣いて、なんの意味がある？


この事件が私の術のせいなら、私は彼らを絶対に無事に帰さなきゃ。


私は時空間忍術の研究者（リサーチャー）だもの。


大きく息を吸って　吐く。




彼らを絶対に帰す。

そして、私の術を取り返す。






真っ暗だった視界が光を取り戻す。
深刻な顔をしている二人を見る。



「六代目。彼らを必ず帰します。私の術も取り戻します。」
そう私が言えば
「！　いいのか？⚫⚫⚫！それは…」
シカマルさんが心配してくれる。

けど、あの術を放っておくことなんて出来ない。


どんなことになっても、取り戻す。


「大丈夫です。シカマルさん。ありがとうございます。」


私の覚悟が伝わったのか、六代目の雰囲気が変わった。




「そうか…。では。
⚫⚫⚫⚫⚫⚫、改めて任務を言い渡す。
彼らを無事に帰せ。
それとともに、雷走の術の書を奪還せよ。」

「はっ！」