君はかわいいエトランゼ
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「一体いつになったら私は所長になれる?もう何年待ったと思ってる!」
「…はぁ」
「上の適当な人事にはほとほと呆れたね私は!よりによってあの男が副長だと?ええ?」
「…はぁ」
「順当に考えて私だろうそこは!普通に、尋常に考えればだ!そうだろう苗字君」
「……はあ」
「そうかそうか君もそう思うか!流石君は中々に見所がある部下だね、実は私は以前から思ってたんだ…、」
…くだをまく上司の台詞なんてほとんどきいちゃいない。金曜日の午後9時。鞄の中には相変わらずあのマフラーが入ってて、適当なお酒を適当に喉に流し込みながら、相変わらず私はあの人の事を考えたりしていた。あれから3ヶ月。一回タイミングを逃してしまったらどんどんお店には行きづらくなってしまって、結局あれから一度も彼には会えていない。………と、いうのは実は嘘で本当は避けている。誰が?私が。誰を?…サンジさんを。
何もお店に行かなくても、偶然に見せかけて彼に遭遇する方法なんてあるわけで。例えばあの書店とか、いつも行っていた定食屋とか。実際うっかり会えたりしないか、なんて目論んだりもしたし、本当にうっかり彼を発見してしまったりもした。したけど、声なんか掛けられるわけもない。
「…君、苗字君、聞いてるのかね」
「………」
「苗字君!」
相変わらずがなりたてる上司の声をBGMにして、あのときの事を思い出して。…で、恥ずかしさのあまり机に突っ伏したくなってきた。私はなんてベタで古くさくて安っぽくてその上こっ恥ずかしい台詞を吐いてしまったんだろう。思い出すとちょっと本当に死にたくなる。しかも、本当で帰りたくないとか考えてた事実がさらに恥ずかしい。…あ、ちょっと泣きたいかもしれない。
「苗字君、苗字君!」
「………………」
………つまり。つまり、どの面下げてサンジさんにあったら良いのか、全く見当がつかない、上に。更に泣きたくなる事実がもう一つ。私が悩もうが悩むまいが、どの面下げてようが多分、サンジさんの態度はいつも通りなのだ。順当に普通に、尋常に、おまけに冷静に考えれば。私とあの人の関係なんて、サンジさんの気紛れと私の恐ろしいほどの幸運と偶然で続いてたに過ぎなくて、………いや、そもそも関係なんてなかったのかも。冷静に考えてみれば私はただのお客様だ。一人で期待してただけのただのお客様、
「…苗字君、」
「…………」
「…き、…君、なにか悩みでもあるのか?」
「…………」
「………何に悩んでるのか知らないが、悩みごとはさっさと片付けるに限るぞ」
「…………」
「…ば、絆創膏を剥がす要領でな」
「………はあ」
金曜日の夜。
いつも通り酔いつぶれた上司をタクシーに乗せて、そういえばこんなことあったなあ、なんてぼんやり考えていた。