君はかわいいエトランゼ
名前変換
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あ、やばい、何か変な汗かいてきた。瞬きもできないで、やっぱり蛇に睨まれた蛙状態で、頬杖をついて私を見る店長さん、(頭の中ですら恥ずかしくて名前を呼べなくなってきた、なんだこれ)を、見る。辛うじて愛想笑いを浮かべながら、頭の中で必死で話題を探すんだけど何も浮かんでこない。本当にこの、妙な間をどうしたらいいんだろう。
「……あのさ、」
「あ、あはは店長さんそれ面白いですね!」
「いやまだ俺何も言ってないからね名前ちゃん」
「お、…仰る通りで!さ、さすが店長さんは……お、お目が高、い…?」
「いやいやお目が高いって、」
お、お目が高いって何だ…。口からこぼれ落ちていったアホみたいな言葉に、また内心落ち込んだ。けど、この妙な雰囲気が和らいだのは結果オーライかもしれない。店長さんは、さっきみたいに面白くって仕方ないって感じで笑う。この人がこんな風に笑うと少し顔が幼くなって可愛い、とか思ってまた心臓がドキドキしだす私は多分ちょっと落ち着いた方がいい。
「…その越後屋みたいな口調はどっから来るんだプリンセス…」
「あ、い、いや、何か妙に緊張しちゃってあははは」
だから、ちょっと落ち着け私。緊張しちゃって、なんて言ってしまったら自意識過剰な奴みたいに思われてしまうかもしれないのに。かなり後悔しながら、時間稼ぎに手元のクリームあんみつの最後の一口をすくって飲み込んだ、瞬間に、あんみつの入っていた器があっさり奪われた。
「はは、は、………」
ああ、どうしたものか。またこの妙に気まずい感じを再来させてしまった。反射的に器を目で追っていけば、当然その先には店長さんがいるわけで。それはそうだ、この店には今、私と彼の二人しかいないんだから、あ、つまりそれって二人っきり、って事だけど別に大した意味がある訳じゃないんだからとにかく落ち着いて、
凄い勢いで考えだけが空回りしていって、沈黙は二分くらいに感じたけど実際は五秒くらいだと思う。妙な雰囲気に気まずくて仕方なくて、すみませんご丁寧にどうも、とか頭の中で誰かによくわからない相槌を打っていた。店長さんがからかうみたいに笑って、私はまたそれで居心地が悪くなる。
「実はさ、俺もかなり緊張した。」
「い、いやいやいや、またまたぁ…」
「だから本当だってば、名前ちゃんクッソ可愛いしさ」
「あはは、お世辞言ったって何も出ませんって、」
「……お世辞じゃないって言ったら?」
「……………………えっ?」
まぁ、いつもの通りの彼の軽口なんじゃないかと思う。思うんだけど。余りにも真剣な目で言われてしまったから、反応するのが遅れてしまった。店長さんは、私ににっこり。って感じで微笑みかける。「片してくるからちょっと待っててな」と言ってから席を立って、厨房へ向かう。一瞬だけ立ち止まって、独り言みたいに言葉を続ける。
「例えばさ。7ヶ月と2週間前から君の事知りたかった、って言ったらどうする?」
聞き返そうと思った時には店長さんは、いや、さ、サンジさん、は、もうドアの向こうへ行ってしまっていた。何となく思考停止状態で言われた言葉の意味も考えられないまま、私はぼんやりと椅子に座っていた。暫くして戻って来た彼が、いつも通りの軽い口調で、「さて、と。映画と築地と博物館、どれがいい?」なんてデートみたいな事を言い出すので、私はまたどうしようもなく混乱してしまって、
ああ、何かもう、勘違いしてしまいそうです。