君はかわいいエトランゼ
名前変換
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色々な事で頭をいっぱいにしながら、扉の方へ目をやる。あ、先週のぱいおつかいでーなでるもさんじゃん。
「やっほー、サンジ君」
「んナミすわぁーん!来てくれるなんて嬉しいよほほいらっしゃいませぇぇ」
店長さんは、わかりやすすぎるくらいに美女に弱い。雑誌とかショーとかには泥棒キャットレディなんて変な名前で出てるけど…ナミさんっていうのか、可愛い名前だなぁ。雑誌で見るより綺麗。
店長さんはでるもさんをテーブルにエスコートして、私の横をすり抜ける。一瞬だけ私に笑いかけてくれたりするもんだから、どうしていいのかわからなくて相変わらずグラスを見つめるフリをする。
…知ってるよ、知ってますとも、あなたは女の子なら誰にだって優しくするんですよね。だから、ちょっと名前を覚えてもらったくらいでは、期待しないよ、全然。ただ、嬉しいだけ。名前を覚えてくれて、少しだけ話ができるなら、それで私は嬉しいし満足だ。
先週までは意識していなかった微妙な嫉妬心のようなものに知らんぷりしながら店長さんとでるもさんを眺める。
…髪下ろしてるとギャップにきゅんとするって、いってたもんなぁ…
でれでれにこにこしながらでるもさんのグラスに水を注ぐ店長には、私に対する落ち着いて余裕綽々な雰囲気なんか感じられない。
でるもさんの長い髪の毛に、ペンダントライトの灯りが映りこんで綺麗だった。先週は、確かでるもさん髪の毛結んでたっけなぁ。私だって綺麗だって思うんだから、店長さんの心境は推して量るべきなのかもしれない。
なんとなく落ち込みながら、いつものように文庫本を読みながら暇をつぶす。これ以上店長さんとでるもさんが並んでいるのを眺める気分ではなかったので、無理やり読書に集中しようとする。
少しだけ退屈で残酷な古典推理小説のラストシーン。
色男に騙されてあっさり殺されてしまった馬鹿で不細工なメイド娘。文字を追うフリをしながらやっぱりでるもさんの方を見つめてしまう。
綺麗な髪だなぁ、そんなことを思いながら何となくで伸ばしてきた自分の髪の毛と見較べる。…あ、枝毛発見、
「何読んでんの?名前ちゃん」
……びくっ
思わず持っていた本を落としそうになった。にこにこと嬉しそうな店長さん、と、彼の持ってきてくれた皿に目が釘付けになる。あ、あのめちゃくちゃおいしいゼリーみたいなやつだ。テリーヌっていうのか、おいしそうだなぁ。
「えっと、クリスティの、」
「うわ、『ポケットにライ麦を』じゃん。クソ懐かしい、マープルおばさん」
「…クリスティ、お好きなんですか?」
「んー、まぁ。でもこれは読んだことねェ、アニメで見た。」
「へぇー、アニメで……あ、私も、好きなんです。」
「じゃあ俺は大好き」
「あはは、何ですかそれ」
「名前ちゃんが好きなのは俺も大好き」
「またまたぁ、」
…アニメでやってたっけ?あれかな?黒猫とか小鳥とかのキャラクターが出てる外国のアニメかな?少しだけ疑問符が浮かんだけど、どうでもいい。店長さんも、結構好きなんだ、クリスティ。
なんだか嬉しくなって私もへらへら笑いながら、厨房に戻っていく店長さんを見つめる。
やっと名前の判明した私の大好物を一口。…うん、やっぱり、すっごくおいしい。
頬がゆるむのは、テリーヌがおいしいから。と、店長さんの事が少しわかった気がしたから。
来週は、お気に入りの推理小説のことでも話してみようかな、そう思うだけでさっきまで沈んでた気持ちが浮かび上がるんだから、私も大概だ。
店長さんの後ろ姿にこっそり呟いた。
フォーリンラブ、なんちゃって。