君はかわいいエトランゼ
名前変換
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「いや、ほら、そんな事色んな人に言ってたら、勘違いする人もいるんじゃないかなーとか、店長さんもてそうだし。」
名前ちゃんはほっとしたような顔で、言葉を続ける。
「私みたいに料理目当てで来てる人ばかりじゃないんだし、もっと自分を大切にしたほうがいいですよ、なんちゃって…」
とてつもない脱力感に襲われて、カウンターに突っ伏した。あァ、俺じゃなくて料理目当てだよな、君は。知ってるさ。
知ってるけど、もっと自分を大切にしろって…俺は赤ずきんちゃんか…。その言葉をそっくりそのまま名前ちゃんに返してやりたかった。
俺、男なんだけど。今、二人っきりなんだけど。もう、店、しまってるんだけど。もっと、こう、危機感とか感じないのか?少し俺の事意識してくれても…
って、そうだ、彼女は今もチーズケーキ目当てなんだった。
…その証拠に俺の事も『店長さん』って…料理の名前は聞いても、俺には名前も聞いてくれない。
盛大にため息をついてしまった。ため息をついてからまた考える。…千里の道も一歩から、いや、万里くらいありそうだけど。…うん、俺の名前を覚えてもらうとこから始めよう。
顔を上げる。名前ちゃんと目があった、から、にっこり。って感じで微笑んだ。
「あァ、ところで、俺、サンジっていうんだけど。」
「え?あ、はい…。」
「名前で呼んでよ、名前ちゃん。店長さんじゃなくてさ。」
「い、いや、店長さんったら、お戯れを…」
「そんな越後屋みたいなこといわないでさ。」
俺の言葉を受け流そうとする名前ちゃんの言葉を、更に受け流した。チーズケーキに集中しようとする彼女を邪魔する。
「なァ、名前ちゃん…だめ?」
「あ、えーと、…私、ここのチーズケーキが一番好きなんです、めっちゃクリーミーなのにさっぱりしてて、正直世界で一番おいしいんじゃないかなぁなんて、あ、え?」
クソ、チーズケーキめ。名前ちゃんの視線を独占し続けるチーズケーキが憎たらしくて、名前ちゃんの手にあったフォークを取り上げた。
「あ、ちょ、フォーク、…」
困ったような顔で今度こそ俺を真っ直ぐ見る。
我ながらガキみたいな行動だけど。
たまには、俺の事も見てくれよ、エトランゼ。
「名前で呼んでくれたら返してあげる。なァ、名前ちゃん、チーズケーキじゃなくて俺にも構ってよ。」
正面に座って、名前ちゃんの視線を捉える。目を泳がせた後、彼女は、
「さ、ささ、サンジ、さん?」
小さな声で名前を呼んでくれる。やべぇ、クソ可愛い。顔がだらしなくにやけるのが止まらない。
「うん、何?」
「いや、何でもないです。」
フォークを返すと、ぱっ、て感じで視線を逸らして、またチーズケーキに戻す。そうはいくか。俺は内心でチーズケーキに悪態をついて、名前ちゃんの顔に手を伸ばした。
「ついてるよ、顔。」
良い口実だ。実は、触ってみたかっただけなんだけど。
なんて考えながら唇に触れて、指先についたそれをペロリと舐める。
…うん、チーズケーキも上出来だ。
名前ちゃんは少し驚いたように自分の頬に手を当てた。
…ああもう、可愛い。クソ可愛すぎる。たまんねェ。嬉しくて笑い声がこぼれた。
「ねぇ、呼んでよ。俺の名前」
そう言えば、俺から目を逸らさないその顔が、またみるみるピンク色に染まっていく。
そう、そんな風に。たまには俺の事だけ見ててほしい。
俺は今だらしなくにやけた顔をしてるんだろう。
ざまぁねぇな一昨日来やがれ、心のなかでチーズケーキをせせら笑った。