君はかわいいエトランゼ
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気合いを入れてホイップクリームを盛り付けた。ラズベリーソースで皿にハートでも書こうかかなり迷ったけどやめて、代わりにクリームのてっぺんに星形のクッキーを飾る。
紅茶は名前ちゃんお気に入りのアッサムで、あァ、そうだ。練乳も添えれば完璧だな。
お待たせしました、プリンセス。なんていいながらトレイを置けば、名前ちゃんは目を輝かせた。ありがとうございますいただきます、と丁寧に手を合わせてから、それはそれは可愛らしく、嬉しそうに微笑む。
俺じゃなくて、チーズケーキに向かって。
カウンターからそんな彼女を眺める。…自分の料理に自分で嫉妬するなんて、マヌケにも程がある。
名前ちゃんは少しだけラズベリーソースを掬って舐めて、嬉しそうにケーキの一口目を頬張る。彼女の視線は、チーズケーキが独占したままだ。俺が見てることには気づかない。幸せそうな顔。
一口紅茶を飲んで、またソースを掬って舐める。
口の端に少しクリームがついてるのが、間抜けでかわいい。
くすくす笑いそうになるのをかみ殺して、名前ちゃんに声をかけた。
「名前ちゃん、好きだよね。ラズベリーソース。」
ぱっと顔をあげる。びっくりしました、って顔だ。多分、俺の存在を忘れてチーズケーキに夢中だったんだろう。クソ、あんな気合い入れて作らなきゃよかった。
でもまぁ、きょとんとして俺を見てる名前ちゃんはかわいくて、うん。悪くない。
「あとはアールグレイと、パエリアと、あァ、テリーヌは大好物だよな。それから、」
言葉を続けると、きょとんとした顔が少し赤くなった。あァ、面白ェな。我慢できなくて、かみ殺してた笑い声が漏れる。
「みてればわかるよ、いっつもすげぇおいしそうな顔して食べてくれるから。」
「…私、見ててわかるほどおいしそうに食べてるんですか?」
からかいたくて言った俺の言葉に、名前ちゃんは更に顔を赤くする。
「うん。にこにこしながらたべてるよ。さっきみたいに。すげェ可愛いなって思ってた。」
勿論、今もすげェ可愛いんだけど。 名前ちゃんはあーとかうーとかうめいた後、居心地悪そうに目をそらした。
「い、いやいや、あは、あははは」
客がいようが、俺と二人っきりだろうが、彼女はこの店の中では居心地が悪そうな顔をする。
「な、なんか今日はやけにすいてますね、いっつもお客さんいっぱいいるのに。」
気まずそうに言葉を続ける。近寄ったら逃げてしまいそうな雰囲気。彼女はこの店のエトランゼだ。6ヶ月と二週間同じ空間にいても、名前ちゃんと俺の距離が縮まる事はなかった。今日だって、このまま名前ちゃんを帰したら来週には元通りだ。
だけど俺は、もっとこの子のことが知りたい。
チャンスがあるとしたら、多分今だ。
「うん、今日はもう店、しめたんだよね。蘭世ちゃんと二人っきりになりたかったから。」
なるべくいつも女の子に話してるのと同じトーンで話す。名前ちゃんに柔らかく微笑む。うん、いい雰囲気かも知れない。困ったような顔で俺をみていた彼女は、恐る恐る、って感じで口を開いた。
「…またまたぁ、店長さんったらお戯れを…」
「…いや、お戯れってど蘭世ちゃんどこの越後屋だよ。」
しまった。思わず突っ込んでしまった。ああ、せっかくいい雰囲気だったのに。名前ちゃんは俺の内心なんか知らずにまたチーズケーキに視線を戻した。クソ、チーズケーキめ。