君はかわいいエトランゼ
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「いや、ほら、そんな事色んな人に言ってたら、勘違いする人もいるんじゃないかなーとか、店長さんもてそうだし。」
そう、だから、私が勘違いするとかじゃなくてね。そんなんじゃなくてね。きっとこの人は誰にでもそんな態度だから、勘違いしちゃいけない。
店長さんから視線をそらして、冗談めかして喋る。
「私みたいに料理目当てで来てる人ばかりじゃないんだし、もっと自分を大切にしたほうがいいですよ、なんちゃって…」
お前がいうな、って感じではあるけど。
店長さんはなぜか脱力したようにカウンターに突っ伏して盛大にため息をついた。あれ、どうしたんだろう。
「あァ、ところで、俺、サンジっていうんだけど。」
顔をあげてにっこり。ってかんじでわらう。
「え?あ、はい…。」
「名前で呼んでよ、名前ちゃん。店長さんじゃなくてさ。」
「い、いや、店長さんったら、お戯れを…」
「そんな越後屋みたいなこといわないでさ。」
にこにこと嬉しそうに言う。恥ずかしいので目の前のチーズケーキに集中することにした。こんなときでも、チーズケーキはおいしい。
「なァ、名前ちゃん…だめ?」
少しすねたような声。どきどきと心拍数があがっていく。だ…だめ?って…ちょっと可愛いな、じゃなくて、えーと、えーと、チーズケーキを飲み込んで、もごもご、って感じで言う。
「あ、えーと、…私、ここのチーズケーキが一番好きなんです、めっちゃクリーミーなのにさっぱりしてて、正直世界で一番おいしいんじゃないかなぁなんて、あ、え?」
チーズケーキをフォークにさした。瞬間に、店長さんがスタスタ歩いてきてひょいっとフォークを取り上げる。
「あ、ちょ、フォーク、…」
「名前で呼んでくれたら返してあげる。なァ、名前ちゃん、チーズケーキじゃなくて俺にも構ってよ。」
そのまま私の前の椅子に座った。楽しそうな、低い声。名前で呼んでよとか、俺にも構ってよとか、冗談だってわかってるけど、期待しちゃうからやめてほしい。
多分顔は真っ赤だろう。そんなに見ないでほしい、恥ずかしくて死にそうだ。(あと、フォーク返して欲しい。チーズケーキ食べたいし)
「さ、ささ、サンジ、さん?」
「うん、何?」
「いや、何でもないです。」
フォークを返してくれた店長さんは、楽しそうに喉を鳴らしてわらった。それを見て、また心臓の音がはやくなっていく。ち…近い。店長さんが近い。
なるべく意識しないように、チーズケーキを頬張る。やっぱり、おいしい。ちょっとライムの香りがするところが、すっごいおいしい。うん、ホイップクリームが甘さ控えめなのが素晴らしいね。
チーズケーキに集中することに成功しかけた所だったのに、店長さんが私の顔に手をのばしてくる。ああもう、どきどきしすぎて心臓痛い。
「ついてるよ、顔。」
そのまま唇の横に長くてきれいな親指が触れて、
「うん、上出来。」
ペロリと親指を舐めて笑った。
ああ、だめだ。ほんとにだめだ、もうだめだ。
真っ赤になった私は頭の中でこんなあほな俳句を作っていた、ような気がする。
恥ずかしいのに、店長さんから目がそらせない。心臓が、痛いほどどきどきいっていた。
チーズケーキの味は、もうわからなくなっていた。
甘えたような店長さんの声がする。
「ねぇ、呼んでよ。俺の名前」
ああ、もうだめだ。
眺めてるだけで満足とか、無理めな恋だとか、期待しちゃだめだとか。
そんな言い訳はもう手遅れで。
私は坂を転げ落ちるみたいな速度で、彼に恋してゆく。
頭の中の冷静な私が、奈落の底までフォーリンラブ、なんちゃって、とか、つまらないことをつぶやいていた。