サンジ/短編
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図書室のベンチがいつの間にかふっかふかのクッション満載ソファーに変わっていた。
フランキーに理由を聞いたら、「どっかのスーパーなバカが本読みながら床で寝て風邪引いたからな」だそうで。どうやらこの間私が風邪を引いて寝込んだ時に作ってくれたらしい。
うたたね寝するとこっそり毛布を掛けてくれるロビンやら、容赦なく起こしに来てくれるナミやら。一緒にお昼寝してくれるゾロや、抱き枕になってくれるチョッパー、安眠BGMを弾いてくれるブルック、これまた容赦なく顔に落書きしにくるルフィに、悪乗りしつつも最後には落書きを落としておいてくれるウソップに。それからそれから、
ああ今日も、勿体無いくらいの仲間達に囲まれて、私は本当に幸せ者なのです。
*
図書室の灯りがついていたので、暖かい紅茶(ちなみに、茶葉はアッサムでミルクの代わりに練乳が、あの子の好みだ)を持って向かってみれば、案の定。本を枕にして、すやすやと寝息を立てるのは、俺の恋人。
「名前ちゃん、ほっぺにページの跡付いちまうよ、」
「…んー…あとで…」
一応体を揺すってみるが、眠りの深い彼女はこんな程度で起きやしない。まぁ、俺もあんまり起こす気なかったんだけど。名前ちゃんの頭の下敷きになっている本を引っ張り出して、代わりにクッションを敷いて。
…まぁ、紅茶は後で淹れ直すか。眠る名前ちゃんの隣に腰掛けて、自分で持ってきた紅茶を自分ですすりながら。一応料理本を取り出してめくってみたりするもんだが、内容なんて頭に入ってこない。
あっさり読書を諦めて名前ちゃんの寝顔をひたすら眺める。
…あーあ、幸せそうな顔しちまって…
何の夢を見てるんだか、眠る名前ちゃんの口が開いて、それから笑った。できれば、その夢に俺が出てきたら良いのに。そんな事を思いながら頭を撫でればクスクスと笑い声が漏れて。
「うふふ…サンジ君、もう食べられないよ…」
ああもう、可愛いなぁ。こっそりおでこに口づけてやれば名前ちゃんはくすぐったそうに身を捩って。
こういう時の名前ちゃんは、唇にキスされようが抱きしめられようがちょっとやそっとでは起きないことを俺は知っている、から、いつも歯止めを掛けるのに苦労する。
本当に、無防備な寝顔で嫌になる、いや、良いんだけど。
本人曰わく、起こされたらちゃんと起きるし、身に危険が迫ってるときは流石に目が覚めるよ、らしいんだけど。
だったら今、目ェ覚まさなきゃ不味いんじゃないですかね、プリンセス。独り言のように呟いて、唇にもキスを落とす。身の危険にも気づかずに相も変わらず眠り続ける俺の眠り姫。
抱きしめて、もう一度キスを落として。ああ、ヤバい、そろそろ止めないと、自分の中の冷静な部分がそう諭すけど止められる訳もなくて。
名前ちゃんが無防備に寝てんのが悪い、なんて責任転嫁しながら彼女の唇に触れる。幸せそうな寝顔。もういっそ、このまま襲っちまうか。なんて気になったときに、クスクス笑いながら名前ちゃんが言うことには。
「んふふ、ふ、…サンジ君、卵豆腐おかわり…」
もう食べられないんじゃなかったのかい…夢の中でも食べるのが大好きな名前ちゃんが愛しくて、ああやっぱり起こすの可哀想だな、なんて思い直して。
「あー、あとね、くず餅ね。きな粉つゆだくで」
なんだ、そりゃ。この子は夢の中でも挙動不審だ。…とりあえず、晩飯に卵豆腐と、明日のおやつはくず餅にしようかな。
*
本を読みながらいつものようにソファーで眠ってしまって、途中でサンジ君の声がしたような気がして、幸せな夢を見たような気がして。
目を開けたら、さっきの夢の続きみたいに、私を抱きしめてサンジ君が眠ってたりするもんだから。
いつもよりも大分幼い、寝顔のサンジ君の、髪の毛を梳く。
眠りが浅いと主張する癖に、寝ているときに私にいくらいたずらされても起きることのない彼の言うことには、起きたら名前ちゃんが触ってくれないから、だそうで。
つまり、寝ている彼に悪戯できるのは私の特権な訳で。
普段照れて何もできない分、私は調子に乗ってサンジ君に触る。綺麗な手、髪の毛、ぐるぐる眉毛、鼻、唇。
キスをしたらサンジ君の口が開いて、それから笑った。夢でもみてるんだろうか、できればその夢に、私が出てきたら良いのに。そんな事を思ってすとんとサンジ君の胸に収まったら、クスクスと幸せそうな笑い声。
「名前ちゅわん…おれのチュパチャップス…」
一体、どんな夢。もう一回だけ唇にキスをしてから、私は目を閉じた。とりあえず、明日、チュパチャップス買ってきてあげようかな。
息を吸ったら私の大好きなタバコの香りがして、それにこの間私がプレゼントした男物のコロンの香りも混じっていて。
また寝言で、私の名前を呼んでくれたりするから、ああもう、幸せすぎて吐きそう。
*
…まいった。俺の膝に頭を載せて眠る名前ちゃんの髪の毛を梳いた。幸せそうな顔。…そろそろ夕飯の準備をしなきゃいけねぇ、んだけど、…起こせる訳がない。
「あー…名前ちゅわん…」
とりあえず揺り起こそうとしたら、幸せそうに呟かれた一言。
「サンジ君…すき、」
…やっぱり、起こせる訳がない。ああもう、幸せすぎて吐きそう。
君と眠れば
「サンジ、お前に話がある。」
「んだよクソゴム、」
「今日、夕飯の時間47秒遅れたろ。そういうの、ショクムタイマンって言うんだぞ」
「………」