サンジ/短編
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・ペットの蛙にキスしたらサンジ君になったような話です
…ペットのチャッピー(蛙・多分オス・推定3ヶ月)が、人間に変身した。なにを言ってるか分からないと思う。私も、自分が何を言ってるんだかよくわからない。ついさっきまで蛙だった筈のチャッピーは、面白くって仕方ないって感じの顔で笑って言った。
「…名前ちゃんさぁ、蛙にキスする?普通。」
…普通、蛙はキスしても人間にはならない。その時の私は、すっかり酔いが覚めた頭で至極当然の事を考えていた。今から大体6時間前の事だった。勿論、それは泥酔状態の私がみた幻の筈で、だから寝て目が覚めたらすべてもとに戻ってる筈で。なのに今、目が覚めた私は人間になったチャッピーを前にして、冷や汗をかきながら何とか事態の収拾をはかっている。…何をどうしたら事態が収拾するのかなんて、まったく見当もつかないのが正直な所なんだけど。
「チ…チャッピー、」
キッチンの扉からひょっこり顔を出したチャッピーと向かい合って、まばたきを数回。チャッピーはと言えば、そんな私を見てにっこり笑う。…夢だ、これは。何で蛙が、ぐるぐる眉毛の金髪優男に変身するんだろう。
「あぁおはよう名前ちゅわん、朝飯何食いたい?」
「えっ、………あ、ああ、ベーコンエッグかな…」
「紅茶飲むだろ?」
「あ、え?えーと、うん」
「ミルクティーにする?それともレモン?」
「えー、と、じゃあミルクで」
「了解、お姫様。」
「………」
聞きたいことは山ほどある。とりあえず、何で人間に変身したのかとか、そもそも夢なんじゃないかとか、だったら何で一晩経っても消えないのかとか。キッチンに引っ込んでいく後ろ姿を見ながら必死で考える私に、やけに軽い調子の声が飛んでくる。
「夢じゃねえよ、残念ながら」
「っ!?」
「確かに俺は、君が3ヶ月ちょい前に川原で拾ってきた『蛙のチャッピー』だ」
「………嘘」
「だから嘘じゃねえって」
人間になったチャッピー(人間・男性・年齢不明)はさらっとあり得ない事を言ってのけた。とりあえず視線をさ迷わせた先には、昨日まで蛙のチャッピーがいた筈の水槽。勿論、そのなかにチャッピーは居ない。一番納得のいくオチとしては、彼氏にふられて泥酔状態でやけになった私の見てる幻覚。もしくは、妙にリアルな夢とか。昨日の私はどう考えても、冷静な精神状態じゃなかった。何たってペットとは言え、蛙にキスできるくらいに酔っぱらってたし。
「お待たせ。」
「ああ、はい、どうも」
チャッピーがいれてくれたミルクティー(やけに美味しい)を飲みながら悶々と考える。チャッピーはと言えば、そんなわたしをにこにこと嬉しそうに眺めている。
…これって一体、どんな状況。
あまりの衝撃に、昨日恋人に振られたショックなんてどこかに忘れてきてしまった。…ような、気がする。蛙が人間になった衝撃に較べれば、彼氏に「お前といるとイライラする」なんて言い放たれたことなんて大したことない…精々、思い出すと泣きたくなる程度のことで。少なくとも、いっそのこと死んでやる、なんて思っていた昨日の心理状態に較べれば大分ましだ。…いや、『ペットが人間に変身した』なんて幻をみてるんだからどっちもどっちなんだろうか、
「…あー、ところで名前ちゃん」
「…えっ!?」
「食わねえの?冷めるよ、ベーコンエッグ。」
「あっ、…うん、頂きます」
またしても現実逃避しかけた思考を引きずり戻されて、 言われるがままにベーコンエッグを一口。「…おいしい、」呟いたら彼は、私を見てひどく優しげに目を細める。
「そりゃよかった」
…誰かに見守られながらご飯を食べるのなんて、何年ぶりなんだろう。照れ臭いような恥ずかしいような、少しの居心地の悪さを感じながらベーコンエッグをもう一口。
そういえば、そもそもきちんと家でご飯を食べること自体が久しぶりかもしれない。最近は、ごはんなんて食べる余裕もなく会社と家を行ったり来たりするだけの生活だったわけだし。会社で上司にしごかれて、中々会う機会のない彼氏には嫌みを言われて、家に帰ってペットのチャッピーにそれを愚痴る。…そういえば、元彼は蛙が大嫌いだったっけ。蛙を飼ってる、なんて話題に出したとたんに『気色悪いから触らないでくれる?』とか言われたっけ。嫌われないように一生懸命にやってきたつもりだったのに、ペットを貶された途端に私もむきになったりして、
「名前ちゃんさぁ、」
…『彼氏に振られたショックなんてどこかに忘れてしまった』なんて、大嘘だ。昨日あった出来事を思い出すうちににじんできた涙が、誰かの手で拭われる。…誰かなんて、ここには二人しか居ないんだけど。
「男見る目ないよね」
「…な、」
「『お前といるとイライラする』だっけ?そんな事君に言う奴は馬にでも蹴られて死んじまえばいい。」
「へっ?」
「あいつ服のセンスだってクッソ最悪だし弱そうな癖に口だけやたら悪くてさあ」
「……チャッピー、」
…ペットの蛙に慰められるなんて、一体、どんな状況だ。頭のどこかで冷静に考えながら、それでも涙は止まってくれない。チャッピーはそんな私を見て、気障ったらしく言う。
「…ずっと思ってたよ。俺だったら君の事、そんな風に泣かせたりしねえのにって」
ペットの蛙が、人間に変身した。どう考えても異常な状況なのに、何故か安心してしまう私がいた。「…ありがとう、優しいね、チャッピー」呟いてみたら、困ったみたいな声が返ってくる。「あー、ちなみに俺の名前はサンジ。まあ別に今まで通りにチャッピーって呼んでくれてもいいけど」
…何で蛙が、人間に変身したのかとか、そもそも夢なんじゃないかとか、だったら何で一晩経っても消えないのかとか。聞きたいことはたくさんあるけど、ひとまずここは自己紹介からなのかもしれない。
「初めまして、よろしく、サンジ君。」なんて笑いながらぼんやりと考えていた。そういえばこんな感じのおとぎ話があったっけな、
蛙のS君と彼女の場合
「…お願い。チャッピーだけは、いつまでも私の側にいてね」
今から、丁度10時間前のことだ。ボロボロと涙を溢す彼女を、見てることしかできないで俺は考えていた。この子の涙を、拭ってやれるんならいいのに。だけどそんなのは、『蛙のチャッピー』には無理な話で。その時はまさか数時間後に、泥酔した名前ちゃんのキスで人間に戻れるなんて思ってもみなかった。…で、今、念願かなって俺は、この子の涙を拭いながら良からぬ事を考えてる訳なんだが。
「…ずっと思ってたよ。俺だったら君の事、こんな風に泣かせたりしねえのにって」
勿論、この言葉は本心だ。俺だったらこんな風に名前ちゃんを泣かせたりなんかしない。ただ、若干後ろ暗いタイミングでそれを言ったことも確かで。つまり、弱ってるときにつけこまないでいられるほど俺は、お人好しじゃないというかなんと言うか。
優しいねチャッピー、なんて、泣き笑いみたいな顔で呟く彼女は恐ろしく可愛くて。可愛くて可愛くて可愛くて、クッソ可愛くて。つまり抱き締めたいだとかなんだとかそんなやましいことを考え出す俺の事なんか勿論知るよしもなく、何を思ったのか名前ちゃんはぽつりと呟く。
「初めまして、よろしく、サンジ君。」
初めて呼んでくれた、俺の名前。みたこともないくらいの笑顔で彼女が笑ってくれたので、今のところは名前を呼んでもらうだけで満足しておくことにした。蛙のチャッピーから一歩前進だ。なんて、気の遠くなりそうなことを考えながらとりあえず俺も笑う。
「よろしく、プリンセス。」
そう、何も今すぐ好きになってもらおうって訳じゃない。先は長いんだ。じっくり甘やかして甘やかして骨抜きにして、絶対俺の物にする。『蛙のチャッピー』がそんな事を考えてるなんて、勿論彼女は知らないままでいい。
…ペットのチャッピー(蛙・多分オス・推定3ヶ月)が、人間に変身した。なにを言ってるか分からないと思う。私も、自分が何を言ってるんだかよくわからない。ついさっきまで蛙だった筈のチャッピーは、面白くって仕方ないって感じの顔で笑って言った。
「…名前ちゃんさぁ、蛙にキスする?普通。」
…普通、蛙はキスしても人間にはならない。その時の私は、すっかり酔いが覚めた頭で至極当然の事を考えていた。今から大体6時間前の事だった。勿論、それは泥酔状態の私がみた幻の筈で、だから寝て目が覚めたらすべてもとに戻ってる筈で。なのに今、目が覚めた私は人間になったチャッピーを前にして、冷や汗をかきながら何とか事態の収拾をはかっている。…何をどうしたら事態が収拾するのかなんて、まったく見当もつかないのが正直な所なんだけど。
「チ…チャッピー、」
キッチンの扉からひょっこり顔を出したチャッピーと向かい合って、まばたきを数回。チャッピーはと言えば、そんな私を見てにっこり笑う。…夢だ、これは。何で蛙が、ぐるぐる眉毛の金髪優男に変身するんだろう。
「あぁおはよう名前ちゅわん、朝飯何食いたい?」
「えっ、………あ、ああ、ベーコンエッグかな…」
「紅茶飲むだろ?」
「あ、え?えーと、うん」
「ミルクティーにする?それともレモン?」
「えー、と、じゃあミルクで」
「了解、お姫様。」
「………」
聞きたいことは山ほどある。とりあえず、何で人間に変身したのかとか、そもそも夢なんじゃないかとか、だったら何で一晩経っても消えないのかとか。キッチンに引っ込んでいく後ろ姿を見ながら必死で考える私に、やけに軽い調子の声が飛んでくる。
「夢じゃねえよ、残念ながら」
「っ!?」
「確かに俺は、君が3ヶ月ちょい前に川原で拾ってきた『蛙のチャッピー』だ」
「………嘘」
「だから嘘じゃねえって」
人間になったチャッピー(人間・男性・年齢不明)はさらっとあり得ない事を言ってのけた。とりあえず視線をさ迷わせた先には、昨日まで蛙のチャッピーがいた筈の水槽。勿論、そのなかにチャッピーは居ない。一番納得のいくオチとしては、彼氏にふられて泥酔状態でやけになった私の見てる幻覚。もしくは、妙にリアルな夢とか。昨日の私はどう考えても、冷静な精神状態じゃなかった。何たってペットとは言え、蛙にキスできるくらいに酔っぱらってたし。
「お待たせ。」
「ああ、はい、どうも」
チャッピーがいれてくれたミルクティー(やけに美味しい)を飲みながら悶々と考える。チャッピーはと言えば、そんなわたしをにこにこと嬉しそうに眺めている。
…これって一体、どんな状況。
あまりの衝撃に、昨日恋人に振られたショックなんてどこかに忘れてきてしまった。…ような、気がする。蛙が人間になった衝撃に較べれば、彼氏に「お前といるとイライラする」なんて言い放たれたことなんて大したことない…精々、思い出すと泣きたくなる程度のことで。少なくとも、いっそのこと死んでやる、なんて思っていた昨日の心理状態に較べれば大分ましだ。…いや、『ペットが人間に変身した』なんて幻をみてるんだからどっちもどっちなんだろうか、
「…あー、ところで名前ちゃん」
「…えっ!?」
「食わねえの?冷めるよ、ベーコンエッグ。」
「あっ、…うん、頂きます」
またしても現実逃避しかけた思考を引きずり戻されて、 言われるがままにベーコンエッグを一口。「…おいしい、」呟いたら彼は、私を見てひどく優しげに目を細める。
「そりゃよかった」
…誰かに見守られながらご飯を食べるのなんて、何年ぶりなんだろう。照れ臭いような恥ずかしいような、少しの居心地の悪さを感じながらベーコンエッグをもう一口。
そういえば、そもそもきちんと家でご飯を食べること自体が久しぶりかもしれない。最近は、ごはんなんて食べる余裕もなく会社と家を行ったり来たりするだけの生活だったわけだし。会社で上司にしごかれて、中々会う機会のない彼氏には嫌みを言われて、家に帰ってペットのチャッピーにそれを愚痴る。…そういえば、元彼は蛙が大嫌いだったっけ。蛙を飼ってる、なんて話題に出したとたんに『気色悪いから触らないでくれる?』とか言われたっけ。嫌われないように一生懸命にやってきたつもりだったのに、ペットを貶された途端に私もむきになったりして、
「名前ちゃんさぁ、」
…『彼氏に振られたショックなんてどこかに忘れてしまった』なんて、大嘘だ。昨日あった出来事を思い出すうちににじんできた涙が、誰かの手で拭われる。…誰かなんて、ここには二人しか居ないんだけど。
「男見る目ないよね」
「…な、」
「『お前といるとイライラする』だっけ?そんな事君に言う奴は馬にでも蹴られて死んじまえばいい。」
「へっ?」
「あいつ服のセンスだってクッソ最悪だし弱そうな癖に口だけやたら悪くてさあ」
「……チャッピー、」
…ペットの蛙に慰められるなんて、一体、どんな状況だ。頭のどこかで冷静に考えながら、それでも涙は止まってくれない。チャッピーはそんな私を見て、気障ったらしく言う。
「…ずっと思ってたよ。俺だったら君の事、そんな風に泣かせたりしねえのにって」
ペットの蛙が、人間に変身した。どう考えても異常な状況なのに、何故か安心してしまう私がいた。「…ありがとう、優しいね、チャッピー」呟いてみたら、困ったみたいな声が返ってくる。「あー、ちなみに俺の名前はサンジ。まあ別に今まで通りにチャッピーって呼んでくれてもいいけど」
…何で蛙が、人間に変身したのかとか、そもそも夢なんじゃないかとか、だったら何で一晩経っても消えないのかとか。聞きたいことはたくさんあるけど、ひとまずここは自己紹介からなのかもしれない。
「初めまして、よろしく、サンジ君。」なんて笑いながらぼんやりと考えていた。そういえばこんな感じのおとぎ話があったっけな、
蛙のS君と彼女の場合
「…お願い。チャッピーだけは、いつまでも私の側にいてね」
今から、丁度10時間前のことだ。ボロボロと涙を溢す彼女を、見てることしかできないで俺は考えていた。この子の涙を、拭ってやれるんならいいのに。だけどそんなのは、『蛙のチャッピー』には無理な話で。その時はまさか数時間後に、泥酔した名前ちゃんのキスで人間に戻れるなんて思ってもみなかった。…で、今、念願かなって俺は、この子の涙を拭いながら良からぬ事を考えてる訳なんだが。
「…ずっと思ってたよ。俺だったら君の事、こんな風に泣かせたりしねえのにって」
勿論、この言葉は本心だ。俺だったらこんな風に名前ちゃんを泣かせたりなんかしない。ただ、若干後ろ暗いタイミングでそれを言ったことも確かで。つまり、弱ってるときにつけこまないでいられるほど俺は、お人好しじゃないというかなんと言うか。
優しいねチャッピー、なんて、泣き笑いみたいな顔で呟く彼女は恐ろしく可愛くて。可愛くて可愛くて可愛くて、クッソ可愛くて。つまり抱き締めたいだとかなんだとかそんなやましいことを考え出す俺の事なんか勿論知るよしもなく、何を思ったのか名前ちゃんはぽつりと呟く。
「初めまして、よろしく、サンジ君。」
初めて呼んでくれた、俺の名前。みたこともないくらいの笑顔で彼女が笑ってくれたので、今のところは名前を呼んでもらうだけで満足しておくことにした。蛙のチャッピーから一歩前進だ。なんて、気の遠くなりそうなことを考えながらとりあえず俺も笑う。
「よろしく、プリンセス。」
そう、何も今すぐ好きになってもらおうって訳じゃない。先は長いんだ。じっくり甘やかして甘やかして骨抜きにして、絶対俺の物にする。『蛙のチャッピー』がそんな事を考えてるなんて、勿論彼女は知らないままでいい。