方舟を作る
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お加減はいかがですか? ……それは何よりです。ですが、まだ少し熱が高い。くれぐれも無理をなさらず、なるべく沢山寝てくださいね。過保護ですか? はは、当然のことです。それが俺の役割ですから。ここにお連れしたのは、貴方がこれ以上ご自分を痛めつけてしまわない為でもあります。だってそうでしょう。これまでだって貴方は、そんな風にご自分を追い詰めていたじゃないですか。ここに来るたびに貴方は、いつも酷く疲れていらっしゃいました。俺にだって随分と気を使って下さる。きっと他の連中に対してもそんな風なんでしょう。だったらなおの事、俺が気にかけて差し上げないと。いいえ、貴方を責めているわけではありません。ただ、赦しがたいだけなんです。貴方をそんなになるまで追い詰めた何もかもが。
必要とされなければ、生きている価値がない。以前そんな話をして下さいましたよね。自分の代わりは幾らでもいるのだから、存在価値を証明し続けなければならない。それができない自分がのうのうと生きているのは、罪悪に思えて仕方がないのだと。思い出せない位ずっとずっと昔から、貴方はそうやってご自分を責め続けてきたんですね。お可哀想に。ねぇ、教えてくださいませんか。貴方は一体、誰に必要とされたいのですか。存在価値とは、具体的には一体どんな事を言うのでしょうか。
……貴方が、死ねば良かったと。
誰が、貴方にそう言ったのですか。
ああ、大丈夫です、大丈夫ですよ。俺の目を見てください。ね、ゆっくり、ゆっくり息を吐いて。ここは安全です、ここには貴方を責めるような連中は居ません。ですからどうか聞かせて下さい。ゆっくりで良いんです。お話したいことからで構いません。時系列でなくても、支離滅裂でも大丈夫ですから。……、ええ、そうでしたね。貴方のお姉さまは、確かに事故でお亡くなりになっている。それはいつ頃の事だったか、思い出せますか? 小学三年生の頃、そうだったんですね。死ねば良かったと、言われたのはその頃なのですか。……、そう、ですか。お父様がそう話しているのをお聞きになったんですね。小さい子供が聞くには、余りに酷すぎる言葉です。それで貴方は、お姉さまの代わりになろうと? ……そうすればいつか許される。そう思ったんですね。その為にずっと、無理をしてでも他人の期待に応えようとしてきた。……お労しい事です、貴方が犯した罪など、何一つ存在しないというのに。
なぜそんな風に仰るのです。貴方に罪があるのだとして、一体誰に赦されなければならないのですか? ……お姉さまに? ご両親に? 本当は彼女の事が妬ましかった、疎ましかった。たったそれだけの事が、貴方が苦しむに足る理由だったのでしょうか。死んでしまえば良いと思ったんですね。お姉さまの事が妬ましかったから、彼女が居なくなりさえすれば、ご両親は貴方を愛してくれると思ったから。ねえ、そんな風に思ってしまうのは、無理もない事ですよ。幼い子供が愛されたいと望む事の、何が罪だと仰るんですか。連中が、……貴方のご両親がそうさせたのでしょう。幼い貴方を一人きりにして、こんなになるまで痛めつけて、その心に嫉妬と罪悪を植え付けた。
責めるなどとんでもない。こんなにお労しい貴方を、どうして罰さなければならないのです。辛かったですね。ずっとずっと、寂しかったですね。愛して欲しくて必死になるのも、そんな風に嫉妬をしてしまったのも、全て当然の事です。ご自分は劣った存在だと、そう思い込まされていたんですね。お可哀そうに。連中は貴方の無垢に、優しさに付け込んだんです。そうして貴方を甚振ることで、自分自身の罪から目を逸らし続けた。
違いますか? いいえ、これは本当の事ですよ。現に貴方は、今でも苦しんでいるじゃないですか。貴方を取り巻く何もかもに傷つけられ、それでも必死で尽くそうとなさってきた。既に死んでしまった連中にすら、……殆ど人間といっていいのかもわからない、貴方を脅かすだけの奴らにすら、貴方はお優しかった。ですがもう、そんな風に取り繕わなくて良いんですよ。ねぇ、もう止めにしてしまいませんか。貴方を傷つけるだけのそんな場所に、なんの価値があると言うのです。貴方を苦しめるだけのそんな連中に、どうして必要とされなければならないのですか。
ねぇ、俺はね、こう思うんです。
罪があるのは、罰されるべきなのは、悔い改めるべきなのは、貴方ではなく奴らの方だと。
貴方が世界に怯え続けるとしたら、それは世界の方が間違っているのです。貴方を脅かす有象無象こそが、真に消え去るべき邪悪なのではないですか。
……ね、ですから、貴方は何も、思い煩う必要などないのですよ。
必要とされなければ、生きている価値がない。以前そんな話をして下さいましたよね。自分の代わりは幾らでもいるのだから、存在価値を証明し続けなければならない。それができない自分がのうのうと生きているのは、罪悪に思えて仕方がないのだと。思い出せない位ずっとずっと昔から、貴方はそうやってご自分を責め続けてきたんですね。お可哀想に。ねぇ、教えてくださいませんか。貴方は一体、誰に必要とされたいのですか。存在価値とは、具体的には一体どんな事を言うのでしょうか。
……貴方が、死ねば良かったと。
誰が、貴方にそう言ったのですか。
ああ、大丈夫です、大丈夫ですよ。俺の目を見てください。ね、ゆっくり、ゆっくり息を吐いて。ここは安全です、ここには貴方を責めるような連中は居ません。ですからどうか聞かせて下さい。ゆっくりで良いんです。お話したいことからで構いません。時系列でなくても、支離滅裂でも大丈夫ですから。……、ええ、そうでしたね。貴方のお姉さまは、確かに事故でお亡くなりになっている。それはいつ頃の事だったか、思い出せますか? 小学三年生の頃、そうだったんですね。死ねば良かったと、言われたのはその頃なのですか。……、そう、ですか。お父様がそう話しているのをお聞きになったんですね。小さい子供が聞くには、余りに酷すぎる言葉です。それで貴方は、お姉さまの代わりになろうと? ……そうすればいつか許される。そう思ったんですね。その為にずっと、無理をしてでも他人の期待に応えようとしてきた。……お労しい事です、貴方が犯した罪など、何一つ存在しないというのに。
なぜそんな風に仰るのです。貴方に罪があるのだとして、一体誰に赦されなければならないのですか? ……お姉さまに? ご両親に? 本当は彼女の事が妬ましかった、疎ましかった。たったそれだけの事が、貴方が苦しむに足る理由だったのでしょうか。死んでしまえば良いと思ったんですね。お姉さまの事が妬ましかったから、彼女が居なくなりさえすれば、ご両親は貴方を愛してくれると思ったから。ねえ、そんな風に思ってしまうのは、無理もない事ですよ。幼い子供が愛されたいと望む事の、何が罪だと仰るんですか。連中が、……貴方のご両親がそうさせたのでしょう。幼い貴方を一人きりにして、こんなになるまで痛めつけて、その心に嫉妬と罪悪を植え付けた。
責めるなどとんでもない。こんなにお労しい貴方を、どうして罰さなければならないのです。辛かったですね。ずっとずっと、寂しかったですね。愛して欲しくて必死になるのも、そんな風に嫉妬をしてしまったのも、全て当然の事です。ご自分は劣った存在だと、そう思い込まされていたんですね。お可哀そうに。連中は貴方の無垢に、優しさに付け込んだんです。そうして貴方を甚振ることで、自分自身の罪から目を逸らし続けた。
違いますか? いいえ、これは本当の事ですよ。現に貴方は、今でも苦しんでいるじゃないですか。貴方を取り巻く何もかもに傷つけられ、それでも必死で尽くそうとなさってきた。既に死んでしまった連中にすら、……殆ど人間といっていいのかもわからない、貴方を脅かすだけの奴らにすら、貴方はお優しかった。ですがもう、そんな風に取り繕わなくて良いんですよ。ねぇ、もう止めにしてしまいませんか。貴方を傷つけるだけのそんな場所に、なんの価値があると言うのです。貴方を苦しめるだけのそんな連中に、どうして必要とされなければならないのですか。
ねぇ、俺はね、こう思うんです。
罪があるのは、罰されるべきなのは、悔い改めるべきなのは、貴方ではなく奴らの方だと。
貴方が世界に怯え続けるとしたら、それは世界の方が間違っているのです。貴方を脅かす有象無象こそが、真に消え去るべき邪悪なのではないですか。
……ね、ですから、貴方は何も、思い煩う必要などないのですよ。