長谷部
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結局昨日は徹夜だったらしい。朝方に携帯を確認したら、死にそうな声で留守電が入っていた。「申し訳ありません先に寝ていてください」って、なんでそんな切腹寸前みたいな声で謝るかなあ別にいいよって思いながら誠に遺憾な事に寂しくて昨日はよく眠れず、お陰様で目覚ましが鳴るよりも30分も早く布団から抜け出した。やる気でない。なのでなるべくとろとろと支度してなるべくのろのろと朝ごはんを食べて、それを今ちょっと後悔してる。
出勤時刻の五分前。「はせべくん私会社あるんだけど」とりあえず言ってはみたものの、勿論説得力なんてない。背中に回した腕に少しだけ力を込めたら、弱りきった声が私の名前を呼ぶ。ひんやりとしたコートの感触。息を吸って吐いたら冬のにおいがして、反射で笑ってしまう。たった一日離れてただけのその温度がうれしくてたまらなくて我ながら呆れる。たかが一日足らず離れていただけで。長谷部くんの肩越しに、放り投げられた仕事用のカバンが見える。あーあ、中にPCとか入ってるんじゃないの大丈夫かなあ、なんて、ちらっと思ったのに私も鞄を床に放り投げてしまった上に三秒後にはどうでも良くなる。というのも長谷部くんが可愛いので。
「長谷部くん、私会社あるんだけど」
「………、はい、」
「長谷部くん」
「…………はい、俺も愛してます」
「いや、私まだ何も言ってないよね?」
「すきです」
脈絡もなく甘い言葉をぶつけられて笑ってしまう。私会社あるんだけどそろそろ出ないと遅刻になるんだけど、何回目かわからないそのセリフを繰り返したら、抗議するみたいに長谷部くんが、首筋に頭を埋めてくる。さらさらと髪の毛がくすぐったい。ちらりと時計を確認した。あと5分。
「……好きです……」めったに聞けないくらい舌っ足らずの声が肌をくすぐって、だから徹夜明けの長谷部くんときたら可愛いのだ。一瞬だけ視線がかち合った瞳はぐずぐずに潤んでいて、「嫌です行かないでください」と無茶を言うのに絆されそうになるので危ない。あと五分たったら出る、と念じながらぐしゃぐしゃに頭を撫でれば、縋り付くみたいに腕の中に閉じ込められる。大きな掌が、後頭部の髪の毛を緩く掴む。長谷部くんが大きく息を吸って吐く、その感触に震えたのを気取られないように唇をかんだ。
「長谷部くん、そろそろ」
「嫌です」
「…………いやほら、時間が、ね」
「………では、」
「うん?」
「あと少しだけこうしていていいですか」
「えー、あと二分で出ないとなんだけど私」
「あと三十秒だけですから」
「……、うん、まあ、わかった」
それで、そっから十秒くらい。そろそろ、と言ったところで噛み付くみたいにキスをされて、無理やり入り込んできた舌に口蓋を突かれて視界がにじむ。「ちょ、」抗議の声すら呑み込まれて、体を離そうにもきつく抱き知られてるからそれもできない。
気持ちい、やばい、もういっかな。まんまと流されそうになった思考は、ぱちん、という軽い音で我に返った。後頭部のバレッタが外された音。ちょっと!無理やり体を離して、睨みつけた先で長谷部くんが、わざとらしくしおらしい表情をつくる。白々しい。あのさ、舌打ちしたのめっちゃ聞こえたからね、「どうしても行くんですか?」って、当たり前じゃん。「………どうしても、ですか?」って、そうだよどうしてもだよ!
そうやって押し問答して、大分絆されたけど何とか無理やり玄関のドアを開ける。「送ります、せめて駅まででも」と頑なに言うのを受け流していたら、長谷部くんはいかにも不服そうな様子で手を捕まえてきたけど、それでも「行ってらっしゃい」と言ってくれるのでちょっと笑う。すっごい嫌そうな顔してるじゃんだだ漏れじゃん何それかわいい。ああもう、かわいいなあ。「うん、行ってきます。好きだよ」ドアを閉める寸前に投げた言葉には「俺は愛してます」とか返されて、だからまあ、つまり、定時で帰るためなら軽く悪魔に魂を売るよね、だって私の長谷部くんがこんなに可愛い。
※電車に乗ってから携帯見たら、家を出てから十秒おきとかで連絡来てて、まだ別れて15分とかしか経ってないのに通知が50件とかいう猟奇的な数になっていた。全部長谷部くんからで、「愛してます」とか「好きです」とか「なるべく早く連絡を下さい迎えに行きますから」とかそんなことばっかり大量に。それで声を出して笑ってしまって、周りの人に変な目で見られたのにそれでも誤魔化せないくらいににやけてしまう。にやけたまんま「好きだよ」と返せば「俺もです」と一瞬で返事が返ってくるのに流石に心配になった。徹夜明けじゃん長谷部くん、そろそろ寝なよ。
出勤時刻の五分前。「はせべくん私会社あるんだけど」とりあえず言ってはみたものの、勿論説得力なんてない。背中に回した腕に少しだけ力を込めたら、弱りきった声が私の名前を呼ぶ。ひんやりとしたコートの感触。息を吸って吐いたら冬のにおいがして、反射で笑ってしまう。たった一日離れてただけのその温度がうれしくてたまらなくて我ながら呆れる。たかが一日足らず離れていただけで。長谷部くんの肩越しに、放り投げられた仕事用のカバンが見える。あーあ、中にPCとか入ってるんじゃないの大丈夫かなあ、なんて、ちらっと思ったのに私も鞄を床に放り投げてしまった上に三秒後にはどうでも良くなる。というのも長谷部くんが可愛いので。
「長谷部くん、私会社あるんだけど」
「………、はい、」
「長谷部くん」
「…………はい、俺も愛してます」
「いや、私まだ何も言ってないよね?」
「すきです」
脈絡もなく甘い言葉をぶつけられて笑ってしまう。私会社あるんだけどそろそろ出ないと遅刻になるんだけど、何回目かわからないそのセリフを繰り返したら、抗議するみたいに長谷部くんが、首筋に頭を埋めてくる。さらさらと髪の毛がくすぐったい。ちらりと時計を確認した。あと5分。
「……好きです……」めったに聞けないくらい舌っ足らずの声が肌をくすぐって、だから徹夜明けの長谷部くんときたら可愛いのだ。一瞬だけ視線がかち合った瞳はぐずぐずに潤んでいて、「嫌です行かないでください」と無茶を言うのに絆されそうになるので危ない。あと五分たったら出る、と念じながらぐしゃぐしゃに頭を撫でれば、縋り付くみたいに腕の中に閉じ込められる。大きな掌が、後頭部の髪の毛を緩く掴む。長谷部くんが大きく息を吸って吐く、その感触に震えたのを気取られないように唇をかんだ。
「長谷部くん、そろそろ」
「嫌です」
「…………いやほら、時間が、ね」
「………では、」
「うん?」
「あと少しだけこうしていていいですか」
「えー、あと二分で出ないとなんだけど私」
「あと三十秒だけですから」
「……、うん、まあ、わかった」
それで、そっから十秒くらい。そろそろ、と言ったところで噛み付くみたいにキスをされて、無理やり入り込んできた舌に口蓋を突かれて視界がにじむ。「ちょ、」抗議の声すら呑み込まれて、体を離そうにもきつく抱き知られてるからそれもできない。
気持ちい、やばい、もういっかな。まんまと流されそうになった思考は、ぱちん、という軽い音で我に返った。後頭部のバレッタが外された音。ちょっと!無理やり体を離して、睨みつけた先で長谷部くんが、わざとらしくしおらしい表情をつくる。白々しい。あのさ、舌打ちしたのめっちゃ聞こえたからね、「どうしても行くんですか?」って、当たり前じゃん。「………どうしても、ですか?」って、そうだよどうしてもだよ!
そうやって押し問答して、大分絆されたけど何とか無理やり玄関のドアを開ける。「送ります、せめて駅まででも」と頑なに言うのを受け流していたら、長谷部くんはいかにも不服そうな様子で手を捕まえてきたけど、それでも「行ってらっしゃい」と言ってくれるのでちょっと笑う。すっごい嫌そうな顔してるじゃんだだ漏れじゃん何それかわいい。ああもう、かわいいなあ。「うん、行ってきます。好きだよ」ドアを閉める寸前に投げた言葉には「俺は愛してます」とか返されて、だからまあ、つまり、定時で帰るためなら軽く悪魔に魂を売るよね、だって私の長谷部くんがこんなに可愛い。
※電車に乗ってから携帯見たら、家を出てから十秒おきとかで連絡来てて、まだ別れて15分とかしか経ってないのに通知が50件とかいう猟奇的な数になっていた。全部長谷部くんからで、「愛してます」とか「好きです」とか「なるべく早く連絡を下さい迎えに行きますから」とかそんなことばっかり大量に。それで声を出して笑ってしまって、周りの人に変な目で見られたのにそれでも誤魔化せないくらいににやけてしまう。にやけたまんま「好きだよ」と返せば「俺もです」と一瞬で返事が返ってくるのに流石に心配になった。徹夜明けじゃん長谷部くん、そろそろ寝なよ。