長谷部
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※姉妹パロ
「姉さん、待ってくださいそれは」
国重の制止する声に構わず大技を叩き込む。画面の中のそいつを飲み込んでそのまま場外に弾き出した。「それは卑怯ですよ!畜生、さっき戻ってきたばかりなのに」悲鳴のような声に笑う。「相変わらずヘッタクソだねえ、国重」いいながら手は止めない。最高に楽しい。ガチャガチャガチャ。自分のコントローラーの音だけが空間に響く。国重はもう会話をする余裕もないらしい。画面の中のおっさんが逃げ回るのを私のピンク玉が執拗に追い詰めて吸いこんで、吐き出す。
「国重くぅん、だぁめだよ軽率に↑B出したら、落ちてきたところ狙うに決まってるじゃん?」クソ、とか普段はあまり聞かない悪態が国重の口から溢れるのに笑う。このまま終わりにしてもいいけど、おっさんの大技を避けて小技とケリでダメージをためておく。あえて。「はーよっわ、ちょうよゆーまじちょっろい」小学生みたいな節を付けて屈辱感を煽ってやればムキになって向かってくるので(まじでこういうときの国重はクソほどちょろい)それを避けて背後からふっとばして、これで私の20勝目だ。最高に気分がいい。
「………異議あり……」
「んん?何かなあきっこえないなあ?お姉ちゃんになんか文句でもあるのかなあ?」
「異議あり!卑怯じゃないですかスマッシュ技に2発目があるなんて説明書に書いてませんよ!」
「はは、そんなのユーザーが創意工夫で見つけ出すからに決まってるじゃん、全部説明書に書いたら面白くないでしょ常識的に」
「常識的に全て説明書に記載すべきでしょう、クソ、あれさえなければ」
「じゃあ二発目のスマッシュ技は無しってルールでもっかいやる?それで負けたらあんた、相当格好悪いことになるけど」
「………ぐぅ」
ぐぅってまじで言うやつ初めて見たよね。しかもそれが自分の弟とは。うなだれたままの頭を軽くなでてやれば、「憐れみは、無用です俺は諦めませんからね」とかうめくような声。「一体何と戦ってるのそれ?」グシャグシャと髪の毛をかき回されても文句一つ言わず、ただただされるがままなのが面白い。本当に私の弟はかわいい。私に一つも似てなくて、頭が良くてたまにバカで従順でチョロくて。
「国重さあ、私が勝ったら何でも言うこと聞くって言ったよね」
「……言いましたね。三回回ってワンとでも鳴けばご満足ですか?」
「やーまあ、それも悪くないけど……あのさ?」
「何ですか、歯切れの悪い」
「うーん」
「姉さん……何です?言ってください」
「……、いや。あんた、なんで留学断っちゃったの?」
「………」
「ハーバードだかシカゴだかって聞いたけど、勿体無いじゃん。皆びっくりしてたよ」
「………それは、」
「折角頭いいのに」
「………」
「黙ってないでさ。さっき『なんでもする』って言ったの姉さん忘れてないからね言ってみなよ」
私の弟はかわいい。
私に一つも似てなくて、頭の出来も段違いで。生まれてから今までずっと、国重は私の自慢の弟だった。当たり前みたいにお勉強のできる弟は当たり前みたいに一番頭の良い大学に進学し、恐ろしいほどの熱心さで勉学に邁進していた。だから、ハーバードだかケンブリッジだかシカゴだか、その手の大学から声がかかるのも当然だった。私含め全員が当たり前だと思っていた。当たり前に海外に渡って博士だかなんだか取得して遠くに行くものだと。なのに国重はあっさりその誘いを断って、あっさり就職を決めてしまった。親戚一同の騒ぎっぷりったらなかった。勿論私だって驚いたし。
「……言ったら、あなたは呆れるでしょう」
「えーなに?かのぴっぴと離れたくないとかそんなん?」
「ちが、」
「うわ、ほんとに!?国重彼女いんの、えーめっちゃみたい見して見して写メは?」
「待ってください違いますから!」
「あっやしい、いいからちょっとスマホ貸して、見してよ写真」
瞬発力の勝利。机の上にあった携帯をすばやく捕まえて、どれどれ、とか言ってる自分の声が余りにも悪者っぽくて笑う。脂下がった声で言いながら、だけど携帯に国重の生年月日をいれたら弾かれたので少し真顔に戻る。適当な番号を片っ端から入力していくけど端から弾かれた。あれ?パスワードアタックみたいにいろんな数字をとっかえひっかえしてみたけど開かない。おかしい。
「ねえ、こないだまで自分の生年月日にしてたよね?」
「……姉さん、なぜそれを知ってるんです」
「国重くんねえ、携帯電話ってのは常に携帯しないといけないんだよ。居間に置きっぱなしにしたら見てくれって言ってるのとほぼ同じ」
「………」
「国重、……あのさあ?まさかと思うけどかのぴっぴのお誕生日とかパスワードにしてないよね?流石に引く」
「………」
「……まじかー……重症じゃんガチのやつ……」
沈黙。
ごとり、と携帯電話を机に戻した音が嫌に響く。国重は何も言わないでもう一度机に突っ伏して、頭を抱えて動かない。そうきたかあ、なんてうそぶきながら内心、何となく自分が動揺していることに気づいてしまってその事実に更に動揺した。遠くに行くものだと思ってる。何でもできて頭が良くて顔も良くて、何から何まで私にちっとも似てない国重が、いつまでも私のそばにいるわけがない。それは当然の事だった。彼女がいた事自体も初めてじゃなくて、何なら高校の頃なんか結構取っ替え引っ替えしていたはずだ。私は一体何に動揺してるんだろう?じりじりと嫌な焦燥感を無視してコントローラーを取り上げる。
「それで?諦めないならもう一戦してみる?」
「……望むところです」
そこからまた、再開するゲーム大会。一発目二発目、鈍くなった脳みその回転とは裏腹に、指は自動的にボタンを操ってくるくると技を繰り出していく。「ぐっ」またしても国重が呻くので笑う。「はは、よわい」
「……先ほどの話の続きですが」
「…あーかのぴっぴの」
「違います、留学の話です」
「だからラブラブ彼女の話でしょ?」
「誤解です、姉さん。俺はただ」
これで終わりだ、とばかりに発動した大技が不意に空振りする。運良く回避を決めた国重(ていうか、国重の操るおっさんキャラ)が、その隙にこっちに炎を飛ばしてくるので避け、あ、クソ、失敗した。ガチャガチャガチャガチャ、連続コンボから抜け出そうと無言でコントローラーを操るうちに、その言葉は唐突に鼓膜を揺らす。
「……留学したら、」
「うん?」
「留学したら、こうして遊んでくれなくなるじゃないですか」
「はあ?」
「格闘ゲームもUNOもできなくなる」
「そんなに好きなの、格ゲーとUNOが」
「好きです」
「へえ?」
「好きです、……姉さん、」
あっ、まっずい。手元がとちった一瞬でピンク玉が吹っ飛ばされた。「わあああまってちょっと!!」私の言葉にかぶせるみたいに国重の声がとろりと甘く響く。「俺はただ、あなたのそばを離れたくないだけですよ」まじかよ、と呟いたのと、『1P LOSE』の文字が画面に踊るのは同時だった。「……俺の、勝ちですね?」くっそ、あからさまに嬉しそうな声出すねあんた。
「今の卑怯でしょ、なんでそういう口からでまかせ言うかな」
「卑怯とは何のことですか、本当の事を言っただけです」
「どっから?どっから嘘だった?ねえ私別にかのぴとのおデート邪魔したりしないよ、ねえ」
「話を聞いて下さい、だから違うと何度言えば」
「いやマジで!マジで協力するし何ならこないだ見つけためちゃくちゃデートに使えそうな夜景の綺麗なお店教えるし」
「そんなことより、俺の勝ちです」
「あー、一勝ね、私二十勝だけどね」
「何でも言う事を聞いてくれると先ほど」
「いいけど、あんたも二十回私の言う事聞くんだよ?」
「ええ。三回回ってワンでも使い走りでも安いものです。ただし、『なかったことに』だけは聞きませんからね」
「……はあ。いいよ、言ってごらん」
コントローラーを放り投げた、その先で国重が笑っている。視線が溶けて絡まって、ねえさん、と密やかに唇が、柔らかく息を吐いた。私と全く似てない血の繋がった弟。いつか遠くに離れていくはずの。私の側からいなくなるはずの。一瞬だけ目を閉じたら暗闇の向こうでそれでも、国重の瞳の、薄紫色が離れない。「クリスマスに」いつも通りの声。……うん、と反射で返事をしてから素っ頓狂な声を出した。「クリスマスが、何だって?」
「その『めちゃくちゃデートに使えそうな夜景の綺麗なお店』に連れて行ってください、クリスマスに」
「ええー……弟とクリスマスに夜景の綺麗なレストランって、超しょっぱいねそれ?」
「何でも言う事を聞くと言ったじゃないですか」
「言ったけどさー……えー、私のおごりで?嫌だ」
「嫌だ、は無しですよ。金なら俺が出します」
「クリスマスは無理だって、彼氏と約束してるし」
「ええ、好きにすればいいんじゃないですか?俺に地獄の果てまでつきまとわれても良いんなら」
「やだ、たちの悪い紐みたいな事言うね?」
「紐ではなく、俺はあなたの弟ですよ。あくまで」
……それで本当に、クリスマスは弟と二人で『めちゃくちゃデートに使えそうな夜景の綺麗なお店』にいく羽目になった。ちなみに彼氏には普通に振られた。それが2年前の、クリスマス直前の休日の出来事。
(それで今、「姉さん!例のゲームに新作が出ますね!任せてください、予約も済ませてあります。クリスマスはゲーム三昧ですよ」とか言ううきうきな電話がかかってきて頭痛がしている。いや、ほんとさ、国重は何でそんな格ゲー好きなの?下手の横好きって言葉知ってる?)
※パスワードは姉の誕生日にしている
「姉さん、待ってくださいそれは」
国重の制止する声に構わず大技を叩き込む。画面の中のそいつを飲み込んでそのまま場外に弾き出した。「それは卑怯ですよ!畜生、さっき戻ってきたばかりなのに」悲鳴のような声に笑う。「相変わらずヘッタクソだねえ、国重」いいながら手は止めない。最高に楽しい。ガチャガチャガチャ。自分のコントローラーの音だけが空間に響く。国重はもう会話をする余裕もないらしい。画面の中のおっさんが逃げ回るのを私のピンク玉が執拗に追い詰めて吸いこんで、吐き出す。
「国重くぅん、だぁめだよ軽率に↑B出したら、落ちてきたところ狙うに決まってるじゃん?」クソ、とか普段はあまり聞かない悪態が国重の口から溢れるのに笑う。このまま終わりにしてもいいけど、おっさんの大技を避けて小技とケリでダメージをためておく。あえて。「はーよっわ、ちょうよゆーまじちょっろい」小学生みたいな節を付けて屈辱感を煽ってやればムキになって向かってくるので(まじでこういうときの国重はクソほどちょろい)それを避けて背後からふっとばして、これで私の20勝目だ。最高に気分がいい。
「………異議あり……」
「んん?何かなあきっこえないなあ?お姉ちゃんになんか文句でもあるのかなあ?」
「異議あり!卑怯じゃないですかスマッシュ技に2発目があるなんて説明書に書いてませんよ!」
「はは、そんなのユーザーが創意工夫で見つけ出すからに決まってるじゃん、全部説明書に書いたら面白くないでしょ常識的に」
「常識的に全て説明書に記載すべきでしょう、クソ、あれさえなければ」
「じゃあ二発目のスマッシュ技は無しってルールでもっかいやる?それで負けたらあんた、相当格好悪いことになるけど」
「………ぐぅ」
ぐぅってまじで言うやつ初めて見たよね。しかもそれが自分の弟とは。うなだれたままの頭を軽くなでてやれば、「憐れみは、無用です俺は諦めませんからね」とかうめくような声。「一体何と戦ってるのそれ?」グシャグシャと髪の毛をかき回されても文句一つ言わず、ただただされるがままなのが面白い。本当に私の弟はかわいい。私に一つも似てなくて、頭が良くてたまにバカで従順でチョロくて。
「国重さあ、私が勝ったら何でも言うこと聞くって言ったよね」
「……言いましたね。三回回ってワンとでも鳴けばご満足ですか?」
「やーまあ、それも悪くないけど……あのさ?」
「何ですか、歯切れの悪い」
「うーん」
「姉さん……何です?言ってください」
「……、いや。あんた、なんで留学断っちゃったの?」
「………」
「ハーバードだかシカゴだかって聞いたけど、勿体無いじゃん。皆びっくりしてたよ」
「………それは、」
「折角頭いいのに」
「………」
「黙ってないでさ。さっき『なんでもする』って言ったの姉さん忘れてないからね言ってみなよ」
私の弟はかわいい。
私に一つも似てなくて、頭の出来も段違いで。生まれてから今までずっと、国重は私の自慢の弟だった。当たり前みたいにお勉強のできる弟は当たり前みたいに一番頭の良い大学に進学し、恐ろしいほどの熱心さで勉学に邁進していた。だから、ハーバードだかケンブリッジだかシカゴだか、その手の大学から声がかかるのも当然だった。私含め全員が当たり前だと思っていた。当たり前に海外に渡って博士だかなんだか取得して遠くに行くものだと。なのに国重はあっさりその誘いを断って、あっさり就職を決めてしまった。親戚一同の騒ぎっぷりったらなかった。勿論私だって驚いたし。
「……言ったら、あなたは呆れるでしょう」
「えーなに?かのぴっぴと離れたくないとかそんなん?」
「ちが、」
「うわ、ほんとに!?国重彼女いんの、えーめっちゃみたい見して見して写メは?」
「待ってください違いますから!」
「あっやしい、いいからちょっとスマホ貸して、見してよ写真」
瞬発力の勝利。机の上にあった携帯をすばやく捕まえて、どれどれ、とか言ってる自分の声が余りにも悪者っぽくて笑う。脂下がった声で言いながら、だけど携帯に国重の生年月日をいれたら弾かれたので少し真顔に戻る。適当な番号を片っ端から入力していくけど端から弾かれた。あれ?パスワードアタックみたいにいろんな数字をとっかえひっかえしてみたけど開かない。おかしい。
「ねえ、こないだまで自分の生年月日にしてたよね?」
「……姉さん、なぜそれを知ってるんです」
「国重くんねえ、携帯電話ってのは常に携帯しないといけないんだよ。居間に置きっぱなしにしたら見てくれって言ってるのとほぼ同じ」
「………」
「国重、……あのさあ?まさかと思うけどかのぴっぴのお誕生日とかパスワードにしてないよね?流石に引く」
「………」
「……まじかー……重症じゃんガチのやつ……」
沈黙。
ごとり、と携帯電話を机に戻した音が嫌に響く。国重は何も言わないでもう一度机に突っ伏して、頭を抱えて動かない。そうきたかあ、なんてうそぶきながら内心、何となく自分が動揺していることに気づいてしまってその事実に更に動揺した。遠くに行くものだと思ってる。何でもできて頭が良くて顔も良くて、何から何まで私にちっとも似てない国重が、いつまでも私のそばにいるわけがない。それは当然の事だった。彼女がいた事自体も初めてじゃなくて、何なら高校の頃なんか結構取っ替え引っ替えしていたはずだ。私は一体何に動揺してるんだろう?じりじりと嫌な焦燥感を無視してコントローラーを取り上げる。
「それで?諦めないならもう一戦してみる?」
「……望むところです」
そこからまた、再開するゲーム大会。一発目二発目、鈍くなった脳みその回転とは裏腹に、指は自動的にボタンを操ってくるくると技を繰り出していく。「ぐっ」またしても国重が呻くので笑う。「はは、よわい」
「……先ほどの話の続きですが」
「…あーかのぴっぴの」
「違います、留学の話です」
「だからラブラブ彼女の話でしょ?」
「誤解です、姉さん。俺はただ」
これで終わりだ、とばかりに発動した大技が不意に空振りする。運良く回避を決めた国重(ていうか、国重の操るおっさんキャラ)が、その隙にこっちに炎を飛ばしてくるので避け、あ、クソ、失敗した。ガチャガチャガチャガチャ、連続コンボから抜け出そうと無言でコントローラーを操るうちに、その言葉は唐突に鼓膜を揺らす。
「……留学したら、」
「うん?」
「留学したら、こうして遊んでくれなくなるじゃないですか」
「はあ?」
「格闘ゲームもUNOもできなくなる」
「そんなに好きなの、格ゲーとUNOが」
「好きです」
「へえ?」
「好きです、……姉さん、」
あっ、まっずい。手元がとちった一瞬でピンク玉が吹っ飛ばされた。「わあああまってちょっと!!」私の言葉にかぶせるみたいに国重の声がとろりと甘く響く。「俺はただ、あなたのそばを離れたくないだけですよ」まじかよ、と呟いたのと、『1P LOSE』の文字が画面に踊るのは同時だった。「……俺の、勝ちですね?」くっそ、あからさまに嬉しそうな声出すねあんた。
「今の卑怯でしょ、なんでそういう口からでまかせ言うかな」
「卑怯とは何のことですか、本当の事を言っただけです」
「どっから?どっから嘘だった?ねえ私別にかのぴとのおデート邪魔したりしないよ、ねえ」
「話を聞いて下さい、だから違うと何度言えば」
「いやマジで!マジで協力するし何ならこないだ見つけためちゃくちゃデートに使えそうな夜景の綺麗なお店教えるし」
「そんなことより、俺の勝ちです」
「あー、一勝ね、私二十勝だけどね」
「何でも言う事を聞いてくれると先ほど」
「いいけど、あんたも二十回私の言う事聞くんだよ?」
「ええ。三回回ってワンでも使い走りでも安いものです。ただし、『なかったことに』だけは聞きませんからね」
「……はあ。いいよ、言ってごらん」
コントローラーを放り投げた、その先で国重が笑っている。視線が溶けて絡まって、ねえさん、と密やかに唇が、柔らかく息を吐いた。私と全く似てない血の繋がった弟。いつか遠くに離れていくはずの。私の側からいなくなるはずの。一瞬だけ目を閉じたら暗闇の向こうでそれでも、国重の瞳の、薄紫色が離れない。「クリスマスに」いつも通りの声。……うん、と反射で返事をしてから素っ頓狂な声を出した。「クリスマスが、何だって?」
「その『めちゃくちゃデートに使えそうな夜景の綺麗なお店』に連れて行ってください、クリスマスに」
「ええー……弟とクリスマスに夜景の綺麗なレストランって、超しょっぱいねそれ?」
「何でも言う事を聞くと言ったじゃないですか」
「言ったけどさー……えー、私のおごりで?嫌だ」
「嫌だ、は無しですよ。金なら俺が出します」
「クリスマスは無理だって、彼氏と約束してるし」
「ええ、好きにすればいいんじゃないですか?俺に地獄の果てまでつきまとわれても良いんなら」
「やだ、たちの悪い紐みたいな事言うね?」
「紐ではなく、俺はあなたの弟ですよ。あくまで」
……それで本当に、クリスマスは弟と二人で『めちゃくちゃデートに使えそうな夜景の綺麗なお店』にいく羽目になった。ちなみに彼氏には普通に振られた。それが2年前の、クリスマス直前の休日の出来事。
(それで今、「姉さん!例のゲームに新作が出ますね!任せてください、予約も済ませてあります。クリスマスはゲーム三昧ですよ」とか言ううきうきな電話がかかってきて頭痛がしている。いや、ほんとさ、国重は何でそんな格ゲー好きなの?下手の横好きって言葉知ってる?)
※パスワードは姉の誕生日にしている