長谷部
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『
長谷部くんへ
そこそこ大変なこともあるけど私が頑張れるのは長谷部くんがいてくれるからで、いや勿論他の皆もいてこそだけどとりわけ長谷部くんが ていうかごめん 謝ることがあります。
こないだ「甥っ子が生まれたから妹にお祝いしないといけないから」って万屋に付いてきてもらったけどあれは嘘です。そもそも妹もいません。あと先週の「友達が結婚するから結婚祝いに」っていうのも嘘で、しかももうちょっと遊んでたいからって無理矢理道に迷った感じにしたけど、ほんとはあのへん道は暗記してるので、バレてないと思うけどバレてたら死ねるね。
居もしない甥っ子とかありもしない友達の結婚まででっち上げて何がしたいかってつまり理由は察してください。この際だから白状すると、書類の提出期日忘れて徹夜で手伝ってもらってるの、あれもごめん本当はちょっとわざとっていうかそのくらいに私はつまり、長谷部くんのことが それはそうとこないだ同田貫くんが缶のコンポタのコーンを一瞬で全部食べる方法を編み出したんだけどそれが結構やばくて、あの人ほんとやばいよねまあ長谷部くんも結構やばいけど、で、その方法というのは』
……あれ、何してるんだろ。我に返った室内で、遠くから鈴虫の音が聞こえる。こないだ万屋で衝動買いした便箋に書いた怪文書は、勢い余って所々インクが滲んでいる。そのうえ字も汚い。完全に、提出期限直前で煮詰まった末の現実逃避だった。目の前には、一時間前から一文字たりとも進んでいない報告書(政府が今更、里で玉集めした結果を報告しろとか言ってきたんだけど、もうそれほんと何ヶ月前の話だよって)。……何やってるんだろ、仕事しよ。右頬をひっぱたいて気合を入れてコーヒーを飲み干した。
途中から帰ってきた長谷部くんが手伝ってくれたので、書類の期日自体は問題なくクリアできた。でも恐ろしいことが一つある。
あのとき書いた怪文書、私が長谷部くん宛に認めた怪文書の便箋が、どこを探しても見当たらない。最初の三日間は気が気じゃなかったけどそのうちどうでも良くなって、まあどっか机の中に紛れてるんだろーって、なってて。
*
今日もそこそこの多忙具合だった。こんのすけに持っていってもらう書類をどっちゃり仕分けて、長谷部くんと手分けして全部揃ってるかどうか確認してる時だった。すごい速さで書類を捲る長谷部くんが、ふと手を止める。
「どうしたの長谷部くん」
「ああ、いえ、その、何でもありません」
何でもありません、と答えながら手元の何かから視線をそらさない。何やら尋常でない雰囲気が漂う。「やばい何かミスってた?ごめん見して」、慌てて詰め寄る私を「いえ」とだけ言って長谷部くんはかわして、なのになぜか目線は手元の何かに固定されているので気になって仕方ない。なんだあの紙。なので正面からむりくり覗き込んで見ることにした。「ねえ何それ、気になる見せてって、ば」、それで、軽く1メートルくらい後退る。かたん、と、机に背中がぶつかる音。見るんじゃなかった。いや、見てよかった今なら誤魔化しようもある。だって長谷部くんの持ってるそれは、
「あっ、あー……それ、それね、それは」
「こちらは」
「友達の、」
「ご友人の」
「友達の」
「ご友人のご友人、ですか」
「うん、あっ違う、いや、うん友達の友達の」
「偶然でしょうか、『長谷部くんへ』と宛名がありますね」
「そうそう長谷部くん、えっとあれだよその、ほら知ってるでしょあのサッカー選手の」
「サッカー選手、ですか?」
「そうサッカー選手の!長谷部くん!」
……あっ、墓穴掘った、かも。
誤魔化そうとして思わず口走った『サッカー選手の長谷部』のワードとともに、あの怪文書の内容を思い出す。万屋とか書いてる。書類がどうのとか書いてる。同田貫とか出てくる。知るか。このまま誤魔化して走り抜けるしかない。一瞬でそこまで考えてありったけのイマジネーションを振り絞る。なるべく平静を装いながら。
「友達がサッカー選手の長谷部くん宛にファンレター書いたの添削してって」
「しかし先程はご友人のご友人と」
「あっそう、そうなの間違えたごめん友達の友達がどうしてもって」
「不思議なこともあるものですね?」
「ん、うん、何が何が」
「筆跡がとても貴女に似ている」
「ね、ねーーー!!!それねー!!!私も思ってたよふっしぎだよねえ!やっぱり似ちゃうのかな友達の友達同士、他人のほにゃららとか朱に交わればほにゃららって言うじゃん?あれなんだっけねあの諺ね、長谷部くん覚えてる?」
よっしゃこのままことわざに話題をシフトしよう!
脳内で急ハンドルを切った私をよそに、長谷部くんはよりによってその、怪文書の筆跡を指でたどる。ゆっくりゆっくり。これはまずい。
「それにしても知りませんでした」
「うん何が?何を?」
「あれほど文章作成が苦手だと仰っていた主が、『ご友人のご友人』から添削の依頼を受けるほどのご評判だったとは。まるで代筆屋のようではないですか」
「あっ、それねいや、文面の添削っていうかその、どっちかというと誤字とか脱字とか」
「なるほど?」
「代筆ってわけじゃないけどほら、ほら私、漢検二級だし」
墓穴の掘り方が凄い。口をついて出た『漢検二級だし』という馬鹿すぎる発言に自分で動揺した。漢検関係ない上に漢検二級の人間に添削を頼むかって言うと絶対頼まない。だけど「素晴らしい」と言う謎の賛辞とともに、一瞬だけ長谷部くんがこちらを見て、微笑む。
「本当に面白い偶然ですね。この手紙自体がまるで主、貴女の事を書いているようだ」
「おっ、……もしろいよねえ何でだろうね?万屋とか書類とかなんの話だろうね夢の話かな?ねえ?」
「はは、それに文面もそっくりだ。結論ばかり後回しで筆が走る癖も」
「そうかなー?んん、どうかな?そんなことないと思うなあ」
外堀の埋め方が凄い。バレてる可能性が高い。そこで私は脳内で緊急タスクフォースを打ち上げる。
①この怪文書の書き主を自分と認め懺悔する
②あくまで貫き通して誤魔化す。ほとぼりが冷めるのを待つ。
どう考えても②だな。②で行こう。気合を入れ直したところで不意に目があって、長谷部くんがこの上なく楽しそうに笑ってまた、便箋に目を落とした。
「可愛らしい」
それで、一瞬だけ便箋に唇が触れた。手紙にキスするみたいに。「ひぇっ」、変な声が出てしまって口許を抑える。何をした。いま長谷部くんは一体何を。ぐるぐると考える彼が今私の手紙に何をしたのか、でもそこは後回しにしてとりあえず今は怪文書の回収が急務だ。
「あの、それ、その、そろそろ返してもらってもいいかな。急いで添削して返送しないと、明日までに」
「ああそういうことでしたらお手伝いできると思います。筆耕はそれなりに得意なので」
「いやほらプライバシーってもんがあるじゃん?」
「しかし友人の友人に添削を頼むなんて状況を鑑みると、御本人もプライバシーよりも結果が優先なのでは?」
「いやあー……どうかなぁ?そんなことなくない?」
「明日までとなると時間がありませんので、ひとまず写しを取ってまいります、主は引き続き書類の仕分けをお願いしますね」
「いやコピーはいらないでしょ!流石に!」
「何を仰ってるんですか、原本を汚したらどうするんです?」
真綿で首を絞める!
そんなことわざが、頭の中でピカピカと点滅する。尊厳も何もかもかなぐり捨てて、長谷部くんの手の中のそれを奪い取ろうか。逡巡してる間に長谷部くんは立ち上がり私に背を向ける。
「じゃあコピー、私が取ってくるからほら、」
「ハハハ、おかしな事を。コピーごときに主のお手を煩わせる訳には参りませんよ」
「いいってちょうどめちゃくちゃコピーしたくてたまらなかったし今!むしろさせて私にコピーを」
「好きです」
「うんだから、……は?」
「俺もとても、愛してます」
手の中のそれを。奪い取ろうと立ち上がったところでいきなりぶつけられた言葉に思考が停止した。振り返る長谷部くんと視線が絡んでふと、その目が細められた。まるで恋人を見るみたいなそんな目、
「……ご友人に」
「……あっ、うん」
「ああ失礼、『ご友人のご友人』にどうぞ宜しくお伝えください」
「………そっ、そう、だねうん」
「それから、本日も書類仕事で徹夜なさるんでしたね?」
「いや今日のは違うよ!わざとじゃない」
「何の話ですか?」
「ごめんなんでもない、大丈夫だよ一人で全然、たいした事ないから量が」
「しかし、明日は『姪っ子のお誕生日プレゼントを買いに行く』のですよね?徹夜など以ての外です、俺がお手伝いしたほうがよさそうだ」
「やま、山姥切君呼ぶよ!!いつも手伝って貰ってて悪いしねごめんねいつもね!」
「はは、初期刀は遠征に行っているでしょう」
「鳩!呼び戻し鳩取ってきて長谷部くん!!」
「どちらにしろ書類仕事なら、奴ではなく俺が適任では?」
オーバーキル!十対零の完敗、歴史的敗北です!!とか、なんか頭の中で謎の実況が始まる。長谷部くんの背中を見送りその場に取り残された私のつかの間のハーフタイム(たったの三十秒)は、戻ってきた彼の「俺も恋文をしたためたいのですが」と言う恐ろしい一言でぶち壊されることとなった。多分ここから、羞恥とともに地獄の後半戦が始まる。今更血が逆流してきて、それなのに長谷部くんは容赦なく止めを刺してきた。「勿論貴女が添削してくださいますよね?俺の主」なんて嘘でしょ、なんでこんな事に。
長谷部くんへ
そこそこ大変なこともあるけど私が頑張れるのは長谷部くんがいてくれるからで、いや勿論他の皆もいてこそだけどとりわけ長谷部くんが ていうかごめん 謝ることがあります。
こないだ「甥っ子が生まれたから妹にお祝いしないといけないから」って万屋に付いてきてもらったけどあれは嘘です。そもそも妹もいません。あと先週の「友達が結婚するから結婚祝いに」っていうのも嘘で、しかももうちょっと遊んでたいからって無理矢理道に迷った感じにしたけど、ほんとはあのへん道は暗記してるので、バレてないと思うけどバレてたら死ねるね。
居もしない甥っ子とかありもしない友達の結婚まででっち上げて何がしたいかってつまり理由は察してください。この際だから白状すると、書類の提出期日忘れて徹夜で手伝ってもらってるの、あれもごめん本当はちょっとわざとっていうかそのくらいに私はつまり、長谷部くんのことが それはそうとこないだ同田貫くんが缶のコンポタのコーンを一瞬で全部食べる方法を編み出したんだけどそれが結構やばくて、あの人ほんとやばいよねまあ長谷部くんも結構やばいけど、で、その方法というのは』
……あれ、何してるんだろ。我に返った室内で、遠くから鈴虫の音が聞こえる。こないだ万屋で衝動買いした便箋に書いた怪文書は、勢い余って所々インクが滲んでいる。そのうえ字も汚い。完全に、提出期限直前で煮詰まった末の現実逃避だった。目の前には、一時間前から一文字たりとも進んでいない報告書(政府が今更、里で玉集めした結果を報告しろとか言ってきたんだけど、もうそれほんと何ヶ月前の話だよって)。……何やってるんだろ、仕事しよ。右頬をひっぱたいて気合を入れてコーヒーを飲み干した。
途中から帰ってきた長谷部くんが手伝ってくれたので、書類の期日自体は問題なくクリアできた。でも恐ろしいことが一つある。
あのとき書いた怪文書、私が長谷部くん宛に認めた怪文書の便箋が、どこを探しても見当たらない。最初の三日間は気が気じゃなかったけどそのうちどうでも良くなって、まあどっか机の中に紛れてるんだろーって、なってて。
*
今日もそこそこの多忙具合だった。こんのすけに持っていってもらう書類をどっちゃり仕分けて、長谷部くんと手分けして全部揃ってるかどうか確認してる時だった。すごい速さで書類を捲る長谷部くんが、ふと手を止める。
「どうしたの長谷部くん」
「ああ、いえ、その、何でもありません」
何でもありません、と答えながら手元の何かから視線をそらさない。何やら尋常でない雰囲気が漂う。「やばい何かミスってた?ごめん見して」、慌てて詰め寄る私を「いえ」とだけ言って長谷部くんはかわして、なのになぜか目線は手元の何かに固定されているので気になって仕方ない。なんだあの紙。なので正面からむりくり覗き込んで見ることにした。「ねえ何それ、気になる見せてって、ば」、それで、軽く1メートルくらい後退る。かたん、と、机に背中がぶつかる音。見るんじゃなかった。いや、見てよかった今なら誤魔化しようもある。だって長谷部くんの持ってるそれは、
「あっ、あー……それ、それね、それは」
「こちらは」
「友達の、」
「ご友人の」
「友達の」
「ご友人のご友人、ですか」
「うん、あっ違う、いや、うん友達の友達の」
「偶然でしょうか、『長谷部くんへ』と宛名がありますね」
「そうそう長谷部くん、えっとあれだよその、ほら知ってるでしょあのサッカー選手の」
「サッカー選手、ですか?」
「そうサッカー選手の!長谷部くん!」
……あっ、墓穴掘った、かも。
誤魔化そうとして思わず口走った『サッカー選手の長谷部』のワードとともに、あの怪文書の内容を思い出す。万屋とか書いてる。書類がどうのとか書いてる。同田貫とか出てくる。知るか。このまま誤魔化して走り抜けるしかない。一瞬でそこまで考えてありったけのイマジネーションを振り絞る。なるべく平静を装いながら。
「友達がサッカー選手の長谷部くん宛にファンレター書いたの添削してって」
「しかし先程はご友人のご友人と」
「あっそう、そうなの間違えたごめん友達の友達がどうしてもって」
「不思議なこともあるものですね?」
「ん、うん、何が何が」
「筆跡がとても貴女に似ている」
「ね、ねーーー!!!それねー!!!私も思ってたよふっしぎだよねえ!やっぱり似ちゃうのかな友達の友達同士、他人のほにゃららとか朱に交わればほにゃららって言うじゃん?あれなんだっけねあの諺ね、長谷部くん覚えてる?」
よっしゃこのままことわざに話題をシフトしよう!
脳内で急ハンドルを切った私をよそに、長谷部くんはよりによってその、怪文書の筆跡を指でたどる。ゆっくりゆっくり。これはまずい。
「それにしても知りませんでした」
「うん何が?何を?」
「あれほど文章作成が苦手だと仰っていた主が、『ご友人のご友人』から添削の依頼を受けるほどのご評判だったとは。まるで代筆屋のようではないですか」
「あっ、それねいや、文面の添削っていうかその、どっちかというと誤字とか脱字とか」
「なるほど?」
「代筆ってわけじゃないけどほら、ほら私、漢検二級だし」
墓穴の掘り方が凄い。口をついて出た『漢検二級だし』という馬鹿すぎる発言に自分で動揺した。漢検関係ない上に漢検二級の人間に添削を頼むかって言うと絶対頼まない。だけど「素晴らしい」と言う謎の賛辞とともに、一瞬だけ長谷部くんがこちらを見て、微笑む。
「本当に面白い偶然ですね。この手紙自体がまるで主、貴女の事を書いているようだ」
「おっ、……もしろいよねえ何でだろうね?万屋とか書類とかなんの話だろうね夢の話かな?ねえ?」
「はは、それに文面もそっくりだ。結論ばかり後回しで筆が走る癖も」
「そうかなー?んん、どうかな?そんなことないと思うなあ」
外堀の埋め方が凄い。バレてる可能性が高い。そこで私は脳内で緊急タスクフォースを打ち上げる。
①この怪文書の書き主を自分と認め懺悔する
②あくまで貫き通して誤魔化す。ほとぼりが冷めるのを待つ。
どう考えても②だな。②で行こう。気合を入れ直したところで不意に目があって、長谷部くんがこの上なく楽しそうに笑ってまた、便箋に目を落とした。
「可愛らしい」
それで、一瞬だけ便箋に唇が触れた。手紙にキスするみたいに。「ひぇっ」、変な声が出てしまって口許を抑える。何をした。いま長谷部くんは一体何を。ぐるぐると考える彼が今私の手紙に何をしたのか、でもそこは後回しにしてとりあえず今は怪文書の回収が急務だ。
「あの、それ、その、そろそろ返してもらってもいいかな。急いで添削して返送しないと、明日までに」
「ああそういうことでしたらお手伝いできると思います。筆耕はそれなりに得意なので」
「いやほらプライバシーってもんがあるじゃん?」
「しかし友人の友人に添削を頼むなんて状況を鑑みると、御本人もプライバシーよりも結果が優先なのでは?」
「いやあー……どうかなぁ?そんなことなくない?」
「明日までとなると時間がありませんので、ひとまず写しを取ってまいります、主は引き続き書類の仕分けをお願いしますね」
「いやコピーはいらないでしょ!流石に!」
「何を仰ってるんですか、原本を汚したらどうするんです?」
真綿で首を絞める!
そんなことわざが、頭の中でピカピカと点滅する。尊厳も何もかもかなぐり捨てて、長谷部くんの手の中のそれを奪い取ろうか。逡巡してる間に長谷部くんは立ち上がり私に背を向ける。
「じゃあコピー、私が取ってくるからほら、」
「ハハハ、おかしな事を。コピーごときに主のお手を煩わせる訳には参りませんよ」
「いいってちょうどめちゃくちゃコピーしたくてたまらなかったし今!むしろさせて私にコピーを」
「好きです」
「うんだから、……は?」
「俺もとても、愛してます」
手の中のそれを。奪い取ろうと立ち上がったところでいきなりぶつけられた言葉に思考が停止した。振り返る長谷部くんと視線が絡んでふと、その目が細められた。まるで恋人を見るみたいなそんな目、
「……ご友人に」
「……あっ、うん」
「ああ失礼、『ご友人のご友人』にどうぞ宜しくお伝えください」
「………そっ、そう、だねうん」
「それから、本日も書類仕事で徹夜なさるんでしたね?」
「いや今日のは違うよ!わざとじゃない」
「何の話ですか?」
「ごめんなんでもない、大丈夫だよ一人で全然、たいした事ないから量が」
「しかし、明日は『姪っ子のお誕生日プレゼントを買いに行く』のですよね?徹夜など以ての外です、俺がお手伝いしたほうがよさそうだ」
「やま、山姥切君呼ぶよ!!いつも手伝って貰ってて悪いしねごめんねいつもね!」
「はは、初期刀は遠征に行っているでしょう」
「鳩!呼び戻し鳩取ってきて長谷部くん!!」
「どちらにしろ書類仕事なら、奴ではなく俺が適任では?」
オーバーキル!十対零の完敗、歴史的敗北です!!とか、なんか頭の中で謎の実況が始まる。長谷部くんの背中を見送りその場に取り残された私のつかの間のハーフタイム(たったの三十秒)は、戻ってきた彼の「俺も恋文をしたためたいのですが」と言う恐ろしい一言でぶち壊されることとなった。多分ここから、羞恥とともに地獄の後半戦が始まる。今更血が逆流してきて、それなのに長谷部くんは容赦なく止めを刺してきた。「勿論貴女が添削してくださいますよね?俺の主」なんて嘘でしょ、なんでこんな事に。