長谷部
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「風邪を引いたらどうするんです?」と、言葉に反してどこまでも嬉しそうな声。返事はしなかった。どうって、多分長谷部くんが全力で看病してくれるからそれも悪くないかもなぁ。しんどいのは嫌だけど。
そんな風なアホな事を考えて、それも声にはしない。ソファーに突っ伏した体制のままほんの少しだけ身じろぎしたら、お風呂上がりの濡れた髪の毛から雫が垂れて肩を濡らす。
「ああもう全く、これだから」濡れたところを柔らかくなぞる指が、そのまま髪の毛に触れた。「俺がいないとまるで駄目じゃないか」、甘ったるい声。起きてるからね、独り言とか全部聞こえてるからね長谷部くん。わざとか。わざとだな。そうだよ長谷部くんがいないと私はまるで駄目だよどうせ。
そう開き直ってしまうくらいには眠いので、起きられますか、という言葉には、「うん」、とか「うう」、とか、返したような、返してないような。「起きてください」と今度はその声が耳元を擽るので、背中に添えられた手に素直に従う。体を起こして何とか瞼をこじ開けて、見上げた先の藤色の瞳がとろとろと光を宿して綺麗だった。
長谷部くんの瞳は本当にきれいだなあ。とぼんやりとその光を追いかける。瞬きするたびにまつげの影が落ちてくるのもきれいだ。きれい、なんだけど、いかんせん眠い。長めの瞬きを繰り返すうちにもう一度ソファーに後戻りしそうになって、「まだ眠ってはいけませんよ」と言われても長谷部くんの声を聞くだけでひたすらに安心してしまう。眠気で頭がぐらぐら揺れている気がする。
タオルを被せられて丁寧に丁寧に濡れた髪を拭かれるのにされるがまんまになりながら、半分寝言みたいに「好きだよ」なんて言ってみれば「俺も愛してます」なんて言葉が当たり前のように返ってくるのでああもう、好きだどうしようめっちゃ好きだ。とそっから思考がエスカレートして、またアホみたいな事を思ってしまう。幸せだなぁこのまま死んだっていいかもしれないなぁ、なんて。馬鹿みたいだから別に言わないけど。
「乾かしますよ」、妙に遠くから長谷部くんの声。頷いたら、ぶぉー、と、ドライヤーの音がやっぱり妙に遠くで聞こえる。
「全く、髪の毛位お一人で乾かせるようになってください」
「んん」
「寝癖が付きますし髪が痛みます、何より風邪を引くでしょう」
「………うん」
「聞いていますか?」
「……うん、」
「聞いていませんね?」
「……うん」
「俺がいない時どうするんです?」
「……、はせべくんがいない時、は、多分そのまんま寝て風邪引く」
「馬鹿なことを仰らないでください」
頬を擽るドライヤーの風と、髪の流れを整えてくれる指先が心地良い。目を閉じて指の感触だけを追いかける。はせべくん。うつらうつらしながら呼べば「どうしました?」って笑みを含んだ柔らかい声と、首筋にキスの感触が落ちてくる。きちんと乾かされた頭のてっぺんから、毛先までをゆっくりゆっくりと指が伝っていく。しあわせだなあ、と思ったのはそのまま声に出てしまったんだろうか。とびっきりの甘い声で名前を呼んでくれてつむじに口付けて、「ああもう、可愛いなぁ」なんて、そんなふうに笑ってくれるんだから可愛いのは長谷部くんの方なのだ。可愛いなぁ、ああもう、可愛い。
「……長谷部くんに」
「俺に、何です?」
なのでうっかり本音を言ってしまうのは仕方ないのだ。だって長谷部くんがひたすら私に甘いので。
「長谷部くんに構ってほしくてわざとやってる、ほんとのところは」
ほんとのところ、髪だって自分で乾かせる。一人ならお風呂上がりにソファーでぐだったりしないし、それもこれも全部長谷部くんに構ってもらうために決まってるじゃん。なんて。
そんなこと白状したところで長谷部くんは、「全く、これだから貴女は」と笑ってくれるだけなので、つまりお察しの通り私と来たら彼がいないとまるでだめなのだ。
少しだけ寄りかかれば後ろから抱きしめてもらえて、後頭部にかかる息が擽ったい。私より低い体温がだんだん馴染んで同じ温度に混ざっていく。すきだよ、ほとんど寝言みたいな声でも長谷部くんはきちんと拾って返してくれる。「はい、俺も愛してます」なんて、とろとろに甘い声が耳元で融けて、ああ眠いなあ、流石にベッドまで運んでもらうのは申し訳ないなあ、起きなきゃなあ、とか葛藤してたけど、まんまと寝たよね、普通に。
※その後、ていうか次の日、「おはようございます」と長谷部くんの声に目をあけてみたらきちんとベッドに寝かされていたうえにきちんとお布団の中で、しかも朝ごはんまで用意されていて、本格的に駄目にされそうで自分でも怖い。怖い、のに、口からは「わーベーコンエッグだあ美味しそう」とかいういかにもアホっぽい感想が飛び出して、いや、長谷部くんいいから「はい、あーん」とかしなくていいから!美味しいですかって、そりゃ、まあ、ベーコンかりっかりでおいしいけどいや大丈夫!二口目からはもう自分で食べるから!
そんな風なアホな事を考えて、それも声にはしない。ソファーに突っ伏した体制のままほんの少しだけ身じろぎしたら、お風呂上がりの濡れた髪の毛から雫が垂れて肩を濡らす。
「ああもう全く、これだから」濡れたところを柔らかくなぞる指が、そのまま髪の毛に触れた。「俺がいないとまるで駄目じゃないか」、甘ったるい声。起きてるからね、独り言とか全部聞こえてるからね長谷部くん。わざとか。わざとだな。そうだよ長谷部くんがいないと私はまるで駄目だよどうせ。
そう開き直ってしまうくらいには眠いので、起きられますか、という言葉には、「うん」、とか「うう」、とか、返したような、返してないような。「起きてください」と今度はその声が耳元を擽るので、背中に添えられた手に素直に従う。体を起こして何とか瞼をこじ開けて、見上げた先の藤色の瞳がとろとろと光を宿して綺麗だった。
長谷部くんの瞳は本当にきれいだなあ。とぼんやりとその光を追いかける。瞬きするたびにまつげの影が落ちてくるのもきれいだ。きれい、なんだけど、いかんせん眠い。長めの瞬きを繰り返すうちにもう一度ソファーに後戻りしそうになって、「まだ眠ってはいけませんよ」と言われても長谷部くんの声を聞くだけでひたすらに安心してしまう。眠気で頭がぐらぐら揺れている気がする。
タオルを被せられて丁寧に丁寧に濡れた髪を拭かれるのにされるがまんまになりながら、半分寝言みたいに「好きだよ」なんて言ってみれば「俺も愛してます」なんて言葉が当たり前のように返ってくるのでああもう、好きだどうしようめっちゃ好きだ。とそっから思考がエスカレートして、またアホみたいな事を思ってしまう。幸せだなぁこのまま死んだっていいかもしれないなぁ、なんて。馬鹿みたいだから別に言わないけど。
「乾かしますよ」、妙に遠くから長谷部くんの声。頷いたら、ぶぉー、と、ドライヤーの音がやっぱり妙に遠くで聞こえる。
「全く、髪の毛位お一人で乾かせるようになってください」
「んん」
「寝癖が付きますし髪が痛みます、何より風邪を引くでしょう」
「………うん」
「聞いていますか?」
「……うん、」
「聞いていませんね?」
「……うん」
「俺がいない時どうするんです?」
「……、はせべくんがいない時、は、多分そのまんま寝て風邪引く」
「馬鹿なことを仰らないでください」
頬を擽るドライヤーの風と、髪の流れを整えてくれる指先が心地良い。目を閉じて指の感触だけを追いかける。はせべくん。うつらうつらしながら呼べば「どうしました?」って笑みを含んだ柔らかい声と、首筋にキスの感触が落ちてくる。きちんと乾かされた頭のてっぺんから、毛先までをゆっくりゆっくりと指が伝っていく。しあわせだなあ、と思ったのはそのまま声に出てしまったんだろうか。とびっきりの甘い声で名前を呼んでくれてつむじに口付けて、「ああもう、可愛いなぁ」なんて、そんなふうに笑ってくれるんだから可愛いのは長谷部くんの方なのだ。可愛いなぁ、ああもう、可愛い。
「……長谷部くんに」
「俺に、何です?」
なのでうっかり本音を言ってしまうのは仕方ないのだ。だって長谷部くんがひたすら私に甘いので。
「長谷部くんに構ってほしくてわざとやってる、ほんとのところは」
ほんとのところ、髪だって自分で乾かせる。一人ならお風呂上がりにソファーでぐだったりしないし、それもこれも全部長谷部くんに構ってもらうために決まってるじゃん。なんて。
そんなこと白状したところで長谷部くんは、「全く、これだから貴女は」と笑ってくれるだけなので、つまりお察しの通り私と来たら彼がいないとまるでだめなのだ。
少しだけ寄りかかれば後ろから抱きしめてもらえて、後頭部にかかる息が擽ったい。私より低い体温がだんだん馴染んで同じ温度に混ざっていく。すきだよ、ほとんど寝言みたいな声でも長谷部くんはきちんと拾って返してくれる。「はい、俺も愛してます」なんて、とろとろに甘い声が耳元で融けて、ああ眠いなあ、流石にベッドまで運んでもらうのは申し訳ないなあ、起きなきゃなあ、とか葛藤してたけど、まんまと寝たよね、普通に。
※その後、ていうか次の日、「おはようございます」と長谷部くんの声に目をあけてみたらきちんとベッドに寝かされていたうえにきちんとお布団の中で、しかも朝ごはんまで用意されていて、本格的に駄目にされそうで自分でも怖い。怖い、のに、口からは「わーベーコンエッグだあ美味しそう」とかいういかにもアホっぽい感想が飛び出して、いや、長谷部くんいいから「はい、あーん」とかしなくていいから!美味しいですかって、そりゃ、まあ、ベーコンかりっかりでおいしいけどいや大丈夫!二口目からはもう自分で食べるから!