長谷部
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死にたいって言ったかもしれないけど本当に死にたいわけじゃないし全然生きるし、だから、ほんと大丈夫なんだよ言ってるだけだから。頭の中でそういうふうに文章を組み立てて、なるべく面白い感じで言おう、今すぐいわなきゃ駄目だ早く、とか焦ってみたけど私と来たら馬鹿みたいに同じ言葉を繰り返す。
「死にたい、」考えたセリフのよりによって冒頭の冒頭で躓いてしまって、ていうか泣いてしまって、そしたら本当に死にたい奴みたいになってしまって困っている。困る。何が困るって長谷部くんだ。長谷部くんがこうやってぎゅうぎゅうに抱きしめてくれるので、それでまた泣きたくなってしまうのは本当にどうした事なんだろう。
さっきまで涙なんか一滴も出そうになかったのにほんとだよ、長谷部くんなんか変な薬とか使ったの私に?それを聞こうにも涙は止まらないので顔を上げられないし、頑張って声に出したら「長谷部くん」以降はもう音になってなくて、それなのに長谷部くんはいつもどおり「はい、俺も愛してます」って、いや愛してますってなんだよ私も好きだけど今一言もそんな話してなくない?となり、結論として涙が止まらない。
一定のリズムで背中を叩く手が優しい。落ち着こうと深呼吸してるはずなのに却って苦しくなって、そしたらひたすらに優しい声が耳元に落ちる。
「大丈夫ですから、ほら、ゆっくり息を吸ってみてください」いやだいじょばないよむり。「大丈夫ですから、ね、主」いや全然だいじょばない、けど、長谷部くんが「大丈夫です俺がいます」、と、繰り返すので。そうか長谷部くんが大丈夫って言うからそうなのかなあだいじょばないけど、って思ううちにまんまと呼吸が落ち着いてくる。「いいこですね」って長谷部くん、全くいい子ではね、ないけど。
「……はせべくん」
「なんですか?」
「しにたいっていうのはほんとにしにたいわけじゃなくて」
「はい」
「っていうか全然生きるし死にたいけど大丈夫なんだけどだいじょばないけど、あのさ」
おかしい。言語中枢とか多分そのへんの機能がおかしい。「しにたいわけじゃなくて、」そうそう、よし、心配しなくて大丈夫だって言わないと。「ただわたしいきてちゃいけないかんじするの、」いや違うこれは言うつもりなかったのになんで言っちゃった、「はせべくんがなんでそんなふうにしてくれるのかもよくわからないし」うわあこんなこと言うつもり無かったのにおかしいぞ、「しにたいんだけど、」あー馬鹿振り出しに戻ったバカ、「ごめんこんなこといわれてもこまるよねほんとごめんね、」ああ失敗したなあこれ、墓穴ほったなあ。メンヘラの彼女みたいな事言っちゃったよ挽回しなきゃ、「ていうか、」ていうか、えっと、なんだろ。「ていうか、何かいい匂いするけど香水変えた?」……私って、ほんとに馬鹿なのかもしれないな。死にたい。
だからつまり言語中枢とかそういう辺の機能がおかしい。頑張って脳みそフル回転させてるのにぼろぼろと余計なことばかり口走る。ポンコツだ。なんかもう生きてちゃだめな感じがする。押し付けられた服の胸元に点々と涙のシミが落ちていくのに罪悪感を覚えて、ごめんって離れようとしたのに更に力を込めて抱きしめられたらもうどうしようもなかった。
「香水などは特に使っておりませんが。俺の香りを気に入っていただけているなら幸いです」少しだけ笑いを含んだ声が耳元で言うので、あっそうなんだ、藤の花みたいな匂いするなっていつも思ってて、なんか、なんかごめん。中途半端なところまで言いかけてやめる。下手なことを口走りそうになるのが怖くて「ごめん」ともういちど謝ったら指先が、髪の毛を撫でてくれる。「謝る必要がどこにあるのです?」つむじに口づけの感触が落ちてきて、うわあきざだなあ、とか言えばいいのに涙しか出てこなかった。
「ごめん、なんか、」
「いいんですよ、大丈夫」
「や、だいじょばないけど、ごめん」
「そうですね、貴女は何一つ悪くありませんね?」
「いや多分私が悪い、悪いから頑張らないと」
「そうやってご自分を犠牲にするところが美点だと、俺は充分存じておりますが」
「美点、とか、そういう話じゃなくて」
「違うのですか?」
「違うよ、全部私が、」
「貴女が、何だと仰るのですか」
「……ごめん、迷惑かけて、ごめん」
「中々面白い事を仰いますね。ええ、そういう所も愛しておりますが。それとも俺は、何かご不安にさせるような事をしたでしょうか」
「いや、だって、だから、」
「……だから、なんです?」
だからさあ、今も延々管巻いて泣いて絡んで迷惑かけて、これ悪くないわけないよね死んだほうがいい死なないけど、ぐるぐると行ったり来たりする思考は言葉にならなかった。「もうやだ何でそうなの長谷部くん」まともに言えたのはこれだけで、長谷部くんは何でもないことみたいに笑ってくれるので。
「恋人を甘やかすのに理由が必要なんですか?」その声が脳みその中で甘く甘く溶けて消える。さらさらの髪の毛が私の額に落ちてきて視界に影を落とす。ひどい顔をしてるんだろうに長谷部くんは私を見て、愛しげに目を細める。
愛してる愛してる愛してる、どろどろに蕩けるみたいな視線が臆面もなくそれを伝えてくる。気恥ずかしくなって目をそらす前に唇に。それから、壊れたみたいに涙が溢れているのを指でなぞって目元と、まぶたと、耳元にも。何度も何度も口付けられて混じり合ってく体温が切なくてまた泣いてしまう。
「好きです」と柔らかく融けるみたいな声に首を振る。だからそういうのは困るのだ。もともと駄目なのに、甘やかされると再現なしに甘えてしまう。もっと厳しくしてくれないと困るのに、でも長谷部くんは「ええ。貴女がそう望むなら幾らでも」ってそう言うだけで、だから私は再現なく駄目にされてしまう。怖い。
そうやってグズグズに甘やかされるうちにいつの間にか寝てしまったんだろう、今私はお布団の中で、ぎゅうぎゅうに抱きしめられた状態で冷静になって、やっぱり死にたくなってます。死にたい。離れようとしたら楽しげな笑い声が耳を擽る。「逃しませんよ」ひぇ、近い。
「長谷部くん、えっと、えっ、と、あのさ」
「はい。よくお眠りになれましたか?」
「えっとあのさっきの」
「先程の、何ですか?」
「いやちょっと、その、……忘れてくれると」
「すみません意図が良くわからないのですが」
「いやちょっとさっきあんな、ちょっと流石にあれだよねちょっとなかったよね、ごめん忘れて」
「はは、酷い事を仰いますね」
「えっ」
「忘れろだなんて、俺は嬉しかったのに」
「…………えっと、………」
「貴女がこうして逃げてくる先が、俺のもとである事が嬉しくて仕方ない」
思い返して死にたくなる。死にたくなるんだけど、長谷部くんが「どうにかなりそうなくらい愛おしかったのに、忘れるわけがないでしょう?」とかとろとろの声で言うので、ほんと何でそうなの長谷部くんは。
「それで」
「………うん、」
「まだ『死にたい』ですか」
「いや、死にたいっていうか、別に大したことなくて」
「はは。何があったか教えてくださいますね?俺に全部」
「………何っていうか、いや、その、ごめんほんとあれ、大したことなくて」
「はい」
「ちょっと色々あったくらいで死にたくなるの私の悪い癖なんだけど」
ぐるぐると言い訳するのを笑って聞いてくれるので、ついつい喋りすぎてしまうのはいつもの事だった。
「私さあ嫌な事とかあるとすぐ涙出てくるし怒鳴られたときとかそれが逆効果だって知ってるのにあからさまに落ち込んだりしちゃうから、多分それが悪くてそれで」
長谷部くんの服に顔を埋めて独り言みたいに喋るうちに止まらなくなって、主語も述語も結論もぐちゃぐちゃになって軽く混乱する。
だけど長谷部くんが「はい、大丈夫ですよ。一つ一つ、ゆっくり、教えて下さい。少しずつでいいので」とか背中を撫でるので、本当に洗いざらい話してしまう。
それで、「なるほど。貴女をそんなふうに痛めつけたのはどこのどなたですか?」と聞いてくるのに聞かれるまんまに「痛めつけるって言うか別に普通の、上司とか先輩だけど」とか答えちゃったのもしかして関係してるのかなって、後日の人事異動の資料見てことの重大さを自覚することになるわけだけど。(上司と先輩は行方不明になったため大幅な配置転換がありました)
「死にたい、」考えたセリフのよりによって冒頭の冒頭で躓いてしまって、ていうか泣いてしまって、そしたら本当に死にたい奴みたいになってしまって困っている。困る。何が困るって長谷部くんだ。長谷部くんがこうやってぎゅうぎゅうに抱きしめてくれるので、それでまた泣きたくなってしまうのは本当にどうした事なんだろう。
さっきまで涙なんか一滴も出そうになかったのにほんとだよ、長谷部くんなんか変な薬とか使ったの私に?それを聞こうにも涙は止まらないので顔を上げられないし、頑張って声に出したら「長谷部くん」以降はもう音になってなくて、それなのに長谷部くんはいつもどおり「はい、俺も愛してます」って、いや愛してますってなんだよ私も好きだけど今一言もそんな話してなくない?となり、結論として涙が止まらない。
一定のリズムで背中を叩く手が優しい。落ち着こうと深呼吸してるはずなのに却って苦しくなって、そしたらひたすらに優しい声が耳元に落ちる。
「大丈夫ですから、ほら、ゆっくり息を吸ってみてください」いやだいじょばないよむり。「大丈夫ですから、ね、主」いや全然だいじょばない、けど、長谷部くんが「大丈夫です俺がいます」、と、繰り返すので。そうか長谷部くんが大丈夫って言うからそうなのかなあだいじょばないけど、って思ううちにまんまと呼吸が落ち着いてくる。「いいこですね」って長谷部くん、全くいい子ではね、ないけど。
「……はせべくん」
「なんですか?」
「しにたいっていうのはほんとにしにたいわけじゃなくて」
「はい」
「っていうか全然生きるし死にたいけど大丈夫なんだけどだいじょばないけど、あのさ」
おかしい。言語中枢とか多分そのへんの機能がおかしい。「しにたいわけじゃなくて、」そうそう、よし、心配しなくて大丈夫だって言わないと。「ただわたしいきてちゃいけないかんじするの、」いや違うこれは言うつもりなかったのになんで言っちゃった、「はせべくんがなんでそんなふうにしてくれるのかもよくわからないし」うわあこんなこと言うつもり無かったのにおかしいぞ、「しにたいんだけど、」あー馬鹿振り出しに戻ったバカ、「ごめんこんなこといわれてもこまるよねほんとごめんね、」ああ失敗したなあこれ、墓穴ほったなあ。メンヘラの彼女みたいな事言っちゃったよ挽回しなきゃ、「ていうか、」ていうか、えっと、なんだろ。「ていうか、何かいい匂いするけど香水変えた?」……私って、ほんとに馬鹿なのかもしれないな。死にたい。
だからつまり言語中枢とかそういう辺の機能がおかしい。頑張って脳みそフル回転させてるのにぼろぼろと余計なことばかり口走る。ポンコツだ。なんかもう生きてちゃだめな感じがする。押し付けられた服の胸元に点々と涙のシミが落ちていくのに罪悪感を覚えて、ごめんって離れようとしたのに更に力を込めて抱きしめられたらもうどうしようもなかった。
「香水などは特に使っておりませんが。俺の香りを気に入っていただけているなら幸いです」少しだけ笑いを含んだ声が耳元で言うので、あっそうなんだ、藤の花みたいな匂いするなっていつも思ってて、なんか、なんかごめん。中途半端なところまで言いかけてやめる。下手なことを口走りそうになるのが怖くて「ごめん」ともういちど謝ったら指先が、髪の毛を撫でてくれる。「謝る必要がどこにあるのです?」つむじに口づけの感触が落ちてきて、うわあきざだなあ、とか言えばいいのに涙しか出てこなかった。
「ごめん、なんか、」
「いいんですよ、大丈夫」
「や、だいじょばないけど、ごめん」
「そうですね、貴女は何一つ悪くありませんね?」
「いや多分私が悪い、悪いから頑張らないと」
「そうやってご自分を犠牲にするところが美点だと、俺は充分存じておりますが」
「美点、とか、そういう話じゃなくて」
「違うのですか?」
「違うよ、全部私が、」
「貴女が、何だと仰るのですか」
「……ごめん、迷惑かけて、ごめん」
「中々面白い事を仰いますね。ええ、そういう所も愛しておりますが。それとも俺は、何かご不安にさせるような事をしたでしょうか」
「いや、だって、だから、」
「……だから、なんです?」
だからさあ、今も延々管巻いて泣いて絡んで迷惑かけて、これ悪くないわけないよね死んだほうがいい死なないけど、ぐるぐると行ったり来たりする思考は言葉にならなかった。「もうやだ何でそうなの長谷部くん」まともに言えたのはこれだけで、長谷部くんは何でもないことみたいに笑ってくれるので。
「恋人を甘やかすのに理由が必要なんですか?」その声が脳みその中で甘く甘く溶けて消える。さらさらの髪の毛が私の額に落ちてきて視界に影を落とす。ひどい顔をしてるんだろうに長谷部くんは私を見て、愛しげに目を細める。
愛してる愛してる愛してる、どろどろに蕩けるみたいな視線が臆面もなくそれを伝えてくる。気恥ずかしくなって目をそらす前に唇に。それから、壊れたみたいに涙が溢れているのを指でなぞって目元と、まぶたと、耳元にも。何度も何度も口付けられて混じり合ってく体温が切なくてまた泣いてしまう。
「好きです」と柔らかく融けるみたいな声に首を振る。だからそういうのは困るのだ。もともと駄目なのに、甘やかされると再現なしに甘えてしまう。もっと厳しくしてくれないと困るのに、でも長谷部くんは「ええ。貴女がそう望むなら幾らでも」ってそう言うだけで、だから私は再現なく駄目にされてしまう。怖い。
そうやってグズグズに甘やかされるうちにいつの間にか寝てしまったんだろう、今私はお布団の中で、ぎゅうぎゅうに抱きしめられた状態で冷静になって、やっぱり死にたくなってます。死にたい。離れようとしたら楽しげな笑い声が耳を擽る。「逃しませんよ」ひぇ、近い。
「長谷部くん、えっと、えっ、と、あのさ」
「はい。よくお眠りになれましたか?」
「えっとあのさっきの」
「先程の、何ですか?」
「いやちょっと、その、……忘れてくれると」
「すみません意図が良くわからないのですが」
「いやちょっとさっきあんな、ちょっと流石にあれだよねちょっとなかったよね、ごめん忘れて」
「はは、酷い事を仰いますね」
「えっ」
「忘れろだなんて、俺は嬉しかったのに」
「…………えっと、………」
「貴女がこうして逃げてくる先が、俺のもとである事が嬉しくて仕方ない」
思い返して死にたくなる。死にたくなるんだけど、長谷部くんが「どうにかなりそうなくらい愛おしかったのに、忘れるわけがないでしょう?」とかとろとろの声で言うので、ほんと何でそうなの長谷部くんは。
「それで」
「………うん、」
「まだ『死にたい』ですか」
「いや、死にたいっていうか、別に大したことなくて」
「はは。何があったか教えてくださいますね?俺に全部」
「………何っていうか、いや、その、ごめんほんとあれ、大したことなくて」
「はい」
「ちょっと色々あったくらいで死にたくなるの私の悪い癖なんだけど」
ぐるぐると言い訳するのを笑って聞いてくれるので、ついつい喋りすぎてしまうのはいつもの事だった。
「私さあ嫌な事とかあるとすぐ涙出てくるし怒鳴られたときとかそれが逆効果だって知ってるのにあからさまに落ち込んだりしちゃうから、多分それが悪くてそれで」
長谷部くんの服に顔を埋めて独り言みたいに喋るうちに止まらなくなって、主語も述語も結論もぐちゃぐちゃになって軽く混乱する。
だけど長谷部くんが「はい、大丈夫ですよ。一つ一つ、ゆっくり、教えて下さい。少しずつでいいので」とか背中を撫でるので、本当に洗いざらい話してしまう。
それで、「なるほど。貴女をそんなふうに痛めつけたのはどこのどなたですか?」と聞いてくるのに聞かれるまんまに「痛めつけるって言うか別に普通の、上司とか先輩だけど」とか答えちゃったのもしかして関係してるのかなって、後日の人事異動の資料見てことの重大さを自覚することになるわけだけど。(上司と先輩は行方不明になったため大幅な配置転換がありました)