長谷部
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※長谷部のとうらぶ四周年ボイスネタです
「四周年ですよ、主」
目を開けて早々にぶつけられた言葉が理解できない。
「はあ」
それでもとりあえず何か言おうとしたら、めちゃくちゃ間の抜けた声を出してしまった。四周年です、断固とした口調で長谷部くんが繰り返すのになんとなくうなずく。今何時だろ、遠くの時計に目を凝らして確認する。時刻は午前0時すぎ。外は真っ暗だ。
体を持ち上げたら冷たい空気が布団の中に入り込んできて寒い。
すごい勢いで掛け布団をかぶって、長谷部くんに抱きついたら当たり前みたいに抱きしめてもらえる。私より少しだけ低い体温。とろとろとまぶたが落ちかけるけど、四周年、という言葉がどうにも気になる。審神者に就任したのは三年前だし、長谷部くんと両思いになったのは一年前だ。
それで、何が四周年なんだっけ長谷部くん?
至極当然のように思える私のその疑問は
「細かいことはこの際お捨て置きください」
と自信満々の言葉で却下されてしまった。
細かいことだろうか。だけど、まあ、長谷部くんがどことなく嬉しそうに笑っているのでどうでもいい気がしてきてしまう。
恋愛脳な私は長谷部くん(彼氏)に甘い。その瞳に映るのが自分だと思うとそれだけで結構幸せで、なので、まあ、確かに細かいことはどうでもいいか、うん。と一人納得してヘラヘラ笑う。
「ねえ、主」柔らかい声。主、俺の主。歌うように上機嫌な声が言葉を紡ぐのをうっとり聞いた。「なにかなあ、長谷部くん」対して、まだ呂律が回ってない私の喋り方と来たらひどいもんだ。まあいいか。長谷部くんが笑ってくれているのでだいたいのことは大丈夫なのだ。
「そろそろ、頃合いだと思うのです」
「そうかなあ」
「そうですよ、なにせ四周年ですからね」
「うーん」
「でも、貴女は俺を愛してくださっているわけですし」
「え、うん、まあ」
「……違いましたか?」
「エッいや、ちが、わなく、ない、けど」
「そうですよね?」
言い訳にしかならないけど私は低血圧なので、寝起きはどうも頭がまわらない。
「言ってください」
形の良い唇が声も出さずにそう促す。ので、
「好きだよ」
と促されるがまんまに言葉にすれば口づけが降ってくる。
両方のまぶたとこめかみと、丁寧に前髪をかき分けた額にも。
「なので、やはりそろそろ頃合いでは?なにしろ俺も貴女を愛しているので」
それはもう、常軌を逸してしまうほど。と、耳たぶにひそやかな声が落ちてくる。脳みそまで解けるくらいの甘ったるい声は、視界を揺らして延々と余韻を残す。
「それで」
「はい」
「それで、えっと、何が頃合いなんだっけ?」
「何がって、ご冗談を。結婚に決まっているでしょう」
「うん、……うん、血痕?けっ、こん?」
「結婚、ですよ。主。この先の貴女の時間を全て俺に下さい。代わりに、俺のすべてを差し上げますから」
「エッそれ、具体的に言うとどんな感じ?」
「どんな感じ、とは?役所に婚姻届を出しにいくだけですが」
「まじで!?うっそ、神様と結婚ってできるの!?嘘でしょ!?」
「四周年ですからね、人間と神の婚姻程度できたところで驚くに足りませんよ」
「そんなもんかなあ」
「そんな物です」
……あれっ、そっか。そうなんだ。
うっかり、ほら、神様と審神者って結婚しちゃいけないもんだと思ってたからさ、いや、思い込みって怖いねえ、ちゃんと調べとけばよかった。驚きのあまりばらばらとそんなことを口走る。
「そっか、そうなんだ。結婚できちゃうんだ。いいね、結婚しよう、婚姻届書こう。長谷部って印鑑作って指輪も作ろ、とびっきりお気に入りのやつ、給料三ヶ月分?とかの。長谷部くんの誕生石とかいれてさあ」
いつものことなんだけど、長谷部くんと話しているとどうにも支離滅裂になってしまう。抑えが効かなくて、頭に浮かんだあれこれを片っ端から口に出してしまう私はまるで子供みたいだった。それなのに、長谷部くんはただ笑ってくれるので。「そうしましょう。素敵ですね」そうだねえ素敵だね。長谷部くんの浴衣に顔を埋めて、ほとんど声にならないくらいの音で笑う。ゆるゆると髪の毛をなぞる指先の感触が愛しい。
「ずっとずっと、一緒にいて下さい。五十年だって六十年だって。病めるときも健やかなるときも、死が二人を分かつまで」
歌うみたいなその声にひたすらに安心して、力が抜けていく。もう一度額に唇が落ちてくる感触。
「ああ、違うな。死んでも一緒でしたね」くすくす、と、かすかな笑い声が布団の中の空気を揺らす。「ずっとずっと一緒でしたね、そうでしょう?俺の主」眠る寸前にとびきり柔らかい声が、そう言うのを聞いた。
ひたすらに幸せな夢のような、でも夢じゃないような眠る前の記憶。
でもそれは夢じゃなかった。朝になったらその記憶のつづきみたいに長谷部くんが微笑んでいて、起き抜けで婚姻届を書かされる羽目になった。ちなみに六回も書き損じて最終的に長谷部くんが下書きしてくれたのを私が万年筆でなぞるみたいな事態に陥ったけど許してほしい、何しろ低血圧なので。
(※何がびっくりしたって、本当に役所に婚姻届出したら受理された上に役所の窓口の人まで「まあ四周年ですので止むを得ないかと」とか言ってたことで、いや本当に一体何が四周年なんだっけ?「細かいことは気にしたら負けです」って長谷部くんは笑ってくれるけど、私以外の皆が口裏合わせたみたいに「まあ四周年だしな」とか言ってるこの状況って、流石にちょっと異常なんじゃないかなって)
「四周年ですよ、主」
目を開けて早々にぶつけられた言葉が理解できない。
「はあ」
それでもとりあえず何か言おうとしたら、めちゃくちゃ間の抜けた声を出してしまった。四周年です、断固とした口調で長谷部くんが繰り返すのになんとなくうなずく。今何時だろ、遠くの時計に目を凝らして確認する。時刻は午前0時すぎ。外は真っ暗だ。
体を持ち上げたら冷たい空気が布団の中に入り込んできて寒い。
すごい勢いで掛け布団をかぶって、長谷部くんに抱きついたら当たり前みたいに抱きしめてもらえる。私より少しだけ低い体温。とろとろとまぶたが落ちかけるけど、四周年、という言葉がどうにも気になる。審神者に就任したのは三年前だし、長谷部くんと両思いになったのは一年前だ。
それで、何が四周年なんだっけ長谷部くん?
至極当然のように思える私のその疑問は
「細かいことはこの際お捨て置きください」
と自信満々の言葉で却下されてしまった。
細かいことだろうか。だけど、まあ、長谷部くんがどことなく嬉しそうに笑っているのでどうでもいい気がしてきてしまう。
恋愛脳な私は長谷部くん(彼氏)に甘い。その瞳に映るのが自分だと思うとそれだけで結構幸せで、なので、まあ、確かに細かいことはどうでもいいか、うん。と一人納得してヘラヘラ笑う。
「ねえ、主」柔らかい声。主、俺の主。歌うように上機嫌な声が言葉を紡ぐのをうっとり聞いた。「なにかなあ、長谷部くん」対して、まだ呂律が回ってない私の喋り方と来たらひどいもんだ。まあいいか。長谷部くんが笑ってくれているのでだいたいのことは大丈夫なのだ。
「そろそろ、頃合いだと思うのです」
「そうかなあ」
「そうですよ、なにせ四周年ですからね」
「うーん」
「でも、貴女は俺を愛してくださっているわけですし」
「え、うん、まあ」
「……違いましたか?」
「エッいや、ちが、わなく、ない、けど」
「そうですよね?」
言い訳にしかならないけど私は低血圧なので、寝起きはどうも頭がまわらない。
「言ってください」
形の良い唇が声も出さずにそう促す。ので、
「好きだよ」
と促されるがまんまに言葉にすれば口づけが降ってくる。
両方のまぶたとこめかみと、丁寧に前髪をかき分けた額にも。
「なので、やはりそろそろ頃合いでは?なにしろ俺も貴女を愛しているので」
それはもう、常軌を逸してしまうほど。と、耳たぶにひそやかな声が落ちてくる。脳みそまで解けるくらいの甘ったるい声は、視界を揺らして延々と余韻を残す。
「それで」
「はい」
「それで、えっと、何が頃合いなんだっけ?」
「何がって、ご冗談を。結婚に決まっているでしょう」
「うん、……うん、血痕?けっ、こん?」
「結婚、ですよ。主。この先の貴女の時間を全て俺に下さい。代わりに、俺のすべてを差し上げますから」
「エッそれ、具体的に言うとどんな感じ?」
「どんな感じ、とは?役所に婚姻届を出しにいくだけですが」
「まじで!?うっそ、神様と結婚ってできるの!?嘘でしょ!?」
「四周年ですからね、人間と神の婚姻程度できたところで驚くに足りませんよ」
「そんなもんかなあ」
「そんな物です」
……あれっ、そっか。そうなんだ。
うっかり、ほら、神様と審神者って結婚しちゃいけないもんだと思ってたからさ、いや、思い込みって怖いねえ、ちゃんと調べとけばよかった。驚きのあまりばらばらとそんなことを口走る。
「そっか、そうなんだ。結婚できちゃうんだ。いいね、結婚しよう、婚姻届書こう。長谷部って印鑑作って指輪も作ろ、とびっきりお気に入りのやつ、給料三ヶ月分?とかの。長谷部くんの誕生石とかいれてさあ」
いつものことなんだけど、長谷部くんと話しているとどうにも支離滅裂になってしまう。抑えが効かなくて、頭に浮かんだあれこれを片っ端から口に出してしまう私はまるで子供みたいだった。それなのに、長谷部くんはただ笑ってくれるので。「そうしましょう。素敵ですね」そうだねえ素敵だね。長谷部くんの浴衣に顔を埋めて、ほとんど声にならないくらいの音で笑う。ゆるゆると髪の毛をなぞる指先の感触が愛しい。
「ずっとずっと、一緒にいて下さい。五十年だって六十年だって。病めるときも健やかなるときも、死が二人を分かつまで」
歌うみたいなその声にひたすらに安心して、力が抜けていく。もう一度額に唇が落ちてくる感触。
「ああ、違うな。死んでも一緒でしたね」くすくす、と、かすかな笑い声が布団の中の空気を揺らす。「ずっとずっと一緒でしたね、そうでしょう?俺の主」眠る寸前にとびきり柔らかい声が、そう言うのを聞いた。
ひたすらに幸せな夢のような、でも夢じゃないような眠る前の記憶。
でもそれは夢じゃなかった。朝になったらその記憶のつづきみたいに長谷部くんが微笑んでいて、起き抜けで婚姻届を書かされる羽目になった。ちなみに六回も書き損じて最終的に長谷部くんが下書きしてくれたのを私が万年筆でなぞるみたいな事態に陥ったけど許してほしい、何しろ低血圧なので。
(※何がびっくりしたって、本当に役所に婚姻届出したら受理された上に役所の窓口の人まで「まあ四周年ですので止むを得ないかと」とか言ってたことで、いや本当に一体何が四周年なんだっけ?「細かいことは気にしたら負けです」って長谷部くんは笑ってくれるけど、私以外の皆が口裏合わせたみたいに「まあ四周年だしな」とか言ってるこの状況って、流石にちょっと異常なんじゃないかなって)