長谷部
名前変換
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「…………もういいだろ。雨も降ってるし、寒いし」
彼がそう言い放ったのは目覚ましがなってからたっぷり四十分が経過してからだった。「そうしたら」と言おうと思ったけどあまりにも口を動かすのが億劫だった。なんせ彼が私の事を抱きまくらかなんかみたいに抱きしめていたので。代わりに「うん」とか「んん」とか返事のようなそうでないような音を喉から絞り出して携帯を探す。上司と所属するチームのメンバー宛に『急遽私用でお休みを頂きます』的なメールをかましてから布団に突っ伏したら、するりと綺麗な指が耳の後ろあたりを撫でた。「……… 名前 、」耳朶を擽る声はとびっきりに甘ったるい。長谷部くんは私の首筋に顔を埋めて息をするので私は、くすぐったいなあなんて思いながらもされるがままにしておいたんだけど、そこから五分たっても十分たっても動こうとしないので心配になる。ほんのちょっとだけ。
「長谷部くん会社に電話しなくていいの」
なので一応そう言ってみたら、彼はなにかに弾かれたように起き上がったので布団の中に一気に冷たい空気が入り込んできた。ちょっと寒いじゃん、私がそう文句をつける間もなく携帯を探し当ててこっちに背を向ける。
「おはようございます法人営業部一課Aグループの長谷部ですが」
彼は。私の彼氏の長谷部くんは、バリバリにお仕事のできる大変エリートなサラリーマンだ。だからさぞかしクソ真面目なんだろうと誤解されるんだけど実はそんな事なくて、年一くらいでめちゃくちゃ不真面目になったりする。例えば今みたいに。まあそんな事は私以外誰も知らなくていいんだけど。
「はい、本日お休みを頂きたく、」
ピシッと伸ばされた背中が妙に可愛い。Tシャツの上からでもわかる肩甲骨のラインに、不意に触りたくなったので抱きついてやろうと体を起こした、
「………、はい、四十二度の発熱により業務が困難です」
んだけど途中で力尽きて、半端に長谷部くんの腰のあたりに抱きつくみたいな感じになってしまった。四十二度の高熱を出してる病人が、そんなにハキハキ喋ってたまるか。笑いを噛み殺して見上げた先で視線が合う。
「ええ、その案件はすでに日ノ本課長の承認待ちですので確認をお願いします、コンペの進捗は信濃に聞けばわかるはずです」
ちらりと私に投げかけられた視線。目元だけで笑って長谷部くんは、当たり前みたいにこっちに手を伸ばしてくる。そのまま髪の毛に差し込まれた指が、毛先までゆっくりゆっくり降りてくる。一定の速度で繰り返される動きに、長谷部くんの体温に。目をつぶれば一気に眠気が襲ってくる。頭の上におかれた手の重みが気持ちいい。「……ありがとうございます。はい。失礼します」とかなんとか彼が言ったと思うけどあんまり定かではない。
「名前、冷えるだろそんな姿勢で寝たら」
「…………うん、」
「名前」
「長谷部くん」
「ん?」
「………おふとん、」
電話を終えたらしい長谷部くんが、さっきとは打って変わった甘ったるい声色で私を呼ぶので、嬉しくて笑ってしまう、んだけど、どうしたって眠くって動きたくないので、そんな意思をこめて頭をぐりぐりとこすりつけた。長谷部くんの腰骨のあたりに。長谷部くんは少しだけ息を呑んだあとで「ああ畜生、可愛いなあ」とかなんとか言うんだけどその声がトロトロに柔らかくて、可愛いのはどっちだろう実際問題として。少しだけ考えたけど眠いしちょっとだけ照れくさいのもあって結局口から出たのは「おふとん」とか言うアホみたいな単語だったのに長谷部くんは「俺も愛してるよ」とか言っちゃったりするからああもうほんとに長谷部くんったら!!!という愛情と可愛げとどうしたらいいかわからない気持ちを込めて思い切り抱きつくうちにほんとに眠くなってきて、
「おやすみ、俺の名前」
とかなんとか言ってる長谷部くんの声を聞いた。めちゃくちゃ堅物と見せかけてそんなことないし実はちょっと気障なとこもあるのだ彼は。そんなこと私以外誰も知らなくていいけど。パラパラと窓を叩く雨の音を聞く。心臓の音が耳に心地良くて長谷部くんの体温が暖かい。
………だからこんな日は、二度寝するに限るのだ。雨も降ってるし寒いし。
彼がそう言い放ったのは目覚ましがなってからたっぷり四十分が経過してからだった。「そうしたら」と言おうと思ったけどあまりにも口を動かすのが億劫だった。なんせ彼が私の事を抱きまくらかなんかみたいに抱きしめていたので。代わりに「うん」とか「んん」とか返事のようなそうでないような音を喉から絞り出して携帯を探す。上司と所属するチームのメンバー宛に『急遽私用でお休みを頂きます』的なメールをかましてから布団に突っ伏したら、するりと綺麗な指が耳の後ろあたりを撫でた。「……… 名前 、」耳朶を擽る声はとびっきりに甘ったるい。長谷部くんは私の首筋に顔を埋めて息をするので私は、くすぐったいなあなんて思いながらもされるがままにしておいたんだけど、そこから五分たっても十分たっても動こうとしないので心配になる。ほんのちょっとだけ。
「長谷部くん会社に電話しなくていいの」
なので一応そう言ってみたら、彼はなにかに弾かれたように起き上がったので布団の中に一気に冷たい空気が入り込んできた。ちょっと寒いじゃん、私がそう文句をつける間もなく携帯を探し当ててこっちに背を向ける。
「おはようございます法人営業部一課Aグループの長谷部ですが」
彼は。私の彼氏の長谷部くんは、バリバリにお仕事のできる大変エリートなサラリーマンだ。だからさぞかしクソ真面目なんだろうと誤解されるんだけど実はそんな事なくて、年一くらいでめちゃくちゃ不真面目になったりする。例えば今みたいに。まあそんな事は私以外誰も知らなくていいんだけど。
「はい、本日お休みを頂きたく、」
ピシッと伸ばされた背中が妙に可愛い。Tシャツの上からでもわかる肩甲骨のラインに、不意に触りたくなったので抱きついてやろうと体を起こした、
「………、はい、四十二度の発熱により業務が困難です」
んだけど途中で力尽きて、半端に長谷部くんの腰のあたりに抱きつくみたいな感じになってしまった。四十二度の高熱を出してる病人が、そんなにハキハキ喋ってたまるか。笑いを噛み殺して見上げた先で視線が合う。
「ええ、その案件はすでに日ノ本課長の承認待ちですので確認をお願いします、コンペの進捗は信濃に聞けばわかるはずです」
ちらりと私に投げかけられた視線。目元だけで笑って長谷部くんは、当たり前みたいにこっちに手を伸ばしてくる。そのまま髪の毛に差し込まれた指が、毛先までゆっくりゆっくり降りてくる。一定の速度で繰り返される動きに、長谷部くんの体温に。目をつぶれば一気に眠気が襲ってくる。頭の上におかれた手の重みが気持ちいい。「……ありがとうございます。はい。失礼します」とかなんとか彼が言ったと思うけどあんまり定かではない。
「名前、冷えるだろそんな姿勢で寝たら」
「…………うん、」
「名前」
「長谷部くん」
「ん?」
「………おふとん、」
電話を終えたらしい長谷部くんが、さっきとは打って変わった甘ったるい声色で私を呼ぶので、嬉しくて笑ってしまう、んだけど、どうしたって眠くって動きたくないので、そんな意思をこめて頭をぐりぐりとこすりつけた。長谷部くんの腰骨のあたりに。長谷部くんは少しだけ息を呑んだあとで「ああ畜生、可愛いなあ」とかなんとか言うんだけどその声がトロトロに柔らかくて、可愛いのはどっちだろう実際問題として。少しだけ考えたけど眠いしちょっとだけ照れくさいのもあって結局口から出たのは「おふとん」とか言うアホみたいな単語だったのに長谷部くんは「俺も愛してるよ」とか言っちゃったりするからああもうほんとに長谷部くんったら!!!という愛情と可愛げとどうしたらいいかわからない気持ちを込めて思い切り抱きつくうちにほんとに眠くなってきて、
「おやすみ、俺の名前」
とかなんとか言ってる長谷部くんの声を聞いた。めちゃくちゃ堅物と見せかけてそんなことないし実はちょっと気障なとこもあるのだ彼は。そんなこと私以外誰も知らなくていいけど。パラパラと窓を叩く雨の音を聞く。心臓の音が耳に心地良くて長谷部くんの体温が暖かい。
………だからこんな日は、二度寝するに限るのだ。雨も降ってるし寒いし。