松・シリーズ
名前変換
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エイトシャットアウツ。いつだかのクソみたいなカラ松兄さんの言葉が浮かんだ。息を潜めて僕は、眼前の光景を見守る。みるみる不機嫌になるチョロ松兄さんと、テンパる一松兄さん、に、寄っ掛かってべろんべろんの名前。僕が息を殺して見てる視線の先でチョロ松兄さんがため息をついた。
それから、
「名前」
と、名前を呼んでみるものの当の名前は全く反応しない。
僕はハラハラしながら事の顛末を見守る。
「名前」、今度はもっとはっきり名前を呼んでみて、ものの見事に無視されて表情を曇らせる。あ、すげえ目してる。なんか人でも殺しそう。
思っくそ不機嫌な顔を隠しもしないでチョロ松兄さんが名前の手をつかんだ。で、それを振りほどかれて更に不機嫌になる。普段常識人ですってスタンスでいる分、ギャップ半端なくてちょっと引いた。
「名前」
「……い」
「?、いいからとりあえず起き、」
「チョロ松兄さんなんて大嫌い触んないで」
「……………」
ぴしり。
空気が固まった、ような、気がするのは僕の気のせいじゃない。おそ松兄さんの歯ブラシの音だけが、静まり返った空間に響く。しゃっこしゃっこうるせえ。その静まり返った空気を破ったのは、さっきからずっとテンパってた一松兄さんだった。
「寝よう名前、寝よう。」
そうだそうだそれがいいそうしよう。早口言葉みたいに言うが早いが名前を抱えたまま脱兎の如く駆け出して、カラ松兄さんに体当たりするみたいに居間に突入していく。ぴしゃん。居間の襖を閉める音で空気が震えた。残されたのは僕とおそ松兄さんと十四松兄さんと、
「じゃーな、俺も寝るわ」
「ええっ!?」
嘘だろおそ松兄さんお前なんでこのタイミングで僕を置いてけんの!?思わずその心情が大声になって口からでていく。したら、恐ろしい位にいっつも通りみたいな表情をぶら下げたチョロ松兄さんが「トド松うるさい、近所迷惑」と恐ろしい位にいつも通りの声で言うので、何で!?何でそんないつも通りなのこわいよ!と、思ったけどもそれを言ったらおしまいな事くらい、僕は当然わかってる。
「あ、ああチョロ松兄さん、どうだったのにゃーちゃんのライブ」
「別に普通」
焦る。スタバアの時とどっこいどっこいな位僕は焦っている。僕の小手調べな質問を、絶対いつも通りじゃないいつも通りの声でシャットアウトしたチョロ松兄さんが、少し困ったみたいな表情を作って僕を見下ろした。「トッティ、そこ通りたいんだけど?」…………うっわあ、不機嫌。いやなタイプの不機嫌。近年まれに見る不機嫌。しかも、本人が絶対にそれを認めないからフォローのしようがなく、その癖僕たちに八つ当たりするけどそれすら無意識だから回避しようのない、本当にこの上なく厄介極まりないクソめんどくさいタイプの不機嫌だ。居間の襖に手をかけたチョロ松兄さんの背中を見つつもその不穏な空気を察してそろりそろりと僕はその場からの回避を試み、
「チョロ松兄さん」
ようとした瞬間に珍しく静かだった十四松兄さんが口を開く。頼むから余計なこと言うなよ。瞬間最大風速500メートルの勢いで祈る僕の気持ちをへし折るような明るい声で、
「名前さあ、初恋の人が忘れらんないってさ」
お前なんで今、名前の名前だした。しかも思いっきり地雷みたいな話題で。闇松兄さんに油性の黒インキを混ぜてどろどろに煮詰めてそこにタールとにかわとガソリンを混ぜ混んだみたいな嫌なオーラを全身から発しながら、チョロ松兄さんが視線だけこっちに向ける。
「それ、名前から聞いたの?」
だからその、いつも通りの声のトーンやめてー。僕もう知らないからね、と、完全に背をむけた背後で十四松兄さんがやたらと明るい声で言うのを聞いた。
「ほんと、チョロ松兄さんは名前のこと好きだよね」