蜜月
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「私のせいで、わたし、わたしが、しっかりしていなかったから」
「お前さんはよくやったよ、あれは事故だから気にする事じゃあ」
「会ったら何を話そうなんて呑気な事考えて、わたしの、せいで基次さまが」
「いやだから、死んだみたいに言ってやるんじゃないって、…お前さん聞いてるか?」
基次さまが、動かなくなってしまってから半時くらい。布団に寝かされて相変わらずピクリともしない彼を前にして私は、後悔の念で一杯になっていた。
呑気な事を考えているわけではなかったのに。私がしっかりしていたらこんな事にはならなかったのに。なんで今まで、気づかなかったんだろう。三日もお帰りにならないなんておかしかったのに。本当なら、もっと早く連れて帰らなければいけなかったのに。
「…黒田さま、ありがとうございました。もう大丈夫です、基次さまの事は私が見ていますから、黒田さまもどうかおやすみに」
「あ、ああ…いや、お前さん、大丈夫か?」
「この度は本当に申し訳ございませんでした、私が迂闊だったばかりに」
「いやいい、こいつはいつもそうなんだから気にするなよほんと、」
「ほんとうに、申し訳ございませ、」
「いい、いいからお前さんも気がすんだら寝ろ、ほっといても又兵衛なら大丈夫だから」
「で、でもこんなに顔色悪くて」
「むしろ今は、又兵衛よりもお前さんの方が顔色悪いぞ」
妻としての務めを怠り、安穏とすごすとはなんたる悪!兄さまはお前を見損なったぞ名前!
いつも頭の中で喧しい兄が険しいかおで私をねめつけて、やっぱり喧しく騒ぎ立てる。昨日と一昨日の自分に平手打ちをかましてやりたかった。
「こいつ、意外と丈夫なんだよ本当に」
黒田さまは朝と真逆の事を言って部屋を出ていって、一人で残された部屋のなかで、涙が出そうになるのを抑える。
本当に寝ないで作業してたんだろう。ひたすらに眠る顔はいつもの数倍青白くて目の下の隈もいかにも不健康だ。このまま基次さまが、お目覚めにならなかったらどうしよう。
ひたすらに暗い方向に向かう思考を断ち切ろうと深呼吸をする。基次さまが起きたら、まずは謝って、お医者様をお呼びして、おかゆと、お薬と、ええと、それから。
馬鹿じゃないんですか、なんて笑う、彼の顔が浮かぶ。本当に馬鹿みたいだけど、基次さまが起きたら、ひとまず最初に『おかえりなさいませ』を言おう。