会話文まとめ2

◆強風により運転見合わせ
キノ「これだけ風が強いと、今は走らない方がいいかな」
エルメス「だね。強風はモトラドの天敵。収まるまでおとなしくしていよう、キノ」
キノ「分かった」
エルメス「とはいえ、走れないと退屈だねえ」
キノ「エルメスが四輪車になれたら、こんな風の中でも踏ん張れるのにね」
エルメス「たらればの話をしてもねえ。モトラドは二輪だからモトラドなんだよ」
キノ「じゃあ、モトラドのままで、タイヤの両脇に小さいタイヤをつけるとか?」
エルメス「えー、補助輪? 見た目が格好悪いなあ」
キノ「そう?」
エルメス「そうだよ。だいたい、そんなのつけたって風に押されて転ぶのは防げないし、それに──」
キノ「それに?」
エルメス「キノがまともにモトラドに乗れない人みたいに見られちゃうよ?」
キノ「それもそうか」

◆お休みの日
エルメス「ねえキノ。もし旅がお休みの日を作るとしたら、何する?」
キノ「…………。旅が休みというのがよく分からない」
エルメス「ほら、どの国にも国民の休日ってあるじゃん。じゃあ、旅人には休日はあるのかなって思ったの」 
キノ「なるほど」
エルメス「で、もし休日があったら何する?」 
キノ「うーん……。ハンモックで寝るかな」
エルメス「普段と変わらないねえ」
キノ「まあ、長いこと旅しかしていないから、いきなり違うことをしろと言われてもね……」
エルメス「じゃあ、キノはずっと旅に忙しくて、休日らしい休日はないってこと? うわー、労働環境改善を訴えた方がよくない?」
キノ「えっと、誰に?」
エルメス「なんかこう、上の人に?」
キノ「まあ、それはともかく……、旅はそもそも労働ではないと思う」
エルメス「そう?」
キノ「それに、こうしてエルメスと話して、お茶を飲むという休息はあるから、それで十分かな」
エルメス「ふーん」
キノ「エルメスは、休みがほしいのかい? たぶん、カバーをかけて置いておくことになるけど──」
エルメス「これからも休まず旅しよう、キノ」
キノ「はいはい」

◆世界征服計画?
エルメス「もしキノが世界征服を企んで旅してたら、今頃、何カ国征服してたかな?」
キノ「……はい?」
エルメス「キノが入国したらさ、“この国はこれよりボクのものとなる”って宣言して、その国の偉い人たちをどんどんなぎ倒して支配下に置くの。で、訪れた国々でそれをやっていって、全世界の掌握を目指すんだよ。どう?」
キノ「“どう?”って言われても……。考えたこともないよ、そんなこと」
エルメス「なーんだ。じゃあ、いつかやってみようと思ったら教えてね、キノ。世界征服」
キノ「……ボクがそんな考えを持ったら、エルメスが止めてくれるのかな?」
エルメス「そりゃあもちろん、キノの相棒として──」
キノ「うん」
エルメス「一緒に世界征服するに決まってるじゃん!」
キノ「うん?」
エルメス「キノが首領で、こっちは参謀ね。幹部とか戦闘員は追い追い増やしていこう」    
キノ「…………」
エルメス「あ、総帥の方が格好いいかな? ボス? リーダー? ──キノはなんて呼ばれたい?」
キノ「うん、“キノ”のままがいい」

◆からかい
エルメス「キノは、毎日マメにパースエイダーの練習してるよねえ」
キノ「まあね。練習は欠かせないから」
エルメス「お、またど真ん中に命中。さすがキノ」
キノ「どうも」
エルメス「それにしてもさ──」
キノ「ん?」
エルメス「キノがそうやってパースエイダーを構えてるのって、すっごく様になるねえ」
キノ「…………。なんだい、急に」
エルメス「急じゃないよー。いつも思ってること。キノは格好いいなって」
キノ「…………」
エルメス「あれれ? 耳栓で聞こえなかったのかなー? ──キノ格好いいよ! 最高! 世界一!」
キノ「聞こえてるよ。……集中できないからやめて」
エルメス「じゃあ、集中力を鍛える訓練ってことで、キノが構えたら“格好いい”って言いまくろっか?」
キノ「……からかってるだろ、エルメス」
エルメス「えー? そんなことないよー? 純粋な気持ちだよー?」
キノ「…………」

◆モトラドは盾(修行時代)
キノ「師匠、質問があります」
師匠「なんですか? キノ」
キノ「今はゴム弾で撃ち合いをしているから、こうしてエルメスを盾にしているとき、もし燃料タンクに弾が当たってもそこが凹むだけなのでいいですが──」
エルメス「いや、よくないけど」
キノ「……実弾がタンクに当たると、エルメスが爆発したりしませんか?」
師匠「しませんよ。過度に不安がらなくても大丈夫です。タンクに穴が空くだけですから」
キノ「よかった……」
エルメス「待ってキノ、安心しないで」
師匠「穴が空いても、塞げばいいだけですからね」
キノ「はい」
エルメス「いや、“はい”じゃなくて」

◆メタなネタ
エルメス「ねえ、キノ」
キノ「なんだい、エルメス」
エルメス「こうしてキノと一緒にいるようになって、何年目だろうね? なんか、気分的には二十年以上は一緒にいるような気がするけど」
キノ「そう、かな? ……そうかもね」
エルメス「これから先、どのくらい一緒にいるんだろうね?」
キノ「さあ、それは誰にも分からない。……でも──」
エルメス「でも?」
キノ「エルメスと出会う前の時間よりも、一緒にいた時間の方が長いといいな」