しょうもない話
「次に行く国はね、モトラドの生産が盛んな国だそうだよ。もちろん乗る人も多くて、専用の道路もあるんだって」
「へー! 楽しみだねえ。他のモトラドに会うことってあんまりないし。キノを待ってる間、駐輪場とかで退屈しなさそうなのもいいね」
「そうだね。もしかすると、エルメスにたくさん友達ができるのかもしれない」
「友達どころか、美形のモトラドに言い寄られたりしたらどうしよう! つきあうことになって、最終的にはキノより先にお嫁に行っちゃうかもよ?」
「お嫁さん? エルメスって女の子だったの?」
「別に男だとは言ってないよ?」
「まあ、そうだったか」
「で、もしこっちが結婚なんてことになったら、キノはどうする?」
「おめでたいけど、少し寂しいな。エルメスとお別れして、新しいモトラドを探さないと」
「ちょいとー! キノ、浮気?」
「浮気とはなんだよ。エルメスに家庭ができたら、今みたいにいつも一緒とはいかなくなるだろ」
「キノを含めての家庭だよ。運転手と配偶モトラドは競合しないものなの」
「それこそ二股みたいな……。だいたい、エルメスのお相手とボクが仲良くなれるかどうか」
「なれるなれる。運転手っていうのは、モトラドからモテるものだからね。なんなら生まれた子供だって、キノのことを気に入るよ」
「モトラド同士で結婚すると、子供も生まれるのか。知らなかった」
「キノも、子育て手伝ってよね!」
「分かった。エルメスの子供か……。エルメスに似て、おしゃべりな子になるのかな。寝起きが悪いところも似たら、毎朝大変だろうな」
「楽しくなりそうだねえ。でも、キノ一人にモトラド三台じゃバランス悪いねえ。キノが三人に分裂できればいいんだけど」
「うまくできるかは分からないけど、やってみよう」
「うまくできすぎて、世界中をキノで埋め尽くしちゃわないようにね」
「気をつけるよ。……でも、ボクが増えたら増えたで、どのボクがエルメスに乗るのかで揉めそうだ」
「えっ、取り合ってくれるの? “私のために争わないで”って言えちゃうやつ? なんか嬉しいかも!」
「そして、エルメスのために争った結果 ──」
「結果?」
「一番強いボク一人しか残らなくなる」
「ダメじゃん!」
「というわけで、エルメスが結婚してしまうと、ボクはきっと、とても困ると思う」
「やれやれ、しょうがないなあ。次の国で他のモトラドにナンパされても、キノのために断るようにしようっと」
「それはありがたい」
「へー! 楽しみだねえ。他のモトラドに会うことってあんまりないし。キノを待ってる間、駐輪場とかで退屈しなさそうなのもいいね」
「そうだね。もしかすると、エルメスにたくさん友達ができるのかもしれない」
「友達どころか、美形のモトラドに言い寄られたりしたらどうしよう! つきあうことになって、最終的にはキノより先にお嫁に行っちゃうかもよ?」
「お嫁さん? エルメスって女の子だったの?」
「別に男だとは言ってないよ?」
「まあ、そうだったか」
「で、もしこっちが結婚なんてことになったら、キノはどうする?」
「おめでたいけど、少し寂しいな。エルメスとお別れして、新しいモトラドを探さないと」
「ちょいとー! キノ、浮気?」
「浮気とはなんだよ。エルメスに家庭ができたら、今みたいにいつも一緒とはいかなくなるだろ」
「キノを含めての家庭だよ。運転手と配偶モトラドは競合しないものなの」
「それこそ二股みたいな……。だいたい、エルメスのお相手とボクが仲良くなれるかどうか」
「なれるなれる。運転手っていうのは、モトラドからモテるものだからね。なんなら生まれた子供だって、キノのことを気に入るよ」
「モトラド同士で結婚すると、子供も生まれるのか。知らなかった」
「キノも、子育て手伝ってよね!」
「分かった。エルメスの子供か……。エルメスに似て、おしゃべりな子になるのかな。寝起きが悪いところも似たら、毎朝大変だろうな」
「楽しくなりそうだねえ。でも、キノ一人にモトラド三台じゃバランス悪いねえ。キノが三人に分裂できればいいんだけど」
「うまくできるかは分からないけど、やってみよう」
「うまくできすぎて、世界中をキノで埋め尽くしちゃわないようにね」
「気をつけるよ。……でも、ボクが増えたら増えたで、どのボクがエルメスに乗るのかで揉めそうだ」
「えっ、取り合ってくれるの? “私のために争わないで”って言えちゃうやつ? なんか嬉しいかも!」
「そして、エルメスのために争った結果 ──」
「結果?」
「一番強いボク一人しか残らなくなる」
「ダメじゃん!」
「というわけで、エルメスが結婚してしまうと、ボクはきっと、とても困ると思う」
「やれやれ、しょうがないなあ。次の国で他のモトラドにナンパされても、キノのために断るようにしようっと」
「それはありがたい」