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【お相手:越水 テーマ:コーヒー】
夜のベテル日本支部、休憩室。私は眠い目を擦りながら自販機のボタンを押した。ガコン、と缶コーヒーが取り出し口に落ちた。
プルタブを開けて缶コーヒーを一口飲み、あまりの苦味に吹き出しそうになった。改めてラベルを見ると、「無糖」の文字。しかもミルクも入っていない、完全なブラックコーヒーを買ってしまった。
「あーあ……」
眠気覚ましにコーヒーを飲むが、ミルクと砂糖が入っていないと飲めない体質だった。しまった、眠くてろくに確認せずに買ってしまった。どうしよう、捨てるのも勿体無いが口をつけてしまった。誰かにあげるのも憚られる。
「どうした?」
逡巡していると、越水長官が現れた。彼はベテル日本支部長官と内閣総理大臣を兼任している忙しい身だ。残業中たまに出会う。長官は缶コーヒーを片手に硬直する私を不思議そうに見つめていた。
「コーヒーを買ったんですが、ブラックコーヒーを買ってしまって」
「そうか」
その一文で長官は何かを察したらしく、財布を取り出し自販機に硬貨を投入した。
「君が普段買っているものはどれだ?」
「あ、えと、これです」
私が指差したものを長官は躊躇いなく購入した。取り出し口から見慣れた缶コーヒーを取り出し、私に手渡してくれる。
「飲むといい」
「えっ、あっ、ありがとうございます!」
「そちらは私が飲もう」
長官は私の飲みかけのブラックコーヒーを受け取り、何の躊躇いもなく飲み干した。私が止める間もなかった。
「え、あ、あの、長官」
「どうした?」
長官はブラックコーヒーの苦い吐息を吐き、私を見つめていた。もう空になったのか、缶をゴミ箱に捨てる。
「私の飲みかけを渡してしまって、申し訳ありません!」
さすがに申し訳なくなり、深く頭を下げた。顔を上げられない私の肩を長官はぽんと叩いてくれる。
「気にする必要はない。私もちょうど眠気を感じていたところだった。君もあまり遅くならぬうちに帰るように」
「あ、はい、ありがとうございます……」
顔を上げると、鋭い目線ながらもどこか気遣いを感じさせる長官と目が合った。彼は満足そうに頷くと、カツカツと足音を鳴らして去っていく。後には缶コーヒーを受け取り呆然とする私が残されるばかりだった。
――間接キス、しちゃったんだけどな。
唇を撫でた私はそんなことで頭がいっぱいだった。長官は全然気にしていない様子だったし、気にする私がおかしいのかもしれない。缶コーヒーのプルタブを開け、思いきり煽った。いつもどおりの甘くクリーミーな味が、いつもより甘く感じた。
【お相手:勇 テーマ:コーヒー】
「勇くんって甘いもの好きだよね」
放課後のカフェで私と勇くんはいつもどおりだべっていた。私はホットコーヒー、勇くんは期間限定のクリームがたくさん乗った飲み物を頼んだ。私が特に意識せずに言った一言に、勇くんはストローから口を離した。
「ん?まあな。というか、オマエは全然甘いもの飲まないよな」
「一回飲んだことがあるんだけど、甘すぎてさ。それから全然飲んでないの」
「へー……今飲んでるのもブラックコーヒーか?」
「そうだよ」
「ふーん……」
勇くんはストローで飲み物をかき混ぜながら、私のホットコーヒーをじっと見つめている。黒い水面に勇くんの訝しげな眼差しが刺さりそうだった。
「なあ、それちょっと飲んでみていいか?」
「うん、いいよ」
勇くんはマグカップを取り、コーヒーを一口飲んだ。その瞬間露骨に顔が歪み、彼はべーっと舌を出した。
「うわ、すっげぇ苦い。オマエよくこんなの飲めるな」
「慣れたらそれが美味しく感じるようになるよ?」
「そうかなー……」
勇くんは首を傾げながら私にコーヒーを返した。そして何故か彼は立ち上がり、もう一度レジに向かった。何をしているのかなと思っていたら、マグカップを持って帰ってきた。え、飲み物まだ残ってるのに新しいの注文したの?
「コーヒー注文してみた」
勇くんはコーヒーフレッシュと粉砂糖を片手に戻ってきた。ブラックコーヒーのいい匂いがする。でも勇くんはうーん、としかめっ面だった。
「苦いの苦手なら無理して飲む必要ないのに」
「いやー、オマエが飲んでるの見てかっこいいよなって思ってたんだよ。まずは砂糖を入れて慣らすところからか?」
言いながら、勇くんは砂糖を入れてスプーンでかき混ぜる。ふふ、と私は笑った。
「ブラックコーヒーが飲めても飲めなくても、勇くんは勇くんなんだよ」
そう言うと、彼は不機嫌そうに口を尖らせた。
「甘いものだけじゃない勇様も見せてやりてーの」
と言い、勇くんはコーヒーを一口。彼は得意げに胸を張った。
「お、砂糖入れりゃ飲めるじゃん。美味いじゃん。ちょっとずつ砂糖を減らしていけばブラックも飲めるかもな」
「ふふ、そうだといいね」
格好つけたいお年頃の彼を見ながら、私もコーヒーを飲んだ。苦味と酸味が心地よくて、いつかこれを勇くんも美味しいと思ってくれたら嬉しいな、なんて思った。
【お相手:人修羅 テーマ:コーヒー】
「え、シンってコーヒー飲めるの!?」
「ああ。お前は?」
尋ねると彼女は見るからに渋そうな顔をした。
「あんな苦いの飲めないよ、砂糖とか牛乳入れないと」
「そうか」
まあ彼女らしいといえば彼女らしいかもしれない。シンが納得していると、彼女が身を乗り出した。
「千晶ちゃんから聞いたよ!シンは家でコーヒー淹れて飲んでるって!おしゃれなコーヒー淹れる道具持ってるんでしょ?」
「おしゃれかどうかは知らないけど、まあ豆から挽いてるな」
「おー!すごい!」
彼女はぱちぱちと小さく拍手をした。その仕草はちょこまかと動く小動物のようで可愛らしい。
「コーヒー淹れるとこ見てみたいな!シンの家でコーヒー飲ませてよ!」
「え?ああ……別に、いいけど」
――「別に」どころじゃない。お前ならいつ来てもOKだ。
そんな風に本音が香り立つところだった。
そして、彼女はシンの家にやってきた。コーヒーを飲むためだけに家に来るなどなかなかないだろう。彼女にコーヒーミルや豆を見せると、わー!と楽しそうにはしゃいでいた。
「へー、これで豆を挽くんだ。やってみていい?」
「いいぞ」
手動のコーヒーミルにいつもの倍、コーヒー豆を入れて彼女に手渡す。彼女がハンドルを回すとごりごりと豆が挽かれ、苦い香りがふわりと立った。彼女は残念そうに口を尖らせた。
「匂いは結構好きなんだけどなぁ」
「いつかブラックの美味さにも気付くさ」
彼女が挽いてくれた豆をドリッパーに入れ、湯を注ぐ。ぽこぽこと黒茶色の泡が立ち、濃い黒色のコーヒーが少しずつ溜まっていく。シンがドリップする様子を彼女は楽しそうに眺めていた。
「へー、ドリップコーヒーってこんな風に淹れるんだ。コーヒー!って感じの匂い」
「コーヒー淹れてるんだからそりゃそうだ」
とぽぽ、と静かな音が響き、二人分のコーヒーが出来上がった。シンは二つのマグカップにコーヒーを注いだ。二人でテーブルに座ると、彼女は神妙な顔でマグカップの水面を眺めていた。やがて意を結した彼女が黒いコーヒーを口に含む。
「うぅ〜〜っ……!」
彼女は思いきり顔を歪めて何とか飲み干した。その顔は見ているシンまで苦く感じてしまう苦渋の表情だった。
「やっぱりブラックはだめ!苦い!」
「牛乳と砂糖、ほら」
用意しておいた二種の神器を差し出すと、彼女はにこにこと楽しそうにコーヒーに入れていた。彼女のコーヒーはあっという間にカフェオレのような色に染まる。シンとしてはもったいない、と感じてしまうが味覚は人それぞれ。きっと甘ったるいだろうコーヒーを美味しそうに飲む彼女は可愛らしかった。
「シンはいつブラックコーヒーが飲めるようになったの?」
「オレもブラックが飲めるようになったのはつい最近だ。お前もそのうち飲めるようになるんじゃないか」
素直に述べると、彼女はふふんと得意げな顔をして足を組んだ。気取った所作にシンは笑ってしまった。
「あー!シン笑ったな!自分がブラック飲めるからって!私もかっこつけたい!」
「……ブラックが飲めるの、そんなにかっこいいか?」
「かっこいいよ!少なくともシンはかっこいい!」
――ん?
今さらりと重要なことを言われた気がした。
【お相手:5主人公 テーマ:コーヒー】
僕はコーヒーが好きだ。特にブラックコーヒーの香りが大好きだ。でも学園の自販機には甘そうな缶コーヒーしか売ってない。悲しいところだ。
「おーい!かーえりましょー!」
放課後、いつもどおり彼女が大きく手を振りながらやって来る。今日も彼女は元気だなあ。放課後になる頃にはどっと疲れてる僕とは大違いだ。
「ねえ、カフェに寄ってもいい?」
これまたいつもどおり彼女に尋ねると、彼女はいいよ、と軽く了承してくれる。僕らは並んで品川駅に歩いていく。放課後に決まって寄るカフェがある。いつもの席、空いてたらいいなあ。
彼女とカフェに寄り、きょろきょろと店内を見回す。お、いつもの席空いてる。四人がけの隅っこの席。二人で陣取ってのんびり腰掛けると、ニコニコ笑った彼女と目が合った。
彼女はカプチーノ、僕はホットコーヒーを注文する。これもいつもどおり。少しすると白い泡でもこもこのカプチーノと黒い水面が揺らぐホットコーヒーが運ばれてくる。いつもどおりならブラックのまま飲むところなんだけど、今日は特別疲れていた。体育の授業があったからかな。運動神経が鈍い僕にはなかなか辛い授業だ。あー、甘いものが飲みたい。僕は席に置いてあったスティックシュガーを二本手に取った。彼女は不思議そうな顔をする。
「あれ?珍しいね、今日は砂糖の気分なの?」
「うん。体育があって疲れたから」
「あー、なるほど。ご褒美もないとやってられないよねー」
キャッキャと笑う彼女の笑顔だってご褒美なんだよね。そんな風に思いながらスティックシュガーを二本投入し、スプーンで混ぜる。ついでだ、ミルクも入れちゃえ。黒かったコーヒーの水面が甘そうな茶色に染まっていく。
普段とは違うコーヒーを一口飲んだ。ミルクのクリーミーな味わいの中からひょっこりと甘みが顔を出す。疲れた脳と体に染み渡る味、僕は息をついた。ああ、なんか今日はこの味がしっくりくる。僕、疲れてたんだな。
「カプチーノも今度飲んでみたいな」
ぽつりと僕が零すと、彼女はニコニコとしながらはい!とカップを差し出した。
「試しに飲んでみなよ。泡のモコモコ感がまだ残ってるから」
「いいの?」
「一口だけだからね!」
「わかってるよ」
念を押す彼女に苦笑しながら、遠慮なくカプチーノを一口飲んでみた。コーヒーの苦味とミルクの脂っこさが混ざった泡が美味しい。ありがとうと言いつつカップを彼女に戻すと、彼女はくすくすと笑っていた。少しムッとしつつ、
「どうしたの?」
尋ねると、彼女は僕の口元を指差した。
「泡が髭みたいに残ってる。面白いなって思って」
「えっ?恥ずかしいな」
紙ナプキンで拭ってもう一度彼女を見ると、彼女は微笑みながら大丈夫、と言ってくれた。
「意外とそういう可愛いところあるよね。またカプチーノ飲んでほしいな」
「もう一度泡を口につけさせようったって、そううまくはいかないからね」
彼女の魂胆なんて丸わかりだ。ちぇ、と残念そうな彼女に僕は苦笑いしながら返した。
夜のベテル日本支部、休憩室。私は眠い目を擦りながら自販機のボタンを押した。ガコン、と缶コーヒーが取り出し口に落ちた。
プルタブを開けて缶コーヒーを一口飲み、あまりの苦味に吹き出しそうになった。改めてラベルを見ると、「無糖」の文字。しかもミルクも入っていない、完全なブラックコーヒーを買ってしまった。
「あーあ……」
眠気覚ましにコーヒーを飲むが、ミルクと砂糖が入っていないと飲めない体質だった。しまった、眠くてろくに確認せずに買ってしまった。どうしよう、捨てるのも勿体無いが口をつけてしまった。誰かにあげるのも憚られる。
「どうした?」
逡巡していると、越水長官が現れた。彼はベテル日本支部長官と内閣総理大臣を兼任している忙しい身だ。残業中たまに出会う。長官は缶コーヒーを片手に硬直する私を不思議そうに見つめていた。
「コーヒーを買ったんですが、ブラックコーヒーを買ってしまって」
「そうか」
その一文で長官は何かを察したらしく、財布を取り出し自販機に硬貨を投入した。
「君が普段買っているものはどれだ?」
「あ、えと、これです」
私が指差したものを長官は躊躇いなく購入した。取り出し口から見慣れた缶コーヒーを取り出し、私に手渡してくれる。
「飲むといい」
「えっ、あっ、ありがとうございます!」
「そちらは私が飲もう」
長官は私の飲みかけのブラックコーヒーを受け取り、何の躊躇いもなく飲み干した。私が止める間もなかった。
「え、あ、あの、長官」
「どうした?」
長官はブラックコーヒーの苦い吐息を吐き、私を見つめていた。もう空になったのか、缶をゴミ箱に捨てる。
「私の飲みかけを渡してしまって、申し訳ありません!」
さすがに申し訳なくなり、深く頭を下げた。顔を上げられない私の肩を長官はぽんと叩いてくれる。
「気にする必要はない。私もちょうど眠気を感じていたところだった。君もあまり遅くならぬうちに帰るように」
「あ、はい、ありがとうございます……」
顔を上げると、鋭い目線ながらもどこか気遣いを感じさせる長官と目が合った。彼は満足そうに頷くと、カツカツと足音を鳴らして去っていく。後には缶コーヒーを受け取り呆然とする私が残されるばかりだった。
――間接キス、しちゃったんだけどな。
唇を撫でた私はそんなことで頭がいっぱいだった。長官は全然気にしていない様子だったし、気にする私がおかしいのかもしれない。缶コーヒーのプルタブを開け、思いきり煽った。いつもどおりの甘くクリーミーな味が、いつもより甘く感じた。
【お相手:勇 テーマ:コーヒー】
「勇くんって甘いもの好きだよね」
放課後のカフェで私と勇くんはいつもどおりだべっていた。私はホットコーヒー、勇くんは期間限定のクリームがたくさん乗った飲み物を頼んだ。私が特に意識せずに言った一言に、勇くんはストローから口を離した。
「ん?まあな。というか、オマエは全然甘いもの飲まないよな」
「一回飲んだことがあるんだけど、甘すぎてさ。それから全然飲んでないの」
「へー……今飲んでるのもブラックコーヒーか?」
「そうだよ」
「ふーん……」
勇くんはストローで飲み物をかき混ぜながら、私のホットコーヒーをじっと見つめている。黒い水面に勇くんの訝しげな眼差しが刺さりそうだった。
「なあ、それちょっと飲んでみていいか?」
「うん、いいよ」
勇くんはマグカップを取り、コーヒーを一口飲んだ。その瞬間露骨に顔が歪み、彼はべーっと舌を出した。
「うわ、すっげぇ苦い。オマエよくこんなの飲めるな」
「慣れたらそれが美味しく感じるようになるよ?」
「そうかなー……」
勇くんは首を傾げながら私にコーヒーを返した。そして何故か彼は立ち上がり、もう一度レジに向かった。何をしているのかなと思っていたら、マグカップを持って帰ってきた。え、飲み物まだ残ってるのに新しいの注文したの?
「コーヒー注文してみた」
勇くんはコーヒーフレッシュと粉砂糖を片手に戻ってきた。ブラックコーヒーのいい匂いがする。でも勇くんはうーん、としかめっ面だった。
「苦いの苦手なら無理して飲む必要ないのに」
「いやー、オマエが飲んでるの見てかっこいいよなって思ってたんだよ。まずは砂糖を入れて慣らすところからか?」
言いながら、勇くんは砂糖を入れてスプーンでかき混ぜる。ふふ、と私は笑った。
「ブラックコーヒーが飲めても飲めなくても、勇くんは勇くんなんだよ」
そう言うと、彼は不機嫌そうに口を尖らせた。
「甘いものだけじゃない勇様も見せてやりてーの」
と言い、勇くんはコーヒーを一口。彼は得意げに胸を張った。
「お、砂糖入れりゃ飲めるじゃん。美味いじゃん。ちょっとずつ砂糖を減らしていけばブラックも飲めるかもな」
「ふふ、そうだといいね」
格好つけたいお年頃の彼を見ながら、私もコーヒーを飲んだ。苦味と酸味が心地よくて、いつかこれを勇くんも美味しいと思ってくれたら嬉しいな、なんて思った。
【お相手:人修羅 テーマ:コーヒー】
「え、シンってコーヒー飲めるの!?」
「ああ。お前は?」
尋ねると彼女は見るからに渋そうな顔をした。
「あんな苦いの飲めないよ、砂糖とか牛乳入れないと」
「そうか」
まあ彼女らしいといえば彼女らしいかもしれない。シンが納得していると、彼女が身を乗り出した。
「千晶ちゃんから聞いたよ!シンは家でコーヒー淹れて飲んでるって!おしゃれなコーヒー淹れる道具持ってるんでしょ?」
「おしゃれかどうかは知らないけど、まあ豆から挽いてるな」
「おー!すごい!」
彼女はぱちぱちと小さく拍手をした。その仕草はちょこまかと動く小動物のようで可愛らしい。
「コーヒー淹れるとこ見てみたいな!シンの家でコーヒー飲ませてよ!」
「え?ああ……別に、いいけど」
――「別に」どころじゃない。お前ならいつ来てもOKだ。
そんな風に本音が香り立つところだった。
そして、彼女はシンの家にやってきた。コーヒーを飲むためだけに家に来るなどなかなかないだろう。彼女にコーヒーミルや豆を見せると、わー!と楽しそうにはしゃいでいた。
「へー、これで豆を挽くんだ。やってみていい?」
「いいぞ」
手動のコーヒーミルにいつもの倍、コーヒー豆を入れて彼女に手渡す。彼女がハンドルを回すとごりごりと豆が挽かれ、苦い香りがふわりと立った。彼女は残念そうに口を尖らせた。
「匂いは結構好きなんだけどなぁ」
「いつかブラックの美味さにも気付くさ」
彼女が挽いてくれた豆をドリッパーに入れ、湯を注ぐ。ぽこぽこと黒茶色の泡が立ち、濃い黒色のコーヒーが少しずつ溜まっていく。シンがドリップする様子を彼女は楽しそうに眺めていた。
「へー、ドリップコーヒーってこんな風に淹れるんだ。コーヒー!って感じの匂い」
「コーヒー淹れてるんだからそりゃそうだ」
とぽぽ、と静かな音が響き、二人分のコーヒーが出来上がった。シンは二つのマグカップにコーヒーを注いだ。二人でテーブルに座ると、彼女は神妙な顔でマグカップの水面を眺めていた。やがて意を結した彼女が黒いコーヒーを口に含む。
「うぅ〜〜っ……!」
彼女は思いきり顔を歪めて何とか飲み干した。その顔は見ているシンまで苦く感じてしまう苦渋の表情だった。
「やっぱりブラックはだめ!苦い!」
「牛乳と砂糖、ほら」
用意しておいた二種の神器を差し出すと、彼女はにこにこと楽しそうにコーヒーに入れていた。彼女のコーヒーはあっという間にカフェオレのような色に染まる。シンとしてはもったいない、と感じてしまうが味覚は人それぞれ。きっと甘ったるいだろうコーヒーを美味しそうに飲む彼女は可愛らしかった。
「シンはいつブラックコーヒーが飲めるようになったの?」
「オレもブラックが飲めるようになったのはつい最近だ。お前もそのうち飲めるようになるんじゃないか」
素直に述べると、彼女はふふんと得意げな顔をして足を組んだ。気取った所作にシンは笑ってしまった。
「あー!シン笑ったな!自分がブラック飲めるからって!私もかっこつけたい!」
「……ブラックが飲めるの、そんなにかっこいいか?」
「かっこいいよ!少なくともシンはかっこいい!」
――ん?
今さらりと重要なことを言われた気がした。
【お相手:5主人公 テーマ:コーヒー】
僕はコーヒーが好きだ。特にブラックコーヒーの香りが大好きだ。でも学園の自販機には甘そうな缶コーヒーしか売ってない。悲しいところだ。
「おーい!かーえりましょー!」
放課後、いつもどおり彼女が大きく手を振りながらやって来る。今日も彼女は元気だなあ。放課後になる頃にはどっと疲れてる僕とは大違いだ。
「ねえ、カフェに寄ってもいい?」
これまたいつもどおり彼女に尋ねると、彼女はいいよ、と軽く了承してくれる。僕らは並んで品川駅に歩いていく。放課後に決まって寄るカフェがある。いつもの席、空いてたらいいなあ。
彼女とカフェに寄り、きょろきょろと店内を見回す。お、いつもの席空いてる。四人がけの隅っこの席。二人で陣取ってのんびり腰掛けると、ニコニコ笑った彼女と目が合った。
彼女はカプチーノ、僕はホットコーヒーを注文する。これもいつもどおり。少しすると白い泡でもこもこのカプチーノと黒い水面が揺らぐホットコーヒーが運ばれてくる。いつもどおりならブラックのまま飲むところなんだけど、今日は特別疲れていた。体育の授業があったからかな。運動神経が鈍い僕にはなかなか辛い授業だ。あー、甘いものが飲みたい。僕は席に置いてあったスティックシュガーを二本手に取った。彼女は不思議そうな顔をする。
「あれ?珍しいね、今日は砂糖の気分なの?」
「うん。体育があって疲れたから」
「あー、なるほど。ご褒美もないとやってられないよねー」
キャッキャと笑う彼女の笑顔だってご褒美なんだよね。そんな風に思いながらスティックシュガーを二本投入し、スプーンで混ぜる。ついでだ、ミルクも入れちゃえ。黒かったコーヒーの水面が甘そうな茶色に染まっていく。
普段とは違うコーヒーを一口飲んだ。ミルクのクリーミーな味わいの中からひょっこりと甘みが顔を出す。疲れた脳と体に染み渡る味、僕は息をついた。ああ、なんか今日はこの味がしっくりくる。僕、疲れてたんだな。
「カプチーノも今度飲んでみたいな」
ぽつりと僕が零すと、彼女はニコニコとしながらはい!とカップを差し出した。
「試しに飲んでみなよ。泡のモコモコ感がまだ残ってるから」
「いいの?」
「一口だけだからね!」
「わかってるよ」
念を押す彼女に苦笑しながら、遠慮なくカプチーノを一口飲んでみた。コーヒーの苦味とミルクの脂っこさが混ざった泡が美味しい。ありがとうと言いつつカップを彼女に戻すと、彼女はくすくすと笑っていた。少しムッとしつつ、
「どうしたの?」
尋ねると、彼女は僕の口元を指差した。
「泡が髭みたいに残ってる。面白いなって思って」
「えっ?恥ずかしいな」
紙ナプキンで拭ってもう一度彼女を見ると、彼女は微笑みながら大丈夫、と言ってくれた。
「意外とそういう可愛いところあるよね。またカプチーノ飲んでほしいな」
「もう一度泡を口につけさせようったって、そううまくはいかないからね」
彼女の魂胆なんて丸わかりだ。ちぇ、と残念そうな彼女に僕は苦笑いしながら返した。
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