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氷はぬくもりをまとっている
世界樹の迷宮第三層は、青白く輝く雪と氷の世界だった。普段は上半身裸にハーフパンツで活動しているシンも、さすがに第三層に挑むにあたりコートを着込むことにした。万が一氷の上で滑って転びでもすれば、素肌だと大惨事に陥りかねない。
「また氷の床か……厄介だな」
ぽつりと吐き出した独り言は、白い吐息とともに迷宮に溶けていく。氷の床は一度進み始めると壁等にぶつかるまで止まらない。さてどう進んだものかと考えあぐねていると、氷の床の向こう側に何かがうずくまっているのが見えた。ここからだと遠く、それが魔物か人か判別がつかない。シンの体は考えるより先に動き、躊躇なく氷の床に一歩を踏み出した。真っ直ぐうずくまる何かに向かっていく。
ぴたりと氷が切れた雪の道、座り込んでいたのは少女だった。見るからに寒そうな薄着で、膝を抱えてガタガタと震えている。
「おい、大丈夫か」
声をかけたが少女の反応は鈍く、恐ろしいほどゆっくりと顔を上げただけだった。その目はぼんやりとして、シンを視界に捉えているのかも怪しい。
「おい寝るな、こんなところで寝たら死ぬぞ」
シンは少女の肩を強めに揺さぶった。それでようやく現実に戻ってきたのか、少女と目が合った。少女の唇は紫がかったいかにも不健康な色をしていた。
「ああ……親切な人ですね……ここ、どこですか……?」
「迷宮第三層だ。お前一人か?」
「ギルドのみんなとはぐれちゃって……」
「そうか。立てるか?」
「は、はい……」
立ち上がった少女は、露出が多い踊り子の服装だった。おそらくバードだろう、見ているこちらが寒くなる。シンはコートを脱ぎ、彼女に着せてやった。少女はえ、と言いながら目を丸くした。
「あなたの方が凍えちゃいますよ!」
「いい。樹海磁軸までなら耐えられる。歩けるか。街に戻った方がいいだろう」
「あ、あの、足が全然動かなくて」
見ると、少女は何とか立ってはいるが子鹿のように足が震えていた。ここで長く寒さに耐えていたのだろう。シンはしゃがむと少女に背中を見せた。
「おぶってやる。樹海磁軸まで行こう」
「え!で、でも……」
「このままここで凍えたいのか?ギルドの奴らがどこにいるかわからない以上、戻るしかないだろう」
少女は数秒躊躇っていたが、シンの背中に体を預けた。シンは少女を背負い立ち上がる。彼女は見た目どおり軽く、鍛え上げた冒険者のシンには大した苦ではなかった。
「じゃあこのまま磁軸まで行くぞ」
「はい、ありがとうございます」
背中に当たる少女の柔らかな体の感触に赤面しているのは、シンだけの秘密だ。
魔物との遭遇や降り積もる雪、氷の床を乗り越え、シンはようやく樹海磁軸に辿り着いた。人を背負った状態で迷宮探索をしたのは初めてだ、さすがにもう経験することはないだろう。樹海磁軸の紫色の光に触れると、ハイ・ラガードの街に戻ってくる。冷え冷えとした空気が優しい街のぬくもりに変わり、シンは安堵した。少女を下ろし振り返ると、彼女は慌てて深く頭を下げた。
「あ、あの、ありがとうございました!」
「いや、礼なんていらない」
「このコート、きちんと洗濯してお返しします!宿に泊まってますよね?部屋だけ教えてください」
「あ、ああ」
別に洗濯などいいのだがと思ったが、少女がぎゅっとコートを握りしめていたから余計なことは言わなかった。綺麗になって戻ってくるならそれに越したことはないのだから。
「私、ミコトっていいます!今日は本当にありがとうございました!シンさん、必ずコートお返ししますね!」
そう言って笑うミコトを見送ったのは、数日前だった。
そして今。シンは見事に体調を崩し、宿のベッドに臥せっていた。喉の痛みと発熱、倦怠感。まごうことなき風邪だった。
「あー……」
脇に挟んでいた体温計を取り出し目盛りを確認すると、三十八度。微熱を通り越している、しばらくは寝ないといけないようだ。原因はわかりきっている、迷宮第三層でコートを脱いで活動していたからだ。まさかコートを他人に貸す羽目になるとは思わなかった、次からはコート以外の防寒対策も必要だろうか。
コンコン。扉をノックする音が響いた。
「あの、シンさん!ミコトです!入ってもいいですか?」
ミコト。熱い脳みそで思い出した。コートを貸したバードの少女だ。見舞いに来てくれたのだろうか。
「ああ、入っていい」
「失礼します」
元気な声とともにミコトが入ってきた。手にはコートと果物が入った籠を持っている。起き上がる気力もないシンを見た途端、ミコトの顔が曇った。
「風邪を引いたって聞いて、心配になって……すごくしんどそうですね」
「ああ……」
「コート、ここに掛けておきますね。洗っておきました。ありがとうございました」
ミコトは洗い立てのパリッとしたコートをハンガーに掛け、ベッド近くの椅子に腰掛けた。
「オレに近付かない方がいい……風邪、うつるぞ」
「シンさんが風邪引いたの、きっと私のせいですし……ごめんなさい」
「謝らなくていい。オレはオレのするべきことをしただけだ」
申し訳さそうに俯くミコトを見ているとやりきれない。俯いていたミコトが顔を上げた頃には、少し無理をした風だが笑ってくれた。シンも力なく微笑んだ。
「シンさん、果物食べますか?りんごとか切りますよ」
「いや、そのままくれ」
「え?あ、えと、はい」
シンは起き上がり、りんごを受け取った。切ってどうこうするなど面倒だ、そのまま齧り付く。赤い果実に歯が食い込んだ瞬間、瑞々しい食感と甘酸っぱい果汁が滲み、発熱した体には大変ありがたい潤いだった。
「ありがとう。後で代金、払わないといけないな」
「いいんです!気にしないでください!助けていただいたお礼ですから!」
あわあわと両手を動かす彼女の様子が可笑しくて、シンは思わず笑った。一人寂しく臥せっているだけかと思っていたが、思いの外面白いこともあるものだ。
「お前、ギルドはいいのか。一人で来てるが」
「あ、それがですね……」
ミコトは目を泳がせ、苦笑いを浮かべた。
「一人で勝手にどこかに行くようなバードはお払い箱だって言われて、ギルドを追い出されちゃったんですよ」
「……」
シンの目が鋭く細くなったのを見たミコトは違うんです、と慌てた。
「私、前もはぐれて迷惑かけちゃったので、その……仕方ないんです。でも、それでシンさんのお見舞いに来れたんだからよかったです」
「酷いギルドもいたもんだな」
ぽつりとミコトに聞こえないように独りごちる。シンはしゃり、とりんごの食感を味わいながらミコトを見た。彼女は明るく笑っているようでいて、不安そうだった。当たり前だ。彼女はバード、戦闘能力のあるクラスを支えることが仕事で、彼女一人では戦う力はほとんどないだろう。
「お前、もしよければオレとギルドを組まないか」
「えっ?」
「オレは一人で迷宮に行ってる。支援してくれるクラスの人間がいれば助かる」
「え、えええ……そう言っていただけるのは嬉しいですけど、私、はぐれてギルドを追い出されるような人ですよ?」
ミコトは困惑一色だったが、シンの言葉は飾るところのない本心だった。ギルドを追放され傷心のところ、見舞いに来てくれるような少女を放置することはできなかった。
「二人なら逆にはぐれないんじゃないか。オレとずっと一緒にいればいい。オレがお前を守り、お前はオレを支援する。割といい条件じゃないかと思うけどな」
「…………」
ミコトは視線を斜め上や自身の膝に泳がせた後、控えめにシンを見つめた。
「そうですね。わかりました。じゃあシンさん、これからよろしくお願いしますね!」
そう言って笑うミコトは健気で、珍しくシンの心が揺れ動いた。
「よろしい、ではギルド申請を受け付けた。世界樹の迷宮探索に邁進するように」
シンとミコトは冒険者ギルドを訪れ、二人のギルドを新たに立ち上げた。二人で考えたギルド名を記載した申請書を提出するときは緊張したものだが、手続きはあっという間に終わった。冒険者ギルドを出た直後、シンとミコトは小さなハイタッチを交わした。
「やりました、今日からシンさんと一緒ですね!改めてよろしくお願いします!」
「ああ、そうだな。……っと、その前に」
シンはミコトの手を引き、様々な店舗が立ち並ぶ商業区を指差した。
「?シンさん、迷宮に行かないんですか?」
「忘れたのか、第三層は寒いぞ。お前のその格好じゃ風邪ひくだろ」
「……あ」
ミコトのクラスはバード、歌に合わせて踊りも披露する都合上動きやすい服装、もっと言ってしまえば露出が多い。事実今ミコトが着ている服は胸元や脚しか覆っておらず腕や腹部は無防備、雪や氷に覆われた階層を探索するのに適しているとはいえない。
「オレでもコート着てたんだ。防寒着を着てないと危険だ」
「そうですね、確かに」
納得した様子のミコトと商業区に歩いていく。冒険者用の衣服を揃えている店に入ると、寒冷地向けの装備があった。ミコトはずらりと並んだコートや手袋を見、無邪気に笑った。
「せっかくなら可愛いのを選びたいです。シンさん、どれが似合ってるか見てくださいね!」
「……あ、ああ」
見た目よりも性能を重視した方が、とは言えなかった。ミコトの笑顔があまりにも鮮烈で眩かったから。
世界樹の迷宮第三層は、青白く輝く雪と氷の世界だった。普段は上半身裸にハーフパンツで活動しているシンも、さすがに第三層に挑むにあたりコートを着込むことにした。万が一氷の上で滑って転びでもすれば、素肌だと大惨事に陥りかねない。
「また氷の床か……厄介だな」
ぽつりと吐き出した独り言は、白い吐息とともに迷宮に溶けていく。氷の床は一度進み始めると壁等にぶつかるまで止まらない。さてどう進んだものかと考えあぐねていると、氷の床の向こう側に何かがうずくまっているのが見えた。ここからだと遠く、それが魔物か人か判別がつかない。シンの体は考えるより先に動き、躊躇なく氷の床に一歩を踏み出した。真っ直ぐうずくまる何かに向かっていく。
ぴたりと氷が切れた雪の道、座り込んでいたのは少女だった。見るからに寒そうな薄着で、膝を抱えてガタガタと震えている。
「おい、大丈夫か」
声をかけたが少女の反応は鈍く、恐ろしいほどゆっくりと顔を上げただけだった。その目はぼんやりとして、シンを視界に捉えているのかも怪しい。
「おい寝るな、こんなところで寝たら死ぬぞ」
シンは少女の肩を強めに揺さぶった。それでようやく現実に戻ってきたのか、少女と目が合った。少女の唇は紫がかったいかにも不健康な色をしていた。
「ああ……親切な人ですね……ここ、どこですか……?」
「迷宮第三層だ。お前一人か?」
「ギルドのみんなとはぐれちゃって……」
「そうか。立てるか?」
「は、はい……」
立ち上がった少女は、露出が多い踊り子の服装だった。おそらくバードだろう、見ているこちらが寒くなる。シンはコートを脱ぎ、彼女に着せてやった。少女はえ、と言いながら目を丸くした。
「あなたの方が凍えちゃいますよ!」
「いい。樹海磁軸までなら耐えられる。歩けるか。街に戻った方がいいだろう」
「あ、あの、足が全然動かなくて」
見ると、少女は何とか立ってはいるが子鹿のように足が震えていた。ここで長く寒さに耐えていたのだろう。シンはしゃがむと少女に背中を見せた。
「おぶってやる。樹海磁軸まで行こう」
「え!で、でも……」
「このままここで凍えたいのか?ギルドの奴らがどこにいるかわからない以上、戻るしかないだろう」
少女は数秒躊躇っていたが、シンの背中に体を預けた。シンは少女を背負い立ち上がる。彼女は見た目どおり軽く、鍛え上げた冒険者のシンには大した苦ではなかった。
「じゃあこのまま磁軸まで行くぞ」
「はい、ありがとうございます」
背中に当たる少女の柔らかな体の感触に赤面しているのは、シンだけの秘密だ。
魔物との遭遇や降り積もる雪、氷の床を乗り越え、シンはようやく樹海磁軸に辿り着いた。人を背負った状態で迷宮探索をしたのは初めてだ、さすがにもう経験することはないだろう。樹海磁軸の紫色の光に触れると、ハイ・ラガードの街に戻ってくる。冷え冷えとした空気が優しい街のぬくもりに変わり、シンは安堵した。少女を下ろし振り返ると、彼女は慌てて深く頭を下げた。
「あ、あの、ありがとうございました!」
「いや、礼なんていらない」
「このコート、きちんと洗濯してお返しします!宿に泊まってますよね?部屋だけ教えてください」
「あ、ああ」
別に洗濯などいいのだがと思ったが、少女がぎゅっとコートを握りしめていたから余計なことは言わなかった。綺麗になって戻ってくるならそれに越したことはないのだから。
「私、ミコトっていいます!今日は本当にありがとうございました!シンさん、必ずコートお返ししますね!」
そう言って笑うミコトを見送ったのは、数日前だった。
そして今。シンは見事に体調を崩し、宿のベッドに臥せっていた。喉の痛みと発熱、倦怠感。まごうことなき風邪だった。
「あー……」
脇に挟んでいた体温計を取り出し目盛りを確認すると、三十八度。微熱を通り越している、しばらくは寝ないといけないようだ。原因はわかりきっている、迷宮第三層でコートを脱いで活動していたからだ。まさかコートを他人に貸す羽目になるとは思わなかった、次からはコート以外の防寒対策も必要だろうか。
コンコン。扉をノックする音が響いた。
「あの、シンさん!ミコトです!入ってもいいですか?」
ミコト。熱い脳みそで思い出した。コートを貸したバードの少女だ。見舞いに来てくれたのだろうか。
「ああ、入っていい」
「失礼します」
元気な声とともにミコトが入ってきた。手にはコートと果物が入った籠を持っている。起き上がる気力もないシンを見た途端、ミコトの顔が曇った。
「風邪を引いたって聞いて、心配になって……すごくしんどそうですね」
「ああ……」
「コート、ここに掛けておきますね。洗っておきました。ありがとうございました」
ミコトは洗い立てのパリッとしたコートをハンガーに掛け、ベッド近くの椅子に腰掛けた。
「オレに近付かない方がいい……風邪、うつるぞ」
「シンさんが風邪引いたの、きっと私のせいですし……ごめんなさい」
「謝らなくていい。オレはオレのするべきことをしただけだ」
申し訳さそうに俯くミコトを見ているとやりきれない。俯いていたミコトが顔を上げた頃には、少し無理をした風だが笑ってくれた。シンも力なく微笑んだ。
「シンさん、果物食べますか?りんごとか切りますよ」
「いや、そのままくれ」
「え?あ、えと、はい」
シンは起き上がり、りんごを受け取った。切ってどうこうするなど面倒だ、そのまま齧り付く。赤い果実に歯が食い込んだ瞬間、瑞々しい食感と甘酸っぱい果汁が滲み、発熱した体には大変ありがたい潤いだった。
「ありがとう。後で代金、払わないといけないな」
「いいんです!気にしないでください!助けていただいたお礼ですから!」
あわあわと両手を動かす彼女の様子が可笑しくて、シンは思わず笑った。一人寂しく臥せっているだけかと思っていたが、思いの外面白いこともあるものだ。
「お前、ギルドはいいのか。一人で来てるが」
「あ、それがですね……」
ミコトは目を泳がせ、苦笑いを浮かべた。
「一人で勝手にどこかに行くようなバードはお払い箱だって言われて、ギルドを追い出されちゃったんですよ」
「……」
シンの目が鋭く細くなったのを見たミコトは違うんです、と慌てた。
「私、前もはぐれて迷惑かけちゃったので、その……仕方ないんです。でも、それでシンさんのお見舞いに来れたんだからよかったです」
「酷いギルドもいたもんだな」
ぽつりとミコトに聞こえないように独りごちる。シンはしゃり、とりんごの食感を味わいながらミコトを見た。彼女は明るく笑っているようでいて、不安そうだった。当たり前だ。彼女はバード、戦闘能力のあるクラスを支えることが仕事で、彼女一人では戦う力はほとんどないだろう。
「お前、もしよければオレとギルドを組まないか」
「えっ?」
「オレは一人で迷宮に行ってる。支援してくれるクラスの人間がいれば助かる」
「え、えええ……そう言っていただけるのは嬉しいですけど、私、はぐれてギルドを追い出されるような人ですよ?」
ミコトは困惑一色だったが、シンの言葉は飾るところのない本心だった。ギルドを追放され傷心のところ、見舞いに来てくれるような少女を放置することはできなかった。
「二人なら逆にはぐれないんじゃないか。オレとずっと一緒にいればいい。オレがお前を守り、お前はオレを支援する。割といい条件じゃないかと思うけどな」
「…………」
ミコトは視線を斜め上や自身の膝に泳がせた後、控えめにシンを見つめた。
「そうですね。わかりました。じゃあシンさん、これからよろしくお願いしますね!」
そう言って笑うミコトは健気で、珍しくシンの心が揺れ動いた。
「よろしい、ではギルド申請を受け付けた。世界樹の迷宮探索に邁進するように」
シンとミコトは冒険者ギルドを訪れ、二人のギルドを新たに立ち上げた。二人で考えたギルド名を記載した申請書を提出するときは緊張したものだが、手続きはあっという間に終わった。冒険者ギルドを出た直後、シンとミコトは小さなハイタッチを交わした。
「やりました、今日からシンさんと一緒ですね!改めてよろしくお願いします!」
「ああ、そうだな。……っと、その前に」
シンはミコトの手を引き、様々な店舗が立ち並ぶ商業区を指差した。
「?シンさん、迷宮に行かないんですか?」
「忘れたのか、第三層は寒いぞ。お前のその格好じゃ風邪ひくだろ」
「……あ」
ミコトのクラスはバード、歌に合わせて踊りも披露する都合上動きやすい服装、もっと言ってしまえば露出が多い。事実今ミコトが着ている服は胸元や脚しか覆っておらず腕や腹部は無防備、雪や氷に覆われた階層を探索するのに適しているとはいえない。
「オレでもコート着てたんだ。防寒着を着てないと危険だ」
「そうですね、確かに」
納得した様子のミコトと商業区に歩いていく。冒険者用の衣服を揃えている店に入ると、寒冷地向けの装備があった。ミコトはずらりと並んだコートや手袋を見、無邪気に笑った。
「せっかくなら可愛いのを選びたいです。シンさん、どれが似合ってるか見てくださいね!」
「……あ、ああ」
見た目よりも性能を重視した方が、とは言えなかった。ミコトの笑顔があまりにも鮮烈で眩かったから。
