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いつかオマエに触れたくなる
私が勇くんと付き合い始めてから一ヶ月経った。私は今でも浮かれて嬉しい気持ちでいっぱい、まさか本当にお付き合いできるなんて思ってなかったから。
今日は勇くんとカラオケに来ていた。小さな個室に二人きり、ドキドキが止まらない。
「オレって結構上手いから」
と言う勇くんは張り切っていて微笑ましかった。勇くんはもともと素敵な声だし、歌声もきっとかっこいいんだろうな。
フリータイムでカラオケボックスに入って二時間くらい経った。勇くんはちょっと疲れたみたいで、しばらく何も曲を入れずにのんびりしていた。最新の曲を宣伝する番組が大きな音で鳴り続けている。お隣の部屋は盛り上がってるみたいで、楽しそうな声が聞こえてきた。カラオケボックスのこういうごちゃごちゃしたうるさい感じ、割と好きだったりする。静かすぎても何だか気まずいし。
「勇くん、本当に歌上手だね。かっこよかったよ!」
「だろ?ありがとな」
薄暗い部屋の中でも勇くんのほっぺたが少し赤いのがわかった。喜んでるみたい。勇くんって見た目はクールな感じだけど、結構考えてることが顔に出るんだなって最近気がついた。素直な反応が返ってくるのはとても嬉しい。
「ミコトも歌上手いじゃん」
「え?そ、そうかな、勇くんほどじゃないよ」
「謙遜すんなよ、オレは上手かったと思うぜ」
「そっか、ありがとう、勇くん」
「ん」
真っ直ぐな褒め言葉に照れくさくなって俯くと、勇くんの掌が私の頭を撫でた。勇くんの手は大きくてあったかくて、くすぐったい。飼い主に撫でられる犬ってこんな気持ちなのかな。私が顔を上げると、笑顔の勇くんがいた。個室のソファーで隣り合って座ってるから、すごく近い。勇くんはとても綺麗な顔をしてる、こんなに近くで見るとドキドキしちゃう。
「ミコト、オレ……」
勇くんの声は、周りがどれだけうるさくてもはっきり聞こえる。躊躇っているような珍しい声だった。不思議に思って彼を見ると、彼の顔がどんどん近づいてくる。え、何、何!?
こつん。
「あ、悪りぃ」
勇くんの被っている帽子のつばが私の額に当たった。え?ち、近くない……?
勇くんは私に謝ると帽子を取った。勇くんの綺麗な灰色の目がはっきり見えて、私はドキリとした。帽子を被ってると見えづらかった彼の瞳は、部屋の照明を反射してキラキラ輝いてるみたい。綺麗だ。なんて思っていると、
こつん。
今度は私のメガネと勇くんの鼻がぶつかった。
「あ〜……」
勇くんは呆れたような声を上げて、一旦私から離れた。帽子と顔がぶつかったり、メガネと顔がぶつかったり、勇くんは異様に距離を詰めてくる。何でだろう。
「勇くん、大丈夫?メガネ、顔に当たったよね」
「あー、それは大丈夫。痛くはねぇから。あー、それにしても……」
勇くんはぶつぶつと独り言を呟いていた。私に聞かせるつもりはないみたいで、ぷいと顔を背けていた。勇くんは私に向き直ると、
「ミコト、オマエのメガネ外させてくれ」
「え、え?なんで?」
勇くんの手が伸びて、私のメガネを外した。勇くんの顔が少しぼやける。勇くんの顔がどんどん近づき、私の後頭部を手で抱きしめてくる。
「こういうこと」
勇くんの声が聞こえた、と思った瞬間、唇に柔らかい何かが触れた。ふにふにとしてあたたかい、何か。勇くんはすっと顔を離し、
「もう一回」
もう一度私に顔を近づける。今度ははっきりわかった。私、勇くんとキスしてる。勇くんの唇は柔らかくて心地よかった。後ろで流れている騒がしい音が、すっと遠くに離れていく感じがした。今この瞬間、私は勇くんしか見えない。
「勇くん……」
私がぼんやり勇くんを見つめていると、ぽふ、と私の頭に勇くんの帽子が被さった。帽子のつばをきゅっと下げられて、視界が遮られる。私がつばを上げたときには、顔がほんのり赤い勇くんが私に笑いかけていた。
「突然悪かったよ。オマエと二人きりだって思ったら、抑えられなかった」
「そ、そっか」
私は勇くんの右肩に寄りかかるようにして座り直した。体の左半分が勇くんの体温であったかい。
「あ、そういやメガネ、オレが持ったままだった」
勇くんからメガネを受け取り、かけてみる。全体的にぼやけていた視界がくっきり見えるようになる。すぐ近くで照れている勇くんの様子もよく見える。
「キスしたりぎゅってしたりするときにメガネって邪魔なんだね。コンタクトに変えようかなあ」
「ミコトはそのままでも全然いいと思うけど、オレは」
私を見下ろす彼は、そんな嬉しいことを言ってくれる。私はふふ、と笑った。コンタクトかメガネか、これまでも何度か迷ったことがあるけれど、どうしようか本気で考えてみたくなった。
カラオケボックスでキスをしてから、オレは唇を触る癖がついていた。あの薄暗く狭い部屋でミコトと二人で交わしたキスは、オレの記憶にこびりついて離れなかった。一人暮らしとか寮生活をしてたらもっと二人きりになれるんだろうけど、残念ながらフツーの高校生にそんな機会はなく、あれから二人きりになることはなかった。カラオケにしてもネカフェにしてもタダじゃないんだよなぁ。でももう一度、いやもう一度どころじゃない、何回でもキスをしたくてたまらなかった。このオレがこんな気持ちになるなんてな。世の彼氏彼女はこんなドキドキした毎日を過ごしてるのか、すげぇもんだ。
「あ、勇くん!」
昼休みのチャイムが鳴り、ミコトと中庭で落ち合う。定位置のベンチに二人で腰掛けると、心地いい風が吹く。
「今日はメガネじゃないんだな」
真っ先に気がついたことを言った。今日のミコトはいつものメガネをかけていない、すっきりした顔だった。前よりちょっと目が大きく見える気がする。
「あ、そうなの。コンタクトにしてみたんだ。どうかな?」
「いい感じだぜ、メガネもよかったけどな」
そう言うと、ミコトは照れくさそうに笑った。可愛い。メガネをかけたところしか知らないからちょっと違和感があるが、そのうち慣れるだろう。
「よかった。初めてコンタクトにしたんだけど、快適だね!メガネがずり落ちてこないから楽だよ」
素直に笑うミコトを見ていると、悪いことを考えてしまう。これならすぐにキスできるな、ってさ。ま、ここは学校だからキスなんて絶対できねぇけど。あー、何とか二人きりになれねぇかなぁ。ふー、と晴れた空を見上げて息をつくと、ミコトが首を傾げた。
「どうしたの、勇くん。ぼんやりしちゃって」
「え!?あ、ああ、そういえば、ずっと聞こうと思ってたんだけど」
唐突に声をかけられ、とっさに疑問をぶつけた。
「ミコトはなんでオレのこと好きになったんだ?」
単純な疑問だった。オレとミコトは去年同じクラスだったけどあまり話した記憶もないし、正直なんでオレに告白してきたのかわからなかった。別に知らなくてもいいけれど、誤魔化すにはちょうどいい話題だった。
「去年の文化祭のときに、勇くんが私を助けてくれたの」
「文化祭?」
「うん。屋台の準備で買い出しに行ったときに、荷物をたくさん持ってくれたの。覚えてない?」
「んー……?」
女子と二人で買い出しとか行ったらさすがに覚えてるもんだと思うけど、思い出せなかった。確か何人かで行ったんじゃなかったか。あー、思い出した。重そうな荷物持ってた女子に声かけて、代わりに持った気がする。それがミコトだった、ってことか?
「そんなこともあったっけな」
「覚えてないんだ。なんか、それも勇くんっぽい」
「オレっぽい?」
ミコトはくすっと笑った。
「うん。ごく自然にやってくれたんだなって。ありがとね、勇くん。あのね、私も聞いていい?」
「ん?」
「どうして私と付き合ってくれたの?」
……まぁ、この流れだと聞かれるよな。取り繕ってもどうにもなんねぇし……。オレは目を逸らしながら答えた。
「彼女いなかったし、オマエのこと別に嫌いじゃなかったから」
飾らないといえば飾らない、直球すぎるといえば直球すぎる、そんな返し。嘘つくわけにもいかねぇし、これ以上の言葉が出てこなかった。もしかしたら幻滅されるかも、とか思ったが、ミコトは納得した様子だった。
「そっか。よかった、勇くんに嫌われてなくて。正直、断られるかもって思ってたの。だからすごく嬉しい。勇くん、ありがとう」
「いや……こっちこそ」
素直なミコトの言葉に、照れくさくなってきた。ふと目線を下に向けると、ベンチにミコトの手。周りにちらほら人がいるが、まあいいか。こっちを見てるヤツらなんていねぇし。ミコトの手にオレの手を重ねた。
「勇くん……」
「ちょっとくらい、いいだろ?」
尋ねると、ミコトは顔を赤らめて「うん」と答えた。ああもうコイツ、なんでこんなちょっとした仕草がいちいち可愛いんだろう。ここが学校じゃなかったら抱きしめて離さないのに。
オレとミコトの付き合いは順調だった。最初こそ初めての彼氏彼女ということで戸惑ったこともあったけど、今はいい感じに肩の力が抜けてきた頃ってところか。オレとミコトは週末のたびにデートしていた。高校生だしあまり金のかかることはできない、カラオケとかちょっと飯食ったりとか、そういうの。それでも楽しかった。最初はこんな地味なヤツが彼女か、なんて思ったりもしたが、全然悪くない。むしろ、すごく「イイ」。
「ねえ勇くん、今日は私の部屋に来ない?」
とお誘いがあったときには、さすがのオレも驚いた。ミコトと付き合い始めて数ヶ月、ついにこのときが来たかと思った。オレは「いいのか?」と言いつつも期待でいっぱいだった。女子の部屋なんて小学生の頃でも行ったことがない、初めての経験だ。
というわけで、今日はミコトの家の前にいる。ごく普通の一軒家だ。「月森」の表札がある、ここで間違いない。インターフォンを押すと、
「勇くん!待ってたよ!」
ミコトが飛び出す勢いで現れ、オレを出迎えた。戸惑っているうちに手を引かれ、オレは初めて女子の家に入っていく。正直めちゃくちゃ緊張した。
ミコトの部屋は綺麗なもんだった。ベッドに机、クローゼット。オレの部屋と間取りや家具は大して違いがなさそうなのに、色合いのせいか可愛い雰囲気だ。そして何だかいい匂いがする。これってもしかして、ミコトの匂いってヤツなんだろうか。安心するような、そんな匂いだ。
「これが私の部屋。どうかな、勇くん」
「綺麗にしてんじゃん、いいと思うぜ」
「ありがとう、勇くん」
正直な感想を伝えると、ミコトは嬉しそうにしていた。ひらひら踊るような仕草、いちいち可愛いんだっての。
二人でベッドに腰掛ける。近い。ミコトがすぐ近くにいる。ミコトはメガネをやめ、ずっとコンタクトをしていた。つまり、「メガネがあると色々とやりづらかった」ことをやりやすい。オレはミコトの後頭部に手を回し、抱き寄せた。ぽふ、とミコトの顔がオレの胸に寄りかかる。メガネをかけていたらコツコツぶつかるが、今回はそんな風にならない。純粋にミコトの柔らかさだけを感じられる。
「あ、の、勇くん」
「なんだよ」
「勇くん、ちょっとドキドキしてる?」
ミコトの言葉に、それこそドキッとした。なんでバレたんだ。
「してるよ、ったり前だろ」
「心臓の音が聞こえるの。ちょっと早い音」
「あー……なるほど、そこからバレるわけだ」
今のミコトはオレの胸に顔をくっつけている。そういうの、わかるよな。あー、なんかすごく恥ずかしくなってきた。って、これもバレてるんだろうな。
「ミコト」
オレは帽子を取り、ミコトの顎に触れて上を向かせた。ミコトの唇はリップでも塗ってるのか綺麗で、キスしたくなった。メガネも帽子もなければオレたちを遮るものなんて何もない。ミコトにキスした。一回だけじゃ足りない。何度も何度でもキスをする。そのたびにちゅ、と音がする。可愛い音だった。
「い、勇くん」
「どした?キスはまだ慣れないか?」
「う、うん……あの、その……」
ミコトはオレにすがりつきながら、あざとい上目遣いでオレを見つめている。
「私からもキスして、いい?」
あ〜〜……もう、そういうところが可愛いんだっつの。オレは落ち着くために小さく息を吐くとミコトの髪を撫で、
「待ってる」
目を閉じた。真っ暗闇にごそ、と服が擦れる音がして、オレの唇が優しく塞がれた。唇が離れてから目を開けると、ミコトの顔は真っ赤だった。
「……ありがとう」
ぼそっとすんごい小さい声で呟いて、ミコトはオレにぎゅ〜っとくっついてきた。胸に顔をすり寄せて、オレの体を抱きしめている。そんなにくっつくと、ミコトの胸もオレの体にくっつく。や、柔らかい……じゃなくって!オレは帽子を被り直して目元を隠した。せめてもうちょいクールな勇でいたかった。体が熱かったり心臓がドキドキしてるのはどうしようもないから、せめて顔だけでも。
「勇くんにぎゅってしてもらうと、安心するの。ありがとう、勇くん」
「あ、ああ……そりゃよかったよ」
ミコトの体の柔らかさに気を取られて、オレはそんな返ししかできなかった。
ミコトの部屋でキスしたり抱きしめたりしてから、オレはどこかぼんやりしていた。寝ても覚めてもミコトの体の柔らかい感触が頭から離れなかった。
ぶっちゃけて言うと、触りたい。抱きしめる以上のことをしたくてたまらなかった。でもそういうのって、オレから言い出してもいいもんなのか?と悶々としていた。千晶もシンもあてにならねぇし、どうしたもんかな……と考えていたら、
「ねえ勇くん、なんか変だよ?どうしたの?」
ある帰り道、当のミコトに尋ねられてしまった。コンタクトのミコトもすっかり見慣れて、メガネの野暮ったさがなくなりずいぶん可愛くなった。そんな彼女と今も手を繋いでいる。……手、柔らかい。手がこんなに柔らかいなら、胸とか、他のところはもっと……。
「勇くん」
「あ!?悪りぃ、ボーッとしてた」
強めの声でハッと我に返った。オレ、何考えてた!?首を横に振った。首の動きと一緒におかしな考えがどっかに行ったような……気がする。たぶん。
「勇くん、体調が悪いんじゃない?最近ずっとボーッとしてるよ」
「いや、そういうんじゃねぇよ」
「そうなの?」
ミコトの不思議そうな顔を見てしまった、と思った。体調不良ってことにしとけばこのまま流れたのに、違うと言ってしまった。じゃあなんで、ってなるのは当然の流れだ。あ〜……やっちまったかも。でもここまできたなら、むしろ言ってしまってもいいか……?オレは少し悩んだが、
「……ミコトに触りたくて、こんな風になってんだよ」
結局は言ってしまった。今隠したところでいつかは言わないといけないことだ。ちょうどいい機会かもしれない。ミコトはきょとんとしていた。
「触りたいって?ハグとかキスじゃなくて?」
「そうじゃない。もっとオマエに触りたいんだよ」
「…………」
察してくれたのか、ミコトはくっと黙り込んだ。オレから逸らしたその顔は赤く、オレの言いたいことは理解してくれたっぽい雰囲気だ。
「じゃあ……勇くん、今度私の部屋でしてみる?」
そう言うと、ミコトはオレの腕にきゅっと抱きついてきた。胸が当たってるんだけど!?これ絶対意図してやってるよな!?ミコトは上目遣いでオレを見ている。ここがミコトの部屋だったら、もうオレの理性はどうにかなってたかもしれない。周りに人がいる帰り道で助かった。
勇くんは「そういうこと」をしたいんだろうなって、なんとなく察してた。私と手を繋いだりぎゅってしたりするたびに、変に緊張している感じがしたから。だから……だからきっと、今日こそ私の部屋で何かが起こる気がする。いつもどおり勇くんを部屋に招き入れながら、私は胸のドキドキが抑えられなかった。保健の授業も受けてるし、「そういうこと」はちゃんとお互い知っている。後はどうやって始まるのか、それくらいなんだ。
「ミコト」
ベッドの背もたれにもたれかかる勇くんに手招きされる。こういうとき、向かい合うのと背中を向けるのとどっちがいいんだろう?といつも思うんだけど、私は背中を向けて座ることにしている。勇くんにもたれかかるのが心地よくて、安心するから。
ぎゅっと後ろから抱きしめられる。勇くんの両手は、私の首や鎖骨あたりを抱きしめていた。いつもならこのまま、たまにキスして終わり。でも。
――もっとオマエに触りたいんだよ。
と勇くんに言われた。今度私の部屋でしてみる?と返した。いつ触られるんだろう……ドキドキする。
「ミコト、触っていいか?」
「……あ」
勇くんが私の耳元で囁いた。吐息が耳にかかってくすぐったくて、変な声が出た。
ついに来た。私は無言で頷いた。これから勇くんに触られる。全身に変な力が入ってしまった。
勇くんの両手が私の胸に伸びた。Tシャツの上から控えめに触られて、ゆっくり揉むように動いた。勇くんの手、すごく大きい。指輪をつけた大きい手が私の胸を揉んでる。胸を揉まれると服とブラジャーも一緒に動くから、衣ずれの音が聞こえてくる。いつものハグやキスとはまた違う、なんだかすごくいやらしいことをしている気分……。
「すっげー柔らかい……」
「そう……?」
勇くんに思わず尋ねると、勇くんは私の耳たぶに噛みついた。軽く歯を立てる、甘噛みってやつかな。耳から首筋あたりにぴりっと痺れる感覚があった。
「……っ」
なんか……単に胸を触られてるだけなのに、勇くんに後ろから抱きしめられてるとドキドキが加速する。勇くんのごつごつした手が私に触れてるって実感しちゃう。体の奥から何か熱いものがとろけてきて、ショーツが濡れてきた。私、興奮してるのかな。
「あー、直接触りてー……ミコト、ブラも取っちゃっていいか」
「あ……う、うん、いいよ」
本当はもう少し待ってほしい気持ちもあったけれど、勇くんの真剣な声はすごく色気があって逆らえなかった。勇くんの手がTシャツをまくり上げた。ブラジャーが見えちゃう。今日はもしかしたら見られるんじゃないかと思って、買ったばかりの可愛いやつにしてた。ショーツとお揃いの白にピンクのレースが入った、ちょっとお高いやつ。上は見られるってわかってたけど、下も……下も、見られちゃうんだろうか。
「可愛い下着着てんだな」
「うん……勇くんに見られると思って奮発しちゃった」
「可愛いな、オマエって」
勇くんの手が背中のホックに触れた。しばらく手間取ってたけどホックも外されて、下着が浮く。そのまま触られるのかな、と思ってたら、
「ミコト、もう面倒だから全部脱いじゃおうぜ。ほら、ばんざい」
勇くんにそう言われて、私は戸惑いながらばんざいした。両手を上げた瞬間、勇くんにTシャツとブラジャーをまとめて脱がされた。ベッドに脱いだ服が置かれて、私は慌てた。上半身に何も着てない。私は両手で胸を隠して縮こまった。私の背中に、勇くんはそっと寄り添ってくれる。
「ミコト。手、どけてくれ。な?」
「恥ずかしい……」
「オレしか見ないから、心配すんなよ」
勇くんの両手が私の手を掴み、胸からどかす。下着をつけていない胸が露わになって、私は目をぎゅっと瞑った。勇くんの視線を感じる。私、あんまり胸大きくないし、綺麗でもなんでもないから、幻滅されてないかな。怖い。
「可愛いぜ、ミコト」
私の耳元で優しく囁いて、勇くんは私の胸に触れた。彼の大きな手が胸を優しく揉みしだいている。どっちの胸も彼の手の中でもにゅもにゅ揺れて、ドキドキが頂点に達しそうだった。勇くんに触られているのを見ているだけでまたとろりとしたものがお腹の方から溢れて、ショーツが濡れる。
「ミコトの体、あったかくて柔らかくて……ずーっと触ってたくなるな」
「わ、私も……勇くんに、触られたい……」
勇くんの顔が見えるように横向きに座り、彼の首に両腕を回した。勇くんの首、私よりずっと太い。男の子なんだなってすごく実感する。勇くんの帽子を脱がしちゃえば、もうキスもし放題。私は勇くんにキスをした。
「ん……っ」
私が体勢を変えても、勇くんの両手はずっと私の胸を揉んでいる。単に触られているだけなのに変に興奮して、私の口からは変な吐息が漏れた。喘ぎ声……とまではいかないけど、それに近いかもしれない。
「ここが気持ちいいとか聞くけど、どうなんだろうな?」
ここ、と勇くんが言ったとき、私の乳首に彼の指が触れた。側面を優しくなぞってくる。すりすり撫でられて、両方の乳首がじんじんし始めた。なんか体、熱い。のぼせてるみたい……。勇くんを見ると、彼はちょっと心配そうな顔をしていた。
「おいミコト、大丈夫かよ。顔真っ赤だぞ」
「う、うん……大丈夫、だよ」
「今日はこのへんにしとくか」
勇くんの優しさを感じたけど、残念でもあった。もっと触られるんだろうって、期待していたから。私のお腹はきゅんきゅんと熱くなっていた。
私が勇くんと付き合い始めてから一ヶ月経った。私は今でも浮かれて嬉しい気持ちでいっぱい、まさか本当にお付き合いできるなんて思ってなかったから。
今日は勇くんとカラオケに来ていた。小さな個室に二人きり、ドキドキが止まらない。
「オレって結構上手いから」
と言う勇くんは張り切っていて微笑ましかった。勇くんはもともと素敵な声だし、歌声もきっとかっこいいんだろうな。
フリータイムでカラオケボックスに入って二時間くらい経った。勇くんはちょっと疲れたみたいで、しばらく何も曲を入れずにのんびりしていた。最新の曲を宣伝する番組が大きな音で鳴り続けている。お隣の部屋は盛り上がってるみたいで、楽しそうな声が聞こえてきた。カラオケボックスのこういうごちゃごちゃしたうるさい感じ、割と好きだったりする。静かすぎても何だか気まずいし。
「勇くん、本当に歌上手だね。かっこよかったよ!」
「だろ?ありがとな」
薄暗い部屋の中でも勇くんのほっぺたが少し赤いのがわかった。喜んでるみたい。勇くんって見た目はクールな感じだけど、結構考えてることが顔に出るんだなって最近気がついた。素直な反応が返ってくるのはとても嬉しい。
「ミコトも歌上手いじゃん」
「え?そ、そうかな、勇くんほどじゃないよ」
「謙遜すんなよ、オレは上手かったと思うぜ」
「そっか、ありがとう、勇くん」
「ん」
真っ直ぐな褒め言葉に照れくさくなって俯くと、勇くんの掌が私の頭を撫でた。勇くんの手は大きくてあったかくて、くすぐったい。飼い主に撫でられる犬ってこんな気持ちなのかな。私が顔を上げると、笑顔の勇くんがいた。個室のソファーで隣り合って座ってるから、すごく近い。勇くんはとても綺麗な顔をしてる、こんなに近くで見るとドキドキしちゃう。
「ミコト、オレ……」
勇くんの声は、周りがどれだけうるさくてもはっきり聞こえる。躊躇っているような珍しい声だった。不思議に思って彼を見ると、彼の顔がどんどん近づいてくる。え、何、何!?
こつん。
「あ、悪りぃ」
勇くんの被っている帽子のつばが私の額に当たった。え?ち、近くない……?
勇くんは私に謝ると帽子を取った。勇くんの綺麗な灰色の目がはっきり見えて、私はドキリとした。帽子を被ってると見えづらかった彼の瞳は、部屋の照明を反射してキラキラ輝いてるみたい。綺麗だ。なんて思っていると、
こつん。
今度は私のメガネと勇くんの鼻がぶつかった。
「あ〜……」
勇くんは呆れたような声を上げて、一旦私から離れた。帽子と顔がぶつかったり、メガネと顔がぶつかったり、勇くんは異様に距離を詰めてくる。何でだろう。
「勇くん、大丈夫?メガネ、顔に当たったよね」
「あー、それは大丈夫。痛くはねぇから。あー、それにしても……」
勇くんはぶつぶつと独り言を呟いていた。私に聞かせるつもりはないみたいで、ぷいと顔を背けていた。勇くんは私に向き直ると、
「ミコト、オマエのメガネ外させてくれ」
「え、え?なんで?」
勇くんの手が伸びて、私のメガネを外した。勇くんの顔が少しぼやける。勇くんの顔がどんどん近づき、私の後頭部を手で抱きしめてくる。
「こういうこと」
勇くんの声が聞こえた、と思った瞬間、唇に柔らかい何かが触れた。ふにふにとしてあたたかい、何か。勇くんはすっと顔を離し、
「もう一回」
もう一度私に顔を近づける。今度ははっきりわかった。私、勇くんとキスしてる。勇くんの唇は柔らかくて心地よかった。後ろで流れている騒がしい音が、すっと遠くに離れていく感じがした。今この瞬間、私は勇くんしか見えない。
「勇くん……」
私がぼんやり勇くんを見つめていると、ぽふ、と私の頭に勇くんの帽子が被さった。帽子のつばをきゅっと下げられて、視界が遮られる。私がつばを上げたときには、顔がほんのり赤い勇くんが私に笑いかけていた。
「突然悪かったよ。オマエと二人きりだって思ったら、抑えられなかった」
「そ、そっか」
私は勇くんの右肩に寄りかかるようにして座り直した。体の左半分が勇くんの体温であったかい。
「あ、そういやメガネ、オレが持ったままだった」
勇くんからメガネを受け取り、かけてみる。全体的にぼやけていた視界がくっきり見えるようになる。すぐ近くで照れている勇くんの様子もよく見える。
「キスしたりぎゅってしたりするときにメガネって邪魔なんだね。コンタクトに変えようかなあ」
「ミコトはそのままでも全然いいと思うけど、オレは」
私を見下ろす彼は、そんな嬉しいことを言ってくれる。私はふふ、と笑った。コンタクトかメガネか、これまでも何度か迷ったことがあるけれど、どうしようか本気で考えてみたくなった。
カラオケボックスでキスをしてから、オレは唇を触る癖がついていた。あの薄暗く狭い部屋でミコトと二人で交わしたキスは、オレの記憶にこびりついて離れなかった。一人暮らしとか寮生活をしてたらもっと二人きりになれるんだろうけど、残念ながらフツーの高校生にそんな機会はなく、あれから二人きりになることはなかった。カラオケにしてもネカフェにしてもタダじゃないんだよなぁ。でももう一度、いやもう一度どころじゃない、何回でもキスをしたくてたまらなかった。このオレがこんな気持ちになるなんてな。世の彼氏彼女はこんなドキドキした毎日を過ごしてるのか、すげぇもんだ。
「あ、勇くん!」
昼休みのチャイムが鳴り、ミコトと中庭で落ち合う。定位置のベンチに二人で腰掛けると、心地いい風が吹く。
「今日はメガネじゃないんだな」
真っ先に気がついたことを言った。今日のミコトはいつものメガネをかけていない、すっきりした顔だった。前よりちょっと目が大きく見える気がする。
「あ、そうなの。コンタクトにしてみたんだ。どうかな?」
「いい感じだぜ、メガネもよかったけどな」
そう言うと、ミコトは照れくさそうに笑った。可愛い。メガネをかけたところしか知らないからちょっと違和感があるが、そのうち慣れるだろう。
「よかった。初めてコンタクトにしたんだけど、快適だね!メガネがずり落ちてこないから楽だよ」
素直に笑うミコトを見ていると、悪いことを考えてしまう。これならすぐにキスできるな、ってさ。ま、ここは学校だからキスなんて絶対できねぇけど。あー、何とか二人きりになれねぇかなぁ。ふー、と晴れた空を見上げて息をつくと、ミコトが首を傾げた。
「どうしたの、勇くん。ぼんやりしちゃって」
「え!?あ、ああ、そういえば、ずっと聞こうと思ってたんだけど」
唐突に声をかけられ、とっさに疑問をぶつけた。
「ミコトはなんでオレのこと好きになったんだ?」
単純な疑問だった。オレとミコトは去年同じクラスだったけどあまり話した記憶もないし、正直なんでオレに告白してきたのかわからなかった。別に知らなくてもいいけれど、誤魔化すにはちょうどいい話題だった。
「去年の文化祭のときに、勇くんが私を助けてくれたの」
「文化祭?」
「うん。屋台の準備で買い出しに行ったときに、荷物をたくさん持ってくれたの。覚えてない?」
「んー……?」
女子と二人で買い出しとか行ったらさすがに覚えてるもんだと思うけど、思い出せなかった。確か何人かで行ったんじゃなかったか。あー、思い出した。重そうな荷物持ってた女子に声かけて、代わりに持った気がする。それがミコトだった、ってことか?
「そんなこともあったっけな」
「覚えてないんだ。なんか、それも勇くんっぽい」
「オレっぽい?」
ミコトはくすっと笑った。
「うん。ごく自然にやってくれたんだなって。ありがとね、勇くん。あのね、私も聞いていい?」
「ん?」
「どうして私と付き合ってくれたの?」
……まぁ、この流れだと聞かれるよな。取り繕ってもどうにもなんねぇし……。オレは目を逸らしながら答えた。
「彼女いなかったし、オマエのこと別に嫌いじゃなかったから」
飾らないといえば飾らない、直球すぎるといえば直球すぎる、そんな返し。嘘つくわけにもいかねぇし、これ以上の言葉が出てこなかった。もしかしたら幻滅されるかも、とか思ったが、ミコトは納得した様子だった。
「そっか。よかった、勇くんに嫌われてなくて。正直、断られるかもって思ってたの。だからすごく嬉しい。勇くん、ありがとう」
「いや……こっちこそ」
素直なミコトの言葉に、照れくさくなってきた。ふと目線を下に向けると、ベンチにミコトの手。周りにちらほら人がいるが、まあいいか。こっちを見てるヤツらなんていねぇし。ミコトの手にオレの手を重ねた。
「勇くん……」
「ちょっとくらい、いいだろ?」
尋ねると、ミコトは顔を赤らめて「うん」と答えた。ああもうコイツ、なんでこんなちょっとした仕草がいちいち可愛いんだろう。ここが学校じゃなかったら抱きしめて離さないのに。
オレとミコトの付き合いは順調だった。最初こそ初めての彼氏彼女ということで戸惑ったこともあったけど、今はいい感じに肩の力が抜けてきた頃ってところか。オレとミコトは週末のたびにデートしていた。高校生だしあまり金のかかることはできない、カラオケとかちょっと飯食ったりとか、そういうの。それでも楽しかった。最初はこんな地味なヤツが彼女か、なんて思ったりもしたが、全然悪くない。むしろ、すごく「イイ」。
「ねえ勇くん、今日は私の部屋に来ない?」
とお誘いがあったときには、さすがのオレも驚いた。ミコトと付き合い始めて数ヶ月、ついにこのときが来たかと思った。オレは「いいのか?」と言いつつも期待でいっぱいだった。女子の部屋なんて小学生の頃でも行ったことがない、初めての経験だ。
というわけで、今日はミコトの家の前にいる。ごく普通の一軒家だ。「月森」の表札がある、ここで間違いない。インターフォンを押すと、
「勇くん!待ってたよ!」
ミコトが飛び出す勢いで現れ、オレを出迎えた。戸惑っているうちに手を引かれ、オレは初めて女子の家に入っていく。正直めちゃくちゃ緊張した。
ミコトの部屋は綺麗なもんだった。ベッドに机、クローゼット。オレの部屋と間取りや家具は大して違いがなさそうなのに、色合いのせいか可愛い雰囲気だ。そして何だかいい匂いがする。これってもしかして、ミコトの匂いってヤツなんだろうか。安心するような、そんな匂いだ。
「これが私の部屋。どうかな、勇くん」
「綺麗にしてんじゃん、いいと思うぜ」
「ありがとう、勇くん」
正直な感想を伝えると、ミコトは嬉しそうにしていた。ひらひら踊るような仕草、いちいち可愛いんだっての。
二人でベッドに腰掛ける。近い。ミコトがすぐ近くにいる。ミコトはメガネをやめ、ずっとコンタクトをしていた。つまり、「メガネがあると色々とやりづらかった」ことをやりやすい。オレはミコトの後頭部に手を回し、抱き寄せた。ぽふ、とミコトの顔がオレの胸に寄りかかる。メガネをかけていたらコツコツぶつかるが、今回はそんな風にならない。純粋にミコトの柔らかさだけを感じられる。
「あ、の、勇くん」
「なんだよ」
「勇くん、ちょっとドキドキしてる?」
ミコトの言葉に、それこそドキッとした。なんでバレたんだ。
「してるよ、ったり前だろ」
「心臓の音が聞こえるの。ちょっと早い音」
「あー……なるほど、そこからバレるわけだ」
今のミコトはオレの胸に顔をくっつけている。そういうの、わかるよな。あー、なんかすごく恥ずかしくなってきた。って、これもバレてるんだろうな。
「ミコト」
オレは帽子を取り、ミコトの顎に触れて上を向かせた。ミコトの唇はリップでも塗ってるのか綺麗で、キスしたくなった。メガネも帽子もなければオレたちを遮るものなんて何もない。ミコトにキスした。一回だけじゃ足りない。何度も何度でもキスをする。そのたびにちゅ、と音がする。可愛い音だった。
「い、勇くん」
「どした?キスはまだ慣れないか?」
「う、うん……あの、その……」
ミコトはオレにすがりつきながら、あざとい上目遣いでオレを見つめている。
「私からもキスして、いい?」
あ〜〜……もう、そういうところが可愛いんだっつの。オレは落ち着くために小さく息を吐くとミコトの髪を撫で、
「待ってる」
目を閉じた。真っ暗闇にごそ、と服が擦れる音がして、オレの唇が優しく塞がれた。唇が離れてから目を開けると、ミコトの顔は真っ赤だった。
「……ありがとう」
ぼそっとすんごい小さい声で呟いて、ミコトはオレにぎゅ〜っとくっついてきた。胸に顔をすり寄せて、オレの体を抱きしめている。そんなにくっつくと、ミコトの胸もオレの体にくっつく。や、柔らかい……じゃなくって!オレは帽子を被り直して目元を隠した。せめてもうちょいクールな勇でいたかった。体が熱かったり心臓がドキドキしてるのはどうしようもないから、せめて顔だけでも。
「勇くんにぎゅってしてもらうと、安心するの。ありがとう、勇くん」
「あ、ああ……そりゃよかったよ」
ミコトの体の柔らかさに気を取られて、オレはそんな返ししかできなかった。
ミコトの部屋でキスしたり抱きしめたりしてから、オレはどこかぼんやりしていた。寝ても覚めてもミコトの体の柔らかい感触が頭から離れなかった。
ぶっちゃけて言うと、触りたい。抱きしめる以上のことをしたくてたまらなかった。でもそういうのって、オレから言い出してもいいもんなのか?と悶々としていた。千晶もシンもあてにならねぇし、どうしたもんかな……と考えていたら、
「ねえ勇くん、なんか変だよ?どうしたの?」
ある帰り道、当のミコトに尋ねられてしまった。コンタクトのミコトもすっかり見慣れて、メガネの野暮ったさがなくなりずいぶん可愛くなった。そんな彼女と今も手を繋いでいる。……手、柔らかい。手がこんなに柔らかいなら、胸とか、他のところはもっと……。
「勇くん」
「あ!?悪りぃ、ボーッとしてた」
強めの声でハッと我に返った。オレ、何考えてた!?首を横に振った。首の動きと一緒におかしな考えがどっかに行ったような……気がする。たぶん。
「勇くん、体調が悪いんじゃない?最近ずっとボーッとしてるよ」
「いや、そういうんじゃねぇよ」
「そうなの?」
ミコトの不思議そうな顔を見てしまった、と思った。体調不良ってことにしとけばこのまま流れたのに、違うと言ってしまった。じゃあなんで、ってなるのは当然の流れだ。あ〜……やっちまったかも。でもここまできたなら、むしろ言ってしまってもいいか……?オレは少し悩んだが、
「……ミコトに触りたくて、こんな風になってんだよ」
結局は言ってしまった。今隠したところでいつかは言わないといけないことだ。ちょうどいい機会かもしれない。ミコトはきょとんとしていた。
「触りたいって?ハグとかキスじゃなくて?」
「そうじゃない。もっとオマエに触りたいんだよ」
「…………」
察してくれたのか、ミコトはくっと黙り込んだ。オレから逸らしたその顔は赤く、オレの言いたいことは理解してくれたっぽい雰囲気だ。
「じゃあ……勇くん、今度私の部屋でしてみる?」
そう言うと、ミコトはオレの腕にきゅっと抱きついてきた。胸が当たってるんだけど!?これ絶対意図してやってるよな!?ミコトは上目遣いでオレを見ている。ここがミコトの部屋だったら、もうオレの理性はどうにかなってたかもしれない。周りに人がいる帰り道で助かった。
勇くんは「そういうこと」をしたいんだろうなって、なんとなく察してた。私と手を繋いだりぎゅってしたりするたびに、変に緊張している感じがしたから。だから……だからきっと、今日こそ私の部屋で何かが起こる気がする。いつもどおり勇くんを部屋に招き入れながら、私は胸のドキドキが抑えられなかった。保健の授業も受けてるし、「そういうこと」はちゃんとお互い知っている。後はどうやって始まるのか、それくらいなんだ。
「ミコト」
ベッドの背もたれにもたれかかる勇くんに手招きされる。こういうとき、向かい合うのと背中を向けるのとどっちがいいんだろう?といつも思うんだけど、私は背中を向けて座ることにしている。勇くんにもたれかかるのが心地よくて、安心するから。
ぎゅっと後ろから抱きしめられる。勇くんの両手は、私の首や鎖骨あたりを抱きしめていた。いつもならこのまま、たまにキスして終わり。でも。
――もっとオマエに触りたいんだよ。
と勇くんに言われた。今度私の部屋でしてみる?と返した。いつ触られるんだろう……ドキドキする。
「ミコト、触っていいか?」
「……あ」
勇くんが私の耳元で囁いた。吐息が耳にかかってくすぐったくて、変な声が出た。
ついに来た。私は無言で頷いた。これから勇くんに触られる。全身に変な力が入ってしまった。
勇くんの両手が私の胸に伸びた。Tシャツの上から控えめに触られて、ゆっくり揉むように動いた。勇くんの手、すごく大きい。指輪をつけた大きい手が私の胸を揉んでる。胸を揉まれると服とブラジャーも一緒に動くから、衣ずれの音が聞こえてくる。いつものハグやキスとはまた違う、なんだかすごくいやらしいことをしている気分……。
「すっげー柔らかい……」
「そう……?」
勇くんに思わず尋ねると、勇くんは私の耳たぶに噛みついた。軽く歯を立てる、甘噛みってやつかな。耳から首筋あたりにぴりっと痺れる感覚があった。
「……っ」
なんか……単に胸を触られてるだけなのに、勇くんに後ろから抱きしめられてるとドキドキが加速する。勇くんのごつごつした手が私に触れてるって実感しちゃう。体の奥から何か熱いものがとろけてきて、ショーツが濡れてきた。私、興奮してるのかな。
「あー、直接触りてー……ミコト、ブラも取っちゃっていいか」
「あ……う、うん、いいよ」
本当はもう少し待ってほしい気持ちもあったけれど、勇くんの真剣な声はすごく色気があって逆らえなかった。勇くんの手がTシャツをまくり上げた。ブラジャーが見えちゃう。今日はもしかしたら見られるんじゃないかと思って、買ったばかりの可愛いやつにしてた。ショーツとお揃いの白にピンクのレースが入った、ちょっとお高いやつ。上は見られるってわかってたけど、下も……下も、見られちゃうんだろうか。
「可愛い下着着てんだな」
「うん……勇くんに見られると思って奮発しちゃった」
「可愛いな、オマエって」
勇くんの手が背中のホックに触れた。しばらく手間取ってたけどホックも外されて、下着が浮く。そのまま触られるのかな、と思ってたら、
「ミコト、もう面倒だから全部脱いじゃおうぜ。ほら、ばんざい」
勇くんにそう言われて、私は戸惑いながらばんざいした。両手を上げた瞬間、勇くんにTシャツとブラジャーをまとめて脱がされた。ベッドに脱いだ服が置かれて、私は慌てた。上半身に何も着てない。私は両手で胸を隠して縮こまった。私の背中に、勇くんはそっと寄り添ってくれる。
「ミコト。手、どけてくれ。な?」
「恥ずかしい……」
「オレしか見ないから、心配すんなよ」
勇くんの両手が私の手を掴み、胸からどかす。下着をつけていない胸が露わになって、私は目をぎゅっと瞑った。勇くんの視線を感じる。私、あんまり胸大きくないし、綺麗でもなんでもないから、幻滅されてないかな。怖い。
「可愛いぜ、ミコト」
私の耳元で優しく囁いて、勇くんは私の胸に触れた。彼の大きな手が胸を優しく揉みしだいている。どっちの胸も彼の手の中でもにゅもにゅ揺れて、ドキドキが頂点に達しそうだった。勇くんに触られているのを見ているだけでまたとろりとしたものがお腹の方から溢れて、ショーツが濡れる。
「ミコトの体、あったかくて柔らかくて……ずーっと触ってたくなるな」
「わ、私も……勇くんに、触られたい……」
勇くんの顔が見えるように横向きに座り、彼の首に両腕を回した。勇くんの首、私よりずっと太い。男の子なんだなってすごく実感する。勇くんの帽子を脱がしちゃえば、もうキスもし放題。私は勇くんにキスをした。
「ん……っ」
私が体勢を変えても、勇くんの両手はずっと私の胸を揉んでいる。単に触られているだけなのに変に興奮して、私の口からは変な吐息が漏れた。喘ぎ声……とまではいかないけど、それに近いかもしれない。
「ここが気持ちいいとか聞くけど、どうなんだろうな?」
ここ、と勇くんが言ったとき、私の乳首に彼の指が触れた。側面を優しくなぞってくる。すりすり撫でられて、両方の乳首がじんじんし始めた。なんか体、熱い。のぼせてるみたい……。勇くんを見ると、彼はちょっと心配そうな顔をしていた。
「おいミコト、大丈夫かよ。顔真っ赤だぞ」
「う、うん……大丈夫、だよ」
「今日はこのへんにしとくか」
勇くんの優しさを感じたけど、残念でもあった。もっと触られるんだろうって、期待していたから。私のお腹はきゅんきゅんと熱くなっていた。
